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初めての異世界探索:頼りの武器はバックパック?  作者: サトウ トール
第二章 激闘は悲しみ深く 第二節 産業振興
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第三十七話 農村フィッタ村

 大麦、ライ麦の収穫を終え、天日乾燥させている風景が広がる。この時期の農作業は皆笑顔だ。今年も良く実ったのだろう。ここフィッタ村でも、天日干し作業が最盛期だ。




 アーレフ侯爵の寄り子であるマインアート男爵の領都イルメハの町。そこから北に四十キロの地点。魔の大森林に接している農村フィッタ村を訪れる。簡易的なお掘りの内側に平屋の家屋が建ち並ぶ。人口は三百人ほど、直径三百メートル程度の村か。周囲は、刈り取られたばかりの麦畑が取り囲む。村の中心に井戸があるようだ。稼ぎ手は、がっちりした体格が多く、貧困に喘いでいる様子は感じられない。今は農繁期、子供たちも家族の手伝いをしている。専属の狩人なんかもいるのだろうか。


 魔の大森林のほうから来た不審者なのに、村長宅に通してくれる。旅人は基本歓迎なのだろう。井戸から少し奥まったところの農家だ。大きめの納屋が目立つ。俺は名乗りを済ませ、要件を切り出す。


「クロネコ商会のトールと言う。この村から北方十キロのところに店を作った。魔の大森林の中だ。」

「店に出入りする商人、取引業者が、いずれこの村にも来るだろう。」

「この村で入り用な品があれば、取引業者に持ってこさせよう。」


 少し上から目線で要件をつたえた俺は、挨拶替わりのタスクボアを一頭、ワイン一斗樽を差し出す。この村でも、酒や食肉は歓迎されるだろう。村長は、直ぐには理解が追い付かなかっただろうが、手土産を見て態度が軟化。こちらからの一方的な挨拶になってしまったが、村長からはこの村の様子を確認することができた。




「まずは、イルメハの町までの街道について、荷馬車が十分にすれ違える程度に拡張、整備させてもらう。」

「手空きのものがいれば、手伝いをお願いしたいところだが、まあ農繁期で子供も手伝っているところを無理にとはお願いできないだろう。全部こちらでやらせてもらう。」


 今、イルメハの迷宮に来ている土属性使いは、ジェミニと新人のルー。二人に手伝ってもらって、五十キロを石畳舗装してしまおう。




 翌日、朝一の鐘で起床し、土属性使いのジェミニと新人のルーを伴って、アーレフ侯爵の領都セオギンのスコットブラザーズ商会の店舗を目指す。もちろん、魔の大森林を切り拓き、迷宮南門前にロータリーと馬車駅を構え、そこから馬車道を整備しながらだ。二人の魔法使いは上手に、石畳舗装を繰り返していく。出来上がったばかりの馬車道に、俺は両脇に水の通るごく浅い溝を設置していく。雨が降ると、そこに雨水が誘導され、下へ流れていく、あるいは地面に浸み込んでいくという仕組み。溝をごく浅く設置するのは、荷馬車の車輪が取られないようにするため。


 イルメハ迷宮南門から農村フィッタ村、イルメハの町、そしてアーレフ侯爵の領都セオギンまでは下りの一本道だ。まあ、多少蛇行はあるが。


 途中お昼前には、農村フィッタ村までの十キロの舗装を完了。土属性使いの二人はお疲れの様子。ここで舗装業務から解放してあげる。フィッタ村に入り、村長に声をかけ、これから、イルメハの町、そして領都セオギンまで行ってくると挨拶をする。石畳舗装をよく見ておくように。


 石畳舗装は、俺が引き続き舗装をしながら、両脇に溝も彫りながら進んでいく。農村フィッタ村から、イルメハの町までの四十キロの道を舗装してしまう。


 三の鐘――午後三時――が鳴るころには、マインアート男爵の領都イルメハの町に到着。男爵にも挨拶をしたかったが、留守だった。まあ、王都に出かけているか。留守役の執事に挨拶をし、ワイン一斗樽を手渡す。


 ――皆さんでどうぞ。


 その足で、商業ギルドに顔を出し、こちらでも登録し、営業開始する旨の説明をしておく。当面、卸だけです。何か小売りが必要なものがあれば、取引業者に扱わせます。必要あれば、大麦やライ麦を引き取ります、と説明。もっとも、大麦やライ麦の余剰はないようだ。


