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学院の魔女の日常的非日常  作者: 只野誠
旅は道なりではなく世は情けない

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旅は道なりではなく世は情けない その1

「新シトウス砦ねぇ…… 新とかついてるけど、ただの再建途中の砦…… というか、建設現場じゃない」

 新シトウス砦に着いた時に、スティフィが放った一言はそれだった。

 そこは砦というよりも、まさに再建を開始したばかりの工事現場であり、スティフィの言葉に誰も反論できなかった。

 ミアもスティフィの言葉に苦笑いしつつも周りを見渡す。

 ここにあるのは仮設の天幕ばかりだ。

 そこら中に建築資材が山積みにされていて、手も付けられていない状態だ。

 と言うか、まず整地から行わないといけないような状態だったりもする。

 始祖虫という存在が現れた場所はどこもかしこも地形が変わるほど荒らされる。

「ん? そうだぞ。もう闇の小鬼を抑え込む必要はないけど、立地的にここに騎士隊の基地があった方がいいらしいからな。再建するって話だぞ」

 エリックは当然と言った顔でそう言った。

 ミアからしたら壊されたとは聞いていたが、この領地で一番大きな騎士隊の砦と聞いていたので、もう少し砦としての形が残っているものだと思っていた。

 だが、この場所にはその残骸しかない。

 ミアとしては長年、闇の小鬼と閉じ込めておいたシトウスの壁というものを、観光気分で見て見たかったのだが、見渡す限りそんな物は微塵も残っていない。

 その辺に散らばっている破片が元々そうだったのかもしれないが、それが元々は壮大な壁の一部だったと言われても信じられないほどボロボロで粉々だ。

「そりゃまあ、長い間、動かせない重要な拠点があって、それを元にこの地域の騎士隊が広まっていったんだったら、そうでしょうけども」

 スティフィはそう言って周りを見渡すが、辺り一帯を巨大な何かが地面をこねくり回したかのような荒れ具合だ。

 ここに砦を再建するのも一苦労だろうが、長年騎士隊の基地として使われていた場所である。

 なくなればなくなったで不便なのだろう。

「よし、書類に判子も貰えたし、それを魔術学院まで送ってもらうよう頼んで来たぞ」

 エリックが資材管理をしている騎士隊員から、書類に判子を貰い嬉しそうにそう言った。

 それをしっかり届けたという証拠として、シュトルムルン魔術学院まで送り返す必要があるようだ。

 本来なら、そんなもの必要ないのだろうが、エリックがハベル隊長にも信用されてない証拠かもしれない。

 エリックは自他ともに認めるいい加減な男というのがうかがい知れる。

「それ、判子を貰う意味あんの?」

 と、スティフィがそう言って、エリックが届けた資材を見る。

 片手で軽々と持てるほどの物でそれほど重くもない。

 エリックは物資などと言ってはいたが、建築資材などではなく、なにかの魔術的な触媒か何かだろう。

「じゃあ、ここからひたすら街道を東へ?」

 と、ジュリーが落ち着かない様子でそう言った。

 再建中の場所だからだろうが、辺りを怒号が飛び交っているので、ジュリーとしては落ち着かないのかもしれない。

「いえ、今日はここで泊まりましょう! あと、キシリア半島を少し見て回りませんか?」

 そんなジュリーを見なかったことにして、ミアはそう提案した。

 ゆっくりと帰ってこい、そう言われたのもあるが、ミアとしても興味がある。

 正確な年月もわからないほど昔から、闇の小鬼を閉じ込めていた手付かずの半島だ。

 そこに何があるのか、ミアは気になっている。

「まあ、気にならないとは言わないけど、恐らく何もないでしょうに。闇の小鬼を閉じ込めてたのだって三百年くらいって話でしょう? それくらい人が入ったことなかった場所でしょうに」

 スティフィは飽きれた顔でミアにそう言うのだが、それに反論がいくつか出て来る。

「五百年…… くらい昔、という説もありますが…… やっぱり定かではないですけどね。わ、私も少し…… 気になります。恐らく…… 独自の進化をした生物体系を…… 見られますので……」

