第13話 反撃の時は来た
リュウタ達は悲しむ暇もないまま、大陸連合軍メガリア王国首都・バルガウス本部基地へとゲイリーに連れられた。その時のリュウタはどこか虚ろ気に顔を下に向けていた。
「君達……、もしや次元転移者だな」
「はい、そうですが……」
リュウタは普段より元気のない表情をしていた。
「まさか、イカロスナイトがこんな姿で帰ってきてしまうとは……。あいつめ、無理しやがって」
「う、うぅ……。済まない、ゲイリー中佐」
イカロスナイトはブレスレットの中から話しかけるが、声からして満身創痍の状態であることは明白である。
「じゃあ、君たちのテクター・ブレスレットは私が修理しよう」
「出来るんですか?」
ラゼックは思わず目を見開いて驚く。
「あぁ、俺はコイツらを作った……。いわゆる生みの親さ」
「えっ!?」
四人全員は、そのあまりにも唐突な発言に驚かざるを得なかった。
「俺は兵士でもあり、技術者でもあるんだ」
「そうなんですか?」
マナは緊迫した表情をしていた。
「もちろんだとも。私を馬鹿にしないでもらいたい。元々、私の父も技術者としてこの国で活躍していた。今はもういないがな」
「なるほど……」
バルティックは思わず息を呑む。
「じゃあ、修理が終わるまでは整備ドックの隣の所で待ってもらうからな」
「はい……」
四人は少し俯きつつ、兵士達に連れられて休憩室へと向かった。
「俺達、どうなっちゃうんだろう……」
リュウタはすっかり気が沈んでいた。
「大丈夫さ。ほら、あのオッサンが直してくれるって言ってたじゃないか」
だが、ラゼックは他の三人に比べて今の状況を楽観視していた。
「今は何ともいえないわね……」
マナはケルブバスターに思いを馳せて目を閉じる。
「ひとまず、今はゆっくり待つしかあるまい」
四人は脳内を黒い霧で覆われたかのような感覚に苛まれた。
時を同じくして、ゲイリーは他のエンジニア達と共にイカロスナイト達の修理作業に追われていた。
「それにしても、随分と深い傷を負っているな……」
「早く直さないと、また奴らが……」
部下はかなり焦っていたが、その一方でゲイリーはかなり冷静であった。
それどころかむしろ余裕を持っているように見えるほどである。
「中佐、そういえば以前開発していた彼らの武器は……」
「あれは別の開発チームの管轄下にある。突貫工事でやっているとのことだ」
「そうでしたか。第二開発班ですか?」
部下の言う第二開発班とは、このメガリア王国技術専門班の中でもゲイリーに次ぐほどの突出した技術を持ったエンジニアが集うチームである。
また、ゲイリーが所属する第一開発班だけでは手に負えない業務も請け負っている。
「あぁ、あいつらは結構頼りになるからな」
「確かに彼らなら……、すぐにやってくれるはずでしょう」
二人はお互いに微笑んで頷いたあと、そのまま作業を再開した。
そして、彼らの言う新たな武器とは何か。
翌日、メガリアのMH戦闘部隊は直ちに戦闘状態に入れるようにスタンバイし、さらに政府側も総力を挙げて市街地の復旧作業を急いだ。そして、リュウタ達は目を覚まして今のメガリアの風景を見る。
「こ、これは……!」
リュウタ達は絶句して声が出なかった。何と、昨日の夜まであった周辺のビルが瓦礫の山と化していたのだ。
「ママ……、誰かー! 助けて!」
その子供は、助けを求めていた。
「どうしたんだ、君?」
一人の救護兵が子供の元へと駆け寄った。
「ママがこの下に…」
「何だって!? 早く助けないと……」
瓦礫に挟まって動けなくなっている母親を見て、その子供は泣き叫んだ。
