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学院の魔女の日常的非日常  作者: 只野誠
日常と非日常の狭間の日々

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日常と非日常の狭間の日々 その5

 シュトゥルムルン魔術学院本棟校舎第一会議室。

 環状の巨大な円卓が置かれた一室。一室というにはただただ広く天井も高い。

 そこでミアが最初に思ったことはこれだった。

 何か得体のしれない巨大な人がいる。

 人間としては規格外の大きさ。しかも恐らくは女性で筋肉の塊であって巨石のような存在。しかも顔は美人の巨大な何かだ。

 それを人と、人間と呼ぶには余りにも大きい。言ってしまえば巨人という言葉が一番しっくりくる。

 その場の張りつめた雰囲気よりも、そのことにミアには驚きを隠せなかった。

 ただ巨人は神により滅ぼされた種族だ。生存しているわけではない。ミアは確かにこの魔術学院でそう習った。

 では目に映っている巨大な存在感のある人物は何者なのだろうか。

 気になったが、とても質問できる雰囲気ではなかった。

 ここには魔術学院の教授十二名とミア、それと異常なほど大きな女性の十四名がいた。

 今はマリユ教授とサリー教授の簡単な報告が終わった後で、教授たちは皆、何とも言えない表情をしている。

 とてもミアが関係ないことを質問できる雰囲気ではなかった。

「よりにもよって朽木様ですか……」

 そうつぶやくようにもらしたのは精霊魔術を教えているカール教授だ。

 朽木様というのはとある古老樹のことを指すのだが、精霊ともかかわりが深い。

 それだけにカール教授は朽木様の恐ろしさもよく知っている。


 朽木様。

 この辺りの地域の伝説の一つだ。ただこの世界での伝説とは、そのほとんどが実際にあった昔話でしかない。

 学院の裏山からさらに山を三つ四つ超えた先の山中の高原にある楠の古老樹で、その名の通り朽ちかけの木だ。

 実際、朽木様は朽ち果てる運命にあった古老樹の一本である。

 死の間際に瀕したその古老樹は生きることに必死になり、それ故に『朽木様』と呼ばれ人からは恐れられた。

 噂話で確証はないが、朽木様の根元には、朽木様により地中に引きずり込まれた数百にも及ぶ動物、あるいは人などの生き物の死体が今も埋まっているのだという。

 そうやって他の命を喰らい何とか命をつないできた朽木様だったが、いよいよ本当に朽ち果てると朽木様自身が悟った時、一人の精霊王が朽木様を救った。

 その精霊王曰く、自分がまだはぐれ精霊の頃、朽木様に何度も救われたため恩返しに来たのだという。

 救われた朽木様は精霊王に感謝し、本来喰らわなくても良い命まで喰らっていたことを天に向かい詫びたという。

 以後、その精霊王は朽木の王と呼ばれ、今も朽木様と共に暮らしている。

 このシュトゥルムルン魔術学院を含め、この辺りの地域で精霊を人に授けてくれる精霊王はこの朽木の王だ。

 とても温厚な精霊王の一人であり、現在も古老樹の朽木様と良好な関係を築いているのだという。

 罪を悔いた朽木様も温厚な性格に戻り、この辺りの自然の守護者となっている。

 ただし今でも朽木様は一度怒りだすと、手が付けられなくなる程暴れるという。

 そんな朽木様が怒るようなことは、恩人である朽木の王のことと自分の子供たちのことだそうだ。

 その子供というべき苗木が今、ミアの手元にある。

「朽木様の苗木ですか、泥人形の核としては最高、いや、泥人形なんかに使うのもはばかれるものですねぇ。使ったら朽木様はまず間違いなく怒りますよねぇ?」

 グランドン教授が誰に言うでもなくポツリと漏らした。

「ま、まず間違いなくお怒りになるかと……」

 サリー教授がその言葉に同意する。もちろん反論する者はいない。

 反論ではないのだが、

「かと言ってじゃ、神により、しかも、話を聞けば、『よく言い聞かしておく』とまで、言われたと物を違うことに使ったとなればだ。今度は、そのジュダ神からの怒りを買いかねない話じゃぞ?」