 サリー教授がそう言って、少し気味悪く笑い始めた。

 雑多な魔術を押し込められた自然魔術の系統ではあるが、本来は自然の力を利用した魔術の系統である。

 その為か、サリー教授は珍しい植物や動物、独自に進化した自然の環境に目がないのだ。

 それに、その夫になったフーベルト教授も、

「キシリア半島には元々は独自の神がいて、闇の小鬼を封じ込める際、快くこの半島を闇の小鬼を封じ込める場所に提供してくれた、という話もあるのでボクも気になりますね」

 と、神族研究家としての悪い癖というか、興味が出てきてしまっている。

「この学者夫婦は……」

 スティフィはそう言って憤るが、

「まあ、急ぐ旅じゃないですから……」

 ミアがそう言ってスティフィを宥めた。




「ミア、もう三日目よ?」

 借りた天幕の中、寝網とも言うべき柱から釣った網の寝台に溶けた様に身を預けているミアにスティフィがそんな声を掛ける。

 それに対してミアは目を開けずに、

「三日目ですね」

 と、めんどくさそうに返事をする。

 完全に腑抜けているミアにスティフィは、

「教授二人は?」

 二人の保護者の行方を聞く。

 ミアはやはり眼を開けないまま返事をする。

「奥地に神殿らしき遺跡が見つかったらしく、フーベルト教授はそっちへ。サリー教授は昨日と同じく一通り見て回っているようですね。昨日、新種の植物が見つかったとか言ってましたし……」

