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初めての異世界探索:頼りの武器はバックパック?  作者: サトウ トール
第一章 迷宮に立つ 第四節 新たな能力
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第二十八話 コザニの町探訪

 町のことを何も知らずに、俺は、迷宮を再開して、何を動かすというのか?




 翌日、俺はケイトに抱っこされながらコザニの町に入る。北門から商業タグを掲示して入町するケイトの商業タグをいたずらして鳴いてみる。


「ニャーオォ。」


 そう、俺はヤマネコのレオンの眼を借りて、改めてコザニの町を探索したのだった。


「失礼。そのヤマネコは、貴女の飼いネコか?」

 北門の門番が、ケイトに声をかける。

「ええ、そうよ。」

 門番から丁寧な声掛けをされるくらいに、クロネコ商会の番頭ケイトは有名になったのだね。語尾を強めて返事を返す。

「飼いネコなら、首輪をお願いしたい。」

 丁寧な対応を続ける門番さん。ケイトがしらっと横目で睨む。

「わかりましたわ。」

 捨て台詞代わりに返事を投げて、入町するケイトさん。その対応で大丈夫なのか?


 門に入ってすぐの露店で、赤いリボンを買い求め、首に巻いてくる。音が出ないものをつけてくれた。流石、ヤマネコのレオンの任務をわかってらっしゃる。レオンにはあとで一式Bシールドをつけてあげなくては。




 コザニの町は、キーコリフ川の中洲に作られた比較的新しい町だ。町の石製の城壁はまだ傷一つない、戦闘の跡のない石壁だ。この町の特徴は、町中に巡らされた水路だ。キーコリフ川の豊かな水流を町中に引き込み、町人の日々の生活に活かしている。


 コザニの町は、魔の大森林の材木を切り出す目的で設立された町だ。まずは、樵、材木加工、薪割り屋、炭焼き屋、そしてその道具を支える鍛冶屋。その山林での作業安全を確保するための冒険者は、木材切り出しの邪魔をする獣や魔物を討伐していく。


 物流は、キーコリフ川が中心。材木を下流のアントニオ辺境伯の領都フィリーの町や王都フェニックスへと運ぶ。水運が盛んだ。領都フィリーの町からの物流は荷馬車が中心。


 穀物栽培は、小麦、大麦、ライ麦の栽培。辺境伯の南側の領地が中心だ。北側にも麦畑はある。ひよこまめやえんどう、レンズマメなどの豆類栽培も盛んだ。浅い森林地帯、丘陵地帯が続くなか、開けた場所に麦畑が点在する。が、ごく浅い森林を伐採し、乾燥させた草木を焼き払い年々麦畑が拡大している。森林はそれほど深くなく、農民の脅威となる魔物や狼はほぼ討伐されており、動物、植物がその命を謳歌している。この辺りの森林は領主の所有物で、魔の大森林とは違い、勝手に狩猟や材木伐採、植物採取はできない。冒険者ギルドで仕事を請け負い、あるいはギルドへ採集物を納品することが求められる。うさぎやいのしし、しかなどが狩猟できる。


 町の周囲には農村がいくつかあるらしい。コザニの町民は、黒パンや麦粥が主食。そして、ひよこまめやえんどう、レンズマメを煮込んだスープと野菜中心の食生活。肉食はあまりなされていないようだ。ウサギ肉はごちそう。冒険者の食生活とは少し異なるようだ。焼肉屋を開けば、大繁盛するのか、生活に根付いていないので閑古鳥が鳴くのか。


 町人の服装は麻、亜麻が中心か。女性は、頭からすっぽりかぶるワンピースが目立つ。あるいは作業用の長袖シャツ、そして前掛け。毛皮や絹織物は見かけない。


 親子四人の一カ月の生活費がだいたい金貨八枚程度だそうだ。八百ルード。生活は質素だ。こどもたちも親の手伝いで一日を過ごす。あるいは親に替わって、市場でいろんなものを売る。魔の大森林の落ち葉なんかも商品だ。燃やして灰にしたり、腐葉土だったりする。落葉樹の木の実なんかも、家畜のえさとして貴重なものだ。


 耕作面積の拡大に伴い収穫量が増え、余った農作物を市場で売買できるようになり、農村、農民、そして町民も大分貨幣経済に巻き込まれるようになった。裕福な町民も増えてきている。


