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初めての異世界探索:頼りの武器はバックパック?  作者: サトウ トール
第三章 新型 第二節 ダンジョン攻略には
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第五十四話 ポーターを雇う

 冒険者ギルドにて、依頼掲示板を眺めている。


 目に付くのは、食肉の納品依頼が多い。ホーンラビット、オーク、リトルボア、レッドバイソンなどさまざまな食肉納品依頼が張り出されている。十万人の胃袋を満たすのは大変なのだろう。露店市を眺めても、食肉は高めだなあというのが第一印象。


 そう言えば、コザニの冒険者ギルドにはポーター募集の依頼があったっけ。ここはどうだろうか。



 何故、ポーターを探しているのかって?



 昨日出会った野良ポーターと今日も待ち合わせをしていたのだが、急遽キャンセルを喰らったのだ。まあ、世の中だ。いろいろと事情があるのだろう。




 そうそう、ポーターの話。死骸の穴埋めをしてくれる助手が欲しい。ギルドカウンターに話を聞いてみる。もう朝二の鐘――午前九時――も鳴っていて、ギルドカウンターも落ち着いている。


「そうですね。この時間だと、だいたい出払ってしまっていますね。」

 カウンターのお姉さんは、印象は柔らかいが、目は笑っていない笑顔で返事をする。



「そうか。それは失礼した。出直してきます。」

 いないものは仕方ない。それに、ダンジョンなら問題にならない案件だ。ダンジョンが魔石以外は吸収してくれる。そうならいい機会だ、ダンジョンに行こうか。



「ちょっ、ちょっと、待ちなさいよ。」

 俺は、狩りに行こうとカウンターに背を向けたが、呼び止められる。



「そこで、待っていなさいよ。」

 受付のお姉さんは、そう言い残して、バックヤードに引っ込む。







「お待たせいたしました。」

 十分ほどロスしただろうか。受付のお姉さんが、バックヤードからポーターを連れてきてくれた。



 十二、三くらいの女の子。今日は、バックヤードで解体業務に従事していたらしい。



「冒険者の子よ。Fランクだけど。ホーンラビットやリトルボアの解体は得意。」

 受付のお姉さんのセールストークは、こちらの希望を満たしてくる。



「それと、マジックバッグを持たせるわ。大サービスね。」

 ちょっと小声で、受付のお姉さん、いや女神さまがウィンクしながらお礼を強要してくる。



 もちろん感謝しかない! 頑張ります! まあ、俺も現金なものだ。



「今日もホーンラビットをよろしくね。」

 そうか、さっきのやり取りの結果、ポーターキャンセルの経緯を見ていたんだ。昨日大量のホーンラビットを持ち込んだのも感づいているようだ。



「ちょっと人見知りするのよ。道中よろしくね。」

 最後に、受付の女神さまが爆弾を投げ込んでくる。絶対、ちょっとじゃないだろう! 狩りで意思疎通に難があるのは、致命傷になりかねない。



「ほら、レイラ! 挨拶なさい!」

 レイラと呼ばれた女の子は、ペコっと頭だけ下げてくる。



「俺は、トール。今日一日よろしく。」

 背に腹は代えられない。右手を出して握手を求める。




 ギルドを出て、黒い森に向かう途中、彼女の得意な業物、使える魔法などを確認しておく。冒険者なら手伝ってもらおう。斥候タイプ、双剣使い、魔法は使えなかった。足が速いのが取り柄。




 今日も黒い森の浅い地域で、ホーンラビットやスライムを狩る。彼女にも探索をやらせてみるが、あまり上手くない。風や下草の動き、足音、匂いなど気にするところをひとつずつ確認していく。


 スライムとホーンラビットを発見。敵は気づいていない。よし、長ドスの餌食となれ。ひとつひとつ丁寧に魔石を狙う。ホーンラビットは、ポーターのレイラが拾ってくれる。


 こんなことを繰り返し、黒い森で獣道を頼りに狩りを進めていく。よしよし、良いペースだ。マジックバッグは本当に便利だな。



 お昼ごろだろうか、ポーターのレイラが何か言いたげに、もじもじする。目だけで訴えても、意思疎通はできないのだが?



「腹がへったのか? 便所か? 」

 いや、この辺のことは冒険者ならいちいち許可は得ないだろう。いったいどうしたというのだろう。



「えっと、もう空きが、あまり、ない。」

 マジックバッグを指さしてそうおっしゃる。あぁ、気が回らず申し訳ございません。



 ――もう入らないのね。よし、いったんギルドに戻ろう。




 昼食もとらず直ぐにギルドに戻り納品する。ホーンラビット三十匹くらいだろうか。俺は、商業ギルドにしか登録がないので、レイラのFランクタグが役に立った。受付の女神さまと相談した結果、全部レイラの報酬としてもらう。ポーター報酬代わりの現物支給だ。



 解体はバックヤードの皆さんにお任せして、俺たちは露店で購入したホーンラビットの串焼きで、少し腹ごしらえしたあと、再度黒い森に向かう。串焼きは塩味。胡椒が欲しくなる、イルメハの胡椒農場が懐かしい。みんな元気に働いているだろうか。



 ホーンラビットの串焼きを召し上がったレイラさんは、ニコニコ笑顔だ。ホーンラビット納品の報酬が良かったのだろう、現金なものだ。目が合うと少し視線をずらして、少し頬を赤らめて、とぼける。



 ――破壊力抜群だ。中学二年生だったら、完全ノックアウトだろう。俺は五十九歳の精神年齢だけどね。



 まあ、この業務で喜んでもらえたのなら、良しとしよう。午後も作業があるわけだし、機嫌よく作業してもらうのが、基本だ。




 午後からの狩りも順調、順調すぎるほどホーンラビットがいる。いたのだよ。順調すぎて、四の鐘――午後三時ごろ――が鳴るころには、二度目の納品に戻った。まだ、業務終了には時間があるな、よしもうひと働き。




 この欲張ったのが、よくなかった。




 黒い森の比較的浅いところに、アウルベアがいたのだ。リトルボアを狩っていたようだ。お食事中だった。


 リトルボアを仰向けにして、腹を食い千切り、鼻づらを血だまりに突っ込んで、内蔵を食っている。顔はリトルボアの出血で真っ赤だ。


 レイラが、へたり込む。顔色が真っ青だ。うーん、これでは冒険者には向かないだろうなぁ。


 そっと、風下からアウルベアに近づき、右足のひざうらの腱をたたっ切る。



 グォォォォー。



 驚きと怒りの咆哮。だが、遅い。後ろから左手首に刃を当て引く。ゴロっと手首が落ちる。アウルべアは、振り向き、右手を振り上げようとするが、膝裏の腱を切られた右足が我慢できない。


 右足から崩れていく。そこを逃さず、首筋に長ドスを当てる。勝負あった。



 アウルベアとリトルボアの魔石をたたき割り、魔力を吸収していく。バックパックにはその二体は入らなかった。リトルボアだけなんとか。


 アウルベアは血抜きして、俺が担いで帰ることとなった。




 形的には、全部レイラの収穫。彼女は、Eランクに上がるらしい。受付の女神さまが困り顔で思案中。俺の知ったことではないぞっと。



「トール、やってくれたわね。」

 そんな素敵な捨て台詞を吐かれても、照れるだけだ。


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