滅んだ村の儀式と彷徨い迷う者 その4
ミア達が滅びた村で迎えた初めての夜だ。
村の周辺には燻製肉の匂いに釣られて、数匹の外法、外道種と呼ばれる者達が集まってきていた。
子供くらいの背丈だが、身長の半分ほどの大きさを占める大きな頭部が特徴的だ。
その大きな頭部の半分ほどを占める大きな口には、たくさんの牙が様々な方向に生えている。
それの姿を見た者は、まず噛み合わせが悪そうだな、そんな印象を受ける見た目をしている。
顔の大きさよりも、牙の生え方の悪さの方が目立つような、それほどまでにでたらめに牙が生えている。
また爛々と目を黄色に輝かせている。
浅黒く疣のようなものがたくさんできている肌を長く鋭い爪でボリボリと掻きながら、その外道種達は滅んだ村の入口までにじり寄って来た。
その名もなき外道達は庭の入口の門で足を止める。
これ以上は外道種達には進むことができない。
この村は神の力で守られているからだ。
腹をすかせた外道種達は、良い匂いが漂ってくる村にどうにか入れないかと唸り声を上げる。
そうすると、村の門から何かがノタノタと出て来る。
それは土の塊だ。
泥で出来た人形だ。
泥の人形に根を下ろす古老樹だ。
ミアの使い魔であり護衛者である荷物持ち君が自らの骨というべき泥の肉体を支えるための特殊な陶器を体の中から伸ばし、それを槍のように構える。
それを見た外道種達も臨戦態勢を取り、威嚇するように荷物持ち君に吼える。
だが、荷物持ち君に威嚇など無意味だ。
古老樹である彼に恐怖など存在しない。
荷物持ち君は機械的に一番近い外道種の大きく開いている口の中へと、その槍を無造作に突き出す。
一瞬のうちに脳天を突き抜かれ、その外道種が絶命する。
それを見て他の外道種が荷物持ち君に襲いかかるが、荷物持ち君は貫いた外道種ごと槍を打ち払う。
物凄い膂力で振るわれた槍は、外道種の大きな頭部同士でぶつかり合い、互いに半分程へこませる。
そして、ようやく初めに突き刺した外道種の頭部から槍を抜き放つ。
外道種達も本能で目の前の泥人形には勝てないと理解していた。
そうわかりながらも仲間の血を見て、その臭いを嗅いで、興奮している外道種達は荷物持ち君に一斉に襲いかかっていく。
「これ、外道種ですか?」
奇妙な生物、その死体を見て、その有様に顔を歪めさせてミアはフーベルト教授に聞いた。
珍しく古老樹の杖をミアが自分の手で持っているが、それは外道種がいたから、という理由からではない。
昨夜行われたサリー教授による修行の、その後遺症という奴だ。
ただ、今はそんな事よりも外道種の事の方が重要だ。
ミアが朝起きて村の門を見に行くと、門の外には外道種達の死体がいくつも横たわっていたのだ。
どの外道種の死体も原型をとどめていない。
大きな頭部を凄まじい力で潰されているように思える。
ただ中途半端に人型をしているので、見ていてあまり気分の良いものでもない。
「そうですね」
フーベルト教授はミアの問いに答え、外道種の種類を特定しようと試みるが、少なくともこんな外道種はフーベルト教授の知識の中にもない。
魔術学院にある外法図鑑を調べれば載っているかもしれないが、流石に持ってきてはいない。
あれは巻数がとんでもなく多いのだ。とてもじゃないが全巻を持ち運べるものでもない。
そもそも、外法、外道種と呼ばれる種族は、世界の法に寄らず独自に進化した種でありその在り方は数が限りないほど存在する。
闇の小鬼のように有名な種もいれば、名前すら付けられていない種も多く存在する。
恐らくこれらの外道種は名前も付けられていないような、そんな外道種だ。
「なんて奴?」
スティフィがそう聞くと、フーベルト教授は少し難しそうな顔をした後、答える。
「わかりません。恐らく名もつけられていない外道種でしょう。危険ですので死体や血には触れないようにお願いします。毒があるかもしれませんから」
外道種は存在自体が世界にとって毒、そう言う考え方もある。
その考え方があっているかどうかはわからないが、多くの外道種の血や体液は人にとって、いや、世界にとって毒となるものが多い。
「はい、わかりました。触らないように気をつけます。これ、荷物持ち君がやったんですか?」
ミアにそう聞かれた荷物持ち君は体全体で頷いて見せてくれる。
泥人形の荷物持ち君に無論表情などはないのだが、どこか誇らしげだ。
