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#7. 大袈裟な時って大抵大丈夫ですから

「ほ、ほっほほほれれれれ見よぉ!!我に掛かればこのドラゴンを乗りこなす事など朝魔法前よ!!」

 大かなドラゴンに跨り空を飛ぶ青年。

 彼の名は『フフフッ・ハーーーハッハ・ブッヒャ・ヒャヒャヒャ・ギャーヒャッヒャァ・───ィ!!』元王子である。


 『元』と言うのも、ギグルス帝国の第一王子として次期王位継承者だったのだが、3年の転移事件により自国に帰れなくなった為に王子としての爵位は今現在無いに等しい。

 そんな王子はウィーテネ王国の姫君であるワママ姫に猛アプローチをしているのだった。

 姫との婚姻を結ぶ事が出来れば晴れて王位を取り戻せるからだ。


「いつまで遊んでますの?……そろそろ時間よね?」

 そんな下心を持った男に姫が靡くはずも無く、とても退屈そうにしていた。


「おい!元王子!!そのドラゴンの凄さは十分分かった!!姫様の御身体も冷えて来た。もう帰っても良いな!?」

 そして姫の代わりに姫専属の従者であるイルァが聞こえるように声を上げる。

「そおかぁ!?我は凄いだろぉ!?我に掛かれば朝魔法前よ!!」

 何度も同じ事を繰り返しアピールしている。


 正直凄いのは元王子では無くてあのドラゴンである。

 上に乗る元王子は足を震わせしがみついた居るだけで、ドラゴンが落とさない様に慎重に飛んで見せているだけで手綱の役割など全く果たしては居無かった。


「彼、魔法使えましたの?」

「……王族の血筋ですから……」

 心の中で一応と多分を付け足して姫に答える。


「……城へ戻りましょうか?」

「そうですわね。今日はこの世界の方々がお見えになるんでしたわね。いつ頃だったかしら?」


「この日の朝方に来るとの事でしたので、いつ来ていてもおかしくはありません」

 この世界の時間の測り方は特殊で一日中この空中都市ウィーテネを浮かせている魔力量で計算されている。

 日が登ってからを1日の始まりにし、また日が登り始めるまでを1日の終わりとしている。

 1日に消費される魔力は決まっており、魔力の消費量で現在の時刻を計算している。

 その為日本との時間の計算方法が違いやって来る時間が曖昧になってしまっているのだった。


「我が其方にこのドラゴンの乗り方をお教えしよう」

 彼には都合の良い事しか聞こえて無い様で帰らせる気が全く無い様だ。


「姫様はそんな大きなドラゴンには乗りたく無いと仰せだ。あそこに見える一番小さいドラゴンの乗り方の方を教えろと仰せだ」

「なっ!?大きいドラゴンに乗れた方が良いでは無いか!?あんな小さいワイバーンなど乗って何になる!」


「姫様は高い所が苦手だ。確かにそのドラゴンは優秀かもしれないが、初心者には先ず小回りが利くワイバーンに乗せるべきでは無いのか?それを知っててそこの小さなワイバーンも用意したのだろ?」