 返事をした後、ミアは隠しもせず大きな欠伸をして見せる。

 学院にいた頃なら、こんな怠けているミアを見ることはないが、今は学院にはいない。

 この様子を見るに、ミアが勤勉だったのは神の命があったからで、本来のミアが勤勉という訳でもないのかもしれない。

「見なさい、ミア。エリックなんか下働きとして騎士隊にこき使われているわよ?」

 天幕の出口から、エリックが荷物持ちとしてせわしなく走り回っている姿が見える。

 だが、そのエリックの顔は嫌々やらされている、と言った表情ではない。

「元々エリックさんは騎士隊見習いなので、いいんじゃないんですか?」

 薄目を開けてエリックを確認したミアはそんなことを言った。

 更に、初日こそオドオドしていたジュリーが今や騎士隊を相手に商売まで始めている様子も目に入る。

「ジュリーなんてサリー教授が採取して来た薬草から水薬を作って商売始めてるわよ」

 その大半は魔力の水薬などで大した物ではないが、それでも物資が基本的に足りていないこの場所では重宝されているようだ。

 作れば作るだけ、売れてジュリーも笑顔になっている。

「ジュリーには、その公的な資格も魔術師としての腕もあるのでいいんじゃないですか?」

 ジュリーが持っている魔術師証明書にはその許可と権利が保障されているものだ。

 なんの問題もない事だ。

 ただ、長い事続ければどこかしらの商業組合が、なんらかの言いがかりをを付けてくるかもしれないが、それはまた別の話だ。

 それに流石にそこまで、ここに滞在することはないだろう。

 その返答を聞いた後、スティフィはミアに視線を向ける。

 ミアは完全に寝網に身を預けたままだ。

「で、ミアはいつまでそうやってぶら下がっているの?」

「やることないですからね……」

 スティフィの問いに、少しの間を置いてミアが答える。

 今のミアはやることがないのだ。

「騎士隊の方で始祖虫が残して行った虫種の退治の募集があったけど?」

 始祖虫が生み出した数々の虫が、このキシリア半島には多数生息している。

 中には危険な虫種も存在すると言うことで、その虫が定着する間に駆除するという話も上がっているのだが、騎士隊も手がそこまで回っていない現状だ。

 そこで広く募集を出して協力者を募っているようだ。

 それを思い出したようにスティフィが提案するのだが、

「虫種にはあまり関わるな、と、私は言われているので」

 そう言ってミアは寝網の枕に顔をうずめた。

 ミアが今、言ったことがミアがこうしている最大の理由だ。

 ミアも最初こそ、キシリア半島を探索する気でいたのだが、そのキシリア半島は始祖虫が生み出した数々の奇怪な虫種が溢れかえるように存在していたのだ。

 荷物持ち君や大精霊、更には御使いがいるミアに危害を加えられるようなものはいないだろうが、それでも虫種は危険だ。

 小さくても致命的な毒をもつ種も存在する。

 ミアとしては、門の巫女となって者としては、そんな危険な場所への立ち入りをするわけには行かなかったのだ。

 その結果が、寝網の上で半ば拗ねている今の状態となっている。

「そういやそうだったわね…… 暇ね」

 スティフィは確かに今の状態のキシリア半島にミアが入るとなると自分でも止める、と、そう思う。

 虫種が多く存在する北出身のスティフィですら、見たこともない虫種が存在している。

 どれもこれも始祖虫が生み出した原始の虫種らしい。

 虫種のすべては始祖虫から生み出され、そこから環境に適応し進化し枝分かれしていくのだ。

 その元となる虫種達がキシリア半島には溢れているのだ。

「暇ですね……」

 と、ミアが枕に顔を付けながらそうつぶやく。

「どっちかに付いて行けばよかったじゃない?」

 そんなミアに対して、スティフィはそう言うのだが、

「始祖虫の出現した場所だけあって、始祖虫が生み出した虫種がやたらと多いんですよ。結局、私はついて行けませんよ」

 と、堂々巡りのような話をする。

 まあ、現状を一言で言ってしまうと、ミアはキシリア半島に自分だけ入るわけにはいかなくて拗ねているだけだ。

「確かに。どんな虫種が潜んでいるかもわからないしね……」

 スティフィは既にめんどくさい、そう思いながらもこの堂々巡りの会話に頷き、表面上は同意しているように振舞う。

 それをミアも分かっているのか、話しの方向性をかえる。

「そう言えば、虫種自体ダメな人っているらしいですね。私は割と平気ですが、毒持ちはやっぱり嫌ですね」

「確かに外見が気持ち悪いからね。この世界で生まれた生物じゃないと言われても納得だわ」

 そう言われたスティフィは確かに気持ち悪い形をしていると同意する。

 ただ虫の本場である北の地で育ったスティフィとしては既に慣れてしまっているものもある。

 さらに言うとそれを使った拷問などもした覚えがある。

 あれはやっておいてなんだが酷いものだった。

「スティフィも苦手だったりします?」

「北は虫が多いのよ。だから、もう慣れてはいるわね」

 そう言いつつも、スティフィも素手で触れる程度だ。

 食用となるとまた話が変わってくる。

