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学院の魔女の日常的非日常  作者: 只野誠
日常と年越しと再び訪れた者
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日常と年越しと再び訪れた者 その6

 火のはじける音がする。

 その音でミアがうたた寝から目覚める。

 簡易寝台を天幕の中央、焚火のそばに寄せて、まさに惰眠をむさぼっていた。

 ミアが目をこすりながら身を起こすと、スティフィも身を起こした。

「スティフィ、ちゃんと寝てました?」

 と、ミアは自分に合わせる様に起きて来たスティフィに声をかける。

「少しは」

 と、眠そうな声でスティフィは返事をした。

 こちらの天幕の中には、ミアとスティフィしか今はいない。

 焚火の火が少し弱くなっていたので、ミアは新しい薪を焚火に付け足してから、他の者を求め天幕から出る。

 天幕を出た瞬間、外の冷気がミアを襲い、ミアに身震いをさせる。

 こちらの天幕からカマクラを挟んで反対側に新しい天幕が建てられていて、そこから笑い声が聞こえてくる。

 ミアがそちらに行こうとすると、

「え、行くの?」

 と、スティフィが嫌そうに聞いてきた。

 デミアス教の仇敵である太陽の戦士団の天幕にはスティフィは行きたくないようだ。

「今は停戦中なんですよね?」

 ミアはそう答えて、スティフィの手を引いて、無理やり新しい天幕に向かう。

 ミアに手を引かれスティフィも渋々付いていく。

 天幕へと向かう途中で、荷物持ち君が門番のように前に立っているカマクラの中をミアが覗くが、中には誰もいなく鍋だけが火にかけられていた。

 もう結構な時間、カマクラの中で火がたかれているようだが、このカマクラが溶け出す様子はまるでない。

 ミアはカマクラの天井に彫り込まれているマジナイに気づけてないので、少し不思議に思うがそう言うものなのだろうと特に気にはしない。

 新しく建てられた天幕の入り口の布をミアは遠慮なくめくる。

 暖かさと共に酒臭い匂いがミアの顔にかかる。

 酒盛りが行われいて、マーカス、エリックは既に酔っている。恐らくはローランの部下、彼らとともに笑いながら酒を酌み交わしている。

 マーカスとエリックがミアとスティフィに気づき手を振る。

 それに手を振り返しつつ、天幕内をミアは見回す。

 ローラン教授、ルイーズ、ジュリー、ブノアはそことはこの天幕の支柱を挟んで反対側に集まって話している。

 そちらは酒を飲んではいないようだ。

 とりあえずミアはマーカスとエリックにもう一度、手を振り返した後、酔っていないローラン教授のほうへと足を向ける。

 ミアも酔っ払いに絡まれるとろくなことにはならない、ということくらいは心得ている。

「やあ、おはようございます、ミアさん」

 最初にローラン教授がミアとスティフィに気づいて挨拶をする。

「おはようございます」

 と、ミアが返事し返すが、ミアに手を引かれているスティフィは不愛想にしているだけだ。

 ミアはそのままルイーズの隣まで行き、開いている席に腰を下ろし、スティフィも無理やり隣に座らせる。

「何をしているんですか?」

 そして、ここで火を囲んでいる人らにミアはそう聞いた。

 火といっても焚火ではない。暖房器具、移動式簡易暖炉、ともいうべき金属製の器具で中で薪を燃やして暖を取るものらしい。

 天幕内で使うならこっちの方が便利そうだとミアは思う。

 エリックが持ってきた天幕も十分凄く、煙突もついてはいるが、薪を燃やしたときの煤がやっぱり出ており服などを黒く汚してしまっている。

 こちらの暖房器具であれば、その心配もなさそうだ。

 ただエリックの天幕は焚火を囲うように竈を設置してあり、焚火の火をそのまま利用できるような作りになっている。

 一長一短かもしれない。

