表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
初めての異世界探索:頼りの武器はバックパック?  作者: サトウ トール
第一章 迷宮に立つ 第一節 始まりの町
7/129

第六話 通行カード

 安定した夏の晴天が続き、間もなく猛暑の到来を予感させるこの頃、子供たちは毎日汗だくで元気だ。




 このところ、冒険者ギルドへの納品は、クロエと俺の仕事だ。かさばってしまうウォーグやリトルボアの毛皮や牙を持ち込んでいる。また、森の中で薬草を採集する日には、魔物のほかに動物の解体品の納品を行っている。それだけの数を、十二歳でEランクのクロエがフロントで話を通すのは、悪目立ちするため、俺のバックパックに詰め、ウォーグの毛皮を持ち込んだ当初からバックヤードに直接誘導してもらっている。


 そのため冒険者ギルドには、ポーター専用の通行カードを発行してもらって、北門で入町の際の手続きを省略してもらった。都度入町税を支払うのでは大変だ。通行カードは、この町だけしか使えないし、冒険者登録してある者の同行が必要だ。町の外に迷宮ができ、急速に拡大を続けるコザニの町ならではの、暫定の措置だ。マイクとレイにも用意しておこう。


 自分の商会をまだ持っていない俺にとって、ある程度規模のある納品先は冒険者ギルドだ。クロエが日頃お世話になっております。敬意を表して納品に励もう。今のところはそうしてはいるが、自分の商会を立ち上げ、ドンドン流通させていきたい。


 また、冒険者ギルドでしか入手できないものがあり、それを見てみたかったのもある。迷宮内の地図はその一例だ。魔物や薬草の情報なども入手できる。事前に情報を入手しておくことは大事。いろいろと自分の目で見てみたかった。


 他にも、王国内でとれるパームやし、オリーブ、ココナッツ、カカオ、アーモンド、コーヒー豆などの収穫地域の地図なんかも調べられたりする。王国内で採れるものならば流通もしているのだろう。


 清算を終えギルドを出て、町中の店前を眺めながら北門から壁外へと向かう。店売りの武器も眺めていく。弓や投擲武器はレイに必要になるのではないだろうか。ソードも質の良いものに切り替えていきたい。




 まあ、これだけ冒険者ギルドに納品していれば、そろそろクロエもDランクにアップできるのではないだろうか。まあ、そのへんの仕組みはしらないが。


 Dランク昇格には、Eランクのクエストの消化とギルドの昇格検査があって、パーティや団体で行動がきちんとできるかどうかなどの資質も問われるとのことで、クエストを受注しないクロエにはまだ無理のようだ。ちなみに、ゴブリンや一角ラビットは常駐クエストといって、依頼をうけなくても討伐証明部位の納品で達成できるものもある。時々薬草納品の際に、討伐部位も納品していた。


 今度、Eランクのクエストをいくつか受けてみようか。




 壁外の拠点に戻ると、ララアの晩御飯が待っている。日本に居た頃は独り身の暮らしで、家に誰かが待っているなんてことは、子供の頃に実家暮らしの時しか経験がなかった。


「ただいま」、「お帰り」と声をかけあうのは、悪くない。それに、焼肉と温かい野菜スープ、黒パンといったメニューだが、彼らと一緒にとる食事の時間は、少し温かい。


 この世界に転移してどうなることやらと呆然としたこともあったが、冒険者としてのスタートは、まずまず成功の部類ではなかろうか。生き残っているし。そろそろ他の人からもこの世界の情報を仕入れるのも良いかもしれない。クロエの知識だけでは余りにも狭い。


 もっとも、俺自身のユニークスキルのことやこの身体の成長やスキルの習得が異様に容易なことなど知らないことも多い。調子にのって慢心せずに、一歩ずつ成長していかなくては。ジェミニに睨まれてしまう。




 迷宮の地図も一階層から五階層まで揃い、大分踏破できたと思う。次の段階としては、男の子二人に攻撃スキルが生えて、三人娘の迷宮デビューを進めることだろうか。いやまだ早いか。


 もし今パーティを組むとしたら、前衛はタンク役のマイク。中堅にクロエとレン。クロエは近接もできるからね。三人娘は後衛かな。いやララアは留守番だな。ジェミニが寂しがる。マーカスはどんなタイプだろうか。タンク役のマイクの装備は重要課題だな。三人娘の魔法属性も気になる。光属性、回復魔法は望めないだろうか。アンジーは細身ながら、体のキレを感じさせる。近接タイプになってしまうかな。


 このごろ三人娘の笑い声も聞こえるようになってきた。小さい子は笑っているに限る。良い傾向だ。




 こうして二か月が経過し、暑い夏の盛りを過ぎ、秋を迎え、バスケスナ大山脈の大いなる恵みがコザニの町に大量に運び込まれてくる頃、ウォーグの群れを大分片づけたおかげだろうか、俺のユニークスキルがまたレベルアップしLv.3になった。バックパックのスキルに集中すると使い方が頭の中に流れてくる。


 ・マジックバッグ

 ・右肩にサーベルマウント1本

 ・スモールシールド

 ・メンテナンス(New!)


