旅は道なりではなく世は情けない その9
「あなたが…… あなたがリズウィッドの血族だと、そう神が認めたということは、もう聞いています」
ルイーズの母であるマルグリットは、ミアを見て品定めでもするように見て言った。
室内でも帽子を脱がないのは気になりはしたが、その理由は既に聞いている。
彼女の美しい黒髪は呪物のような物で、それを抑えているとのことだ。
ミアが、リズウィッドの血を引いているのであれば、ミアも恐らくは金髪だったのだろうが、今のミアは黒髪だ。そして、それが良く似合っている。
その抜け毛ですら恐ろしい呪物のようなものという報告を受けてはいる。
だが帽子のおかげかマルグリットには綺麗な黒髪以外の印象はない。
金髪ではないことも何か理由があるのだろうが、マルグリットからすればあまり関係のはない話だ。
ただマルグリットには金髪のミアというものを想像できなかった。
それほどミアは黒髪が良く似合っている。
それ以外は、なんの関心もない、ただ普通の少女にマルグリットにはミアがそう見えた。
とても世界をどうこうするような巫女には思えない。
「母様、ですがミア様は……」
と、ルイーズがミアを庇うようにしていることに、マルグリットは少し驚く。
まだ十歳ちょっとだがルイーズは気位が高い性格だとマルグリットは思っていた。そのルイーズが少し顔を見せない間に随分と変わったようだと。
ルイーズの反応を見るに、ミアとの仲は悪いというわけではなさそうだ。
そもそも、ミアにリズウィッドを、この領地を継ぐつもりも毛頭ないと言うのだから、マルグリットが気にすることでもない。
どちらかというと、少し行動がおかしいマルグリットの夫、ルイの行動の方が悩ましいくらいだ。
「それも聞いています、何も問題はありません」
マルグリットとしては、もう少し何か自分にも感じるものがあるかと思っていたが、ミアという少女を見ても、こんなものか、という感想しか出てこなかったというのが実際のところだ。
言うならば、拍子抜けという奴だ。
ただ、この秘匿の神殿に来て早々、秘匿の神の方からわざわざ出向いてくると言うことは、その門の巫女というのはそれほどの存在なのだろう。
それ故に、マルグリットには気にならない。
ミアは魔術を学んだあと、その神のいる地にミアは帰るのだと言うのだから。
このリズウィッドを継ぐのがルイーズであれば、マルグリットからすればなにも問題はないのだ。
「そう…… ですか」
と、ルイーズは少しシュンとした顔を見せる。
やはりルイーズとミアはそれなりに仲が良いのだと、その反応だけでマルグリットにもわかる。
思えばルイーズの周りには、男で大人の護衛ばかりだっだ。
同世代で同性の友人どころか、使用人も今までいなかった。
最近はマルタがルイーズの身の回りの世話をするようになってくれたが。
そこでやっとミアが丁寧にお辞儀をして、それでも緊張しているのか、
「あっ、すいません。ミアです。あっ、ミア・ステッサです」
と、挨拶をする。
その様子はマルグリットには、ただの緊張している普通の少女にしか見えない。
だが、これも伝えておかねばならない。
「神が認めた以上、あなたがリズウィッドの名を名乗ることも私達には止めることも出来ませんよ?」
マルグリットは自身が、他の領地から嫁いできた故に、この領地の神には認められたとは思っていない。
結婚式の夜、夢で一度その姿を見ただけで、以後、マルグリットに秘匿の神が干渉してくることはなかった。
だと言うのに、ミアは神殿に入った途端に神自らが現れたのだ。
夢ではなく、現実に神が降臨していたのだ。
リズウィッド全体としても、近年では稀なことだ。
マルグリットとしては面白くはないが、それでミアに嫉妬心を燃やすような人物でもない。
いや、そもそも神が気に入っている人物に手を出すほど愚か者でも嫉妬深くもない。
「いえ、おじいちゃんの家名で十分ですので」
ミアはきっぱりとそう言った。
マルグリットの目から見ても嘘ではない。
それどころか、少し煩わしいとさえ考えてそうだ、とも思える。