 椅子の上に胡坐をかいているウォールド老と呼ばれる教授が、その白く長い髭をいじりながらそう言った。

「私はこの地方には来たばかりですが、朽木様の話は知っています。かなり力を持った古老樹であることも。となると、ジュダ神を取るか、朽木様を取るか。なのですが、答えは決まっています。神の好意を無下にする、なんてことはそもそも論外ですし、古老樹とて神が相手なら引くしかないでしょう」

 ローレン教授がそう言いつつも厳しい顔を見せた。

 その隣のエルセンヌ教授が付け加える。

「そのジュダ神ですが、どのジュダ神なのでいらっしゃるのでしょうか? 私が知っているのは、西にある川の神、それとやはり西方の農業の神でしたか?」

「空の神にも一柱いらっしゃりますね。それと地方は特定されていませんが軍神と呼ばれるような神もいますね。あとは…… 暗黒大陸の方にもいらっしゃったかと」

 と、フーベルト教授もさらに付け加える。

 そこでポラリス学院が、うんざりした表情を見せた。その後、傍らに立っている巨女を見上げ、

「カリナ。すまないが言えることはあるか?」

 と、声をかけた。

 声をかけられたカリナは非常に渋い顔を見せた。

 その表情に、カリナのことをよく知っている数名の教授が驚く。

 とくに驚きの表情を見せたのが、ポラリス学院長とダーウィック教授だ。

 カリナと呼ばれた巨女の表情だけで、事の重大さがわかってしまったのだ。

「ある。が、あまり口にしたくはないな。伝えねばならんのはわかるが……」

 その言葉に、二人が更に驚きの表情を見せた。

 かなり深刻な事態なのだと、ポラリス学院長は理解できた。

「これは思っていたより大事なのだな? カリナ?」

 念のために確認する。

「ああ、場合によってはだが、すぐにでも学院の移転を推奨するね」

 色々と思うことはあるが、カリナの進言だ。従うことの方が正しいに違いないと、ポラリス学院長は理解している。

 そのことは分かるが、さすがに学院の移転ともなると、ポラリス学院長でも一人の決断で実行できるものではない。

 少なくとも領主の許可だけは最低限必要不可欠となってくる。

「迎え入れるのはまずいのですか?」

 ローラン教授がそう言うと、カリナは大きなため息を吐いた。

「神としての役割を持たない。また神の座にいないという、ジュダ神という名の神に一柱だけ心当たりがある。古くから存在する、まあ、古代神の一柱なのだが…… うむ、なんというか、あまり脅したくはないのだが。ミア…… だったか。その神は確かに、未だ神としての役割を持たない、と言ったのだな?」

 規格外の、自分の三倍はありそうな巨女に見つめられ、さすがにミアもたじろぐ。

「え? は、はい、確かにそうおっしゃられていました」

 ジュダ神が確かにそう言ってたことを思い出しながらミアは答えた。

「つまりそういう事だ」

 と、カリナはぶっきらぼうに言った。

「どういうことなのですか?」

 今度はカール教授がカリナを見上げて質問する。

「いや、まあ、隠しても仕方ない。私の口から言える範囲のことだけを伝える。まず、このミアが出会ったジュダ神は、十中八九…… なんだ、その……」

 カリナは本当に言いづらそうにしている。

「キミが言いよどむとはよほどのことなのだな?」

 その様子を見て、ポラリス学院長が再度確認する。

「いや、まあな。その、破壊神だ」

 その言葉に、カリナとミア以外、つまりは魔術学院の教授全員が驚愕する。

 中には無意識に席から立ち上がったものもいるが、全員が全員、目を見開き口を大きく開け唖然としていた。

 それはポラリス学院長やダーウィック教授とて同じ表情を見せていた。

 ミアだけは破壊神の意味をなんとなくでしか理解していなかったため、それほど驚きはしなかった。

「へ? な、なんじゃと?」

 老獪であるはずのウォールド老がそう言ったまま、口を閉じ忘れたのか、大きく口をあけたまま固まっていた。

 その視線だけはカリナに向けられている。

 ウォールド老だけではない、すべての教授が似たような反応だ。

 カリナはその様子をみて、小さくため息をして話し出した。

「この世界は今未だ始まりすらしていない。未だに準備段階で手間取っている。が、世界は始まり、そして世界が終焉を迎えるとき、次の世界のためにこの世界を破壊する。それが破壊神の役目だ。始まってもいないものに終わりはこない。役目がまだない、とはそういう事だ。神の座にいないのは、その神の気まぐれだろうが…… だが、それが証拠になる。他のジュダの名を持つ神々は神の座に今もいる。私の知っているなかでジュダの名を持つ神で神の座に居ないのは、破壊神ジュダのみだ」

