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初めての異世界探索:頼りの武器はバックパック?  作者: サトウ トール
第二章 激闘は悲しみ深く 第一節 迷宮防衛隊の拡充
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第三十五話 後悔先に立たず

 七月の初日、朝一の鐘で起床。まずはコザニの迷宮の神棚に向かい、ブランデー四斗樽とウィスキー四斗樽の二樽を奉納する。こちらにはオーディンさまが降臨なさられた神棚だ。家内安全、商売繫盛。


 あのあと、イルメハの迷宮でバッカスさまに二樽奉納したあと、すぐにオーディンさまにも追加で、ウィスキー四斗樽を奉納したが、ご満足頂けただろうか。


 その後、イルメハの迷宮に転移し、神棚に向かい、ブランデー四斗樽とウィスキー四斗樽の二樽を奉納する。こちらにはバッカスさまが降臨なさられた神棚だ。家内安全、商売繫盛。


 まあブランデーやウィスキーでも良いのだが、神棚には御神酒が似合う。酒米を探してみようか。




 その後、作戦指令室でブリーフィング。イルメハの迷宮での魔物殲滅指令は続行だ。今日からは、月が替わったので航空魔導部隊が担当だ。機動性が高い部隊なので、次々と越境してくる魔物を見つけては、出撃していく。大鷹幼生のフィーも風属性魔法使いのアンジーさんにくっついて出ているようだ。


 安定運用に納得した俺は、直ぐに転移魔法陣に乗り、コザニの迷宮に戻る。他の航空魔導部隊員を輸送するためだ。今日から新人の四人を追加投入してパワーレベリングを図る。火属性使いの女の子クラリス、風属性使いの女の子シェイラ、土属性使いの女の子ルー、火属性使いの男の子エイマールの十二歳の四人組だ。俺の輸送機は定員八人。先輩部隊とは一度には運べない。さあ、これから八時間のフライトだ。


 どうせ飛ぶなら、発艦着艦訓練を兼ねてやろう。時速二百キロで飛ぶ輸送機からの発艦は、自動運転に切り替えて、後ろから蹴飛ばしてやる。発艦はまだしも、着艦はホバリング中でないと厳しいか。少しずつ練習を重ねて行こう。


 四人のモクバは軽量タイプなので取り回しはまだ楽な方なんだけれど、なんだかぐったりと疲れてしまっている。




 こんな時なんだよ、ハルピュイアが高度上空から滑空してくるのは。




 輸送機の操縦席に戻り、敵の位置と数を確認する。上空八千、数は高速飛行の鳥型魔物のハルピュイアが八体。こちらは高度五千。頭を押さえられている。


 さあ、日頃の訓練の見せ所だ。輸送機をホバリングに切り替えての自動運転。四人を蹴飛ばして発艦させ、俺もスカイダイビング。五千メートル落ちるのは、あっという間だ。直ぐに高機動型ウィングを展開し飛行形態に入り反転、急上昇してハルピュイアの頭を押さえにいく。テールバインダーを駆使して、高度を上げ、オールレンジファンネルを八発展開しつつ、高度八千でハルピュイア隊と激突、並列処理を駆使してファンネルを打ちまくる。高速移動しながらの高速回避する敵機に当てるのは至難の業。四機は大破撃墜したが四機は逃す。フォローに入ったモクバ四機が透かさず追撃。それぞれブレットは単発しか展開できないが、逃げるハルピュイアを追撃する。


 結局四機は逃してしまった。高速飛行で回避運動をする敵機に当てるのは難しいが、訓練としては上々。ホバリング中の輸送機の後部解放カタパルトに着艦訓練で幕を閉じる。ハプニングはあったが、退屈しない八時間のフライトだった。




 翌日、朝一の鐘で起床後、先発隊と合流し、作戦指令室でブリーフィング。新人四人は交替で無線中継機を搭載して、出撃部隊に同行する。まずは場数を踏んでいこう。イルメハの迷宮のサブマスタージーンの指揮のもと、本日も迷宮領域内越境者に対しての殲滅行動が開始される。