そして、周りの人々は救助隊によって救出されている最中であった。
「俺達は……、守れなかったってことか」
バルティックは昂る感情をひたすら抑えつつ、ただ立つことしか出来ずにいた。
また、ラゼックやマナもこの壮絶な状況を見て、街を守れなかった悔しさと今の凄惨な状況を見た上での辛さを噛み締める。
「こんなに無力だったんだな……。俺達、何のために戦ったんだろう……」
ラゼックは辛さのあまり呆然と立ち尽くし、その後は暫く黙っていた。
「私、もう見ていられない……。もう嫌だよ……。自分たちのせいでここまでの人を苦しめてしまったなんて……」
マナは泣き崩れてしまい、俯いたままであった。
「マナの気持ちも分かる……。だが、今はこの状況をこれからどうするかを考えるんだ」
「バルティックさん、ありがとう……」
バルティックはマナの方に手を差し伸べて、屈んでいた彼女は手を取り立ち上がった。
「大丈夫だ。こうなったのは、全てが達のせいじゃない。浮遊大陸軍のせいだ。あいつらが……、あいつらが罪のない民間人の犠牲も厭わずに、俺達に攻撃してきたのが悪い……」
悔しさを怒りに変えて拳を強く握るバルティック。何もできないもどかしさにただ悔やむしかなかった。
「今は、俺達にできる事を探して、それを可能な限りまでやろうじゃないか」
「はい、バルティックさん」
「ひとまず暫くの間は、クラークたちの助けを借りられないわけだな」
クラークは今の状況を飲み込みつつ、行動をしようと試みる。
「ラゼック、行こう。何とかして誰かの力になろうと頑張るしかないな」
リュウタはそのまま基地へと戻り、他の兵士達からの指示を受ける事にした。
一方、浮遊大陸軍は既に第二次メガリア攻撃作戦を練っていた。大陸連合軍は辛うじて、首都本部基地を守ることは出来たが、今度はその要となる基地を完全に壊滅させようという作戦である。
そうすれば、メガリア王国は浮遊大陸軍の手に落ちる。
今回の作戦指揮もスレイン率いるオスリクタ隊が行うこととなった。
「ひとまず、今の弱っているメガリア中枢部を狙えば確実にここは占拠できるだろう」
「そうですね。でも、前の作戦で上手くいったからといって、油断は禁物でしてよ」
メナンは口元を手で隠しつつ、スレインを見つめる。
「メナン、スレイン隊長を舐めてもらっては困る」
バウルは目をひそめた。
「ははぁ……。バウルの敬愛ぶりには、参りましたわ」
「とりあえず、まともに従ってくれればそれでいい。作戦は明後日だ」
「はい」
こうして、作戦実行日は刻一刻と近づいていた。
二日後、メガリア王国は早くもイカロスナイト達の修理を完了させた。
そして、その様子を見たリュウタ達に笑顔が戻った。
「四人共、ついに君たちの相棒が元気な姿になったぞ」
「リュウタ!」
「イカロスナイト! 良かったぜ、元気そうで」
イカロスナイトの大きな指にグータッチをするリュウタ。
彼の心にも余裕が生まれた。
「それと、君たちの相棒のMHに新しい武器システムを実装した」
「新しい武器……、そんなものまで開発してたんですか?」
「そうだとも。見てもらった方が早いな」
そして、四機のMHは各々の新たなる武器を実体化させた。
「これが俺の新しい武器、ギガ・ファイアキャリバーだ」
「すげぇ! ファイアキャリバーより大きいな」
ギガ・ファイアキャリバーは通常のファイアキャリバーとは別に作られ、この武器が完成した事により、更に強力な攻撃も繰り出せるようになった。
「俺のは、アクアトライデントだ」
「まるで神話のポセイドンの武器みたいだな」