実際、そうなのだろう。
彼女にとって人の世界の理や地位など意味がないのだろう、そうマルグリットには思えた。
「そうですか。本当に興味がないのですね。ですから、神に選ばれたとも? こういう子だから神に好かれる? そう言うことでしょうか」
マルグリットはそう言ってもう一度ミアを見る。
素朴な少女だが、魔術の才能は飛びぬけていると報告は受けている。
魔術の才能がなかったマルグリットからすると、それもよくわからない事だが。
「母様?」
と、ルイーズが心配してマルグリットご機嫌を伺うように覗き込んでいる。
家出中のはずの娘は、ありがたいことに魔術の才能があると報告は受けているし、実際に魔術学院の成績も良いとのことだ。
神に選ばれた領主もある意味、神職のような物であるし、それは良い事なのだろう、そこは自分に似なくて良かったと、マルグリットは表には出さないが安堵している。
「いえ、大丈夫です、ルイーズ。私も会ってみたかった、一目見て見たかった。ただそれだけですので。他意は本当にありませんよ。そもそもルイに愛した方がいたことは以前から聞いていますし」
そうだ。
ルイという男は、馬鹿正直な男だ。ある意味、誠実さだけが取り柄のような男だ。
マルグリットもその点は信頼しているし、夫として今は愛している。
だからこその最近の奇行に少々悩まされてはいるが。
それとマリグリットに他意がない事も事実だ。
ただ自分の夫が愛してやまなかった女性、その娘がどんな人物が会ってみたかっただけだ。
まあ、会った結果、マルグリットからすれば拍子抜けだったわけだが。
「え? そうなのですか?」
ルイーズが少し驚いた様な顔をしている。
「ええ、結婚する前にちゃんとルイの口からきいてます。その上で我々は結婚したんですよ」
ルイーズにやさしい笑顔を向け、マルグリットは言い聞かせる。
しっかりしているようで、ルイーズもまだまだ子供なのだ、そのことをマルグリットは理解している。
「政略結婚って奴?」
特徴ある黒い革鎧の少女が話に割って入ってくる。
失礼な発言だとはマルグリットは思うが、彼女が何の神を信仰しているかは知っている。
彼女もまたその神の信徒として欲望に忠実でなければならないのだ。
「まあ、言ってしまえばそうですね。運河を結ぶ上での…… 儀式とも盟約とも言えるでしょうが」
神が停戦し決められた領主が決められた領地を治めるだけの今の時代、政略結婚にもあまり意味はない。
だが、それでも時にはそれも必要なこともある。
「なるほど。西側まで膨大な費用をかけて運河を作りました。でも、互いの領地の仲が悪くなったので運河を使わせません、とは言えないようにってことね」
スティフィはそう言った後、目を鋭くする。
ということは、ルイーズの母は元は西側、光の勢力の地域の人間と言うことになる可能性が高い。
この領地から造られた運河は西側の領地まで通じているはずなのだから。
「安心しなさい、デミアス教徒の娘。私の出身地もリズウィッドと同じく中立ですので。それくらいは調べがついているのではなくて?」
マルグリットは正直、このスティフィという名のデミアス教の信徒に恐怖を覚える、ミアなどよりもよほど印象深い。
気丈に振舞ってはいるが、マルグリットは普通の人間なのだ。
それを表に出すほど、弱い人間ではないが。
「ああ、安心しました。元より手出しはしませんよ」
そんなマルグリットの本心を見抜いてか、スティフィは笑顔でそう言った。
というか、元よりそんなこともスティフィという少女は知っていての行動だろう。
「スティフィ、失礼ですよ」
そんなスティフィを怒りつけるようにミアががいると、
「これもデミアス教の信徒として、しておかなくちゃいけない事の一つよ」
と、スティフィという少女が少し怯えるような素振りを、かなりわざとらしいが、それをしながらそう言ったのだ。
少なくともマルグリットにはそう見えた。
そして、それはわざわざミアのことを、マルグリットに少しでもよく見せようとしての事だとも気づく。
少々、ミアという少女を見誤っていたことを、マルグリットは気づかされる。
