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初めての異世界探索:頼りの武器はバックパック?  作者: サトウ トール
第三章 新型 第一節 キャメリア王国 ホッチナー辺境伯 第七歩兵団
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第五十話 対魔物戦

 遠方の山脈の紅葉が美しく映える青空が、ここは戦場だということを忘れさせてくれる。冷えた空気が美しさを際立たせている。




 激しい塹壕戦は、周囲に血の匂いを色濃く漂わせている。


 翌日、朝一の鐘で俺はテント内で目を覚ます。抱き合って暖をとる仲間は四人に増えた。猫人族のルビーと兎人族の三人だ。もう十の月の七の日なのだ。寒くて仕方がない。


 前の世界で、子猫たちが丸まって団子になって寝ている姿を思い出す。微笑ましい姿だったなぁ。




 夜間の哨戒部隊から情報を得る。敵帝国軍には動きはなかった。早朝からの動きに注目が集まる。戦闘は、王国側からは動けない。部隊数が違うのだ。敵帝国軍の攻撃を凌いで凌いで、前線をキープするしかない。他の前線はどうなっているのだろうか。


 そうこうして情報収集しているところだったが、敵帝国軍に動きはなく日没となってしまった。完全に肩透かしを食らった。恐らく昨日の左翼――王国側は右翼――全滅を警戒しているのだろう。まあ、夜間の動きに備えておこう。


 と思ったが、俺たちの部隊は夜間哨戒任務は完全に免除となったようだ。戦闘に集中して、敵の殲滅に励めということか。




 翌日、朝一の鐘で俺はテント内で目を覚ます。昨晩も敵帝国軍の夜間奇襲はなかった。哨戒部隊から情報を得る。敵帝国軍の前線には動きはなかった。将校が捕虜になったのは大分ショックだったのだろうか。今日も、早朝からの動きに注目が集まる。




 一の鐘後一時間の頃、帝国軍陣地の動きが騒がしくなる。今日は動きが少し早い。早々に、俺たちは前線の中央に配備される。


「ルビー二等兵曹、敵の動きはどうか。」

 十三人分隊長が叫ぶ。


「前列の塹壕に魔物部隊と歩兵部隊、後ろの塹壕には長弓兵が配置されています。魔物は、ゴブリン五、六体にオークが三体です。」

 ルビーちゃん、頑張ってくれている。あと、可愛い。


「騎馬隊は、いる?」

 俺が確認すると、


「騎馬隊は、見つけられません。」

 早速、警戒されたか。


「近くに魔導士は?」

 いないなら、次の目標を探そう。


「長弓兵隊の間に紛れ込んでいます。その数四」

 ルビーちゃん即答だ。こちらの意図を先読みしてくれる。


「ただ、全員が召喚士かどうかはわかりません。火属性使いが居るかもしれません。」


 まもなく、見つけられなかった敵隊長が右手にもつソードを高々と挙げる。塹壕に隠れてその姿を捉えることができない。大きな銅鑼が、打ち鳴らされる。いつもの戦いがいつものように始まる。


