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初めての異世界探索:頼りの武器はバックパック?  作者: サトウ トール
第三章 新型 第三節 復活!バックパック
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第六十五話 カール・フォン・ブラウン卿の邸宅訪問

 システィ大陸にある黒い森の迷宮の作戦指令室に戻る途中、入手した情報をもとに、考えを整理していく。



 ――南方海洋戦線に出向いたブラウン卿が行方不明のようだ。好戦派閥の仕業に違いない。



 ――隊長は昨日から帝都に戻っているよ。



 ――ええ、停戦協定はいずれ破棄されますわ。



 ――帝国内部は一枚岩ではなく、好戦派閥と友好派閥の二つの派閥が対立している。



 まずは、三人の状態確認が必要だ。生命に危機が迫っていることはないのだろうか。そこは多分ヴァルキリーさまの加護を得た者の状態はなんとなくわかるのだった。その位置、体調、精神状態などが、なんとなくわかる。まあ焦るような時間ではないということだ。多分、あちらの二人にも俺のことが筒抜けなんだろうな。黒い森で狩りをしていた時も、直ぐに接近してきたっけ。



 問題は、父親のほう。こちらは何の情報もない。まずはあの二人に話しを聞いてみよう。



 それと、今後の希望も確認が必要だろう。誰が何をどうしたいのか、それを叶えていくことはできるのだろうか。



 そもそも、帝国陸軍の内紛に俺が首を突っ込んでもよいのだろうか。



 まあ、考えればきりがない。いずれにしても、俺はヴァルキリーさまの加護を得た二人を保護するのみだ。立ちふさがるものは排除する。



 例え、それが帝国陸軍兵士であっても。



 覚悟を決めろ。俺を殺しにくるやつは、殺される覚悟で向かってくるのだ。俺に剣を振るう者は、返り討ちにあう覚悟で向かってくるのだ。いつまでも、殺人に対しての忌避を持ち続けてはいられない。







 深夜帯、コザニの拠点に移動して、クロネコ商会の取り扱い商品の品ぞろえ在庫を確認する。綿花と木綿糸、食肉と香辛料、焙煎済み胡椒、酒類一式、そしてHPやMPの回復薬などクロネコ商会の扱い品を確認していく。



 中から、魔力を含んだ薬草類やキノコ類、ガラス瓶などを集め、HP回復薬とMP回復薬を仕込んで、半数を俺のバックパックに積み込む。



 更に、イルメハの拠点に移動してこちらでも、クロネコ商会の取り扱い商品の品ぞろえ在庫を確認する。木綿の反物、食肉と香辛料、焙煎済み胡椒、酒類一式、そしてHPやMPの回復薬などクロネコ商会の扱い品を確認していく。



 こちらの拠点では、魔力を含んだ薬草類やキノコ類、ガラス瓶など、HP回復薬とMP回復薬の材料が少ない。採取の依頼をする必要があるだろうか。HP回復薬とMP回復薬を仕込んで、製品を積み込むことは断念する。



 ――今後の課題の一つだな。




 こうやって、クロネコ商会の在庫管理に集中することによって、別のことを考えることによって、これから起こるであろう対人戦、殺人に対しての忌避感を抑え込んでいく。




 さて、そろそろ朝一の鐘が鳴るころだろうか。マスタールームに戻り、サブマスターのジーンに声を掛け、薬草類やキノコ類、ガラス瓶などの採取、回収を頼む。その足で、黒い森の迷宮に出かける。







 さあ、まずはブラウン卿のお屋敷に行ってみよう。信用してもらえるか、あるいはお屋敷の皆さんが信用に足る人々なのか。



 正面から向かう。鬼が出るか蛇が出るか。







 重厚な石造りの門と鉄製の柵と木材でできた扉の前には、衛兵が二人。



「初めまして。こんにちは。」

 俺は丁寧なあいさつを心掛けて、首から下げた商業ギルドのドッグタグを見せる。



「アマンダさまとエイダさまに贔屓ヒイキにしてもらっている商人で、トールと申します。お約束はないのですが、帝都に参りましたので、お二人にご挨拶に伺いました。お時間を頂戴できれば幸いです。」