「シェルム油についての話ていました」

 ルイーズが嬉しそうに笑顔で答えた。

 その笑顔からは、うまく話はまとまったように思える。

「あの油、凄いですよね。天幕内があの油のいい香りでしたよ。鹿を捌いたり、料理してたのに凄いですね」

 あの油の香りのおかげで、ぐっすりと食後の安眠ができた、とミアも笑顔を浮かべる。

「まあ、ジュリー様の話を聞く限り、売れるほど取れなさそうなのですけどね、現状だと」

 なので、ルイーズがシェルムの木を植林するための資金提供の話までまとまっている。

 シェルムの木は荒れ地でないとうまく育てられなく、またその実も少量しか取れない。

 ジュリーの話では同じシェルムの木が近くにあると、その木は実を付けなかったり成長を止めてしまったりするらしい。

 そうすることで荒れ地で生き抜いてきた木なのかもしれない。

 ただ、そうともなると生成できる油の量も少ない。

 市場に出回るとしても本当に少量しか出回っていなかったものだ。

 またあまり出回っていないため詳細を知る商人も少ない。

 今回はエリックが運よくそれを手に入れられただけだ。

 ただこの油の品質はとても高く、荒れ地ばかりのアンバー領ならでの産業になる可能性はある。

「しょ、少量でも買っていただけるなら、うちは大助かりですよ」

 ジュリーは口には出さないでいるが、ローラン教授の話ではこの油が銀と同価値である、とまで評価してもらっている。

 少量でもそれほどの価値で売れればアンバー領にとってはいい収入源となる。

「これほど品質のいい油なら、私も投資する価値は十分にあります。まあ、この話はこれくらいにしておきましょうか」

 ローラン教授もルイーズ同様に、アンバー領への資金提供を、まだ口約束ではあるが既にしてくれている。

 ジュリーからすれば一気に未来が開けたような気分だ。

 年末年始に雪山へ行くと言われたときは、正直また面倒ごとに巻き込まれたと考えていたが、案外ミアは自分にとって幸運の象徴なのかもと、今は思っている。

 何よりルイーズやサリー教授と親しくなれたことが何よりも大きい。

 いろいろと心労の溜まるエルセンヌ教授を見限って、サリー教授への本格的な師事に乗り換えるのもありかと本気で思っている。

 シェルムの木を植林するにしても、サリー教授の持っている自然魔術の知識は大変役に立つはずだ。

 ローラン教授とルイーズの支援を受ける以上、アンバー領的にも失敗はできず、むしろそのことが必須なことのようにジュリーには思えてくる。

 魔術学院の職員も悪くないが、アンバー領に帰って農園主になると言う未来も悪い話ではない。

「はい、ローラン様」

「では、ルイーズ様を仲介していただくということで」

 ジュリーは確認するように、それでいて嬉しそうにそう言った。

 それを聞いたスティフィがニヤリと笑って会話に入ってくる。

「お姫様を仲介せずに直接売ればいいじゃない」

 それと言われたジュリーは驚いた表情を見せ、ルイーズの表情を伺うが、ルイーズはまたかといった表情を浮かべているだけだ。

 けれども、ジュリーは慌てて、

「うちの領地には長距離運搬に耐えうる船もないんですよ、ルイーズ様の申し出はまさに渡りに船なんです」

 と、反論する。

 もしルイーズが手を引いてしまったら、アンバー領の未来が閉ざされてしまう気さえジュリーにはしている。

「あー、うん、そこまで貧乏なのね……」

 スティフィも、ジュリーの必死さを感じ取り、そこまでひっ迫しているのかと、少し哀れに思う。

 そのやり取りはミア達にとってはいつものこと言えば、いつものことなのだろうが、このままではまずいとローラン教授は思ったのか、話を変える。

「話は変わりますが、ミアさんの杖をお見せいただいてもいいですか?」

 その言葉にミアは少なからず驚く。

 だいたいの教授はその杖を一目見る限り、触れようともしない。

