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初めての異世界探索:頼りの武器はバックパック?  作者: サトウ トール
第三章 新型 第三節 復活!バックパック
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第七十一話 新型バックパック

 十二の月の二十九の日午後、マルーン帝国陸軍東方山岳戦線隊は、一度下げた前線を押し上げ、シャインズ王国内へと前進していく。シャインズ王国兵が撤退した誰もいない戦場を、魔物が焼き尽くされた酷い臭いだけが残った戦場を、淡々と前進していく。




 俺とエイダは、前線を押し上げていく帝国陸軍から離れ、命を受けた迷宮からのスタンピードを終息へと向かわせる。エミット率いる銀騎士シルバーナイト隊が、迷宮入り口を睨みつけている。



 迷宮の入り口に到着次第、エミット銀騎士隊を帰還させ、ヴァルキリーを呼び出す。



「最奥のダンジョンコアを破壊して! お願い。」


 銀騎士シルバーナイト親衛隊の活躍で自信を深めたのだろうか、王女としての風格すら感じられるようになったエイダの指示が飛ぶ。



「御意に」


 ヴァルキリーがそう返事をして、飛竜を飛ばして迷宮の入り口に突入していく。



 もう迷宮の中に魔物は、ほとんど残っていなかった。スタンピードでダンジョンポイントを使い果たしたのだろう。迷宮の最奥には、最後の魔物が、ダンジョンマスターが待ち構えていただろうか。一刻ほど経過してヴァルキリーが帰還する。手に破壊されたダンジョンコアを抱えて。



 その少し前、大量の魔力が怒涛の如く溢れてきた。それを全てバックパックが魔力ドレインで吸収していったが、最後には俺のバックパックが、ギガストライカーに進化していた。



 ダンジョンコアが破壊されたダンジョンは、時間を掛けて朽ちていく。ここ数カ月は大丈夫だろうけど、いずれここは崩壊していく。







 その日のうちに、帝都ベルーナの軍施設に戻った俺たちは、帝国陸軍本部にスタンピードの鎮圧とダンジョンコアの破壊を報告し、砕けたコアを提出する。


 無事に、任務を解かれたエイダとともに、俺は帝都のブラウン卿の邸宅へと向かう。まだ、カール・フォン・ブラウン少将とアマンダは南方海洋戦線から帰還していなかった。主が留守の時に年末の感謝祭を仕切る訳にもいくまい。俺は自分の迷宮での年末の感謝祭を仕切るために戻ることとする。



 ――俺の家族に会いたい。







 夕暮れの迫る帝都ベルーナが赤く染まっていく。驚くほど静かだ。苦心の末に入手した新型のバックパック、ギガストライカーのテスト飛行を兼ねて、帝都ベルーナから黒い森の炭焼き村まで飛ばす。あっという間のテスト飛行だ。




 四枚の大型可変翼と四基の高出力スラスターから構成される高機動戦闘用バックパック。機動力を強化した機体は、汎用性が高く、宇宙空間、大気圏内を問わず高い能力を発揮できる。更に、左肩に長距離型レールガンを装備。航空機動性、長距離破壊力を備えた機体となった。



 上昇、旋回、停止、降下そして着地。油断すれば、心地よい加速に体勢を持っていかれる。バランスを崩して失速してしまいそうになる。



 俺の身体をフレーム化し、外装アーマーを装備し、ギガストライカーを装着する。スマッシイングな攻撃力を手に入れた。もう航空戦はどこにも誰にも負けない。







 黒い森の炭焼き村から迷宮に入り、五階層の訓練の様子を見回っていく。黒イーライの部隊と銀エミットの部隊が合同で訓練を重ねていた。叫び声ともうめき声とも取れない声なき声が響き渡る。



 イーライやエミットの魂の叫びが、迷宮の五階層に響く。さぞかし無念なのだろう。あるいは、新たな主を迎えることができて、抑えきれない喜びに打ち震えているのだろうか。喋ることのできないエミットやイーライの想いは声にはならない。



 しかし、俺の魂には、その想いが伝わってくる。




 血で血を洗う戦場で命を散らす無念

 描いた豊かな未来が絶望に変わる


 はかなく舞い落ちる無数の魂の残渣は

 この地に積み上がっていく


 さまざまな思いは、いずれ異形の姿となって

 この世への縛りとして具現化する


 家族、子供たち、恋人、幼馴染

 人の想いが、時の想いが、この世への名残を惜しむ


 遥かな想いを解放しなければ

 魂の循環に戻ることのできない絶望


 どんなに傷ついても魂は走り続けなければ

 再びこの地で出会えることを夢見て


 支えは大切な重く切ない記憶

 色褪せることのない記憶を手に未来へと繋げ







 戦争はいつも無残だ。前の世界でも、人類は互いの命を懸け、傷つけあった。しかしながら、人々は、その中で子を産み、育て、そして死んでいった。ただ、それだけを繰り返していく。人類の生きる意味は、案外単純なのかも知れない。



 こちらの世界では、まだ戦争兵器、殺戮兵器はない。戦車がない、航空魔導部隊がない、そして原子爆弾がない。がしかし、それも時間の問題なのだろう。こちらの世界の人々は、その中で子を産み、育て、そして死んでいくことができるのだろうか。




 案外、人類が滅ぶ原因は、子を産み育てることが出来なくなることなのではないだろうか。



 神さまは、人々に恋の喜びを教え、それが愛の厳しさへと向かうことに口をつぐむ。


 妖精たちは、恋のときめきをクチずさみ、愛の哀しみを覆い隠す。


 シルフィードは、恋の香りを運んでくるが、瞳からこぼれる涙を乾かす。




 神さま。俺はこの世界での仕事はもう終わったのだろうか。この世界での使命は、なんだったのだろうか。六十歳の精神年齢が堂々巡りをする。



 いいのか? 俺のしたいことを好きにしていいのか?



 この世界にやってきた俺の使命を追うことが、今まで俺の仕事だったけれど、



 君たちと家族になる



 これこそがこれから俺の生きるアカシ




 前の世界では、俺は自分の家族を持つことができなかったが、こちらの世界では待ってくれている家族がいる。さあ、家族のもとへ帰ろう。


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