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初めての異世界探索:頼りの武器はバックパック?  作者: サトウ トール
第三章 新型 第四節 一年の締めくくり
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第七十三話 虫歯の原因は、異物混入

 新しい年を迎えて、俺たちはまた一つずつ年をとった。町全体で新年をお祝いする風習があるようで、その日は町中で皆が遅くまで騒いでいた。クロネコ商会も新年のお祝いにお酒を提供している。



 今年も家族たち皆が無事に新年を迎えられて、喜ばしい限りだ。



 こちらの世界では、お正月三が日などあるわけもなく、クロネコ商会も新年初日から通常営業だ。朝の仕事が終わり、玉串奉奠――玉串を祭壇に捧げる儀礼――を執り行い、玉串に自分の心を託して神様に捧げる。







 さて、マルーン帝国から仕入れて来た小麦の出来はどうだろうか。コザニの製粉工場に持ち込んだ小麦の品質について結果を聞きにいく。




 商人から仕入れた小麦には、小麦以外の様々な不純物が混じっている。これらの不純物をきれいに取り除く精選工程が、高品質な小麦粉製造の第一段階。



 不純物には様々なものがある。石ころ、麦わら、とうもろこしや大豆などの他の穀物などがある。また、小麦でも身の細い成長不良からは、良質の小麦粉はとれないので、精選工程で取り除く。不純物が小麦と一緒に製粉され、パンに焼かれ口に入れたときに



 ――ジャリッ



 っと、音がした日には、慙愧ザンキに耐えない。それだけならまだしも、砂を噛んだ歯のエナメル質が剥離すれば、そこから虫歯になり、いずれは抜け落ちてしまう。俺の家族たちの歯を守らなければならない。



 また、不純物が入ると雑味が増え、色、味、風味など品質劣化をもたらす。不純物をきれいに取り除く精選工程が、命なのだ。



 まずは、小麦と極端に大きさが異なる、砂や麦わらなどをフルイにかける。次に、小麦と大きさがよく似ている小石は、比重の違いを利用して選別する。特に、小石は小麦を石臼で挽いたときに臼を傷める原因になるので、完全排除が必須だ。雑草の種子や身の細った小麦も、比重の違いを利用して選別する。



 様々な選別を繰り返し行い、小麦だけを取り分け、次の工程へ進む。小麦自体にまだ、ちりやほこりや汚れがついているので、それを落とす。小麦をきれいに磨く。小麦を金網を使ってこすり合わせる機械で、小麦同士または小麦と金網との摩擦で、小麦についている汚れを除去する。そして最後に、小麦に風を当てて、表面の汚れを吹き飛ばす。



 こうして、仕入れた小麦は、粒の揃ったきれいな小麦だけを残す。




 第二段階は加水だ。小麦に水を加えて放置しておくと、水分がだんだんと中心部分に浸透し、全体がしっとりと落ち着く。胚乳部は柔らかくなって粉砕されやすくなり、また逆に表皮は引き締まって強くなる。こうして表皮が混入せずに、胚乳部だけを取り出しやすくなる。加水する量の調整が命だ。




 第三段階は、破砕ハサイ粉砕フンサイだ。小麦を大きく割る破砕ハサイ、粉にまで細かくしてしまう粉砕フンサイ。一気に上質な小麦粉まで粉砕することはできない。段階を踏んで、粉砕とフルイを繰り返し、一つずつ上質な小麦粉に仕上げていく。




 この面倒くさい段階式製粉方法によって、製粉工場は大規模なものになってしまったのだが。




 以前コザニの町で行われていた小麦製粉は簡単なものだった。小麦を水車の力を利用して石臼で挽いて、フルイにかけ、網の目を通り抜けたものが小麦粉になる。ただし、皮の部分も小麦粉に混じり、パンがごわごわして、食感もよくないという重大な欠点がある。表皮が混じると、食物繊維やビタミン群などが摂取でき、健康に良いのは確かだが、他にも小石が挽かれて、パンに混じると最悪だった。



 こうして俺たちは最高品質の小麦粉から、多少質の届かないものまで、商品を取りそろえて、卸売市場に供給していく。マルーン帝国産の小麦は、上出来だった。製粉大手工場としての地位を確保できそうだ。




 主食の小麦の次は、精肉加工か。黒い森の周辺の魔物からとれる肉量では足りないだろう。他の迷宮産のオーク肉などを運んでくるしかあるまい。そしてここコザニでは、最近はベリーの収穫がはかどり、ジャムの手作りが盛ん。甘いものは正義だった。そして、馬鈴薯の栽培にも成功。