 その杖は選ばれた者以外が触れれば災いをもたらすのが見ればわかっているからだ。

「古老樹の杖をですか? サリー教授やマリユ教授の話だと、私以外が持つのはお勧めしないと……」

 恐らくは杖が盗まれることを防止するために、古老樹の朽木様が施した強力な魔術がかけられている。

 ミア以外が触れれば何が起こるか予想すらできない。

「ええ、それでもあなたの守護者の許可が下りれば平気なのでは、と思いましてね」

 ローラン教授は穏やかな表情でそう言った。

「荷物持ち君ですか?」

 ミアもそう聞き返しつつも、たしかに朽木様の子である荷物持ち君の許可が下りれば、平気そうに思えてくる。

「はい、ここに呼んで頂いても構いませんか?」

「いいですが、汚してしまうかもしれませんよ? 全身泥ですので」

 ミアはそう言っているが、今の荷物持ち君の体は凍てついていて、周りに泥をつけるようなことはない。

 だから、荷物持ち君が造ったカマクラにすら泥がついていないのだが、ミアはそのことに気が付いていない。

「ええ、構いません。そもそも上位存在の方です。敬わなくてはならない存在です」


「ということで荷物持ち君、ローラン教授が古老樹の杖を少しご覧になりたいそうなのですが、いいですか?」

 荷物持ち君は少し悩んだ後に頷いた。

 そして、背中の籠から杖を取り出し、それをミアに差し出す。

 ミアはそれを受け取り、恐る恐るローラン教授に渡す。

 ローラン教授は杖に向かい、一礼をし拝んでから丁寧にそれを両手で丁寧に受け取る。

 そのまま、ローラン教授は古老樹の杖を目を細め観察する。

「やはり間近でみると、この杖の偉大さがよくわかります。確かにこれは選ばれた者以外が手にしてはいけない物ですね。ありがとうございます。お返しいたします」

 ローラン教授はすぐに古老樹の杖をミアに返した。

 そして、少し苦しそうに片手で目頭を押さえた。

 たとえ許しがあったとしても、その杖は選ばれた者以外が持つことはままならないようだ。

「大丈夫ですか?」

 ミアが心配して声をかける。

「はい、しかし、これ以上は本当にまずいですね。許しがあってこれとは想像以上でした」

 想像以上の杖からの反発にローラン教授も驚いている。

 朽木様と呼ばれる古老樹の力の強さに圧倒されている。

 そんなローラン教授にスティフィが追い打ちをかける。

「で、実際に手に取って見た結果、あんたの持っている触媒と、どっちが上よ?」

 ニヤニヤと笑いながら、スティフィはそんな言葉をローラン教授に投げかける。

 どちらが上かスティフィにはわかっているからだ。

「中々厳しいことを聞きますね。私の授かった光輪の剣との比較ですか。魔術出力だけなら光輪の剣が若干勝っているかもしれません。それ以外はすべて古老樹の杖のほうが勝っています。そもそも契約破棄で破壊されない触媒など規格外すぎますよ」

 ローラン教授は思っていることを正直に口にした。

 もっとも、剣としても使える神器と比べるのもどうかとは、ローラン教授も思うのだが、使徒魔術の触媒という点では、光輪の剣よりも古老樹の杖のほうが優れているのは確かだ。

「だってよ、ミア。太陽神より授かった神器の触媒よりすごいんだってよ」

 スティフィは得意そうな笑みをローラン教授に見せつけてから、ミアに笑顔を向ける。

 スティフィは本当に気分がよさそうだ。

「ええ、特に触媒として一番重要な魔力容量が違いすぎます。流石は古老樹が自分の体を用いて造られた触媒ですね」

 そんなスティフィに対して、ローラン教授は特に気分を害することもなく、淡々とではあるが、少し嬉しそうに自分が感じた事実を述べる。

 魔術出力が魔術の強さに関連するとしたら、魔力容量はどれだけ多くの魔術や複雑な魔術を契約できるか、またその使用回数の最大値を決めるようなもので、触媒の良し悪しはその魔力容量で決まると言っても過言ではない。