少なくとも、このデミアス教の信徒であるスティフィが、そういう行動をとる価値のある人物ということだけは確かなのだ。
「そうなんですか?」
ミアはそう言って、まるで分ってない顔を見せる。
マルグリットは少しだけ笑みを浮かべ、
「まあ、デミアス教徒は欲望に素直でないといけないですからね……」
と、言葉をミアにかける。
だが、スティフィの態度からするに、そのスティフィが大人しく従うほどの魔術の才能かもしくは別の何かがミアにはあるのだろうと、マルグリットはもう確信している。
それこそが神々に好かれる物なのだろうと。
「なるほど。スティフィのところの神様はそう言う神様でしたね」
と、納得するミアに、マルグリットも少しだけ興味が出て来る。
「あなたの…… 神様はどんな神様なのですか?」
と、聞くと、ミア以外の、ルイーズの護衛であるブノアやデミアス教徒のスティフィですら渋い顔を即座に浮かべる。
どうも、聞いてはいけなかったことのようだと、マルグリットにそれらの顔を見てすぐに理解できた。
「とても素敵な神様でいらっしゃられますよ!」
ミアは目を輝かせてそう言いだす。
今までマルグリットが感じていた雰囲気とは明らかに違う。
凄まじい信念のような、それでいて物凄い圧力とも言うべき力をマルグリットはミアから感じる。
今まで抑圧されていたものが一気に流れ出て、物凄い勢いで自分へと向けられているかのような、まるで洪水に流される様な、そんな感覚だ。
ただの少女だった存在が、一気に、得体の知れない怪物になった、マルグリットにはそう感じられた。
そして、それこそがこの少女の本質だと気づく。
「何を司る神なのですか?」
内心、ミアからの圧に慄きながらも、マルグリットは話を続ける。
そして、その選択をしてしまったことに、ミアを知る周り者達の表情が険しくなっていくのがマルグリットにはわかった。
まずかったかしら、とマルグリットがそう考えたとき、ミアからの圧が急に感じなくなる。
「それが…… リッケルト村では山の神と言われてたのですが、どうもそういう訳でもないようなので……」
と、ミアが迷う様な表情を見せた。
ミアからの異様な圧も、その表情に合わせてしぼんでいく。
マルグリットには魔術の才能はなかったが、それでも元々領主の血族であり、今も別の領主の血族となったのだ。
神学の勉強だけは欠かしていない。才能はなくとも知識だけは持っている。
なので、ミアの言葉だけで理解できる。
なんの神か、ミア自身がわからないのだ。
それでも、ミアからは信仰心が揺らいでいるようには見えない。
ミアの迷いは、神のことを理解できていない自分への迷いに、憤りに、マルグリットには思える。
「神、自らが名乗ったことはないと?」
神は何かを司ることでこの世界に干渉してくる。
だから、通常は、神は何かを司っているものなのだ。
稀にだが、ただ神として存在する神もいるそうだが、ほとんどの神は何かを司り、それを人間に名乗るものだ。
「はい……」
ミアが俯いて、神を理解できていない自分を恥じる。
「ですが、あなたが会った秘匿の神もその名を口にしていたと?」
魔術の才能のないマルグリットには実感できるものではないが秘匿の神の神格はかなり高い神だと思うし、そう聞いている。
その神が、口にする様な神だ。
ミアの信じる神も、かなり力を持った神なのだろう。
なのに、その神の事は、この領地の、秘匿の神のようになにも明かされてはいない。
秘匿の神ならばそれも分かるが、秘匿の神のもかなり特異的な神であることは間違いがない。
ミアの崇める神がそう言った神であるともマルグリットには思えない。
「はい! そうです!! ロロカカ様に配慮するような感じでした!」
ミアは目を輝かせて、その言葉を発するのだが、マルグリットにはそれがミアの独自解釈がかなりかかっているように思える。
実際のところどうなのかまではわからない。
そして、マルグリットに向けられるミアからの圧が再び強くなってきていることも事実だ。