 町中の露店や薬屋、飯屋、武器防具屋などを冷やかしていく。この町の住民も、食肉はごくたまにのようだ。価格が高い。これはチャンスかもしれない。早く領都に行こう。


 早々に、アーレフ侯爵の領都セオギンに向けて、馬車道を石畳舗装して溝を掘っていく。四の鐘――夕方六時――過ぎ一時間ほどで日没、作業を終了。一旦、イルメハの迷宮に戻る。帰りは、高機動型ウィングを展開し、ひとっ飛び。俺のバックパックの仕様だ。


 馬車道の石畳舗装作業は、イルメハの町から領都セオギンまで、千二百キロ。途中大型の農村も通り、約十日ほどかけて舗装を完成、セオギンに到着した。




 商業ギルドに挨拶後、早々にスコットブラザーズ商会の店舗に顔を出し、面を通す。クロネコ商会の担当者をあてがってくれたようで、応接室に通され、挨拶を交わす。


「初めまして、スコットブラザーズ商会のイーサンと申します。ライアンとは機智の間柄で、お話は伺っております。」

 イーサンが丁寧なあいさつをくれる。


「初めまして、クロネコ商会のトールと申します。アントニオ辺境伯の領土でライアンさんと取引させてもらっています。」

「今回は、こちらアーレフ侯爵の領土での活動を希望しております。」

 イーサンと握手を交わし、要件をつたえる。


「どうぞ、お掛けください。」







 嬉しい誤算があった。旨いワインが見つかった。フレッシュな酸味を持つ辛口の味わい、軽快なワインで、お手頃価格の辛口白ワインだ。


 ワイン樽単位での取引となるが、結構な量を確保できた。良い出来のブランデーが仕込めるだろう。ただ、イーサンもやり手商人だな。最上級の二斗樽ブランデーを十樽、二斗樽ウィスキーを同じく十樽を要求、応えることとする。


 取り扱い品目は、胡椒、食肉各種、ブランデー、ウィスキーそれと今後開発され次第の御神酒。見返りは、大麦とライ麦。ビールとウィスキーの原料だ。エールを駆逐するわけではないぞっと。




 それと、今回だけ奴隷が八人。人数が多いのは、単価が安かったせいだ。


 安価な理由は、奴隷の年齢。裁断、縫製のスキルを持つものは三人。三十台後半が二人、四十台が一人。全員女性。調理スキルを持つものは、三人。女性三十台後半が二人、男性四十台が一人。それと計算スキルを持つ男性三十台後半が一人、女性三十台後半が一人。二十台の現役バリバリのお針子さんや調理人、商人の素養のある者は、その主人も手放さないということだ。


 また、こういったスキルを持つものは、王都でも必要とされるのだろう。まずはそちらから売れていくのは仕方ないことだ。


 しかし、これでイルメハの迷宮でも、ベンガルトラのベルの晩御飯が作れる。お針子さんたちは、コザニの町へ移動しなくては。計算スキルを持つ二人は、イルメハの迷宮南門での取引窓口業務だな。早速、業務の案内と習熟に励もう。


 俺のバックパックの仕様で、母船ヘリコプターは八人乗りだが、装備がないので九人でも大丈夫だろう。その夜には、一気に迷宮へと帰る。


 サブマスターのジーンに皆の世話を頼みながら、早速仕入れた大麦を使ってビールを醸造していく。今回はホップがないので練習、試作だ。ホップなしビールの味付けは、ハーブだ。ヨモギ、ノコギリソウ、タイム、ローズマリー、ジンジャー、アニス、ナツメグ、シナモンなど。組み合わせ、分量によって味わいが変わり、それもまた楽しみだ。


 ゴクッ。思わず喉が鳴る


 日本に居た頃、一般的なビールサーバーの組み立てを習ったことがあった。地元地区の夏祭りだったような気がする。


 ・二酸化炭素ボンベ、生ビール樽。ビールサーバーを準備する。

 ・二酸化炭素ボンベから噴出された炭酸ガスの圧力が、密閉された生ビール樽内にかかる。

 ・炭酸ガスの圧力で樽中のビールは、内部のパイプを通り、ビールサーバーに送られる。

 ・サーバー内部の細いパイプは冷却されていて、そこを通ってビールは冷やされる。

 ・サーバーに取り付けられたサーバーコックを開くと、冷えたビールが出てくる。


 さあキンキンに冷えた旨い生ビールができた。どこで売ろうか? もちろん、今後のホップの手配も頼みましたよ。


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