 二年ほど前に、魔の大森林との境に迷宮が発見され、冒険者が色めきだった。一攫千金のチャンス。近隣の農村からも、農家の三男、四男などが迷宮を目当てに町に流れ込んでくる。冒険者ギルドと商業ギルドを巻き込み、迷宮入り口には、市場ができ、物資が売り買いされるようになり、ますます冒険者を引き寄せることとなった。迷宮産の魔石がエネルギーを支えるようになり、コザニの町の夜も灯りがともるようになる。経済市場が拡大、多くの商人が物資を運び込み、魔石を運び出し、コザニの町民は、貨幣経済に巻き込まれることとなった。


 町の中央には、公園広場が広がっており、その南面には男爵邸が構える。西側には冒険者ギルドと商業ギルドの建物が並び、人々が行き交っている。




 人々は、キーコリフ川の中洲だけでは狭くなり、川を越えて、中洲の北外側――迷宮の入り口がある――にテントを張り、粗末な柱を立てて屋根や壁を張り雨風を凌ぎ、住居を構えて、生活域を拡大していく。迷宮入り口から広がる迷宮街道には市場が立ち、人々の生活を支えている。


 迷宮入り口の両脇には冒険者ギルドと商業ギルドの出張所が軒を並べ、治安の維持、市場の維持を図っている。クロネコ商会購買部――小売りをする部門――も迷宮街道沿いに店舗を構える。ヤマネコのレオンには、自警団としてこの迷宮街道近辺の巡視、治安維持を頼む。




 コザニの町北門から迷宮の入り口に繋がる迷宮街道まで、迷宮の領域を拡大したことにより、一日のDP獲得量が半端なく増加することとなった。


 この始まりの町は、活気にあふれた町になって欲しい。人たちがもっと安心して幸せな生活が送れる町になって欲しい。日本育ちの俺が考える幸せは、安全と飢える心配のない暮らしだ。独特の文化が花開く令和の日本の暮らしまでとは思わないが、町の暮らしから笑い声が聞こえる町になって欲しい。この世界で初めて接した町だけに思い入れがあるのだろう。


 どこをどう貢献していったらよいのだろうか。ここは思案のしどころだ。きっとこれが、俺がこの世界に呼ばれた理由なのだろう。そして、コザニの町だけでなく、この王国、この大陸、この世界全体に広げることができれば、これ以上の喜びはない。しっかりと計画し、実行に移していかなければならない。




 ――後方での、ゆっくりとした生活は当分望めそうにないなぁ。







 あっ!。そう言えば稼いだ金貨はどうなったのだろうか。全部商会に任せっぱなしだったわ。ケイトさんに確認してみよう。


 「金庫にありますよ。」

 ケイトさんがさも当然と言わんばかりの表情でお答えくださいました。

 「どれくらいあるのかな?」

 少し心配になり、尋ねる。

 「結構あると思いますよ。みんな頑張っていますからね。見てみます?」

 ケイトさん、そもそも金庫ってどこにあるのよ。




 クロネコ商会の安全のため、金庫の位置は描写できません。悪しからずご容赦ください。




 小さい手提げ金庫のようなものが、金貨であふれそうになっている。


 「頑張りました。」

 胸を張るケイトさん。

 「ケイトさんや、いつも済まないねぇ」




 クロネコ商会が稼いだ金貨を内部留保しても仕方ない。金利が付かないからだ。従業員給与支払いはまだ必要ない。十五歳からだ。それまでは、安全と衣食住の確保とお小遣い程度で構わない。それがこの世界の基準。


 金貨を放出しないと、お金を使わないと、内部留保と称して金貨を溜め込んでしまうと、この町で使える通貨が減り、経済活動が停滞してしまう。金本位制の弱点。


 実質的に、金保有量が減少し、通貨は金保有量までしか作れないので、流通量が減少するのは致命傷なのだ。金を確保できればよいのだが、どの世界でも金は希少金属。そのため価値が高い。金貨を増やして経済発展させたいが、金の量は増やせない。ジレンマ。




 まあ、小さい手提げ金庫の一つ分程度なら何ということはないだろうけど、習慣づいてしまうとあとあとが怖いからなぁ。使い道を考えよう。


 原材料の仕入れと作業員の確保かなぁ。


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