#19. えっ?あっ、はい!訓練ですか?
「はぁ、はぁ……んはぁ」
オレは何故か副騎士団長によって重たい甲冑を纏い訓練場に居た。
姫様に見せる為に行われたこの訓練も、他国の王子であるフフフッ王子と遠くで話し込んで居る様でこちらを一向に見てすら居なかった。
昨日見たイカつい裸の男では無く、従者であるケイナリと言う男だろうか?
『いやぁ、……んと、ぅなん……だっ……て、き……の、闇……組織……』
『の、人間がっ─── 忍び込んで……来た、らしく……てぇ!見た……らしい……ん、…………』
『だよ!』
他の訓練兵に交ざり一緒に走らされていた。
『闇組織……はっ!副……騎士、団……長ぅに』
『よっ……、って……ぜん……い、殺……され、て……った』
『のに!』
先輩達は代わり代わりに隣を走り話し掛けて来る。
『衛兵……も、……みん……なっ』
『凍ら……されて、……った』
『のに!』
かれこれ3時間以上走らされて居るのに会話も足も止まることが無かった。
『ろう……かっ……をっ、悠々っ……と歩、くきっ!』
『宙……をっ、飛ん、で……歩いて、ったっ、て……言うん……』
『だよ!』
この翻訳指輪のおかげで息を切らしながらの話も皆が何を言ってるのかも理解できる。
『つまり……この、……城に』
『幽霊が……で、たっ、……て事』
『だよ!』
城中の廊下が凍らされていたのに関わらず廊下を歩いて居た人間が居るから『宙を飛んでたんだ!』『それはきっと幽霊に違い無い!』と変な噂が広がって居るのだと言う。
「はぁ、はぁ、……はぁ、ボクも、丁度……凍ってる、所を見ましたが……普通に歩けました、よ?」
正確にはスライムをトイレに返しに行く時だ。
氷が侵食したのも地面までだけだった。
時間が経った事で氷の侵食が止まったのだ。
『でも!……便所、の』
『粘液がっ……一体……消え、て、た』
『のに!』
粘液とはスライムの事だ。
『他の、使用人……にっ、確認……させた、ら』
『消えて…………居た、はず……の……ねん……え、きが……元の、位置に………………………………』
これが怪談話だったら話すのは走ってる今では決して無いな。
息を切らしてる所為なのか間を取ってるのか分からないが区切る所が違う。
新人を怖らせたいのか分からないがこれでは怖がる物も怖がれない。
『戻って、たん』
『だy───』
『い゛ゃぁぁぁぁぁあ゛!!!!!』
「「「───っ!!!」」」
聞き耳を立てて居たのか、前を走っていた副騎士団長が声を上げオレ含めた騎士団全員が驚く。
「…………えっ?」
ゆっくりと足を止めたイルァは下を向き最後尾にも抜かされて居た。
「「「…………」」」
『───ぁぁめぇぇぇ!!!!!!走り込み辞めぇ!!剣術訓練始め!!』
『えっ……』
『あっ……』
『おぉっ!』
オレ含めた騎士団一同は呆気に取られるも皆直ぐに腰の剣を抜き一体一になる様に向かい合う。
普段からこの様な訓練をしているのだろう。
『よし!えっ?あっ、はい!!貴様はこの私───』
『イルァ副騎士団長!!良ければこの我がお相手願いたい』
声を掛けられ相手をしようとした所を王子様に取られてしまう。
オレとしても彼女との訓練は避けさせてもらいたい。
『其方専属の副騎士団長を見事この我が倒してご覧入れよう』
『……ならまずそこの新人を倒してみせろ』
自分に振られた勝負を何故かオレの方に渡して来た。
『なっ!?其方は我がこんな新米兵士如きが相手で十分だとでも言いたいのか!?』
凄い言われ様だなぁ……これでも期待の新人らしんだけど?オレじゃ無いけど……。
『今日よりそいつも姫様の専属兵士となった。私と戦いたくば先にそいつに勝ってみろ』
「『専属』?そんな話聞いて無いですけど?何勝手に決めてるんですか!?」
『良かろう。ならば先に其方を倒してくれよう』
「話通じてます?」
『さっきから何言ってるか分からないが其方もやる気の様だな』
「話通じて無いですよ!?翻訳指輪!誰か翻訳指輪付けて上げて下さい!!」
王子は他の兵から剣を取りオレに向けて来る。
「姫様?ボクって姫様の専属なんですか?」
姫様がオレを毛嫌いしてるのは知っている。
姫様の性格からしてもオレを専属の護衛として認めるはずが無く、助けを求める。
『従者の負けは主の負けですわ。負けは許しませんわ』
さっきまでオレの事なんて眼中に無かったはずなのに何故こんな事になったの!?