「ありがとうございます。でも、毒かもしれないので荷物持ち君のほうで片してもらっていいですか?」
再度ミアが聞くと、荷物持ち君も頷き、荷物持ち君は外道種の死体を片し始める。
荷物持ち君は外道種の死体の近くに穴を掘り始め、その中へと外道種の死体を投げ込み、しまいには埋めてしまっている。
自然の守護者と言われている古老樹が、そうするということは恐らくは毒を持っている外道種ではないのだろう。
少なくとも周囲の植物に害をなす毒は持っていないのだろう。
そこへエリックがやって来て、外道種の死体を見て強く感心する。
どの死体も見事なまでに一撃で頭部を破壊している。
戦いらしい戦いではなく一方的な殺戮だったに違いない。
「うへ、すげぇな。荷物持ち君に稽古つけてもらったら強くなれるかもな」
エリックは何も考えずにそんなことを口にする。
それを聞いたミアが、外道種を埋めている作業をしている荷物持ち君を見ながら、
「頼めば教えてはくれそうですけど……」
と、呟く。
恐らくミアが頼み込めば、エリックに戦い方を教えてくれることだろうが、それにエリックがついて行けるかどうかはまた別の話だ。
「やめときなさい、そもそも根本からして人とは違うんだから」
スティフィはそう言って、ミアとエリックを止める。
基本的に、どの上位種と呼ばれる種も人に力を貸してはくれるが、何かの技術を人に授けてくれるのは神族だけだ。
それ以外の上位種と呼ばれる者達が人相手に何かの技術を教えることは非常に稀だ。
それが魔術と呼ばれる技術でなくともだ。
「それもそうか」
と、エリックもスティフィの言葉に納得する。
エリックとて古老樹に戦い方を習った人物など聞いたこともない。
「私に…… 教えを乞うておきながら…… 他の人にも…… 乞うんですか?」
エリックの背後にそっとまわりこんで、サリー教授が少し恨めしいようにそう言って来た。
それに身を震わせてエリックは必死に弁明する。
「あっ、いや、そんなことなです! サリー教授! 今日も修行の方おねがいします!」
あのエリックがサリー教授を恐れているのだ。
たった一回の修行をしただけでだ。
しかも、その修業は別に厳しい物だったわけでもない。
ただ盾と竜鱗の剣を構え、数時間そのままの状態を維持するといっただけの物だ。
けれども無論それだけでない。
エリックが気を抜くものなら、すぐにサリー教授は凄まじいほどの殺気をエリックに向け、無理矢理にでも気を引き締めさせたのだ。
本当に殺されるのではないか、そんな殺気を浴びながらエリックは構えを数時間程維持し続けさせられた。
今までしてきたことがない修行とサリー教授から発せられる尋常ではないほどの殺気にエリックも、サリー教授がただ者ではないということが身に染みてわかったのだ。
ついでにジュリーは、基礎訓練を、しゃがんでは立ち、しゃがんでは立ち、それを繰り返させられていたし、ミアは棒きれを持たされてサリー教授が気まぐれに振るう棒きれの一撃を受けつづけるという行為をし続けていた。
スティフィだけはまずは本調子を取り戻す方が先と言うことで、サリー教授の診断と施術を受けただけに終わっている。
その結果、エリックはサリー教授を恐れるようになり、ジュリーは筋肉痛になり、ミアはなにか棒のような物を持っていないと気が休まらなくなっている。
「昨日あれだけのことをされて、よくそんな口叩けるわね」
スティフィだけがその様子を見ていただけなのだが、サリー教授がエリックに殺気を向けられる度に、スティフィも体をビクッ、ビクッと震わせていたものだ。
あの刺すように鋭い殺気は向けられなくても背筋を凍らすほどの物だ。
エリックが受けていた修行は肉体的には確かにそれ程でもなかったが、精神的にはかなりきつい修行だったはずだ。
「それだけスティフィちゃんに勝ちたいんだよ」
エリックはそう言ってその場にしゃがみこんだ。
それに対してスティフィは少し扇情的な仕草をしてエリックを煽る。
「そこまでして私の事が欲しいの?」
だが、エリックはそのスティフィに反応することはない。
「んー、それも、もちろんあるけどさ。スティフィちゃんが言ったじゃん? 竜の試練に挑むならまずはスティフィちゃんを倒せるくらいにならないと、ってな」
しゃがみこんだまま、エリックはそんなことを言いだした。
普段の言動からは考えられないエリックの言葉にスティフィも少し驚く。
「ああ、それ、気にしてたんだ。私如き倒せたところで竜の試練は受からないでしょうけども」