「長弓隊! 掃射準備!」


 帝国兵長が叫ぶ。塹壕二列目の奥から長弓隊が立ち上がり、矢をつがい、弦を引き絞る。


「ゥテーーーーッ。」



 ザァァァァー。ザシュッ、ザシュッ。



 長弓から放たれた弓矢が、一斉にこちらの陣地に届く。火属性使いの魔法弾はなかった。四人とも召喚士か。



 ザァァァァー。ザシュッ、ザシュッ。



 第二陣の弓矢が、一斉にこちらの陣地に届く。俺たちは塹壕に隠れながら、敵の魔導士を観察していく。



 続いて、魔物部隊が塹壕を出て、迫ってくる。


 ウォォーーー。


 ガゥガゥッ。


 唸り声が耳に届く。オーク三体にゴブリンが六体だ。その後ろから歩兵部隊が迫ってくる。


 俺は、塹壕を飛び出し、先頭のゴブリン兵を叩き切る。今日の俺は、一昨日オトトイの俺とはひと味違うぞ。一昨日の戦いとは違って、長ドスを装備している。


 ザシュッ


 長ドスのキレは抜群だ。ゴブリンの振り上げた右腕を切り離す。返す刀でオークの腹を切り上げ、後方のゴブリンの左眼球を貫く。ゴブリンを蹴り倒し、長ドスの血糊を振るう。


 オーク二体と対峙するが、オークは反応が緩い。右側のオークの左脚に蹴りを入れ、裏に回る、左側のオークが、こちらを向く前に右手首を叩き切る。


 右側のオークの背中から袈裟懸けに切り下ろし、頸椎に止めを刺す。


 右手を失ったオークにも、首の動脈を切りつけ、首を刎ね飛ばす。激しい返り血を浴びる。




 残りの四体のゴブリンも首を切りつけ始末していく。


 ザン、ザン、ザン、ザン。




「魔物の回収を頼む。」

 おれは分隊長に頼み、長ドスの血糊を払い、納刀しながら、歩兵部隊へと間合いを寄せていく。


 足の甲を戦闘ブーツごと踏みつぶす。膝裏を蹴り込む。歩兵部隊を張り倒しながら、召喚士の動きに目を配る。


 今日の捕縛回収班は、魔物の回収に手間取っているようだ。オーク三体が場所をとり、重くて運ぶ人数が必要だ。敵歩兵部隊は回収されることなく、戦場に野ざらしとなった。


 敵歩兵部隊が残り少なくなると、帝国兵長が再度叫ぶ。



「長弓隊! 掃射準備!」



 いいんですか? 歩兵部隊が、前線でのたうち回っていますが。一斉掃射が当たりますよ。


 が、二列目の奥から長弓隊の姿は見えない。矢を構える動作に入るものがいない。敵前逃亡か? 重大な軍規違反、重刑だろうに。


 帝国兵長が呆然と立ちすくむ中、素早く一列目の塹壕に飛び込み、魔導士の動きを探る。


 ひとつの召喚陣が起動した。


 ――オークでありますように。


 俺はそう願いながら、塹壕二列目に飛び込む。やはり長弓隊は我先にと逃げ出したようだ。召喚士も一人しか見当たらない。


 彼女――兵装からそう判断した――が、召喚を終えるのを待つ。


 ――オークだ!


 オークなら食肉が回収できる。


 ブモッ


 ザンッ


 オークが雄たけびをあげている途中で、恐縮だが、首筋に長ドスを当てさせてもらった。続いて、召喚士の腹に蹴りを入れ、ぶっ飛ばす。気絶した召喚士を横目に、隠れている敵将校を追う。


 でくの坊と化した帝国兵長に、素早く右手張り出し、沈黙。


 追いついた数人の長弓兵の襟首を掴み、放り投げる。


 分隊員がようやく追いついてきた。次々と敵兵装を解除して捕縛していく。オークも何人かで引きずっていく。長弓隊は半数以上を取り逃がした。残り三人の召喚士も姿が見えない。


 戦闘前に敵将校の姿を確認できなかったこともあり、どいつが敵将校なのか、判断がつかなかった。俺は、敵兵装を回収しつつ速やかに味方陣地に戻り、今日の仕事は終わり。先日、食糧班との約束、オーク肉の回収が果たせてホッした。


 ――今日は、オーク焼肉だ。




 併せて四体回収したオークを全部、食糧班に手渡す。目が合ったとたん、ギョッとされた。まあ、オークの返り血を頭からかぶったので、全身真っ赤、目だけがぎょろっとしている。驚かせてすまない。最前線で入浴を希望することはできるのだろうか。


 本日の戦果は、撃破不明、捕縛四十数人。うち召喚士一人、長弓兵四人。他にオーク四体分の肉を確保。弓矢と剣を大量確保。良い成果ではなかっただろうか。


 分隊員の回収した魔石は、全部入手した。オーク四体分、ゴブリン六体分。全ての魔石を順に砕き、魔力を回収、吸収する。少しでもバックパックの復旧が早まりますように。




 入浴はかなわなかったが、水は使わせてもらえた。今日は、まだやることがある。召喚士の尋問だ。決して拷問ではない。


 手枷のかけられた召喚士を部隊後方に連れだす。よく捕虜を連れ出す許可がでたな。まあ理由が理由だからな。


 ――オークを召喚させて、さらなるオーク肉を確保致します。


 最も適切な理由だろう。部隊のド真ん中にオークを召喚したら大騒ぎになってしまう。


 分隊長と分隊員全員を連れて、召喚士の尋問に挑む。


 手枷を外し、召喚士を正座させ、膝立ちさせ、両手を前に付かせて四つん這いにする。俺は、頭側に立ち、目の前に抜刀した長ドスを突き付ける。後ろ側には十三人分隊長が位置した。


「お前には、オークを召喚してもらう。拒否はない。」

 十三人分隊長が、召喚士の背後から冷たく言い放つ。



「……。」

 召喚士の返事はない。



 俺は、分隊長とアイコンタクトを取り、もう一度促す。



「オークを召喚しろ! その武器は脅しではないぞ。」

 口調がいきなり厳しいものとなった分隊長。



「んーーーー!」

 かすかに、召喚士の声にならない声が漏れる。顔が紅潮してくる。何かを訴えたいようだ。




 あれれ? 何かがおかしいよ。


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