「破壊神…… ですか……」

 視線を下げ、ダーウィック教授が呟く。

 暗黒神がいかに強かろうと破壊神にはかなわない。本来不死であるはずの神を殺せるのは竜と破壊神だけだ。

 故に、破壊神は最も恐れられる神なのだ。

 その力はありとあらゆるものを物質的にも霊的にも破壊することができる。

「また物凄い大物と出会った物だな。その知り合いというロロカカ神は、カリナも詳しくは知らないんだったな」

 ポラリス学院長がそんなことを言ったのは、動揺してのことだろう。

 普段なら、少なくともミアのいる前では、カリナにそんな質問を投げかけは決してしなかったはずだ。

 その質問を受けたカリナは少々苦笑いを見せた。

「ああ、名を聞いたことがあるくらいだ。ただ古き神であることは確かだ」

 そう答えたカリナにミアが反応しないわけはない。

「ロロカカ様をご存じなのですか?」

 当たり前だ。ロロカカ神など聞いたこともない神だ。というのがこのシュトゥルムルン魔術学院の正式な解答だったのだ。

 なのに、知っている、人間であるかどうかはとりあえずおいておいて、知っている者がいて、少なくとも学院長はそのことを知っているような素振りだった。

 ミアとしては、反応せざる得ない。

 ポラリス学院長は反応したミアを見て正気に戻り失態をおかしたことを恥じた。軽く咳ばらいをした後、毅然とした態度を取ってミアを制した。

「すまない、ミア君。カリナには色々と制約があり、言えることと言えないことがある。カリナへの質問は控えてくれたまえ」

 まっすぐにミアを見据えてそう言った。

「え? は、はい……」

 ロロカカ神のことを少しでも聞きたかったが、学院長にそう言われてしまうと、ミアはそれ以上聞くことができなかった。

 なにより、ミアを見据えたポラリス学院長からは有無を言わさない雰囲気をだしていた。

 しかし、ミアの中で少なからず疑心が生まれたのは仕方がないことだ。

「どちらにせよ、私とてロロカカ神のことはその名くらいしかしらぬ。言えることは元よりない」

 カリナはそう言って、ポラリス学院長の肩に手をのせるように、指を一本だけ軽く乗せた。

 特に気にしてない、とでも言っているかのようだ。

「ロロカカ神も謎ですが、破壊神ですか。でしたら、迎え入れるのも無理ですよね……」

 カール教授が話題を変えるように口を開いた。

 カリナと呼ばれる巨女とポラリス学院長の間には色々とある。

 その秘密を知っている者からすると、ポラリス学院長が失言していたことに気づけている。

「カリナ、すまない。そのジュダ神について我々に伝えれることはあるか?」

 ポラリス学院長は再度、カリナに質問を投げかける。

「ない」

 と、カリナはぶっきらぼうに答えた。

「そうか、ありがとう。これは学院きっての一大事だな。寄りにもよって破壊神とはな。その怒りを買えば、この学院どころかこの地そのものが、なにもかも消し飛ぶぞ」

 ポラリス学院長が改めてそう言った。

 その言葉を聞いたミアの目が点になる。

「え?」

 ここで始めて事の重大さに気が付いた。

 裏山で神に出会ったことが、ここまで大事になるだなんて考えもしていなかった。

 ミアの中で想定していた最悪の事態は、せいぜい自分がその神に連れていかれることくらいだろうと、そう思っていた。

「朽木様の問題が小さく思えますねぇ…… これは……」

 グランドン教授が上を見上げながら投げやりに、発言ではなくボヤくように言葉を発した。

「だが、まさにその通りだ。クランドン教授には悪いが付き合ってもらうぞ」

 ポラリス学院長が意を決したかのように、まっすぐにグランドン教授を見ながらそう言った。

「そうですねぇ…… そうなりますよねぇ…… 我がどうにか成功させて見せましょうぞ。まあ、その後の朽木様のことは、サリー教授になり、カール教授になりお任せすることにはなると思いますが……」