「そ、その通りだ!!我が教えれば簡単にこのドラゴンでも乗りこなせると教えたまでの事。あのワイバーンの乗り方を教えるとしよう」


「フフフッ王子お待ちください!!あのワイバーンは気性が荒くまだ誰もちゃんと乗りこなせません!!……一体誰がこんな所に」

 最後の方に小さく呟く元王子の従者。

 勿論あのワイバーンを用意したのは姫の従者である彼女が用意した者だった。


 元王子が今回の事で姫を誘い出した時にイルァに言った一言が『其方が常に姫を護ろれる訳では無かろう。姫にも一人で逃げれる力を付けさせるべきであろう』である。

 姫本人がワイバーンに乗れない理由はあるのだが、姫本人にも身を守る術が必要である事を改めさせられた。

 のだが、この元王子に気付かされた事が気に入らないイルァが用意したのがこのワイバーンであった。


「何を言う!?姫君の前で恥を晒せと申すのか?お前に掛かれば我をあの竜の上に乗せる事など容易いだろ!」

「申し訳ございません。あのワイバーンに乗るだけなら私でもできますが、乗りこなすのは私でもまだ……」


「ならそんな竜を我が乗りこなせば姫君の我を見る目も変わろう」

 王子の目的は姫にワイバーンの乗り方を教える事では無く、自分のカッコイイ所を見せたいだけでこの場を用意している。


「お前のバ術の腕前を我は信じて居るぞ!我が乗りこなす必要など無いのだ。そう見えれば良いだけの事」

「は、はぁ……」

 当の本人はそれが一番難しいという事をまるで理解して無いのだった。


 元々あの王子に時間を掛けるつもりなど無かった為、早々に切り上げる事に。

「いつまで時間を掛ける!?乗って見せるつもりが無いのなら帰らせてもらおう」

「待っておれ!!今乗って見せよう」


「よ~しよし繋がれたままで窮屈であろう?今其方を自由にしてやる代わりに我の言う事を聞くが良い」

「王子この子は翻訳指輪を付けておりません。王子の指輪を触れさせながら口説いて下さい」

 『翻訳指輪』とは魔力を込められた魔道具の一種でその名の通り言葉を通訳してくれる指輪である。


「こ、こうか?其方の目はパチクリしておるなぁ可愛らしいぞ。ん!ん!?其方なんと左目もパチクリしておるなぁ」

「何で左右でパチクリ差が変わる!同じに決まってるだろ」


「おっ!?なんとなんと!!右目なんてパチクリしておるでは無いか!?」

「諄いぞ!!貴様の褒め言葉はパチクリだけか!!後そいつさっきからずっと目を瞑ってるがな!良くそいつの目に気付けたな」


「うるさいぞ!!今我が此奴を口説いて居るのを邪魔するでない!!」

 気性の荒いワイバーンの前で大声を上げてしまった王子。イルァのせいでもあるのだが今のは不味かった。


「あっ、アレ~?何か暖かいぞ?急に暖かくなって来たぞ?姫君これならまだまだ付き合ってもらえるなぁ?」

「フフフッ王子!!動いては駄目ですよ!!そのまま、そのままじっとしてて下さい!」

 気が付けばガブリとワイバーンに手を噛まれている元王子。


「フフフッ、何だ?温かいと思ったら甘噛みなんかしておるのか?可愛い奴だなお・ま・え・は♡」

 噛まれた事に気が付いても動揺しないのは流石と言える。

 人間と竜種が戦えば普通は負ける。

 ましてや元王子は魔法なんてろくに使えないはずだ。

 ここは慎重に行動しなければならない。


「姫様、危ないのでここは離れましょう」

「え?で、でもアレ食べられてますわよ?」


「本人が言ってたではありませんか?あれは甘噛みです。甘噛み」

「けれどあの子とても唸ってますわよ?」

 ワイバーンはいつの間にか「ヴゥゥゥ!!!」と唸り声の様なモノを上げて元王子を睨み付けていた。


「王子、その調子です。落ち着いて下さ~い。全然痛くな~い。『えっ?今何かした?』『ごっめ~ん全然気が付かなかったぁ~』って言いましょうか」

「ふっ、ふっ、ふぅ~。えっ?痛っ何か痛っ!ごっめ~ん本当謝るから!!許してくださいごめんなさい!!」


「慌てては駄目です!ワイバーンの前では落ち着いて~。慌てては格下と思われてしまいます。笑顔で~笑って~ニッコリ~」

「笑顔で!!笑っでっ!!二゛ッコ゛リ゛ィィいいい!!」

 王子は無理やり引き離そうともう片方の手をワイバーンの口に入れる。


