クラスのかわいい女子が、クラスのすみの彼にだきついた
私の家にはお母さんしかいない。
お母さんはけっこうお仕事が大変で、だから私はよく、お姉ちゃんと二人でご飯を食べる。
お姉ちゃんは勉強で忙しいと思うのにご飯も作ってくれて、ほんとうに優しい。
ある日、夕ご飯の肉じゃがを食べながら、私はお姉ちゃんに相談した。
「ねえ、お姉ちゃんは彼氏さんにどうやって好きって言ったの?」
なんで私がこんなことをきいてるのかというと、私に好きな人ができたから。
「えー、私はね、けっこうだいたんだから、いきなりだきついたよ」
「え、そうなの? それって、効果あるの?」
「あるある」
なんかじょうだんっぽかったけど、でもお姉ちゃんのアドバイスだし、私は感心してうなずいた。
そしたらお姉ちゃんが、
「好きな人できたのかな?」
そうきいてきたから、なんか恥ずかしくて、あわてて、
「そんなことはないよっ」
と言った。ひさしぶりに、お姉ちゃんにうそついちゃった。
私が好きになったのは、同じクラスの男の子。
私たちのクラス、三年二組の教室に入ると、すみに座ってる。
すみに座ってなくてもすみにいそうなタイプで、だけどとても優しいし、けっこうかっこいいところある。
だから……私は好きだし、がんばって話しかけたりしてる。
けどとくになんにもおこらないから、やっぱりお姉ちゃんの言う通り、だきつくくらいしたらいいのかな。
わかんないけど、わかんないことをやってみるのは、早めのほうがいい。
お姉ちゃんと話した次の日に、そう決めて教室に入る私。
なんと超チャンス。
教室に、わたしの好きな男の子しかいない。
よし……びっくりさせるのが好きな友だちのノリで近づいて……
えいっ。だきついた。いがいとちいさい。
「うわっ」
ふりむいた。
か、かおちかい。
けどそれは私がだきついたからだよね。
「び、びびった……おはよう」
「お、おはよう」
とても近くでのあいさつ。
……どきどきしてたりしないかな。
私はすっごくどきどきしてる。それにくらべたらちょっとだけでもいいよ。
だって私はね、好きって思ってだきついたんだから。
わたしと一緒にどきどきしてほしいな。
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