 航空魔導部隊を厚く運用でき、またゴブリンのマーチン中隊も複数運用が可能となり、迎撃態勢は厚みを増している。昨日のハルピュイアとの接触でドッグファイトも一部経験できた。今回はなかったが、背後をとられた時の対処方法、防御のための空中戦闘機動について練習を重ねていく必要もあるだろう。




 ん? そう言えば、コアはこの迷宮は魔物を呼び寄せていると言っていたな。


 ――マスターの魔力に魅かれて寄ってくるようです。

 以前、コアが冷静に分析していた。




 しまった。マスターの魔力に魅かれたのならイルメハもコザニも同じじゃないか! コザニの迷宮はディフェンス陣が薄い。あっちも同様に、魔物を呼び寄せてしまったら取返しがつかないだろうが。


 ――何が、北にはいくなよ。だ。


 北側から多数の魔物を呼び寄せているんじゃないか!







 コザニの迷宮に移動した俺はコアに、迷宮の領域内への魔物の侵入状況を確認する。

「北方面から多数の魔力反応が侵入しております。」

 コアが冷静に答える。


「ゴブリンのトーマス小隊が迎撃に出撃致しましたが、全滅しました。」

「陸戦部隊の善戦があり、まだ戦線は、四キロ先ですが、数で押されつつあります。」

 サブマスターのストライクが答える。


「そうか、ゴブリン小隊は全滅したか。」

 俺は、そう言って次の指示を出す。


「ストライクは、次のゴブリン小隊を召喚して戦線投入してくれ。俺は、オーガを召喚して、引率していく。」

「了解」


 俺は召喚したオーガ五体に、名前をつけ魔力を流して、早々に出撃させる。

「お前の名前は、レッド。お前はブルー。お前はブラック。お前はイエロー。お前はグリーン。俺のために尽力せよ。」

 名づけが安直だな。至急なので仕方ない。


 五体のオーガはそれぞれ武器を持っていた。金棒、刺股、斧、両刃ノコギリ、薙刀。オーガ達を引率して、四キロ先の前線へ突入する。

「ストライク。敵の数は?」

「はい、およそ百体。ゴブリンが中心ですが、キャプテンがいます。オークもいます。魔法使いはいないようです。」

「味方の損耗は?」

「はい、更に軽剣士が二人死亡。魔法使いが一人右腕損失。仲間が後方に引率しています。」

「なんだと?」




 オーガ隊とともに前線に到着。散開し敵殲滅を指示。入れ違ってしまった負傷した魔法使いを追う。


 右腕損失した魔法使いは、カルメロ。十歳水属性使い。止血はされているようだが、直ぐに傷口を見る。失った右腕は籠手ごと食われたらしい。よく話を聞くと、猫型の魔獣が大暴れしているようだ。再度右手の傷口を消毒し、包帯を巻き付け、塔地下一階の医務室に連れていくよう指示する。


 直ぐに、俺は前線に戻る。五体のオーガが押されていた前線を維持してくれている。が、ブルーとグリーンが、猛獣一頭を刺股と薙刀でけん制している。ピューマ型の魔獣だ。二メートル弱、百二十キロといったところか。スピードがあり手こずっている。ブルーとグリーンが、刺股と薙刀でけん制するのがやっとか。


 俺は、一気に間合いを詰め、ビームサーベルを抜刀。その首を刎ねる。比較的小型の魔獣が溶けていく。


「コア! 俺の家族の死骸を吸収するなよ。」

 俺が空に向かって叫ぶ。

「はい。ご家族の死骸は見当たりません。回収いたしません。」

 コアの回答が頭に届く。

「ん? なんだと?」

 ストリートチルドレンは、死骸にはなっていないというのか。


 五体のオーガを再度散開させ、剛腕で前線を押し上げる。その後ろを注意しながらマイクを探す。

「マイク! 無事か?」

「はい。数が多くて手こずりました。魔獣が一体強敵で、三人やられました。」

「けが人はどこに!」

「あの塹壕です。脚を食われました。止血しましたが、出血が酷く動かせません。」


 塹壕に向かい、重症者二人の傷口を確認する。一人は、ニコレッタ。十歳女子、軽剣士。右足太ももから下を食い千切られていた。止血帯をしっかりと巻いているが、出血量が多く顔色が良くない。意識はない。