アクアトライデントは、三つの刃が付いた強力な三叉槍である。
「コイツがサイクロンバズーカだ」
「ライフルの次はバズーカね。それにしても強そう……」
このサイクロンバズーカは、両肩のキャノン砲よりも強力な光線を放つことが出来るのだ。
「俺はツイン・グランドトマホークだ」
「二つの手斧か。随分と小回りが利きそうだな」
ツイン・グランドトマホークは、ブーメランのように投げて攻撃することも出来るのである。
「以上が、こいつらの新兵器だ。新しい武器だけでなく、彼ら自体も大幅に強化してある。これなら浮遊大陸軍に太刀打ちできるだろう」
「ありがとうございます、ゲイリーさん」
「いやいや。礼には及ばんよ」
優しい表情を見せるゲイリー。彼はリュウタ達の笑顔を見て幸せそうにしていた。
しかし、安息の時は一瞬にして断たれた。
”緊急事態発生! 浮遊大陸軍が再びこの地を攻めてきました! 早く行かないと……”
「分かった。四人共、出番だ」
「了解!」
そして、リュウタ達は機体に乗り込み戦闘態勢に入る。
一方、メガリア王国の戦闘部隊は既に交戦状態にあり、激しい戦いを繰り広げていた。
「集中砲火しろ! ゲイリー少佐が来るまで持ちこたえるんだ!」
”分かりました”
この部隊は敵軍のリボルティムやブラスティムと銃撃戦を行っており、瓦礫の山でまたしても悲劇は繰り返されようとしていた。
「まずい! やられる!」
その時であった。イカロスナイトが現れたのは。
イカロスナイトはブラスティムの放った光線を盾で防御した。
「大丈夫ですか! 皆さん」
”ん!? あれはイカロスナイト! 助かったぜ!”
「ここは俺達に任せてください」
イカロスナイトは、早くも大剣で敵の機体を真っ二つに斬り裂いて爆発四散した。
「そんなァ!」
「よし、まずは一機仕留めたぞ! ビームバルカン発射ァ!」
「オーケー!」
リュウタは狙いを定めて遠方の敵にビームバルカンを連射した。
「素早いな!」
”見ていないで、こっちもやるぞ!”
地上部隊も再度攻撃し、敵機動部隊を掃討し続ける。
さらにそこへと、ゲイリー率いる戦闘部隊やラゼック達も合流し、この戦いはより熱を帯びていく。
「クラーク、スプラッシュプランジを使うぞ!」
「オーケー! 任せてくれ」
クラークスピアーの放ったスプラッシュプランジによって敵機をまとめて撃墜することに成功する。
その隙を狙って一機のブラスティムがビームバズーカで狙撃しようと試みる。
「死ね! イカ頭が!」
「させるもんですか!」
その時、マナが肩部のサイクロンキャノンから放たれた光線で敵の攻撃を相殺した。
これを見たラゼックは安堵して息を吐く。
「助かったぜ、マナ!」
”礼だったら、ケルブバスターに言ってね”
マナは優しく微笑む。
「分かった分かった。ありがとよ、ケルブバスター」
”どういたしまして!”
そして、バルティックが乗るミノスソルジャーもこの場に到着し、早速新たな武器であるツイン・グランドトマホークを構える。
「空中にも敵が! これでも喰らえ!」
ブーメランのように投げたトマホークは、敵機に命中した。その直後に敵機は轟音を上げて爆発四散した。
「ミノスソルジャー、いつの間にこんな芸当を……」
「プログラムが書き換わったのさ」
バルティックは自身の相棒の進化に驚きつつも、戦闘を続ける事にした。
ミノスソルジャーは両手に持ったトマホークを時に振り回し、そしてある時は遠距離攻撃用に使いこなし、あっという間に敵戦闘部隊は残りわずかとなった。
「ついに本隊と思しき部隊が接近。全員身構えろ!」
”了解!”