マルグリットに向けられてはいるが、ミア自身がなにかマルグリットに対して意識して圧をかけているわけではない。
ミアからすれば、ただ注目して熱心に話しかけている、くらいの事なのだろう。
その事実にマルグリットは息を飲む。
確かにこの娘は、神の巫女に相応しい存在であると。
そして、非凡な自分が長い間、対処できる相手ではないと。
「配慮、ですか…… 」
と、その言葉を発した後、ルイーズの護衛、ブノアからの視線で、あまりミアに神の話をさせるな、という意図を強く感じさせてくる。
ロロカカ神という存在は強い力を持ち、事前に貰った報告通り危険な神なのかもしれない、それこそ祟り神ではないのかと言うことをマルグリットに思い出させる。
それを考えるとこのまま話を続けるのも危険かもしれない。
ここが秘匿の神の領域だとしても。
ミアが再び何かを口にする前に、マルグリット自身が動く。
「そうであるならば、ここであなたの神の話をするのはまずいですね」
と、言葉を発する。
ミアもその言葉に納得せざる得ない。
何か言いかけた口をミアも噤む。
ここは少し離れた位置にあるとはいえ、秘匿の神の領域であることには変わりないのだ。
その秘匿の神が配慮したというのであれば、少なくともミアがそう考えているのであれば、ミアもここではロロカカ神の話はできないはずだ。
ミア自身も納得せざる得ない所で、
「色々と知れることはありました。私も満足です。ルイーズ、引き続き、ミアさん達の対応を任せましたよ」
そう言って、マルグリットは立ち上がり、そそくさと部屋から出ていった。
そして、部屋から出たところで、ミアという少女を見誤ったことを悔いる。
少なくとも普通の少女ではない。
見た目はそうでも、その本質はどこか歪で、狂っているようにすら、マルグリットには思えた。
「綺麗な人ですね、ルイーズさんのお母様」
ミアの感想はそれだった。
そう言われたルイーズは悪い気はしない。
ただ、
「一応、あなたの、ミア様の義理の母と言うことにはなったのですよ? 秘匿の神がそう言った以上、認めざる得ないんですよ?」
と、そのことをルイーズはミアに確認する。
ルイーズにとって、ミアは腹違いの姉と確定したのだ。
今までもそうではないかと、思ってはいたが、神が認めた以上、ルイーズも認めないわけには行かない。
秘匿の神の名を知っているのは、リズウィッドの直系だけだ。
ルイーズの母であるマルグリットにすら、その名は明かされていない。
ルイーズは知っていても、それを母に伝える事すら許されない、にもかかわらず、ミアは神から、神自身からその許しを得たのだ。
ミアがリズウィッドの直系であると、ルイの娘であると、認めざるを得ない。
だが、
「え? あ、はい、そうですよね。私の父親があの領主様…… なんですね。なんか感慨深い物があります」
と、ミアにはなんの関心もないようにルイーズには思えて仕方がない。
だが、それと同時にだからこそ、ミアの信じる神もミアをこの領地にわざわざ寄こしたのだろうと、ルイーズには思い当たる。
「ミアがリズウィッドの領主の娘ねぇ。ミアが主張すれば次の領主はミアがなれるんじゃない?」
スティフィが、ミアがそんな事をするはずない、そうわかりつつも、ミアではなくルイーズの方を見つつそう言ってくる。
最近、スティフィにからかわれすぎて、あんまり反応しなくなったルイーズに対してなのだろう。
それがわかりつつもルイーズの頭に血が上って行くのが顔色でわかる。
「え? いやですよ。私はロロカカ様の巫女ですので」
と、ミアが本当に嫌そうな顔でそう言うので、ルイーズにたまっていた怒りが音もなくスッと抜けていく。
「はぁ…… ほんとうに心底嫌そうな顔をして…… この人は…… リズウィッドは一応南側で最大の領地なんですよ……」
そう言ってミアを見る。
神の巫女として、魔術師としても、ルイーズは恐らくミアの足元にも及ばない。
本人にも、この領地をつぐ気が微塵もない事はわかっている。
それでも、ルイーズには少なからず憤るものもあるし、ミアにその気がない事に安心もしてしまうのだ。
