第三十九話 イルメハの迷宮の再構築、解放
アーレフ侯爵の領都セオギンまでの石畳の馬車道を整備したあと直ぐに、イルメハの迷宮を再構築した。構成は、コザニの迷宮に準じたものとする。四十階層のボスには、オーガ単体を設定。そのためオーガを五体召喚して育成しておいた。もっとも五体のオーガは当面、迷宮の塔に寄ってくる魔物殲滅に駆り出されているが。
迷宮南門から入ってすぐの少し大きめの部屋――二十畳程度だろうか――に扉が二つ。その先には転移魔法陣が設置してある。一つの部屋は、迷宮の入り口につながっている。もう一つは、迷宮からの出口。
迷宮には一度入ったら、帰り石を使わない限り出られない。帰り石を使うと、その場から直ぐに迷宮の出口へ転移する仕組み。たとえボス戦の真っ最中でも、使えば出口だ。生きて帰ることが出来る。どこまでも冒険者には甘くできている。
コザニの迷宮とは違った形の転移魔法陣となったが、こっちの方が面倒くさくない。コザニの迷宮もこの方法に修正しておく。帰り石を売り上げてホクホクだ。
冒険者たちは、農村フィッタ村から迷宮南門に入り、転移魔法陣を通して迷宮入り口へと転移していく。帰りは、帰り石を使って迷宮出口に転移、そのまま迷宮南門から出て、農村フィッタ村の宿屋へと向かう。日帰りでも迷宮内長期キャンプでもどんと来いだ。
帰り石は、迷宮南門の購買部で購入できる。予備を多少持っておくことをお勧めする。
――みんな、買ってね。
迷宮の領域内中心に設置された塔のほうは、地下部分を地上に掘り起こし地上六階建てとなった。なお、迷宮南門からは全く見えない。この塔の地下一階部分に迷宮の入り口がある。
冒険者がイルメハの迷宮に集まりだすと、一番近い農村フィッタ村が大興隆。ここでも食肉祭りが勃発。塩胡椒味が大人気、グレービーソース味、デミグラスソース味も人気。酒を出しても出しても、直ぐになくなる。冒険者ギルドや商業ギルドの出張所ができてからは更に加速。火に油を注ぐならぬ、冒険者に金貨を注ぐだ。
農村フィッタ村の領内税率は二割らしいが、納税してもお釣りが出るくらい、売れまくる。
迷宮南門でも、帰り石のほかに、HP回復薬や携帯お弁当を売る。ようやくこちらでも販売の体制が出来上がった。奴隷調理人が活躍してくれている。更に、大きめの竹筒で作ったカップに冷えた生のビールを注いで、農村フィッタ村へ帰る冒険者にテイクアウト。帰りの駅馬車内で、生ビールが流行る。ウサギの串焼きが良く合う。
帰りの駅馬車内でとりビーのあとは、農村フィッタ村の居酒屋で、ウィスキーやブランデーで盛り上がる。毎日宴会状態が続いていく。実際、中型魔石の報酬で毎日が宴会状態なんだけど。その魔石で、冒険者ギルド、商業ギルドともに潤っていく。他にドロップ品では、鋼のショートソード、ロングソードが人気を呼ぶ。ドロップするそばから売れていく。駅馬車を使って、領都セオギンに運ばれていく。
こうして数か月、イルメハの迷宮算出品に湧きかえる農村フィッタ村。これに魔の大森林の大いなる恵みが輪をかける。太陽の盛りを過ぎて、恵みの季節到来。
九月の半ば、セオギンの冒険者ギルドに所属するパーティが、四十階層のオーガ単体を撃破、次の階層へと進む。これは痛かった。育成して亜種になりつつあったオーガは強かったのに、撃破されてしまった。
俺は、五十階層のボスに、ゴブリンジェネラルと五十小隊を設定。ここからはドロップする魔石は大型が中心だ。六十階層のボスに、オークジェネラルと五十小隊、七十階層のボスに、ゴブリンキングと百体中隊、八十階層にオークキングと百体中隊を設定していく。九十階層には、オーガ亜種と百体中隊。百階層は、トロールとオーガ亜種が五体。
併せて、コザニの迷宮も同じ設定で作り込んでいく。が、攻略速度はイルメハの迷宮が速い。大型の魔石が出ると分かれば、ますます高ランクの冒険者を呼び寄せてしまうだろう。
農村フィッタ村はますます盛り上がり、多忙を極める。どうなっちゃうかな?