 古老樹の杖はその魔力容量が桁違いに高い。

 これは魔力を大量に貯蔵している古老樹ならではの特性かもしれない。

 その上で、契約破棄されて触媒を壊されても再生するという破格の性能を持っている。

 その性能は唯一無二のもので、世界一の使徒魔術の触媒であると言っても過言ではない。

 ただそれを、ローラン教授があっさり認めてしまったことに、スティフィは拍子抜けする。

「随分とあっさり認めるのね」

「ええ、事実は事実です。私はダーウィック教授に対抗するために呼ばれたようですが、私ではあの方には遠く及びません」

 と、ローラン教授は少し困った表情を浮かべ、そんなことまで口にした。

 太陽の戦士団の戦士長の一人がそんなことを口にすると言うことは、デミアス教に対して太陽の戦士団が敗北宣言したようなものだ。

 スティフィの顔に隠し切れない笑みが浮かび上がる。

「え? ええ、それはそうでしょうけど、それも認めちゃうの?」

 流石にスティフィも信じられないとばかりに聞き返すくらいだ。

「魔術師としての器が違います。私も神童だ、なんだと幼き頃よりもてはやされてきましたが、上には上がいるものです。今が停戦の時代でホッとしているくらいですよ」

 その言葉で、スティフィも少し冷静になる。

 今は停戦中なのだ。しかも、それは神々が取り決めた停戦なのだ。

 一介の一信者だけの存在であるスティフィが気に入らないからと言って、喧嘩を売り争いを初めていいわけがない。

 それは主である暗黒神の顔に泥を塗る行為でもある。

「なによ、あんた思ってたよりいい奴じゃない」

 そう言って、スティフィも態度を軟化させる。

 それと共に、スティフィの警戒が解け、辺りに隠れていたが確実に存在していた緊張感が薄れていく。

 ローラン教授の部下、今は立場的には助教授の者達も緊張を徐々にではあるが解いていく。

「スティフィ、意外とちょろいですね」

 何もわかっていないミアがその様子を見て、スティフィをからかう。

「う、うるさい!」

 と、スティフィが珍しく顔を赤らめてミアに反応した。


 そのまま太陽の戦士団の天幕で話し込んでいたミア達に、エリックが葡萄酒を入れた杯を持って近づいてきた。

「スティフィちゃんにジュリー先輩も一緒に飲もうぜぇ? へへへっ、あぁ~、ミアちゃんとルイーズ様には少し早いかぁ?」

 そう言って絡んできそうなエリックの手からブノアが杯を受け取り、それをスティフィに手渡す。

 その後、軽くではあるがエリックを慣れた様子で殴りつけて、そのまま昏倒させる。

「どうやら眠いようなので、むこうの天幕に寝かしつけてきます。それと、ルイーズ様はお酒を口にしないように」

 そう言われたルイーズは頬を膨らませた。それを見たブノアは軽く微笑み、エリックを運びこの天幕から出ていった。

「手際が良いわね」

 少し呆れながらスティフィがそう言って、

「ええ、ブノアですからね」

 と、ルイーズは得意そうな顔をしながら答える。

「スティフィ、スティフィ、それ葡萄酒ですよね? 美味しいですか?」

 ミアが興味ありとばかりに葡萄酒が並々と注がれた杯を見ている。

「えぇ…… ミアには早いと思うわよ。まず甘くないからね?」

 そう言って、ミアに匂いを嗅がせるようにミアの鼻先に杯を持ってくる。

「なんかすごい甘そうに見えますけど、一口! 一口飲ませてください!」

 匂いを嗅ぎながらも、どう見ても甘そうに見えるミアはそれを飲んでみたくて仕方がない。

「いいけど、とりあえず一口だけにしときなさいよ? ミアが酔っぱらったら大変なことになりそうだし」

 人は酔えば本性がわかるという。

 なら、ミアが酔えばどうなるか、スティフィは興味があるのだが、それ以上に歯止めが効かなくなったミアが恐ろしくスティフィには思える。

 大精霊がついているミアが酒で暴走したら、この場にいる全員で挑んでもそれを止めるのは不可能だ。

 それに大精霊だけではない。荷物持ち君もいるのだ。

 ミアの命令一つで大惨事になる。

 どちらも人間ではどうあがいても対処できない相手だ。

 命がいくつあっても足りないようなものだ。

 とてもじゃないが、酔ったところを見たいから、と言う理由でミアを酔わせようとは思えないし、酔ったミアが厄介そうなのはスティフィじゃなくても、普段のミアを知っていればなんとなく予想ができる。

