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初めての異世界探索:頼りの武器はバックパック?  作者: サトウ トール
第一章 迷宮に立つ 第四節 新たな能力
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第二十六話 コザニ迷宮の大改装

 初夏の到来を予感させる日の出前の爽やかな空気のなか、バスケスナ大山脈には間もなく日の出を迎える東雲色の空が広がっている。真夜中の地震発生から六時間が経過していた。雨はいつの間にか上がっていた。




「トール!」


 眩しく発光した迷宮入り口の転移魔法陣が落ち着て来ると、両手にアナベルをお姫様抱っこした俺の前にララアさんが俺の名を叫びながら、駆け寄ってくる。顔色が悪い。



「アナベルを頼む。心配はない。気を失っているだけだ。」


 駆けつけたマイクにアナベルを託し、駆けつけた皆の顔を見渡す。レイ、パウル、アンジー、ケイト心配かけたね。ララアさんはアナベルの無事にほっとした様子。



 ララアさんの両肩に両手を置いて、俺はしっかりと彼女の顔を覗き込む。


「ララア。これから俺は単騎でダンジョンマスターと話しをつけてくる。この迷宮は今日一日閉鎖となるだろう。」


 ダンジョンマスターと話しをつけるのは、噓ではない。


「心配はいらない。この迷宮を失う訳にはいかない。俺も無事に帰ってくる。拠点で待っていてくれ。」



「……。」


 無言でうなずくララアさん。


 ――ごめんよ、俺はこれ以上迷宮から離れられないのだよ。


 見えない強力な結界が俺を通せんぼする。



「さあ、アナベルを頼む。彼女に命を救われた。褒めてやってくれ。」


 俺は、皆の顔を再度見渡し、マイクに拠点への帰還を促す。


 マイクを中心にして、拠点に向かう姿を俺は見送る。マイクの背中が頼もしい。何度も振り返るララアさん、ケイトそしてアンジー。心配をかけてごめんよ。




 振り返って、冒険者ギルドの情報局に、地震の原因は三十階層のボス部屋出現であること、そのボスは五体の鬼であることの情報を流す。三十階層が現状最下層であることも説明。また、これからもう一度迷宮に潜って、ダンジョンマスターと話しをしてくる旨を説明する。


 その後、転移魔法陣に乗り、コアのもとに転移する。同時に迷宮入り口がコアにより物理的に塞がれていく。




 さあ、コアよ。いろいろと答えてくれ。


「ダンジョンマスターを辞めることはできるのか。」


 まずは確認したいことから。



「できません。」


 そうか、単純なことだな。



「俺が拠点に帰るにはどうしたらいい?」


 どんどん確認したいことから聞いてみよう。



「マスターの拠点を迷宮に取り込むか、迷宮の領域を拠点のある場所まで拡張すれば、可能です。」


「今の領域は、ここから半径四キロメートル、迷宮の出入口はその端にあります。」


「マスターが迷宮の出入口からそれ以上は離れられないと申し上げたのは、迷宮の領域から逸脱する限界だったからです。」


 コアが淡々と答える。



「コザニの迷宮を改装することは可能か? 主にDPの消費量的に」


 気になっていたことを問う。



「現在のDPの残数はごくわずかです。厳しいと言わざるを得ません。」


 コアが残念そうな声で答える。



「二代目の残したもう一つの迷宮は、どこにある? 」



「サンズ王国の北西地域、イルメハの町から北に五十キロの地点に入り口があります。周囲は魔の大森林です。」


 コアが淡々と答える。



「DPを増やす方法は? 」


 俺はこの迷宮を改造して住居としないといけないらしい。早急に。



「霊脈から魔素を吸い上げることで増やせます。あるいはダンジョンに魔石や魔力を捧げてください。」


「霊脈から魔素を吸い上げるのはダンジョンコアの仕事です。それと、迷宮の領域内で魔力を回収できるとDPを増やすことができます。例えば、階層で魔力持ちの冒険者が、あるいは魔物が死亡し迷宮に回収されることです。魔力持ちが迷宮の領域内で活動するだけでも増やせます。」


