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初めての異世界探索:頼りの武器はバックパック?  作者: サトウ トール
第三章 新型 第四節 一年の締めくくり
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第七十八話 公開プロポーズ

 その後、クロネコ商会は順調に取引を積み重ね、二月、三月を乗り越えていく。クロエは、ララアさんに師事して家事全般の運営を、ケイトに師事して商会全般の運営を学ぶ。まあ、基本というかさわりだけだろうけれど、クロエの基礎能力の高さもあって、イーサン商会に出しても恥ずかしくない出来となったと聞いている。




 まあ、ララアさんとケイト、二人にお任せなのだよ。なにせこちらは、フラッシュモブダンスの練習に大忙しだ。知らないのは、クロエ当人とララアさんとケイトの三人。







 そして、約束の四の月、一の日。俺は三か所の神棚を神妙に巡回していった。「どうぞ、クロエとイーサンを祝福してください。」


 そして、イルメハの迷宮へと向かい、拠点から九人の航空魔導部隊とイーサンを乗せて、新型マザーシップに乗り込む。クロエとの公開プロポーズのためにコザニの町へ移動するのだ。




 イーサンは、自動運転飛行中の母船でもダンス中の立ち位置、段取りの確認、そしてプロポーズの姿勢やセリフの練習だ。そう、右ひざを付き、両手でプロポーザルリングを差し出すあの姿勢だね。




 ボディバランスに優れ、運動神経の良い、航空魔導部隊のモブダンスは秀逸だ。その部隊メンバーが集合して花道を作り、曲に合わせて花道を開いていく。花道の一番奥には、赤いバラの花束を抱えたイーサンの姿。花道には、赤いカーペットを敷き詰め、花嫁に向かって一歩ずつ歩みを進める。今回のハイライトだ。是非成功させたい。クロエを驚かせたい。




 練習では、俺がクロエ役を務める。花束を受け取った俺の前で、イーサンは片膝まづき、プロポーザルリングを取り出し、プロポーズ。クロエ役の俺は、泣き崩れるのを堪えて、はいと返事をかえす。




 ――楽しみな仕上がりだ。さあ、クロエを驚かそう!







 春の陽気に誘われて、生き物たちがその生命を謳歌する。南からの暖かい風が、青葉の息吹を運んでくる。何かが起きる、あのワクワク感をもたらしてくれる。




 翌日、コザニの町は晴天に恵まれ、イベント日和だ。朝から露店市場がにぎわっている。家族づれ、若者たち、老若男女問わずのカップル、多くの露店商人たち。人の行き来も盛んだ。自警団ジャッジメントの仕事も大変だな。あとでヤマネコのレオンにも差し入れをしておこう。




 中央の公園広場で、いつもはないのに何故か、領主館に向けて設置された長ベンチが一脚。そのベンチの前は、五十人程度が踊れるスペースが確保されている。百機のドローンがスタンバイ。準備は万全のようだ。




 お昼過ぎ、俺は、クロエとララアさんとケイトの三人を連れ立って、クロエの仕上がり状況を聞きながら、




「もう準備は大丈夫かな? もうお嫁に行きたくてうずうずしているんじゃない?」

 と花嫁に声をかける。クロエの満面の笑顔が眩しい。




 春の日差しのせいだけではあるまい。この二か月の修行の話しをしながら長ベンチへと、誘導。クロエを中心に、右にララアさん、左にケイトを座らせる。




 百機のドローンが一斉に飛び立つ。天空から軽快な行進曲が流れ、同時撮影が始まる。クロネコクランメンバー四十五人が隊列行進をしながら、ダンスエリアを確保していく。三人がクランメンバーに気づき、何事かと驚いている。公園広場には、「何事が起るの?」と多くの人が集まりだした。成り行きを見守っている。さあ今日、準備している曲は二曲だ。




 アンジーさんにアイコンタクトを取り、B〇uno M〇rs の“Just the Way You Are“を流す。百機のドローンが大活躍だ。続いて、四十五人のフラッシュモブダンスの始まりだ。周囲の観客から一斉に声がかかる。




「ララアさん、ケイト。クロエを逃がさないようにしっかりと掴んでおいて!」

 俺の声に二人が両サイドからクロエの腕を抱える。




 俺は長ベンチの後ろに立ち、全体を見渡す。可愛らしいチルドレンの素晴らしいモブダンスが観客の目をくぎ付けにしている。皆、見るのも聴くのも初めてだろう。こんな娯楽はこの世界では初めてだろう。簡単なフラッシュモブダンスだけれど、手作り感満載だけれど、きっと度肝を抜かれているはず。きっと喜んでくれているはず。




 一曲目が終わる。周囲からは大喝采と大歓声だ。アンジーさんにアイコンタクトをとり、チルドレンに周囲の観客に向けて手を振らせる。長ベンチに向けて手を振らせる。大歓声が更に盛り上がる。




 続いて二曲目、Dコード、エイトビートで始まるダンスナンバーが流れる。B〇uno M〇rs の “M〇rry You”が鳴り始める。




「KUROE This Is For You」

 長ベンチの前に回って、素敵な花嫁の手を取り、起立させ、俺はそう声をかける。ララアさんとケイトも立ち上がる。クロエは、驚いた顔でララアさんとケイトと顔を見合わせる。二人とも驚いているが。




 ボディバランスに優れ、運動神経の良い、航空魔導部隊のモブダンスは秀逸だ。その航空魔導部隊の子たちを筆頭に、入れ代わり立ち代わり、チルドレンがクロエの前でそのダンスを披露し、クロエを祝福していく。クロエは驚きと感動で、両手で口を覆ったまま、ニコニコしている。時々ララアさんとケイトと顔を見合わせては、笑っている。




 いよいよ佳境に入り、チルドレンが集合して花道を作り、曲に合わせて花道を開いていく。花道の一番奥には、赤いバラの花束を抱えたイーサンの姿。花道には、赤いカーペットを敷き詰め、花嫁に向かって一歩ずつ歩みを進める。クロエは気づいただろうか。




 愛しい彼氏の姿を見つけ、驚きで泣き崩れそうになるクロエ。両脇からララアさんとケイトが支える。




 マリーユーの曲が終わる。静寂が流れる。大観衆も固唾を飲んで見守る中、イーサンが、しっかりとカッコつけながら、満面の笑みをたたえて、クロエに一歩ずつ近づいていく。絵になる奴だ。美しい花嫁は涙で顔がくしゃくしゃだ。




 イーサンが、クロエに花束を渡し何か声を掛ける。花束を受け取ったクロエが頷く。イーサンは片右膝をつき、プロポーザルリングを取り出し、プロポーズの言葉を伝える。




「クロエ、僕と結婚してくれるかい?」




 クロエは、泣き崩れるのを両脇からララアさんとケイトに抱えられてやっと堪える。「はい」と返事をかえすのがやっとだ。




 これらの声はドローンが拾って、拡声されている。一瞬間があって、大歓声が沸き起こった。イーサンが、優しくクロエを抱きしめる。チルドレンが二人を取り囲む。おめでどう。お幸せに。の大合唱だ。いつまでも鳴りやまない大歓声の中、二人が手を振り大観衆に応える。




 上空のドローンからは、ジャストザウェイユーアーが再度流れている。




 クロエ、おめでとう。お幸せに。


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