それも事実だが、それ以前にスティフィとて竜の試練がどんな物か知らないし、竜が人に課す試練は竜がその都度考えるものだ。
なにか決まった特定の試練があるわけでもない。
「まずはその第一歩としてだよ」
そう言いながらエリックは立ち上がり、不敵に笑って見せる。
「なんか、エリックさん、少し変じゃないですか?」
ジュリーが足をさすりながらサリー教授に聞くと、サリー教授は楽しそうに微笑む。
「病み上がりの…… スティフィさんに勝てなかったのが…… そうとう効いた…… よう、ですよ……」
それを聞いたミアは少し複雑そうな顔をする。
だが、それも一瞬の事だ。
「それはそうと、スティフィ、少し遅くなりましたが今日も狩りへ行きますよ!」
狩りへ行き、獲物を取ってロロカカ神に捧げなければならない。
その上で美味しい肉も手に入るのだ。
ある程度この滅びた村に滞在しなければならない以上、狩りをしておいて損はない。
荷物持ち君がいれば獲物の場所はすぐわかるし、スティフィがいればそれを仕留めるのに苦労もしない。
狩りに出るだけ、獲物が獲れるのは確定しているようなものなのだ。
「は? 外道種がいるってわかっているのに狩りに行くっていうの?」
ただミアの提案を聞いたスティフィは驚きの声を上げる。
昨晩襲って来た外道種以外にも、この辺りに外道種は存在する可能性は高いはずなのに、それなのにミアは森へ入り狩りを行うと言っているのだ。
「荷物持ち君がいれば平気ですよ」
ミアは笑顔でそんなことを言ってくる。
「それはそうかもだけど……」
だが、ミアの言い分ももっともな事だ。
古老樹に、更には精霊に守られているミアを害せる者など早々いるものでもない。
「あまり遠くには行かないでくださいね。領域の解除もしなければなりませんので」
フーベルト教授もミアを止めようとはしない。
確かに昨日食べたヤマドリはとても旨かったが、ミアを危険に晒すことと比べるのは間違いだ。
「はい、遅くとも昼までには帰ってきます! 昼からは私も魔法陣の解読のお手伝いをします」
「ちょっと、止めてくれないの?」
スティフィは少し非難がましい視線をフーベルト教授に向ける。
「はは、この村に篭るより古老樹のそばに居たほうが安全ですよ」
フーベルト教授はその視線を軽く受け流す。
「それは…… そうか……」
ただミアやフーベルト教授の言うことは正しい。
この村に居ようといまいと、ミアを守る護衛者達の前では、この村の結界の有無など関係がない。
それもまた事実なのだ。
「では、ボクは見つけた魔法陣の解読を続けますので」
フーベルト教授は村の前の外道種の件も落ち着いたとばかりに、村の中に戻っていく。
「フーベルト教授も程々に! 寝てないですよね?」
そんなフーベルト教授の背に向かってミアが声を掛ける。
昨晩遅くに社の床下に隠されていた魔法陣を見つけ、そのままフーベルト教授はその魔法陣の解読に入っている。
寝ずに作業をしていたのは使命感よりも本人の趣味によるものが大きい。
「はい、程々にします」
ミアの言葉というよりは、、それと主に送られてくるサリー教授の視線にフーベルト教授は恐縮して答える。
「エリックさん…… と、ジュリーは…… 村の中の……」
自分の夫の言葉はあまり信じられないので、後で強制的に休ませなければ、とサリー教授は思いつつ他の者にも指示を飛ばす。
「はい、整備をします!」
ある程度、少なくとも馬車を止めている付近と、そこから社に向かうまでの道は手入れはしておかなければならない。
それはジュリーが担当することなっている。
「村の中でも、食べれる物があれば、集める、で良いんだよな?」
この村が安全なせいか生き残っていた家畜が野生化して住み着いていたり、育てていた農作物が野生化して自生していたりもする。
それらを狩ったり収穫したりするのがエリックの役目だ。
本来なら逆の役割の方があっているのだが、そこをあえて逆の役割をサリー教授は与えている。
これも修行の一環というわけだ。
「はい……」
早速作業を始めた二人に、サリー教授は満足そうに頷いた。
「あん? ミアちゃんの母親?」
オーケンは面白そうな顔を浮かべて、目の前の女、マリユが言った言葉を復唱する。
「ええ、一時期、私の教え子だったわ。教え子と言っても講義を受けていたってだけだけど、とても優秀な呪術師だったわねぇ」