そんな農村フィッタ村の村長に、俺は更にプレゼントを用意する。とっておきの大麦の種子だ。丁寧に選別を重ね、品種改良した大麦の種子。農家の人は、見れば分かる、触れば分かる。次シーズンの植え付けが楽しみだ。併せて、魔の大森林の腐葉土を大量に麦畑に散布していく。これは、撒き餌だ。大麦を増産して、ビールとウィスキーで回収して見せる。農家の納税額は、農地の広さと連動だ。単位面積あたりの収穫高が増えれば、納税後に残る分が増えれば、農村も豊かになる。農地耕作の手伝いは、ウシかゴーレムか。
それとも、大麦を植えているひまもないくらい、多忙になっちゃうのか?
一方、馬車道の反対側、キュウの駅そばの都市近郊農業オオタ村も大きく変貌を遂げていく。キュウの駅前に大型の生鮮市場が出来あがり、機能しだすと、今まではアーレフ侯爵の領都セオギンに運び込み、そこの市場で小売りをしていたのが、今度は、市場に卸すだけでまとまった売上を得られるのだ。
資金が入り、高速に回転しだす。時間も効率的に使えるようになる。物流が活発になり、オオタ村の特産品が、セオギンだけでなく王都フェニックスまで届くようになる。
馬車道の維持、清掃、メンテナンスには領都セオギンのストリートチルドレンを雇う。領都にはスラム街もある。光当たるところがあれば、当たらないところもある。それでも少しずつでも生活を改善、向上していけば、生きていく道も見えてくるだろう。迷宮の小遣い稼ぎをどんどん回してやろう。
九月も下旬に差し掛かったころ、女性奴隷の妊娠の連絡が相次ぐ。男連中頑張って仕事をしてください。セオギンからストリートチルドレンのヘルプを依頼する。衣食住保証、お小遣い付。仕事を上手くやればスキルが生えるかもしれない。
九月末日、スコットブラザーズ商会のイーサンさんが良い仕事をしてくれた。かなり高価な絹反物を持ってきてくれた。ワインレッドの深みのある赤、ベルベットのような手触り。大金貨五十枚。どこから仕入れたのだろうか、王都フェニックスに色違いを三本持っていって、濃青と淡いピンクの二本は捌けたようだ。そうか、売れ残りには福がある。良い服に仕立てよう。
問題は誰に何を作るかだ。ジ〇ンシーのプリーツロングドレスに引けを取らないものを作ってみたいものだ。
それとは別に、木綿製品が大分出そろってきた。木綿は吸湿性が高いという性質を持ち、寒い時期には高い保温性も併せ持つ。衣服用の素材としてとても優れている素材だ。この世界では高級品の部類のようだ。染料は藍染が多いが、それでも紅や茜の赤、くちなしやサフランの黄色、墨を使った黒、茶はいろいろな染料がある。生成の生地は、下着が中心。藍色はシャツが多い。カラフルなワンピース、半ズボン。
糸の撚り方、反物の織り方を工夫して、厚手で丈夫な生地も作る。経糸に藍染糸、緯糸に晒糸を使い、四十五度に綾目が出た綾織の厚手で丈夫な生地。仕事着や作業着、鎧のアンダー向けに作っていく。針と糸を通すのが大変だが、三人のお針子さんが頑張ってくれている。
他に、麻や亜麻の製品も市場向けに出して、商品のバリエーションを増やしていく。
ちなみに、コザニのほうもあのあと追加採用したクロネコ商会本部のフロントマン三人と所帯を持っている。こちらも妊婦さんたちなので、コザニのストリートチルドレンのヘルプを頼む。なんか、一気に体制が拡大したな。
そうそう、九月の半ば、セオギンの冒険者ギルドに所属するパーティに、イルメハの迷宮四十階層のボスオーガ単体が撃破されたが、彼らは次の五十階層のボス、ゴブリンジェネラルと五十小隊も撃破。そして、その後パーティ全員帰り石で帰っていった。ドロップ品の大型魔石狙いだったようだ。
丁寧にマッピングしていったようなので、今後大型魔石狙いのパーティが、その情報を得て、大量に五十階層に殺到するかもしれない。哀れ、ゴブリンジェネラルと五十小隊。