 北部の農村地帯では、小麦の代わりに大麦、ライ麦を育成してきた。その種籾を改良し、収穫量の増加を図ってきた。他にも寒冷地仕様の馬鈴薯の栽培を進めて来た。



 寒さに強く栄養価の高いジャガイモは、重要な食材として広がるだろう。そしてジャガイモ料理も、盛んになってきている。やはりマッシュポテトが中心か。他にも、少し硬めにゆでたジャガイモを、細切りにして、フライパンでこんがりと焼いたものや、角切りにしたジャガイモとタマネギ、ベーコンを炒めたもの。



 マヨネーズが出来たらポテトサラダも流行るだろうし、油が使えるようになれば、ジャガイモの人気は更に高まるだろう。フライトポテト、コロッケそしてハッシュドポテトなどなど。きっとこの世界の食卓を彩るに違いない。




 今後の課題は、マヨネーズと油だね。







 さて、次のイルメハの迷宮に移動しては、玉串奉奠を執り行う。こちらでも馬鈴薯の栽培が成功。干し肉・燻製・腸詰加工など加工食肉との相性も良く、様々な料理が提供されている。こちらでは、チーズが欲しいところだな。



 白ワインからのブランデーが最高に美味しい。イルメハの名前を冠したブランドを立ち上げて、差別化を図っても良いかもしれない。スコットブラザーズ商会のイーサンから仕入れた辛口白ワインが材料だ。イーサンと相談だな。







 そして、次の黒い森の迷宮に移動しては、玉串奉奠を執り行う。人夫は。昨日頼んだばかりだから、当面は無理。頭数が揃い次第、こちらでも馬鈴薯の栽培を進めて行こう。そうなると、ここでは仕入れ商品の出荷が中心となる。まずは、出荷できる商品があるのかどうか、確認していこう。



 まずは、獣や魔物の肉、皮、牙や骨など。黒い森の迷宮を襲撃してくる魔物や近隣地帯で捕獲できる獣はどうだろうか。迷宮内に入ってくる魔物は、スケルトンやリビングアーマーたちが撃退し、その際にドロップ品としてコアが倉庫に確保している。ホーンラビットやオーク、レッドバイソンなどの食用肉が確保できていた。他には、リトルエイプやバーサクベアなどの毛皮も。魔石はまあまあ集まってきているかな。



 近隣地帯で捕獲できる獣はどうだろうか。これはまったくダメだな。捕獲してくれる冒険者がいない。ここは、奴隷かストリートチルドレンが育ってきてから考えるとしよう。だとすれば、黒い森の手入れが先か。下草刈り、倒木の伐採、間伐などやることは沢山ある。




 まずは人か。昨日の今日では、まだ頭数は揃ってはいないだろう。その間は、東方山岳戦線で攻略した迷宮跡地での鉱山資源採取にイソしもう。そして、黒い森の迷宮を仕上げながら、商業ギルドからの連絡を待とう。



 黒い森の迷宮の領域は半径五キロメートル。コザニ迷宮やイルメハの迷宮と同じ規模だ。その中心に半径十五メートルの五階建て塔を設置した。地下は一階。五階にはマスタールームとコアルーム、倉庫。四階には作戦指令室、ハリーの控室など。三階には、実験農場。二階にはゲストルームと食堂。一階には出撃準備室。地下一階にはトレーニングルームと浴場を設置。



 ここでも、手のひらサイズの小型ドローンに高性能ビデオカメラを搭載し、無線でつなぎ五十体ほど飛ばす。魔力が切れそうになったら、ポートに自動帰還する優れものだ。映像は作戦指令室のモニターに映しだす。ポートは塔の屋上に設置する。



 サブマスターのハリーを伴って四階の作戦指令室へ向かう。この部屋には、中央に円卓、正面の壁にモニターが設置されており、その壁に向いてリクライニングチェアが三脚。どの方向にどの程度の強敵が侵入しているかがわかる仕組み。




 この迷宮も、魔物がどんどん塔に寄ってくる感覚がある。俺の魔力に魅かれて寄ってくるのだろう。周りを黒の森に囲まれている、この迷宮では、塔に魔物がどんどん寄ってくるのだ。



 迷い込んでくる魔物を殲滅することが出来れば、この迷宮でもDP不足に悩むことはないだろう。


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