自分ではミアに勝てないのがわかってしまっているから。
それを認めざる得ないのだが、領主の座をミアに譲る気もルイーズにはない。
ルイーズはそう育って来たのだ、自分はこのリズウィッドの次期当主なのだと、そう育てられて来て、自信も誇りもある。
それだけに、ミアに全くその気がない事に、ルイーズは心底安心し、安心している自分にも腹立たしいのだ。
「いや、でも私はロロカカ様の巫女ですし……」
と、ミアは今も迷惑そうにそう言うのだ。
ルイーズは本当に腹立たしい、そう思いつつ、
「その神の名は、ここでは少し控えてください」
と、小言をいった。
まあ、他意はあるがそれも事実だ。ここは秘匿の神のその領域だ。
無月の女神程、嫉妬深い神ではないが、むしろ他の神に対しとても寛大な神だが、あまり他の神の名を呼ぶのは良くないのは事実だ。
「あっ、すいません……」
ミアもそう言って素直に謝る。
その様子をスティフィが楽しそうに笑いながら見ている。
ルイーズはいつかあのデミアス教の信徒にも、そして、ミアにも自分を認めさせ、ぎゃふんと言わさせてやると心に誓う。
「でも、憂いは晴れましたね。母様もあまりミア様のことを嫌った様子ではなかったですし」
ルイーズからはそう見えた。
ただ、最後の方は逃げるようにこの部屋からも出ていったことは気がかりは気がかりだが、ミアの本性、狂信ともいえる信仰心の一端でも感じたのだろう、と納得しておく。
「それはミアに野心がまるでないからでしょう」
スティフィもルイーズをからかうのをやめて、色々と考えながらそう言った。
スティフィとてルイーズを本気で怒らせたいわけではない。
「それは…… そうでしょうが。まあ、いいですよ。さて、秘匿の神殿を案内いたしますが、一般公開し信者が住んでいるとはいえ、危険な場所には違いありません。特に立ち入り禁止の場所には絶対にはいらないでくださいね。命の保証はありませんよ」
ルイーズも気持ちを切り替える。
ただ、これからミアを正式に姉として扱わなければならないことに、少しの戸惑いを感じる。
スティフィはそれに気づきつつも今はもうからかうのをやめたのか、
「その言葉は無駄だと思うけど、エリックに言ってやりなさいよ、この中じゃ一番怪しいでしょう?」
と、エリックの方を見る。
「ん? なんで俺?」
エリックは急に話を振られ、驚いた表情を見せる。
ルイーズはそれは確かに、と、重々しいため息を吐き出す。
「はあ、ブノア、エリック様には特に気を払ってください」
「はっ、承知しました」
と、ブノアが返事を返す。
「さて、どこから見て回りましょうか? と言っても本当に大したものはないんですけども」
そう言って、ルイーズはこの神殿で見て回る様な場所を思い浮かべる。
そして、部屋の隅で人形のように固まっていたジュリーが挨拶できなかったことを今更悔いている。
「あっ、ここです! 私ここで秘匿の神と出会いましたよ!」
ミアがそう言ってはしゃぎだしたのは、秘匿の神殿の中庭の一つだ。
綺麗に整えられた庭園で秘匿の神の信者たちが世話をしている場所だ。
そんな中でミアはそう声を発したのだ。
今も、秘匿の神の信者が庭園の世話をしている中でだ。
ルイーズがいる手前、信者たちも表立って行動していないが、遠くからも注目を集めてしまう。
ルイーズとしても頭に手を当てて困りながら、
「ミア様、いえ、ミア姉様。あなたは神に認められた、リズウィッドの血に連なる者に、正式になったのですよ」
と、わざと大きな声で発言する。
信者たちにミアの立場を説明するようにだ。
「え? 何ですか急に?」
けれど、ミアは驚いた顔をするだけだ。
信者たちはそれで一応の落ち着きを見せ始める。
スティフィはミアとルイーズを見比べて、
「お姫さんも大変ね……」
と、ちょっとだけ同情して見せた。
万が一、いや、千が一、百が一……
十が一、誤字脱字があればご指摘ください。
指摘して頂ければ幸いです。
少なくとも私は大変助かります。
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