年齢の割には落ち着いた、いや、ミアとは正反対で感情がとても希薄な娘だったことをマリユは思い出す。
「ふーん。となると…… そいつも外道狩り衆って奴か?」
周りに話を聞かれていないことを確認してから、オーケンはその名前を口にする。
「そうね、私も知らない術をいくつも隠し持っていたわね」
フィリアという名の娘だった。
本人は隠していたが、いくつものとても強い力をその身に隠していることをマリユは見抜いている。
ただその隠している力をマリユも触れようとは思わなかった。それが禁忌の、巨人の力だとすぐに分かっていたからだ。
それと、今になってその顔立ちを思い返すと、確かにミアに面影がある様にも思える。
「巨人族が呪印として、生きた文字として、人に授けた力か…… 興味はあるが、まあ、制約が多すぎるわな」
オーケンはその力は自分に必要のないものだとして興味がない。
オーケンは生きるのが楽しくて仕方がない。
なのに寿命を縮めてしまう巨人の呪印には興味がない。
あれは神の印を持つ者の魂すら削っていく力だ。
神にすら対抗できる物ではあるが、生きることが楽しいオーケンにとっては代償が大きすぎる。
「そうだ、あれは人が手を出すべき力ではない」
急に向き合うように座っていたオーケンとマリユの間の席に、丸太でできた専用の椅子を置き、カリナが割って入って来た。
そのことに、マリユやオーケンは気づけない。
これほどまでに巨体なカリナに、この二人が気づけないのだ。
「あら、カリナ」
と、落ち着いた様子で、いや、少し嬉しそうにマリユは笑顔を向ける。
「また邪魔しに来たのかよ」
気づけなかったことを隠しもせず悔しそうにしながら、オーケンはカリナに吼えるが、カリナは相手にしない。
そして、手土産に持って来た、鳥の串焼きと酒瓶を机の上に置く。
カリナからすれば丸太の椅子も小脇に抱え、料理皿と酒瓶のすべてをその大きな掌に乗せておくことも簡単な事だ。
その一本をオーケンは無遠慮に手に取り、かぶりつく。
「おまえらが危険な話などを始めるからだ。こんな酒場で堂々と、な」
カリナは元々美しくもイカツイ顔をさらに厳しくしてそう言った。
「おぃおぃ、覗き趣味も大概にしてくれよぉ」
常人ではそれだけで腰を抜かしそうなカリナの表情をまったく気にせずオーケンは逆にカリナを煽る。
「そんな趣味はない」
カリナは静かに答え、自らも串焼きを取る。
取るというよりは、丁寧に摘まむといったほうが正しい表現かもしれない。
「あの力、回収しなくて良いのかよ?」
そんなカリナにオーケンは薄笑いを浮かべながら聞く。
さらにカリナの持って来た酒瓶から遠慮もなしに自分の杯へと酒を注ぐ。
「前にも言ったが、我が関与している話ではないからな」
カリナもオーケンの無遠慮さを特に気にする様子もない。
ただ、カリナの言葉にマリユの方が驚く。
「あら、そうなの? 私はカリナが授けたものとばかり思っていたけど」
マリユから見ても外道狩り衆の呪印の力は興味はないものだ。
それに、恩人であるカリナが授けた物であれば、マリユがどうこうするつもりもない。
「案外、ミアちゃんに憑いているあの眼玉のお化けだったりな、ハハッ」
オーケンも違うと予想しつつそんなことを言う。
ミアの肩に憑いていたあの御使いも元は巨人族という話だ。
それも名のある炎の巨人だ。
呪印を授けていても不思議ではない。
カリナも機嫌が良かったのか、その晩は少し雄弁になる。
いや、友人の為に雄弁にならざる得なかった。
「あの方ではない。また別の者だ」
炎の巨人は人に呪印を授けるような存在ではない。
そんな気性をしていない。炎の巨人はもっとも荒々しい気性の巨人だったはずだ。
それが神の御使いになっているということが、カリナにはまず信じられなかったし、そんな存在がミアの帽子を通じミアを守護していると言うのもカリナには理解しがたい事だった。
さらには外道種の王を封じるためにとは言え、降臨してくるなど炎の巨人の実物を知っているカリナにとっては驚愕以外のなにものでもないのだ。
「ほほう! 少し詳しく話してくれないか? 別に巨人の話はあんたの盟約には引っかからないはずだろ?」
オーケンの言葉にカリナはオーケンを鋭く睨む。
この人間はどこまで知っているのか、どこまで調べたのか、カリナからしてもとても気になることろだ。
ただ知られたところで、ということもある。
それに巨人族の話はオーケンの言う通りカリナが交わした盟約に引っ掛かる物でもない。
