#14. 歓迎パーティ
少し遅れながらもパーティ会場へやって来た私にこの会場の人々からの視線が注がれる。
扉が閉まるのと同じスピードで周りの人々が入口からが離れて行く。
「おい、見ろよあれ」
「何しに来たんだ?」
「人が集まる様なパーティには来ないはずでは無かったの?」
もちろん話題も全て私の話へと代わる。
「イルァ」
「はい!姫様」
イルァを先導させ目的の場所へ向かわせる。
人々はイルァを避けるように道を開ける。
「ねぇ、ねぇ、ねぇ、もっとちょうだい!!あのオレンジ色の食べ物!ねぇオレンジの頂戴っ!ねぇオレンジ頂戴!!」
『また?もう30個だよ?……はい』
目的の異世界人の元には何故かライフが一緒に参列していた。
よく見えなかったが異世界人の1人が何かをライフに差し出して居た。
『……いや千賀地君?いつの間に蜜柑そんなに持ってきてたの?ヘリにそんなあったかな?』
『コタツの上にあった蜜柑ですか?違いますよ、あそこから蜜柑を取ったんじゃなくて、私が無くなる度に足してたんですよ』
イルァの先導を受け異世界人達の元へ到着する。
「御機嫌よう変態の方々」
左手で腰に手を当て右手で髪をなびかせる。これがこの世界の作法である。
『いきなりの罵りが凄いなぁ……』
『……?』
「ワイバーンの件ごめんなさいね?私達の所為で逃げられてしまわれましたの。どなたかが捕まえて下さったのでしょ?」
ワイバーンの件はまだ広がって居なかったのか、この発言で更に会場がざわめき出す。
この場に居る異世界人は全部で4人。
同じ見た目の体格の大きい黒服のおじさんが2人とそれに守られているおじさんが1人。と、何故だかライフと仲良くしている青年が1人。
青年はさっきの兵士と同じでさっきから目を瞑って立っている。この方は……違いますわね。
「イルァ2人のどなたかしら?」
私は黒服の2人のどちらかに当たりを付ける。
「……失礼ながらどちらでも無いかと。話によりますと相手は若い男性で手から食べ物を出す呪い持ちとの話です」
『呪い持ち』この言葉にも周囲が反応を示す。
「姫様?いきなり、現れて、何の、様、です……?んぐ」
ライフが見た事の無い食べ物を食べながら話に割って入って来る。
「それが謝る、態度、なんですか?危うく、異世界人に……もぐ、怪我を、負わせる所、だったん……ですよ?」
「貴様こそ態度に気を付けろ?姫様の前で口に食べ物を詰めて話しをするな!」
ライフとイルァが互いに魔力を手に宿し威嚇し合う。
「あら?私何か粗相致しまして?」
「『呪い持ち』だ、何だって、あんたが、言うん、ですか?」
「貴様!!姫様が呪い持ちだと言いたいのか!?」
「そんなの、皆、思ってる、事ですよ?何を、今更!言って、るんですか?」
ライフは当たりを見回す。
周囲の人間が私に近付か無い事がそれを物語っていた。
「あら?魔法の存在しないこの世界で物を作り出すその現象をなんて説明致しますの?」
そもそも呪い持ちと言う単語を出したのはイルァである。
だが、従者の発言は全て主の発言に直結してしまう。
「知らないん、ですか?異世界、では、それを───ミカン、と言うんですよ」
「ミカン……ですの?」
『違う……!』
総理の小さなツッコミがこの場の誰にも届か事は無かった。
「ミカン……ミカン、やって!めっちゃ美味しいから!!」
「あら貴方がミカンを見せて頂けますの?」
と言う事は、この方がワイバーンを……。
『…………』
男はこちらに笑顔を向けるだけで何も出さない。
「貴方私を馬鹿にしてますの!?」
「おい貴様!!姫様の言葉が通じないのか!!」
イルァは腰にたずさえた剣を抜き青年に向ける。
『ちょっ!ちょちょちょ、待って下さい!!彼指輪付けて無いんです!!』
異世界人の位の偉そうな人がイルァとの間に割って入ろうとするも男2人に押さえられ動け無い状態だ。
指元を確かめると確かに私とは違う指輪が付けられていた。
異世界人に渡された翻訳指輪は全部で2つ。