 もう一人は、セレスト。十歳女子、軽剣士。右足首を食い千切られていた。止血帯をしっかりと巻いているが、こちらも出血量が多く顔色が良くない。意識はかろうじてある。


 三人目はさっきの魔法使いか。


 俺はまずニコレッタを抱えて、迷宮入り口にある商会本店に飛ぶ。地下一階の医務室に運び込み、安静にさせる。続いて、飛んで戻りセレストを抱えて、再度商会本店に飛ぶ。隣のベッドに落ち着かせる。更に、商会本店に搬送中のカルメロを迎えに行く。顔色が真っ青だが意識はある。


 三人はあの魔獣に食われたようで、なくなった部位は既にもうない。くっつけようがない。俺は、三人に魔力を注ぎ、化膿防止を図る。なくなった部位を生やすのは光属性使いのアナベルでもできない。更に三人に魔力を注いで、造血しながら容態が落ち着くのを待った。命に別条はなさそうだ。




 ――軽剣士二人死亡は、誤報だったようだな。


 三人の容態を見守りながら、コザニの北方前線の様子とイルメハの塔防衛の様子をそれぞれサブマスターから報告を受ける。


 コザニの北方前線は、陸戦部隊が落ち着きを取り戻し、五体のオーガと合流して、前線を完全に掌握、敵魔物を殲滅した。残存兵掃討に移りながら、東西の領域掃討も平行してこなしている。




 イルメハの塔防衛は、昨日遭遇したハルピュイアの本体と思われる部隊の襲撃を受け、迎撃、殲滅中だ。百体を超えるハルピュイアの訪問を受け、アンジーさんが狂喜乱舞している模様。航空魔導部隊が翼膜を狙って破壊し、墜落したハルピュイアをゴブリンのマーチン中隊が受け持つ。


 しかし十数体のゴブリンが、ハルピュイアの巣に持ち帰られたようで、損害は甚大だ。航空魔導部隊の損害が軽微だったのは幸いだった。




 翌日、コザニの迷宮で作戦指令室から状況を確認する。昨日、五体のオーガ投入が間に合い、コザニの迷宮は、北方前線を迷宮入り口から五キロ先まで戻すことができた。北方前線は、オーガが交替で担当し、前線を維持。ゴブリンの小隊育成も兼ねる。


 地下一階の医務室で、三人の様子を確認する。大分落ち着いて、顔色も戻ってきたようだ。あとは精神面でのフォローか。


 右前腕損失したカルメロの前腕義手を造る。水属性の魔法使いであり、掌部分に水魔石を内蔵、外皮は魔力伝導率の高いミスリル金属を使用、右前腕部と魔導杖を合体させたようなものが出来上がった。彼の水属性魔法攻撃力を思いっきり高めてくれるだろう。


 右大腿損失したニコレッタの大腿義足を造る。外皮はダマスカス鋼より硬いミスリル金属を使用。右回し蹴りの破壊力は計り知れない。彼女の身体能力を思いっきり高めてくれるだろう。なお、オリハルコンやアダマンタイト、ヒヒイロカネはまだ見つけられていない。


 右下腿損失したセレストの下腿義足を造る。外皮はミスリル金属を使用。右脚の蹴りの破壊力を向上。


 数日後、エリクサーで損失部分の完全回復とはいかなかったが、失血の回復とともに、体力、筋力ともに戻ってきて、三人とも原隊に復帰することができた。義手、義足がもう少し馴染んでくれば、スムーズに動かし、本当に自分の身体の一部分となるだろう。まあ、育ち盛りの子なので直ぐに造り直しにはなるだろうが。


 命があって本当に良かった。


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