ゲイリー率いるMH戦闘部隊は機銃を構えて、激闘に備える。
そして、オスリクタ隊のバウルとメナンは敵が自分たちの射程範囲内に入った瞬間に高速飛行しながら機銃を乱射する。
「さあ、墜とせ! 俺は接近戦で他の連中を狩る!」
”わかりましたわ、スレイン隊長”
”何としても奴らを全滅させて見せましょう”
二機の空戦特化型リボルティムが素早く光線を放っていき、身軽な動きで空中を飛び回る。
「この機体はデータベースにありません! カスタム機ですか?」
”そうだな。だとすれば尚更上手く狙いを定めないとな”
ゲイリーはビームライフルを構えて連射するも、攻撃は当たらない。
そこにクラークスピアーがゲイリー達を守るように前方に出て、胴部のビーム砲で迎撃する。
「クソッ! メタルクエスターめ! どこまでも邪魔を……」
バウルはこの攻撃に苛立ちながら光線を撃つが、運悪くこのタイミングでビームガンのエネルギーが切れた。
そしてそこへと、ゲイリー達が光線を乱射する。この状況故にバウルも息を呑む。
「まずい! このままでは死ぬのも時間の問題だな」
そして、ゲイリーの光線がバウルの機体右腕部を破壊した。これによりバウルは撤収せざるを得なくなる。
その一方、マナとバルティックはメナンを相手に攻撃を仕掛けていたが、なかなか攻撃が当たらない状況にあった。
「レベル3とはいえ、どうせ素人の乗る機体ですわ。この手で……」
メナンは照準が合った瞬間に光線を撃つが、その攻撃をバルティックはグランドアックスで打ち消す。
「マナ! 早く撃て……」
”分かったわ、バルティックさん”
マナはサイクロンバズーカを構えて光線を一発放った。
この攻撃は見事なまでにクリーンヒットし、メナンの機体は戦闘不能となる。彼女もまた、撤収せざるを得なくなった。
一方、リュウタとスレインは互いの刃を打ち付け合って激しい戦いを繰り広げていた。火花が常に飛び散るような熾烈な終わりなき戦い────
この戦いの勝者は誰か。
「リュウタ、あの機体は接近戦に特化している。ここは敢えてバルカン砲を使うのはどうだ?」
「それが良さそうだな」
リュウタは操縦桿のボタンを押し、ビームバルカンを連射した。
「くっ……! 遠距離攻撃が出来ないのがもどかしい……。ならばこれだ!」
「ウィップクローだな!」
ワイバースレイヤーはスレインに応えるような形で両腕のウィップクローを伸ばし、引き寄せようとするが、イカロスナイトはそれを回避した。
そこからイカロスナイトは、禁じ手を使おうと試みる。
「リュウタ! バーニングスラッシュ・ツバイを使うぞ!」
「でも、それは良くないんじゃ……」
リュウタは心配そうな表情を見せる。
「大丈夫だ。今の俺なら……」
「分かった。イカロスナイトがそう言うなら……。バーニングスラッシュ・ツバイ!」
イカロスナイトの放ったバーニングスラッシュ・ツバイによって、ワイバースレイヤーのウィップクローは切断され、さらに胸部装甲も損傷した。
「これでは再度攻撃しても変わらんな……。撤収しよう」
そして、スレインの撤収によってこの戦いは終わり、リュウタ達は勝利を手にした。
「何とかなったな……」
リュウタは安心からか、思わずゆっくりと一息吐く。
戦闘終了後、リュウタ達はゲイリー達と再度対面した。
「あの、ゲイリーさん」
「どうした、リュウタ」
ゲイリーはやや冷淡な目でリュウタの顔を見る。
「もし良ければ、僕たちと一緒に戦ってくれませんか? そうすれば百人力です!」
「うむ、私も丁度そう思っていたのさ。いいだろう」
彼の返事を聞き、リュウタ達は嬉しそうな表情をした。
「それと……」
「今度は何だ?」
ゲイリーは微かに顔をしかめる。
「僕たちは元の世界に帰るために、今まで戦ってきました。それを実現するためにも、協力していただけますか?」
「任せろ。丁度その件について気になっていたんだ」
「ありがとうございます!」
リュウタ達四人は益々喜び、全員で笑い合う。
果たして、彼らは元の世界へと帰還することは叶うのか。