「はぁ…… 話してよければ、わざわざここに来ていないのだが?」
それはそれとしてあまり話してよい物ではない。
今頃、遥か天空から、神の座から、地上を覗き見ている神々はざわめきだしている頃だろう。
「そうよ、カリナは私の恩人なんだから、困らせないであげて」
マリユが珍しく少しカリナが困っていることに気づき、助け舟を出す。
オーケンはマリユの言葉にうんざりとした表情を見せる。
その二人の様子を見て、カリナは深いため息と共に語りだす。
「月と太陽の呪印を人に授けたのは星の巨人だ」
その言葉にオーケンの顔がほころぶ。
「星の巨人? 聞いたこともねぇな……」
だが、そんな巨人はオーケンも聞いたこともない。
「星の巨人…… この辺りにいたはずの巨人達の長ね……」
ただマリユはその名に聞き覚えがある。
「流石に知っているか」
「名前だけね。会ったことは流石にないわよ」
マリユは少し驚いている。星の巨人の名が出て来たことにではなく、カリナがこんなことを話すことに驚いている。
「おぅおぅ、神話上の話は俺にもわかるように話してくれよぉ、まさかこの俺様が置いてきぼりとはねぇ」
ただオーケンの機嫌は良くない。
五百年は生きている自分がまさか話について行けないとは夢ににも思わなかった。
「残念、教えてあげたいけれど、私も名前くらいしか知らないわね」
そんなオーケンを見てマリユは愛おしそうに、それで美しく魅惑的に笑う。
オーケンはそんなマリユの顔を見てまんざらでもない顔をする。
二人のその表情を見て、二人ともが表情とは別の感情を抱いていることに、カリナは気づいているので、深いため息を吐き出す。
カリナから見れば二人とも我儘な子供のようなものだ。
「父だ」
なので、仕方なくカリナは答える。
だが、それ以上カリナも答えるつもりはない。
「カリナの?」
マリユは本気で驚いて聞き返す。
まさかカリナの出生を知れるとは思いもしなかった。
「ああ」
「なんだよぉ、おまえも良いとこのお嬢様ってか?」
オーケンは笑み、本当に楽しそうに笑みを浮かべる。
「我は忌み子だった。巨人からも人からもな。だから我は許されたのだ」
カリナは自分でもしゃべりすぎた。
そう思いながらも少し気持ちが軽くなるのを感じる。
誰かに自分の話を聞いてもらうなど早々できるものでもないし、カリナの夫であるダーウィックとはそういう関係性でもない。
ダーウィックは自分が強いから愛してくれているのだ。カリナはそう理解している。
弱音というわけではないが、そう言ったものにダーウィックは興味がない、と、そう誤解している。
「あー、やっぱりそうなんだなぁ。巨人という割には小柄だよなぁ、あんた」
オーケンはそう言って盛大に笑う。
「なにが言いたい」
威圧するようにカリナがオーケンを睨むが、それはオーケンをさらに笑顔にさせるだけだ。
「なんにもぉ?」
オーケンはそう言って酒を煽り、うすら笑いを浮かべる。
「カリナをあんまり困らせないであげて」
マリユがオーケンを見てねだる様に、それでいて、その目だけはオーケンを刺し殺すように言う。
「はいはいっと。いや、今晩は珍しく良い酒だ」
オーケンはそう言って何か別の話題を考える。
だが、酒が既に回っており、良い話題が思いつかない。
だから、オーケンも自分の過去話をする。
翌日、マリユとカリナに鼻で笑われる様な、オーケンが嫌な表情を浮かべるような話をだ。
万が一、いや、千が一、百が一……
十が一、誤字脱字があればご指摘ください。
指摘して頂ければ幸いです。
少なくとも私は大変助かります。
もし気に入ったらで良いので、いいね、ブックマーク、感想等ください!
実は後付けの設定で、外道種の古い呼び名が、外法というものがあるんです。
最初は別名とか、そんな設定だったはずなんです。
でも、それも何なんで、外法というのは古い言い方って設定を後付けで決めたわけです。
でも、そうすると、外道狩り衆は、実は外法狩り衆という呼び名が正しくなってしまうんです。
矛盾が生じてしまうんですね。
後付けで、というか表記の揺れ対策にそんな設定を後付けでつけるから……
と、いう訳で、昔から外道と外法両方の呼び名があって、それが時代ごとに入れ替わっているという設定を思いついたわけだが……
どうだろうか?
こうやって歴史は繰り返されて行くんだね。
馬鹿ですね、本当に。