「そもそも一度酔ってみたかったんですよ! 酔ってる人みんな楽しそうですし!」

 その言葉にスティフィはあからさまに嫌な顔をする。

 ミアがそう口にすると言うことは、今は違うかもしれないが、そのうちミアが泥酔するまで酒を飲むことになるかもしれない。

 その時は覚悟を決めなければならないと、スティフィは唾をゆっくりと飲み込んだ。

「まあ、いいけど。ほら、まずは少し舌につけるだけにしなさいよ、ごくごく飲んだらダメだからね?」

 そう言ってスティフィは葡萄酒の入った杯をミアに手渡す。

 甘そうだから飲みたい、と言っている今のミアなら、酒の味を好きになることはないだろう。

「はいはい、わかりましたよ。で、では…… うぇ、渋いですよ…… なんでこんなもの好き好んで飲んでるんですか」

 想像通りの反応に、スティフィはホッとしつつも、楽しそうな笑みを浮かべる。

「だから、言ったじゃない。ミアには早いって」

「見た目は甘そうに見えるのに、こんな渋いだなんて……」

 ミアは杯をスティフィにつき返して若干だが咽ている。

「スティフィやジュリーは飲めるんですか?」

「ええ、私は好きよ?」

 そう言って、スティフィはまずは葡萄酒の香りを楽しんだ。

 その香りはとても上品な香りだ。

「あんまり得意ではないですが、なんだかんだで飲まされる機会は多いので」

 貧乏領主の娘とはいえ、そういう場に出ることは多いジュリーはなんだかんで酒を飲まされることはある。

 ただジュリーは酔いもしなければ、それを美味しいと感じることもない。

「ジュリーもお姫様ですもんね。なんとなくわかります。スティフィはなんでこんなもの飲むんですか?」

 香りを楽しみ終わったスティフィが少しだけ、味わうように葡萄酒を口に含む。

 そして、その口当たりの良さに驚く。

「これ、エリックが持ってきてたやつじゃないわね、かなり上物じゃない?」

 エリックが持ってきた葡萄酒は学院の購買部で売っている、言わば魔術や祈祷の触媒用の葡萄酒で味は二の次で造られたものだ。

 それはあまり美味しい物ではない。

 だが今飲んでいるこれは非常に口当たりがよく味もまろやかで上品な味わいをしている。

 ミアは渋いと言っていたが、スティフィにはそれほど渋いとは思えない。

「ええ、そうですよ。西側で造られた葡萄酒です」

 ローラン教授が笑顔でそう答える。

「あっちは葡萄の名産地ですものね、それでもかなり高級品じゃないの? それをエリックの奴ガバガバ飲んで」

 警戒を解いたスティフィはローラン教授にも普通に接し、そんな軽口まで言う。

「そういう行事ですので。私もそろそろ飲み始めなければいけない頃合いですね。お酒が苦手な方はこちらにいてください。向こうに行くとお酒を勧められますので」

 ローラン教授はそう言って立ち上がり、酒盛りしている集団の方へ歩いて行った。

 これはただの酒盛りではない。

 太陽の戦士団と言う一大宗教の年末年始の行事の一つなのだ。戦士長の一人であるローラン教授が参加しないわけにはいかない。

 スティフィは空になった杯を片手に、酒盛りしている一団を物欲しそうに見つめた。

「スティフィ、お酒飲みたいんなら行ってきたらいいじゃないですか、私はもう少し想像してた味との差に打ちひしがれています」

 ミアは酒を飲みたそうにうずうずしているスティフィにそう声を掛けた。

 そうするとスティフィは珍しく分かりやすく顔を明るくさせた。

「そ、そう? じゃあ、少しだけ頂いてこようかしら」

 そう言ってスティフィも、そそくさと立ち上がり酒盛りしている中へと入り込んでいく。

「なんで、あんな渋い飲み物をありがたがって飲むんですかね」

 と、ルイーズは腕を組みながらそんなことを口にした。

「大人になると美味しく感じるようになるって聞きますね」

 ジュリーはそれに同意するように頷きながら、そう答えた。

「ルイーズ様はなんで口にしたらダメなんですか?」

 ミアはそれよりもブノアが言っていた、ルイーズ様はお酒を飲まないように、と言う言葉が気になっている。

「い、いいじゃないですか。そんなこと」

 そう言って、顔を赤くしてルイーズが答えているのを、戻って来たブノアが微笑ましそうに眺めていた。





 万が一、いや、千が一、百が一……

 十が一、誤字脱字があればご指摘ください。

 指摘して頂ければ幸いです。

 少なくとも私は大変助かります。


 あと感想などいただけると大変励みになります。

 さらに、いいね、評価、レビュー、ブックマークなどもいただけたら幸いです。

 その際には、一人嬉しさのあまり部屋で壁に腰をぶつけながら踊り狂います。




 その他の小説の進捗は、活動報告からどうぞ!



 

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