『正々堂々と参る!!』
そんな事を言いながら何の準備をしてないオレに斬りかかってくる王子。
足をふらつかせてギリギリの所をなんとか躱す。
走らされたばかりでこちらは疲れてるのに負けが許されないとは……。
『中々やる様だな。流石ディーーカッ姫が認めた男だ』
「えっ?あっ、はい!ありがとうございます」
ミハイリ先輩から聞いた話ではフフフッ王子の国は戦争大好きで迷惑な国である。
もしも元の世界に帰れた時の事を考えて城の中でも好きに動けてるとの事。
国が無くても王子に近い身分である。そんな男に勝手も良いのだろうか?
いや、勝てますよ?オレが本気出せば副騎士団長だってちょちょいのちょいで勝てるから!本当だから!!
オレがこの鎧脱げば一捻りで終わっちゃうけど脱がないだけで───。
『くそっ!このっ!!それっ!!てやぁ!!』
王子の剣の振り方から普段から扱っていない事が伺える。
剣の重さに振り回されて全然狙った場所を振れて居ない。
『お、おい!お前!!わざと当たって負けを認める位したらどうだ』
小声で話し掛けて来る王子に耳を疑ってしまう。
先程正々堂々と言っていた男が、副騎士団長に勝負を挑もうとしていた男が八百長を持ち掛けて来たのだ。
「えっ?あっ、いや!無理ですよ!痛いですもん!!」
『よし!では頭に叩き込むから気でも失え!』
そうだったこの人言葉通じないんだった!!
『おい!!聞いているのか!?言葉が通じないのか此奴!?』
「それは貴方ですよ!!」
王子の剣に当たらないオレにやがて疲れたのか動きが止まる。
『どうだ?はぁ、はぁ、はぁディーーカッ姫の専属では無く、我の元に来んか?あやつは我儘で大変であろう』
「……」
『我もディーーカッ姫の我儘にいつも振り回されてるからなぁ分かるぞその気持ち……』
「……」
『あんな呪い持ちに着いて居るよりやがてウィーテネの王になる我の方に着くことこそ利口』
「……貴方は王になりたいが為に姫様を振り向かせようとしてるのですか?」
『おお!!我の下に着く気になったか!?』
言葉が通じない事は分かっているはずなのに、何故かオレの言葉は全て肯定と捉えてる様だ。
自分の小手を外しその手で王子の手首を掴む。
「貴方はとても一生懸命な人なんですね?」
『……ん?何だ?急に!?』
「姫様に自分の事を見てもらおうと頑張ってらっしゃる」
『それが何だ!?我は王になる為に!』
「王様になると言う野望の為に毎日毎日、姫様の我儘に振り回されて───」
『そうだ!!王になる為に彼女の我儘も全て聞き入れて───』
「ボクがこの短時間で貴方の良さをこれだけ知れたんです。姫様にも十分届いて居ると思いますよ」
『何だ一体───』
「次は姫様の事を知っていきましょう。これからは姫様の好きな物を知って、姫様の好きな所を見つけましょう」
『……』
「貴方は姫様のどんな所が好きですか?」
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