 衛兵に面会の許可を願う。



 衛兵の二人が互いに顔を見合わせて、何か確認した後に、年上の方が俺に視線を戻す。若い方が、俺に近寄ってきてドッグタグを覗き込みながら、耳元でこっそりと挨拶を返してくる。


「トール様。ようこそブラウン邸へ。歓迎いたします。お話しはエイダさまから伺っております。ただ、今はタイミングが悪いです。午後にもう一度お越しください。五の鐘――午後六時――の頃がよろしいかと。あと、大声を出しますが、気になさらないように。」

 そう、言い終わると、両手で槍を持ち直し、右手と左手で支えた槍の柄で俺の胸を押し出す。



「そんな話は、領主さまからは伺ってはおらん。帰れ、帰れ。」

 若い衛兵が大声で叫ぶ。



 ――芝居を打つのか?



 俺は、そのまま二歩後ずさり、お屋敷に向かって最敬礼をする。キビスを返し、俺は一端商業ギルドへ顔を出すこととした。その際に、年上の衛兵が石門の扉を開け、屋敷に入っていくのが見えた。




 門番の衛兵はエイダ派なのかな? 戦争はしたくないグループ。それで、お屋敷の誰か偉い人の中には、別のグループの人がいるような感じかな? あるいは、お客様がいらしていてその中にいるのか。で、その人は五の鐘の前には、お屋敷から出ていくということか。



 俺は、商業ギルドへ向かう道すがら、そんなことを考えながら、ヴァルキリーさまの加護を頼りに二人の居場所を探る。端から、二人はこの帝都にはいないことは分かっていた。ただ、事情がつかめないと、ブラウン家に迷惑を掛けても、申し訳ない。まずは、状況を確認させて頂きます。




 商業ギルドに初級ポーションを樽二つ分納品して、不足しているポーション用ガラス瓶を仕入れた後、冒険者ギルドの食堂に出向き、早めの夕食を取る。まあ、食事が必要なわけではないが、周りの冒険者からの情報収集を図るためだ。



 マルーン帝国は、システィ大陸の中央に位置する大国で、その周囲をキャメリア王国始めさまざまな国が取り囲む形となっている。抱えている戦線は、西方ローレル戦線を始め、東方山岳越え戦線、北方戦線、南方海洋戦線等複数の戦線を維持していた。



 マルーン帝国は、このところ連戦連勝、国内も戦勝による好景気に沸いているのが伝わってくる。特に南方海洋戦線と東方山岳越え戦線への期待が大きいようだ。南方海洋戦線では、内海の温暖な港を入手しての貿易拡大、あるいは軍港としての利用を考えている模様。



 東方山岳越え戦線では、資源を有する相手国からの賠償金あるいは山岳地帯での鉱山資源の回収を目論んでいる。




 夕刻の再訪時には、お客はお帰りになった後のようで、お屋敷のみなさまから歓迎してもらえた。もちろんブラウン卿はじめ二人のお嬢様はお留守だった。



 俺は油断せず、周囲に注意を払いながら、監視ロボットがいないかどうか確認しながら、不穏な魔力の流れがないかどうかを確認しながら、石の門をくぐる。



 客間に通されたあとも、監視カメラや盗聴器などの、魔力の流れや電磁波の影響を調べながら、屋敷の主を待つ。間もなく、ブラウン夫人が入室された。監視カメラや盗聴器などは見つけられなかった。



「はじめまして。本日はお時間を頂戴しありがとうございます。わたくしは、商業ギルド登録の商人で、トールと申します。どうぞよろしくお願い致します。」


 さあ、三人を探しに行こうではないか。


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