「あ゛ぁ!!駄目です!!絶対!それはいけません!!全く、こいつはぁ本当おもしれぇ女っ♡良い子だから離せよずっと一緒に居てやるから♡」

 代わりに従者がワイバーンを口説き落とそうとするもワイバーンは見向きもしない。

「あ゛ぁぁぁぁ!!!左腕も食べられたぁぁぁぁ!!!」

 案の定もう片方の腕もワイバーンに持ってかれる。


「イルァ!?」

「大袈裟な時程大丈夫だったりするんですよ」

 特に元王子は構っ様である。


「あ゛ぁぁぁぁ!!感覚が無い!!右腕の感覚が無い!!噛みちぎられたよコレ!!」

「王子!!上顎を優しく撫でて下さい!!ウチの子はそれが擽ったくて好きなんですよ!」


「無理だ!無理!!感覚無いもん腕無いもん!!」

「……………………そのままそこを動くな!!」

 流石にまずいと判断した私は剣を抜きワイバーンへと向ける。

 魔力を込めワイバーンに切り掛る。

 が、竜種はとても利口な生き物だ。私の剣に危機的状況を感じたのか首を上手く動かし元王子をこちらの方へ投げ飛ばした。


 私は元王子に当たらない様に無理矢理軌道を変えるので精一で剣先はワイバーンに繋がった鎖を切り離してしまった。

「あ゛ぁぁぁぁ!!!ホントに無いよぉ!!我の腕がぁ!!」

 彼の右腕は本当に切断されており少し離れた場所に放り込まれていた。

 本人も本当にちぎれて居たと思わなかったのか、自分の飛ばされた腕を見て気を失ってしまう。


「回復!!回復お願いします!!」

「無理だ!!私も姫様も回復魔法は扱えない!!」


「なら回復ポーション!!」

「王城でなければ無いかもしれん。この3年間戦争や魔族討伐なんて無かったんだポーションの保管期間も過ぎ新しいポーションも作られてはいない」

 戦争が無くなった事での被害がこんな形で現れるとは。


「城なら3分で着けるか……」

「イルァ!!」

 姫様の呼び掛けでワイバーンが飛び立とうとしてる事に気付かされる。


「ブゥ~~~~ヌ゛ァァァァァァア!!!」

 ワイバーンは地面に炎を吐きかけ空を飛ぶ。

 まずい!このままではワイバーンが解き放たれてしまう。


「マリアンヌちゃん」

 元王子の従者が王子を抱き抱えドラゴンへと乗る。


「直ぐに城に向かって下さい!!」

 そしてドラゴンへと指示を出す。

「ブゥァァァァァァア゛!!!」

「何をしている!?」


「ポーションを取りに城に向かいます!!」

「何が『城へ向かう』だ!!あのワイバーンをどうするつもりだ!?」

 私はドラゴンの前に立ち剣を構え飛ぶ邪魔をする。


「ワイバーンは貴方にお任せします」

 任せると言われてもここから城へは近いがワイバーン達が居る竜港へは距離がある。

「今あのワイバーンを対処できるのは貴様の乗ってるドラゴンだけだ!」


「城に着いたら応援を頼みます!なのでそこをどいて下さい!!」

「優先順位を間違えばそいつ以上の被害が出るぞ!」


「では貴女は被害にあったのが王子では無くディーーカッ姫だったら同じ事が言えますか?」

「…………っそれとこれとは」


「この時間が無駄です!行って下さいマリアンヌちゃん」

 ドラゴンはお構い無しに私の方へと突っ込んで来る。


 剣を構えた私の腕は動くこと無くドラゴンを通してしまった。


 私はきっと姫様を優先する。

 現に私は自分がドラゴンに乗り自らがワイバーンを追うのでは無く自分の代わりに追わせる事を考えていた。


「もうすぐ変態の国の人間がやって来ます。姫様はそちらを優先しましょう」

「イルァ……」


 逃げたワイバーンの事は彼らに任せる事にした。

 姫を危険な目に合わせてしまった事を深く反省し、姫を最優先に護りきる為に行動する。


「『変態の国』って何?」


 そして、そのワイバーンが日本からやって来る人間達と遭遇する事になるのであった。

1人フルネームでの本名が明かされました!!

彼の名は『フフフッ・ハーーーハッハ・ブッヒャ・ヒャヒャヒャ・ギャーヒャッヒャァ・───ィ!!』です!!

ギグルス帝国の第一王子にして元王位継承者候補でした。


他にも元王族達が出てくるかもしれませんが、基本的にすぐに活躍するキャラ以外のフルネームは出さないと思います!!



最後まで読んで頂いてありがとうございます。


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