目の前のおじさんと、黒服の片方がそれぞれ身に付けて居た。
「言葉が通じなのかっ!?だっ、だが!こいつ先程からライフと仲良さそうにしていたでは無いか!」
「いや、僕、も、付けて無い……ん……よ」
この2人、互いに言葉が通じて無いのに仲良くなっていたのだ。
『千賀地君、千賀地君!この人にミカンだして上げて』
『えっ!?ミカンですか?無いですよそんなの……』
『えっ!?だってさっきからずっと出してたじゃんっ!!』
『ですからそれで終わりです。30個も出せばそりゃあ無くなりますよ』
2人がライフを見渡すと渡した蜜柑の残り1つを食べていた。
『……じゃあ!他に手品できない?』
『手品ですか……?』
通訳を終えたのか男が一歩前に出る。が、それをライフが手で制する。
『ん!?ミカンならさっきあげたでしょ?』
「その、位置で、やって」
そしてその言葉をおじさんが彼に伝える。
『では……はい。どーぞ』
どうやったのか突然何も無い手のひらから花の様な食べ物を出した。
男は直接私に渡そうとするのをイルァが間に入ると更にもう1つ出して見せた。
「良い香りですわ……」
『そちら薔薇と良います』
男がミカンによって出した花の様な食べ物の名前はバラと言う様だ。
「んぐんっ……まぁ、思った程の美味しさでは無い、な」
イルァが薔薇を食べてみてせ毒味を終えてから続けて口に運ぶ。
『え───っ!!待って食べないで下さい!!』
男は突然私に手を伸ばし薔薇を取り上げる。
「きゃっ───っ!!」
驚いた衝撃で後ろに下がりテーブルに捕まるもテーブルクロスにより滑り転倒してしまう。
テーブルの上に置かれていた食べ物や飲み物がこちらに倒れて来る。
が、男が私に覆いかぶさり代わりに汚れていた。
『申し訳ございません。お召し物が汚れてしまわれましたね』
男が立ち上がり差し出した手を私はじっと見つめる。
だが、ライフが私から彼を引き離す様に後ろから引っ張る。
「その人に、触れてはダメだ!」
男はポカンとした顔でライフに振り返る。
「姫様大丈夫ですか!?」
イルァがしゃがみこみ尋ねて来る。
周囲の人々から小さな笑い声が聞こえてる。
「……え、えぇ。ドレスが汚れてしまいましたわ。帰りますわよ」
自分で立ち上がりすぐにその場を後にする。
「ったく、自分の服の、心配だけですか?」
「ほらやっぱり、呪い持ちだわ……」
「せっかくの客人になんて事を……」
ライフだけでなく周囲の人間がこの国の姫を避けている。
「ミカン、あの人に近付くな───」
〈良いか?新入り、あの方には絶対近付くなよ───〉
ライフの言葉と先程の兵士の言葉が重なる。
〈───近付いたら、呪われるぞ〉
周囲の人間が誰も近付かないのを、影で呪い持ちと嘲笑っているのを知っている。
「何事だ?騒がしい……」
「ワママ姫!今お見えになられたのですか?」
「オージ様!───お父様……」
後ろから掛けられた声に振り返ったそこには、今一番見せたくない2人の姿が。
「遅くなってすまなかった。遥々我が国にお越しくださり誠に感謝する」
国王陛下は自分の娘よりも異世界の人間の方を優先し声を掛ける。
「ワママ姫どうなさいました!?せっかくのドレ───」
「私気分が優れませんの!」
オージを振り切り急いでこの場から離れる。
決してオージは追いかける事が無く、異世界人の元で立ち止まって居る。
「姫様!!」
イルァが国王とオージに軽く挨拶するのも待たずに会場のドアを開け外へ。
『おおっ!?』
驚かれると思って無かった私はその拍子でまた転びそうになってしまう。
けれど、兵士の彼は先程と同じ様に私の身体を支え受け止めた。
〈─── 呪われるぞ〉
《───そう、なんですか?》
先輩の兵士に忠告されたのにも関わらず彼は。
『御怪我はありませんか?』
汚れたドレスにも構わず彼は私の身体をそっと優しく支えた───。
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