 具体的な話は出ていないが、グランドン教授もポラリス学院長の言っている意味が理解できているようだ。

 要は、神が、しかも破壊神がだ、ミアに授けた苗木を使って、是が非でも泥人形の作成を成功させろ、という話だ。

 もし作成に失敗でもすれば、破壊神と朽木様、両方の怒りを買いかねない。

 ただ泥人形は魔術師が制作する使い魔の中では比較的安易で簡単な部類ではある。

 熟練の魔術師からすれば失敗するようなものでもない。

 問題はミアはまだ魔術師と言えるような存在ではなく、まだ一度も使い魔自体を作成したこともないという事だ。

 あくまで平均的な話だが、魔術を習い始めたばかりの生徒が泥人形を完成させられる確率はおおよそ三割程度だ。

 それは使魔魔術は元がそれなりに難しい分野の魔術だからだ。

 ミアが一人で泥人形を完成させられる確率はやはり三割程度だろう。

 だが、魔術学院の教授が付き添って指導すれば、そう難しいことはない。成功できる確率の方が格段に高い。

 グランドン教授も乗る気になったのも成功できる算段が高かったからだ。そして失敗する危険性より成功したとき得られる成果の方を取ったのだろう。

 何よりグランドン教授もミアには術式を組み立てる才能があると思っている。使魔魔術において術式を組み立てる才能はもっとも重要な才能と言える。

 ミアの描く陣を一度でも見た魔術師ならばそれがわかることだ。

「く、朽木様も…… 神族絡みの話ですので、怒るに怒れはしないかと…… それだけに、しばらくは不機嫌になられるとは思いますが……」

 遠慮がちではあるがサリー教授がそう言った。

「まあ、そうですね。朽木様とて破壊神相手では従うしかないでしょうし。まずはミア君の泥人形を完成させ、それをもって事後承諾していただくしか…… それと、精霊を頂きに行くのも、しばらくはやめたほうがいいかもしれませんね」

 カール教授も同意見のようだ。

 サリー教授とカール教授は共に朽木様とも朽木の王とも面識があり、二人の上位存在に人間個人として認知までされている。

 それだけにその怖さも知っているのだが、相手が破壊神ともなれば比べるまでもない。

「まあ、相手が破壊神となれば、そっちを最優先させねばなるまいてなぁ」

 ウォールド老も流石に今日は茶々を入れるようなことはしないようだ。

「それでいくしかないか。それと同時に、こちらでも学院の移転の話も進めておく。さらに一応、念のためではあるが、社を作り、ジュダ神の迎え入れの準備もして置いたほうがいいだろう。そちらの方は、ウォールド老に一任する」

 そう言われたウォールド老はげっそりとした表情を隠しもせずに浮かべた。

「破壊神の社なんぞどうすればいいのか、わからぬがやるしかないのぉ」

 ウォールド老もため息交じりに承諾するしかなかった。

 他に適任者がいれば、ダーウィック教授くらいのものだが、彼は彼で色々と動かしにくい理由がまた別にある。

 ダーウィック教授には、破壊神の社を作るなど言った、言うならば目立つようなことを任せられない理由が幾つかあるのだ。

「そ、そんな大事なんですか?」

 ミアが事の重大さに、発言というよりはその言葉を漏らしてしまう。

「ああ、この学院始まって以来、いや、この地方の最大の危機というべきだな。場合によってはこの地方が地図から消えることになるほどのな。領主殿にも至急連絡を入れねばならん。すまないが私は先にそちらを優先させてもらうので、皆はここで会議を続けてくれ。何か進展があれば院長室まで。それと…… カリナもここに残っていてくれ」

「わかった」

 カリナも頷く。彼女は一応、学院長の護衛役という名目だが、その力も知識も誰よりも高く深い。

 この場に残ってくれることが、この場に残された者達にとってどれだけ心強いことか。

「いや、待て。一応確認しておかねばな。もう一つの授かり物は知識だったな?」

 ポラリス学院長のその言葉に、マリユ教授が答える。

「はい。パンの作り方ですね。いえ、これは酵母の作り方というべき物でしょうけども」

 それを聞いたポラリス学院長は一瞬だけ眉をひそめた。

「パンか…… こちらももめそうではあるが、相手が人間であるだけ、まだましだ。商会の連中などいくらでも黙らせる方法はある。サンドラ教授。泥人形の件が一段落してからで構わないので、ミア君にも色々教えてやってくれ」

