第七十五話 冬空の元 届けあなたへの想い
次の日、コザニの拠点で朝食を共にし、俺は町長宅にカーター男爵を表敬訪問する。まあ、予約はしてはいないが。
コザニの町の北門から中央へと歩みを進める。町の中央には公園、噴水が設置され町民の憩いの場となっていて、多くの町民たちで賑わっている。若い男女二人や子供たちの姿も目に付く。治安もいいのだろう。俺がこの町に来た頃とは大きな違いだ。町に活気を感じる。
町の人口もかなり増えたようだ。その南側に男爵邸がある。石門の前で長槍を装備した衛兵が出迎える。
「クロネコ商会のトールだ。カーター男爵へのお目通りを」
「これは、トールさま。残念ですが、カーター男爵は、ただいま来客中です。」
「そうでしたか。新年のご挨拶をお届けにあがりました。お渡し願います。」
俺は、ブランデーとウィスキーの四斗樽を二樽、預けてお願いをする。
「それとこれは、皆さんでどうぞ」
ワイン樽をこちらも二樽、預けてお暇をする。
来た道を戻り、北門を出て、門前街道の出店を冷やかしながら、迷宮入り口のクロネコ商会本部へと向かう。黒いヤマネコのレオンを撫でなければならない。
本部の屋根から手荒い歓迎を受ける。
「よしよし、この町を頼むぞ、レオン」
俺は襲い掛かってきたレオンを正面から受け止め、首筋を撫でる。目を細めて歓迎してくれるレオン。可愛いぞ。
クロネコ商会本部は、ケイトの領分だ。まだ十一歳のはずなのに、大人顔負けのビジネスマンだ。特に危機管理と生産管理に才を発揮する。何度もその慧眼に助けられたことか。手伝いには、マーカスが付いているが、今年十二才になったロベルトもいる。
髪色はピンクブラウン。膨らみを保ったショートカットに、サイドを少し長めに残し、ボーイッシュになりすぎないスタイル。淡いブルーの瞳に長い目尻。大分身長が伸びた。いや脚が伸びた。格好良いスタイルになってしまった。タイトパンツ? スキニーパンツが似合いそうだ。
ララアの才能管理、ケイトの危機管理はうちのクランの大きな武器だ。こればかりは、アンジーには期待できない。まあ、それぞれ領分があるということか。
ケイトと赤ワインを挟んで、ランチをとりながら、去年の出来について意見を交わす。食料品、飲料、山の産物、街の生産物など順調だった。まあ、まだ立ち上がったばかりの商会だから、無理はしない。俺の目の届く範囲で生産を継続できればそれでよし。今年は、少しずつ、みんなに仕事を覚えてもらおう。商会のメンバーには、ほかに十一歳の女の子ベナサール、セニューそれに十歳の男の子ジャレットがいる。みな、ゴブリン退治に駆り出されレベル上げにも励んでいる。
商会の活動もいよいよ第二段階になろうとしている。町へと続く街道の整備にも着手したいところだ。
ララア、ケイト、そしてアンジーは、今年十一歳になる女の子たち。俺がこの町に来たときからのストリートチルドレンであり、中核を担ってきた子たちだ。小さいころから三人一緒で、結束は固い。お互いの信頼も強い。芯の強さもピカいちの三人だ。
このクランは、この三人でもっていると言っても過言ではないだろう。確かに年上はクロエだが、組織を見渡す、運営していく能力では遠く及ばない。俺がこの三人を手放すことはないだろう。可愛い娘たちを嫁に出すものか。
そう言えば、マルーン帝国のエイダを放りぱなしだったわ。元気にしているだろうか。東方山岳戦線の押し上げで、姉の「マルーンの激情」ことアマンダと二人、ヴァルキリー隊として戦線配備されているはず。シャインズ王国の奥深くまで行ってしまっただろうか。急激な戦線拡大は、補給線の間延びを意味する。
それとその先にあるケイナ国は信用ならない。できれば、シャインズ王国とは休戦協定を結んででも、ケイナ国に対峙したいものだ。さて、どんな状況なのだろうか。
ここにきて、巨大大陸の帝国のことが気になりだす。ブラウン家の三女エイダのことも気掛かりだ。まあ銀騎士部隊を預けてきたのだ。そうそう撤退するようなことはないだろうが。
今年から錬金を担当させているサキの様子を見ながらも、そんなことを考えていた。ポーションの精製がある程度できたので、他の生産場所の様子を巡回に出る、明日には、マルーン帝国に入り、ブラウン家に出向いて、様子を確認することにしようか。