 そういう意味では、ミアの方が慣れているのかもしれない。

 ミアの住んでいたリッケルト村では虫種すらも食料の一つだったというのだから。

「虫種は北から来たという話ですからね」

「正確には北の地にいる始祖虫が生み出した、という話ね」

 スティフィがミアの話を補足する。

 そうすると、ミアは寝網から半身を起こして、その話に夢中になり始める。

「虫達の楽園とか言う場所でしたっけ? 竜の山脈の更に北の先にあるっていう…… なんで竜達はその始祖虫を襲わないんですか?」

 竜種からすると虫種は御馳走なのだ。

 特に始祖虫ともなると何にも代えがたい御馳走になるそうだ。

 それなのに、竜種達は北の地にいる始祖虫にはまったく手を出さない。

 それどころか、始祖虫を守るように北の地の山脈に陣取って、他の生物の侵入を許さないでいる。

「んー、本当かどうか知らないけど、その始祖虫が成虫になってこの世界から旅立つのを待っているとかどうとか…… そんな話よ」

 スティフィもエリックが熱弁しているのを聞き流していただけなので、詳しくは知らないし、ミアもその話を聞いていたはずだ。

 いや、ミアがそんな事を聞いて来たと言うことは、ミアも恐らくエリックの話を聞き流していたのだろう。

「あー、飛竜がそれを追っていく竜で、地竜がここに残る竜なんですっけ…… エリックさんが、そう言えばそんなこと言ってましたね」

 スティフィの言葉に、ミアの脳裏にエリックが熱弁している姿が思い起されていく。

「アイツ、竜の話だけはやたらと詳しいのよね」

 スティフィが呆れながらそう言った。

 そこでミアが寝網から完全に降り立ち、身だしなみを整え始める。

「さて、いつまでもダラダラしてられません。何かしますか?」

 と、ミアはそう言うのだが、ミア自身何も思いつかない。

 ならば、さっさと出発しても良いのだが、保護者代わりの教授二人が二人ともこの地に夢中になっているのだ。

 この地を出発するのはもう少し先になるかもしれない。

「何するの?」

「図書館でもあったらよかったんですけどね……」

 スティフィに聞かれたミアは、学院の図書館を懐かしむ。

 あそこなら延々と時間を潰すことが出来たのに、と。

 それを聞いたスティフィが、

「元々はあったらしいわよ、ここにも」

 というのだが、ミアは半笑いを見せるだけだ。

「今は全部吹き飛ばされたみたいですね」

 この様子ではもう跡形もないし、もう始祖虫出現から一、二カ月経っている。

 図書館とやらに保管されていた本が地中に残っていても、もうダメになってしまっているだろう。

 そこへエリックがやってくる。

「おっ、二人とも暇そうだな。丁度いいんで手伝ってくれないか?」

 エリックは暇そうにしているミアとスティフィを見つけて、ニヤリと笑う。

「なにをですか?」

 ミアは暇を潰せるなら、何でもいいとばかりに興味を引かれる。

「嫌だけど、ミア次第で……」

 スティフィはエリックが笑っているのがどうにも引っかかるようだ。

「瓦礫に埋もれてた図書館の一部? というか一室? が出て来たらしいんで、それの仕分けを……」

 と、エリックが言うと、それにミアが食いつく。

「やります! 大歓迎です!」

 目を輝かせてそう言うミアに、スティフィがめんどくさそうな顔を露わにする。

「あー、めんどくさそう。ついてくだけはついてくけど……」




 白い大きな鰐、白竜丸の背に乗り三人は街道を行く。

 すれ違うものは皆、驚いた表情でその鰐を見て行くが、その背に乗る者達に声を掛けて来ることはない。

 道行く行商人からしても、関わるべきでない、とそう一瞬で判断される異様な雰囲気を鰐だけでなく、その背に乗る者達からも感じ取れるからだ。

 そんな者達が行く街道も闇の小鬼達に荒らされた跡しかない。

 村があった場所など、その悲惨さがわかるほどだ。

 滅ぼされた村はどこもまだ手つかずのままだ。

 恐らく復興が始まるのは、来年、雪が解けてからだろう。

 もうすぐ厳しい冬が訪れるこの地域で、今から復興作業をしても中断されるだけだ。

 騎士隊の様に豊富な資金と人員がいれば、また別の話だろうが。

 そんな酷く寂れてしまった街道を行っていると、落ちないようにマーカスとアビゲイルに挟まれているディアナが突如として暴れ出す。

「止まれ、止まれ、止まれ、止まれ、これ以上は進むの、ダメダメダメダメ、止まって止まって止まって、止まれり、止まれ」

 そう言って白竜丸の背の上で大暴れをし始める。

 聖獣となった白竜丸が迷惑そうに背の上を見上げるほどだ。

 マーカスは白竜丸の背を軽くたたき、白竜丸の足を止める。

「なぜです? もしかしてミア達をすでに追い抜かしてしまったとかですか?」

 そして、自分の後ろで暴れているディアナに声を掛ける。

 だが、それに答えたのはアビゲイルだ。

「あー、そうかもしれませんねぇ。ミアちゃんはアイちゃん様のせいで、ゆっくりとした旅路らしいですし。というか、合流してはダメなんですかぁ?」

 アビゲイル的にはどうせなら合流して、まっとうな旅にしたいとそう思っている。

 なんというか、この旅はとても野性的な生活を強いられる。

