閑話七 ビールが入荷しない? それは大問題じゃ!
儂は、農村フィッタ村の村長じゃ。フィッタ村は、大麦とライ麦の生産で生計を立てている村じゃ。いや、それも今となっては遠い昔の話に思えてしまうのお。
七の月、収穫した麦の天日干しで大忙しの時に、その子はこの村にやって来た。
忙しい時期だったが、旅人を歓迎するのは村長の役目じゃ。皆、外の情報に飢えているし、もしかしたら、新しい血をこの村に残してくれるかもしれん。まあ、そっちの方は、子供だったこともあり残念だが。
いや、そんなことは吹っ飛ぶような話じゃった。
――この村から北方十キロのところに店を作った。魔の大森林の中だ。
――店に出入りする商人、取引業者が、いずれこの村にも来るだろう。
――この村で入り用な品があれば、取引業者に持ってこさせよう。
魔の大森林の中に店を設けただと?
にわかには信じられない話じゃ
が、挨拶替わりだとぬかしては、タスクボア一頭とワイン一斗樽を出しよった。
――今、どこから出した?!
マジックバッグを持っているだけで、大商人の素養を感じる。
これは、この村に何が起こるのか、楽しみじゃわい。
あっという間に、街道が石畳に舗装され、大型荷馬車が行き交うようになり、駅馬車が冒険者を連れてくるようになった。
宿屋がパンクしよった。もう村人総出で、宿屋の真似じゃ。それほど、冒険者がやってきては、肉をもたらす、皮を持ち込む、魔石を持ち込む。
やれ、居酒屋なないのか、鍛冶屋はないのか、薬屋はないのか、うるさいのお。
じゃが、何とかという商会が、全部作っていったわ。宿屋、居酒屋が大流行りで、皆てんてこまいしとったわ。
村に定住するものも増えた。村人の農具も良いものに代わっていった。
何より、あの商人が持ち込んだ新しい麦種は、素晴らしいものじゃった。
種をみただけで、村の者たちもわかったようじゃ。来年の夏収穫に向けて育成している途中じゃが、育ち具合が違うと喜んでいる。
ようわからんが、よかったわ。
何? ビールが入ってこないじゃと? 冒険者どもが騒いどる?
ほっほっほっ、それは困ったのお。