「迷宮の領域内でも、部分的に魔力を回収する、しないの切り替えが可能です。」


 コアが待っていましたとばかりに張り切って答える。



「ここで魔石を出してコアが吸収してくれればDPは増えるのか? 」


 俺は単刀直入に聞く。



「はい、マスター。」


 コアは定型句を返してくる。



「では、これをDPに変換して欲しい。」


 俺はバックパックから大量の魔石を取り出す。ゴブリンやコボルトなどの極小の魔石からボス鬼の大きめのものまで様々だが、塵も積もれば山となるだろう。



「はい、マスター。」


 大小の魔石の山が見る見るうちに溶けていく。






「完了いたしました。」


 コアが嬉しそうに答える。




 増加したDPを使って俺は、コザニ迷宮の大改装に乗り出す。まずは迷宮の領域の拡大だ。今の拠点をカバー出来る程度まで拡大する。半径を約一キロメートル延長し、半径五キロメートルの迷宮の領域とすることで、現在の拠点を丸々領域内に収めることができた。



 次に、迷宮入り口を覆う別拠点を作る。入り口を百メートルほど北側、魔の大森林側に移動させ、入り口前にスロープ状のローターリーを設置する。大型馬車がすれ違える程の道幅。ローターリーの中央部分には花の公園と噴水を造る。



 迷宮入り口の上には、大理石風五階建てホテル仕様の建物を被せてしまう。一階部分はエントランス。入って正面には、二階まで吹き抜けた空間に、模様貼りの床、左右から二階につながる迫力のある手摺り付階段。その先には左右に手摺り付きのバルコニー。一階には、右側にホテルのフロント、左側にクロネコ商会の事務所を設置。中央踊り場右側に迷宮入り口へのリフトが五基。反対の左側に上層五階のゲストルームまでのリフトを五基。



 二階部分には、レストラン、売店、武器・防具屋、薬屋などを構える。手摺り付きのバルコニーまで連なるフードコート。



 三階から五階部分には、ゲストルーム。シングル、ツイン、トリプル等冒険者の要望にできるだけ答えられる内容とした。



 地下一階には迷宮入り口。ここには転移魔法陣があり、迷宮十階層、十一階層、二十階層、二十一階層そして三十階層へ転移できる。ほかに大浴場が二か所と、個別のシャワールームを数か所設置する。鍛冶工房やメンテナンスルームもここに。また、ゆったりとした螺旋状の下り坂を進んでいくと、迷宮一階層に到着する。



 迷宮三十一階層以降は立ち入り禁止区域。迷宮三十二階層には、クロネコ商会メンバーの居住区を新設。トレーニングルームや学習室なども追加していく。そしてコアルームとマスタールームはその下、三十三階層へ移動。



 半径五キロメートルの迷宮内はかなり広く感じる。階層別の改修は、ぼちぼちやろう。




 まずは、ここまで。迷宮入り口へ転移し、俺は冒険者ギルドの情報局へ。ダンジョンマスターとの話し合いの結果、迷宮は数日封鎖され大改装される旨を説明。既に入り口が百メートルほど移動してローターリーが出来上がり、建造物がその先に出来上がっているのが見えているので、おおよそ検討はついているようだ。またマッピングのやり直しだ。俺は苦笑いで答える。




 コザニ迷宮の豪華なエントランスに戻りながら、次の課題に着手する。次は、サブマスターの指名だな。コアは、


「ダンジョンマスターの権限を一部行使できる者をサブマスターとして配置し、管理を代行させることで、マスターはダンジョン外で自由に行動できます。」


 とぬかした。異世界探索を続けるためには、ダンジョンに縛られてはいられない。さあ、サブマスターの条件を確認しようではないか。


「サブマスターの資格としては、マスターのダンジョン運営方針に基づき、運営補助が出来る能力を有するものです。ダンジョンの機能を一部使用することが可能になります。」


「サブマスターはマスターの眷属となります。人族を指名する場合、サブマスターは人外となります。」


 サブマスターに人族を指名すると、人外となるわけか。ここはひとつ布袋様にアドバイスをお願いしてみようか。



 おっとその前に、自警団を召喚しておこう。あくまでも自警団――ジャッジメント――ですよ。俺は黒いヤマネコを召喚し、レオンと名付ける。魔力を流しながら、


「よしよし、レオン。俺の家族を守ってくれよ。」



 更に、手のひらサイズの小型ドローンに高性能ビデオカメラを搭載し、無線でつなぎ五十体ほど飛ばす。魔力が切れそうになったら、ポートに自動帰還する優れものだ。映像はコアのモニターに映しだそう。ポートはクロネコ商会本部の屋上に設置する。




 拠点に帰ったのはお昼過ぎ。ケイトにヤマネコのレオンを預けながら、宿屋を経営することにしたと説明。コンシェルジュをどうするか神さまと相談してみると話す。ケイト自身がやる気を見せてくれる。まあいろいろと、サービス開始のための準備を始めよう。まずは、迷宮を数日封鎖して大改装しよう。


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