 そんな旅になっている。

 ディアナもアビゲイルもそういう生活には慣れているため文句はないのだが、合流して文化的な旅ができるなら、それに越したことはない。

「だめだめだめだめ、それはダメ」

 アビゲイルが聞くと、ディアナは更に暴れ出した。

 マーカスはとりあえず落ちないようにディアナのことを手で押さえつつ、アイちゃん様と言う言葉が気になって聞き返す。

「そのアイちゃん様ってなんですか?」

 マーカスはアイちゃん様に会ったことがないので、その異様な存在を理解できていない。

「私も詳しくは知らないんですが、闇の小鬼を焼き固めて作った目玉の御使いらしいですよぉ」

 だが、帰って来た答えにもマーカスは理解できない。

 恐らくは言葉の意味そのままなのだろうが、それがわかっていても理解が追いつかない。

「聞いたら余計わからなくなったのですが?」

 マーカスの理解の範疇を超えていたので、余計に混乱していると、ディアナが更に暴れ出す。

「見つかる! 見つかる! 戻れ! 戻れ! 戻れ!」

 ディアナがこれだけ警告を発すると言うことは、ディアナに憑いている御使いの意志なのだろう。

 それに逆らう意味もない。

 マーカスにもなぜミア達を合流してはいけないのか、それも理解できないが、御使いの言葉ならそれに従うしかない。

「白竜丸、少し戻ってください。じゃあ、少し戻ったあたりで今日は早いですが野営しますか……」

 マーカスがそう言うと、白竜丸は踵を返し、めんどくさそうに来た道を戻り出した。

 そうするとディアナがやっと静かになる。

「というか、お二人は事情をなんか知っている感じなんですが、私だけ何も知らないんですがぁ? そろそろ説明してくれませんかねぇ?」

 大人しくなったディアナに覆いかぶさるようにしながら、アビゲイルはそう聞くのだが、

「俺も詳しくは知りませんよ。冥府の神に言われた通りに行動しているだけです。この先何があるかなんて知りませんよ」

 と、マーカスは答えた。

 恐らくそれは真実で、マーカスも事情を詳しく冥府の神から聞いているわけではない。

 ディアナは知っているだろうが、詳細を聞き出すのは困難だし、教えてくれるとも限らない。

「巫女様守る! 守る! 守る! そのために来た来た来た来た!」

 と、元気よくディアナは答えているが、具体的な内容はやはりわからない。

「ディアナちゃんは理解しているようですが、相変わらず要領を得ませんねぇ。まあ、ミアちゃんと合流せずに、ミアちゃんを守れば良いって感じですぅ?」

 とりあえず目的だけは把握しておこうとアビゲイルがディアナに聞くと意外にも分かりやすい返答が返って来た。

「そう、そう、そう、そう。それまでは付いて行く付いて行く」

 どうも、ミアにバレないように付いて行って、助けろ、というのだ。

 ただ、現状だと、どの程度ミアに近づくとばれるのか、それも不明のままだ。

 その状況で助けろ、と言われてもやりようがない。

 ただ、アビゲイルは少し驚いている事がある。

「ふむぅ、ディアナちゃん、以前よりも意思疎通ができるようになってませんかぁ?」

 以前はもっと意味不明な言い回しをしていたが、今のディアナはとても表現が直接的だ。

 それだけ、ディアナについている御使いがアビゲイルやマーカスにまで伝えたいという意志が強いのかもしれない。

「約束の時が近いとか言ってましたし、そのせいじゃないんですか?」

 マーカスもマーカスで、何も理解できてはいない。

 ただ神に、冥府の神にいられたことをしているだけだ。

 そして、マーカスはそれに大人しく従うつもりでいる。

「約束の時、まだ、まだ、まだ、先先先先、巫女様助けた後、後、後」

 だが、ディアナはそう言って再び暴れ出した。

 アビゲイルはそれを自分の体で抑え込みながら考える。

「ミアちゃんを助けた後、約束の時が来るという訳ですかぁ……」

 そして、アビゲイルは少しづつ状況を整理していく。

 とはいえ、結局のところ、今理解できているのは、ミアにバレないように後から付いて行って、なにをするのかわからないが手助けすればよい、と言うことだ。

 恐らくはその時が来れば、ディアナがまた教えてくれるだろう。

「確かに、意思疎通できるようになってますね。そもそも前は俺がなに聞いても、ほとんど何も答えてくれなかったのに」

 マーカスはディアナを不思議そうに見ながら、そんな事を思う。

「まあ、同じ役割を貰った仲間と言うことで認めてくれたんでしょうかねぇ」

 それに対してアビゲイルはてきとうにそんなことを述べる。

 ただ内心では、想像以上に厄介なことに巻き込まれた、そう考えてはいる。

 だが、アビゲイル的にはそれもまた嬉しい事でもある。

 これから訪れるであろう厄介ごとにアビゲイルは嬉しそうな表情を見せる。






 万が一、いや、千が一、百が一……

 十が一、誤字脱字があればご指摘ください。

 指摘して頂ければ幸いです。

 少なくとも私は大変助かります。


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