 メンテナンスって整備だよね。自動で整備してくれるということなのかな。何を。サーベルとスモールシールドを? まあ悩んでも仕方ない。実戦で確かめるしかない。




 また、子供たちにも見込み通りスキルが生えた。マイクとレイには短剣術が、クロエの火属性魔法はLv.2になりますますその凶暴性を発揮し、マイクには盾術、ララアとアンジーには解体が生えた。


 そして俺は、生活魔法がLv.3になり、身体強化(Lv.1)、鑑定(Lv.1)、錬金(Lv.1)が生えた。身体強化は、剣術や槍術など近接戦闘スキルを1レベル得る過程で、自然と魔力を全身に流すようになるので、レベルが上がっていくにつれて、身体強化も自然と会得するらしい。だとすると、クロエやマイクとレイにもいずれ身体強化が生えてくるのだろう。


 メンテナンスはやはり自動整備のようだ。もっともサーベルの片刃剣は刃が痛むなんてことは一度もなく、常に抜刀の切れ味抜群。スモールシールドもどんなに受け流しても常に新品の輝きだ。そうか、装備かもしれない。状況に合わせ装備を自動装着していけば、格納した分は自動的にメンテナンスされるのかな?


 鑑定スキルは、薬草や魔法薬の原材料を考えて、探しまくっていたからだろうか。錬金スキルも恐らくその原材料からどんな魔法薬ができるのか考えて調べていた結果だと思う。このあたりのことは、神様のおかげだろうか、感謝。


 HP回復薬が自前で作れるようになり、自前の商会を立ち上げる基盤ができた。回復薬を気兼ねなく使える状況は、子供たちの育成にも弾みがつく。パリィを繰り返し行使することによって器用さのスペックが上昇し、それにより錬金スキルが誘発されたのかも知れない。


 その錬金術も大活躍だ。日本での生活で必要だった魔道具から作っていった。給湯器、冷蔵庫、洗濯脱水機、エアコン送風機、ドライヤー、着火具、懐中電灯、肥後守、食器、フォーク、スプーンの類まで。タオルケット、パジャマ、下着、洗濯石鹸、とさまざま。


 ミント、ラベンダー、レモングラスの精油なんかも作る。


 魔石を卸している商会からは、アルミが作れるボーキサイトや、苛性ソーダなんかも入手できた。コーヒー豆やパームオイルなんかも仕入れることが出来たおかげで、錬金の原材料も大分揃ったところだ。


 苛性ソーダなんて危険物も入手できたお陰で、石鹸や洗濯洗剤も完成した。手作り石けんの主成分は、オリーブオイル(しっとり)、ココナッツオイル(泡立ちをよくする)、パームオイル(溶け崩れにくくする)と純水、苛性ソーダ、精油(香りづけ)。油脂と純水を苛性ソーダで中和させることで、石けんができる。この石けんと洗濯脱水機のお陰で重労働だった洗濯作業が大幅に改善された。が、この二重洗濯槽のジュラルミンを精製するのにボーキサイトを使い果たしてしまった。量産ができない。まあ、洗濯洗剤は商会の主力商品にしようか。


 ワンルームしかないので、家具類はまだだし、お風呂も作りたいところだがこれもまだだ。TVやスマホは無理だな。


 小さい子にも肥後守を預け、竹細工を手伝わせる。日本に居た頃の感覚だと、切れるナイフを小さい子に預けるのはどうかとも思うが、危ないものは日常使って覚える。どう使ったらけがをするのか、どう取り回したら思うように切れるのか。毎日が訓練だ。


 まあ、こどもは遊びの天才だ。竹細工をしながらでも遊び道具を作り出すのだろう。その点、竹は加工しやすい材料でうってつけだ。いずれ竹とんぼや竹馬なんかを作ってあげよう。




 悪目立ちしないように慎重に行動しているつもりでも、冒険者ギルドによると、俺たちは結構目につくらしい。子供がギルド内をうろちょろしているからな。それでもギルド内でトラブルに巻き込まれないのは、他の冒険者たちも、稼ぐのに忙しいからだ。迷宮には魔石が埋まっている。自分たちのスキルを上げて中級迷宮に移動したい。子供にかまっている暇はない。


 それと、塵も積もれば山となって、俺たちのレベルやスペックは上がっている。子供でも冒険者風な姿に染まってきているのだろう。マイクなんかは食生活が改善されたおかげだろうか、大分筋肉質な体格になってきた。まあ、そうは言っても日本で言えば小学校四年生だしな。まだまだこれからか。




 それよりも、この夏は暑かったから薄手のパジャマのままでも寝られたが、そろそろ毛布替わりが欲しいかも。シーツはウォーグの毛皮でも代用できるのかな?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