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初めての異世界探索:頼りの武器はバックパック?  作者: サトウ トール
第三章 新型 第二節 ダンジョン攻略には
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第五十三話 いざ! 領都ハスラン周辺 黒い森へ

 ――俺は、何故生まれてきたのだろう。




 ホッチナー辺境伯の領都ハスラン行きの荷馬車に揺られながら、そんなことを思い出していた。


 若かりし頃、やはりこの命題で悩んだ時期が、俺にもあった。俺にも思春期はあったんだよ。


 ――何のために、生きているのか


 ――どう、生きたらいいのか




 母子家庭で育った俺には、人生の生き方の見本となる父や兄、近所のお兄ちゃんと呼べる人はいなかった。


 内気な性格が災いしたか、友達と呼べるような仲間も作ることができなかった。


 なんとなく進学し、なんとなく就職し、なんとなく仕事をして今に至る。


 その中で、転機となる出会いはあった。人ではないが。


 千九百八十年代。パソコン、プログラミング言語。ゲームソフト業界、ハチビットFM音源……


 これらとの出会いが、俺の人生に何かをもたらしてくれた。




 ――どれだけ、心の震える瞬間を得られたか。魂の揺さぶられる体験ができたのか。




 誰が何と言おうと、これが俺の生きている理由だ。







 領都ハスラン周辺にある黒い森を目前にして、再度俺は自問自答する。


 ――俺は、何故ここに来たのだろう。




 勿論、答えは決まっている。




 俺には守りたいものが出来たのだ。人生で初めて、失いたくないと思うものが出来たのだ。


 必ず、帰ってみせる。必ず、守ってみせる。




 仲間? いやそんなもんじゃねえ、大切な家族だ。







 初級ダンジョンは、領都ハスランから馬車で一日行程の距離だ。迷宮型。


 ここで迷ったのは、徒歩で行ける距離に黒い森という大森林があったことだ。ここにも亜人タイプの魔物が出現する。領都ハスランに到着したその日の午後、迷うことなく俺は黒い森に出かけていた。




 街道から小一時間、森の中に入っていく。獣道が導いてくれる。低木の茂みには、ホーンラビットやスライムが潜んでいるが、手こずることはなかった。一体ずつ丁寧に、魔石ごと長ドスで突き刺す。差しそこなった魔石は、再度長ドスで砕き、魔力を回収していく。


 一、二時間ほどそうしていただろうか。死骸はそのままにしていくわけにもいかず、街道そばで、まとめて穴埋めしようとしていた際、近づいてくる小さい人影が二つ。



 ――横取りか? まあ肉や角なら許すが、魔石なら成敗せねばなるまい。



 十歳くらいの男の子が二人。目が合う。向こうも生きるために必死なのだろう。会釈をしてきたので、俺も目礼だけ返して、何も言わない。二人は、穴の中と俺の顔を交互に見ては何か言いたげにしている。


「肉や角なら好きにしていいよ。残りは、穴埋めしてくれるかな?」

 俺はそう言い放って、二人の返事を待つ。



「わかった。解体は任せてくれ。穴埋めもしておく。」

 二人は返事も早々に穴の中を覗き込む。穴の中にはニ十体ほどのホーンラビットの死骸が入っていた。彼らにとって、お宝の山を見つけたようだ。


 そうこうしている間にも、野良狼が血の匂いを嗅ぎつけてやってくる。魔石はないが、二人に怪我でもされたら明日朝の目覚めが悪い。



 ――なんの恨みもございませんが、死んで頂きます。



 哀れ、野良狼。




 その日は、日没前に領都ハスランに戻ることが出来た。明日は冒険者ギルドに出向き、黒い森の出現魔物の情報を探ってみよう。


 さて、今日だけは宿屋を取ろうか。露店市を冷やかしながら、人々の会話に耳を傾ける。


 ――この町でも肉食は、貴族階級が中心で、町人たちは野菜、小麦、大麦の食生活のようだ。綿織物の衣服はまだまだ高級品の部類か。麻、亜麻の古着が中心のようだ。


 後ろに先ほどの野良ポーター二人が近寄ってくるのを感じる。



「さっきは、ありがとう。」

 こっちがリーダーか、礼を伝えて来る。



「こちらこそ助かったよ。」

 俺は少し距離を取りながら、再度近寄って来た真意をはかる。



「ホーンラビットの肉は助かった。妹たちにご飯を食べさせられる。」

 再度、礼を重ねてくるリーダー。



「それで、明日はどうするのかなぁと思って」

 と、要件を切り出してくる。



「明日も黒の森に出向く予定だ。ただ、朝一は冒険者ギルドに情報収集にいくけど。それでも良ければ、どこかで落ちあおう。」

 俺は明日の同行を提案してみる。



「わかった。俺たちも用事があるので、朝二の鐘に冒険者ギルド集合でどうだろうか。」



 ――朝二の鐘か。午前九時だな。


「了解した。では、明日。」




 時々忘れそうになるが、俺は、ダンジョンマスターでした。食事も睡眠も基本必要はないのだろう。人としての生活を忘れたくないので、今まで通りしているだけだが。




 何故か、今日はいろいろと考えることが多くて、思い出すことが多くて、宿屋のベッドで横になって、自分の気持ちを整理しておきたかった。再度、自分の決意を新たにしておきたかった。




 こうして、夜は更けていった。


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