第八十二話 優良鉱山の採掘と鉱山鉄道
その東方山岳戦線の優良鉱山だが、黒い森の迷宮とは距離がある。元々鉱山が迷宮化した場所だったが、ダンジョンコアを破壊して、元の鉱山の姿に戻ったものだ。ダンジョンコアを破壊したのは、エイダの召喚したヴァルキリーだけどね。
鉄鉱石と石炭が主な算出品だ。少量ではあるが金、銀そしてダイヤモンドが算出する。あるいは、ごく少量の翡翠石、水晶、銅、白金などか。残念ながら、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイト、ヒヒイロカネといった特殊な鉱物は発見されず。
取扱品目の少ない黒い森の拠点としては、鉄、金、銀のインゴットは貴重だ。是非とも、鉱山採掘を継続したいものだ。幸い、まだ鉱山が崩壊する兆しは見えず、採掘は順調だ。それに豊富な鉱脈があるお陰か十分な産出量があると思われる。まあ、俺一人の作業だが、俺の魔力を吸って迷宮がその姿を維持しているとでも言うのだろうか。俺の魔力が良い方向に作用しているのではないだろうか。
鑑定することによって、壁・天井が崩れないことと、鉱物資源の位置・種類を確認しながら、俺は土属性魔法を使い、鉱物を含んだ岩、土をバックパックに取り込み、中で仕分け、分別し、鉱物以外を取り出し、硬化、押し固める。これで鉱山が崩れる心配も排除だ。
俺の鑑定の力が、鉱物資源へと導いてくれる。他の鉱夫達から見たら、もうズルもいいところだろう。チート能力もいいところだろう。落盤事故でも大丈夫なゴーレムを使って、採掘、運搬、精錬までやってしまおうか。自動化してしまいたい。
それに、東方山岳地帯にはまだまだ良質の鉱山が眠っているような気がする。探せばよい鉱山資源が見つかることだろう。それを見越して、精錬作業も炭焼き工場の隣で始めてしまおうか。いっそのこと製鉄所も作ってしまおうか。幸い質の良い石炭も取れる。製鉄には、石炭を一旦、千二百度の高温で蒸し焼きにして、石炭の中の炭素以外の不純物を揮発させたものを使う。炭素以外の不純物を含まないものが質の良い石炭だ。そしてこのコークスづくりに役立つのが炭焼き工場という訳だ。
俺は、いつの頃か、”石読み”のスキルを身につけたようだ。
さて。優良な鉄と石炭を作り出したら、それを大量消費してくれる相手を作らなくてはならない。ブラウン卿にでもやってもらおうか。鉄道事業を。大量の鉄と石炭を必要とする鉄道事業を。コンテナ輸送は、かなり儲かるだろうな。まずはマルーン帝国の帝都ベルーナとキャメリア王国の王都パリスを結んでしまおう。この二点間は比較的平地で高低差があまりない。鉄道による大量輸送にはもってこいだ。
コンテナで運ぶものは、紡績機を始めとする産業用機械、小麦などの食料品、酒樽などの飲料品、石炭を始めとする燃料、鉄鉱石やインゴットなどの鉱工業製品、ブドウなどの農産品・青果物、そして魔石や魔導給湯器などのように、生活に密着した様々な物資を輸送できるだろう。
ハブ駅からの馬車輸送も考えておこう。そのままでは運べる重量ではないので、重量軽減装置の付いたコンテナ運搬専用荷馬車の登場だな。反発盤の原理が応用できるだろう。いずれはトラックか。フォークリフト替わりのゴーレム、コンテナ輸送基地、温度管理のできる冷凍庫などなど、様々な付帯事業が思い浮かぶ。マルーン帝国で付き合いのあるショット商会は、この量の物流を捌ききれるのだろうか。
そして忘れてはいけない人々の流通。所謂、旅行業だ。マルーン帝国もキャメリア王国も独自の文化を何世紀も紡いできた国々だ。見るべき観光地は多いだろう。ハブ都市でのホテル業、観光向け車両、娯楽、芸能、カジノ。もうどれから手を付けたらよいのだろうか。
あの事業もこの事業も、株式を発行して、王族や貴族たちに出資者になってもらおう。ビジネスの種は色んなところにある。先見の明を持ち合わせた先駆者には、それなりの創業者利益をもたらす仕組みが必要だろう。例えそれが、貴族社会を狂わすものだとしても、人々が自由に、ビジネスを行える環境は大切だろう。
ならば、株式マーケットを立ち上げ、資本主義を一気に導入してしまおうか。と、大風呂敷を広げても、そう簡単にはいかないか。
さて、話がそれた。石炭を燃やすと、石炭に含まれる硫黄酸化物や窒素酸化物が大気中に放出され、酸性雨の原因になると言われている。この異世界でもそんな公害の一因となるものを持ち込んだら、将来の禍根となるだろう。確かに、石炭は他の化石燃料に比べて大気汚染の原因になる物質が多いことがわかっている。
がしかし、今日では、研究開発が進み、技術が進歩し、窒素酸化物はアンモニアと反応させ窒素と水に分解するなど、有害物質の九割以上を取り除くことが出来るようになっている。環境破壊問題はあるまい。
そうそう、大陸横断鉄道の前に、鉱山トロッコを導入するところからだよ。足元をしっかりと踏み固めてからだよね。まずは、鉱物運搬用のトロッコ型ゴーレムの開発が優先事項だ。
エイダ:マルーン帝国陸軍参謀少将カール・フォン・ブラウンの三女で召喚士。ヴァルキリーを召喚できる。