「はい、学院長。承りました」

 サンドラ教授の返事を受けてポラリス学院長は席を立った。

「では、すまない。後を頼む」

 ポラリス学院長がそう言い残して、足早に会議室を出ていった後、しばらくの間沈黙が支配していた。

 それを破ったのは、ウォールド老だ。

「では、一応は副院長のワシが議長をやってもかまわんかの?」

 その問いに異を唱えるものはいない。

「しかし、破壊神とな。相手が破壊神となれば、神格は間違いなく最上級じゃな。それとも…… 光の三貴神に仕える我ら、それと暗黒神の大神官殿が力を合わせれば、どうにかなる相手かの?」

 ウォールド老がそうカリナを見上げなら聞くと、カリナは黙って首を横に振った。

「じゃろうな。では、友であるというロロカカ神であればどうじゃ?」

 ウォールド老は若干の希望を込めてカリナを見上げた。

 ウォールド老のその視線を邪険に受けつつカリナは答えた。

「先ほども言った通り、私とてロロカカ神のことは名を聞いたことがある程度だ」

「ふむ、おぬしがそれしか知らないというロロカカ神も謎じゃのぉ…… 破壊神の友ともなると……」

「古き神々。古代神ですか」

 ダーウィック教授が誰に言うでもなく、ポツリとであったが、良く通る低く響く声でそう言った。

「……」

 そのつぶやきにカリナは睨むだけで答えない。

 数瞬の間、また静寂がその場を支配するが、それを破ったのはミアだった。

「古代神? それはどういった…… え? あれ……」

 ミアの視界が急に回転した。

 机に前のめりに倒れ込む。手で支えようとしたが手に力が入らない。

 かなり大きい音をして倒れ込んだため、ミア以外の全員の視線が集まる。

 ミアが歪む視界に耐えながらなんとか起き上がろうとするが、やはり体に力が入らない。

 歪む視界の中で、ミアが意識を失う前に見たものは、自分の手の甲にできていたまだ小さいが黄緑色の出来物だった。

「なっ、ど、どうして……」

 ミアはそう言って意識を失った。


 ミアが机に倒れ込んだ後、一番近くに座っていたフーベルト教授が駆け寄ってみると、ミアの体から幾つかのまだ小さい黄緑色の出来物ができていた。

 そしてミアの意識はすでになく、酷くうなされていて呼吸が荒い。

「これは…… ロロカカ神の祟り? なぜミア君に?」

 ミアの帽子の実験の際、立ち会ったフーベルト教授はその症状に見覚えがあった。

「その帽子だ。その帽子をとりあえず一旦脱がせろ」

 カリナがそう叫ぶ。

 フーベルト教授は言われた通り、ミアの被っている神器の帽子を恐る恐るミアの頭からとる。

 カリナがその巨躯なのに音もたてずに駆け寄ってきて、帽子を手に取り、その模様の三つの目と睨みあった。

 その睨み合いはしばらく続く。その間、誰の言葉もない。

 かなり長い間、カリナは帽子と睨み合う。それを教授たちが固唾を飲んで見守った。

 しばらくして、カリナはそっと帽子をミアの頭に戻し、ミアの半身を起こして首にぶら下がっているお守りを引きちぎった。

「全て解決した。だれかメリッサを…… すまない。ポラリス学院長を呼び戻してくれ」

 そう言った。

 ポラリス学院長の本当の名がメリッサと知らない者たちが数人訝しむ。

 その名はとある筋では有名な名でもある。

 そして、その名に納得せざる得ない。

 メリッサとは、カストゥール教の最高指導者、現大神官の娘の名である。

 噂では盛大な親子喧嘩の末、袂を分かったとされている。それはもう百数十年前の話になるのだが。




 誤字脱字は山のようにあるかと思います。

 指摘して頂ければ幸いです。


 なるはやで続きを書きたいな。

 ただの希望ですが。



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