閑話三 リクルート
今朝も朝仕事は水汲みから始めましょう。井戸端では情報交換が盛んです。どこのだれそれがサルート男爵領の迷宮に移動しただの、どこそこの黒パンがまだましだの、あそこの洗濯石鹸は良く落ちるだの、洗濯は手荒れが酷くて嫌になるだの、そして、だれそれの家で赤子が生まれそうだの、いつも姦しいわ。
「はい、ララアちゃんお待たせね。」
私の順番が回ってきたようです。給湯器があるので、水汲みは必須ではないのですが、井戸端に来ないと何を勘繰られるか分からないの。形だけですけれど毎朝の日課としています。今日はマーカスとエドが手伝いですね。二人とも九歳の男の子。朝一番にはトールが何度か往復してくださいました。二人にも何往復かしていただきましょうか。
マーカスとエドが水桶いっぱいにして運ぶのを見送りながら、水汲みの順番待ちをしている一人の男の子に目を付けました。確か、下に男の子と女の子がいたはずです。
「妹さんは元気? この頃見かけないけど」
井戸の釣瓶上げを手伝いながら声をかけます。
「えっ? ああ、元気にしているよ」
声を掛けられて驚いたようですね。
「マリアの友達かい?」
妹さんの名前はマリアというのね。
「えぇ。前に、少し手伝ってもらったことがあって、どうしているかなぁと」
元気なのか探りをいれてみます。
「その手伝いってさ、俺にもできないかな?」
彼は、私の期待している返事をすっ飛ばして、現状を訴えてきました。困っているようですね。痩せた身体が全てを物語っています。私がクロネコ商会の人間だというのはわかっているのでしょう。
「じゃあ、水汲みが終わったら、※※※に来てくれない? 少し人手が欲しいの。」
少し様子を見てみましょう。マリアも連れてきてくれるとよいけれど。
「決まりだ、よろしく。俺はローランド。下にさっき言ったマリアとマルティンがいる。実の兄弟じゃないけどな。」
釣瓶から水桶に移しながら、彼が挨拶をしてきました。
水桶を運んでいくローランドの身体からは、少し水色の魔力がこぼれています。彼に声を掛けた理由。
――魔力の色が見えるのはトールだけじゃないのよ。内緒だけれど。
そう言えば、サンズ王国の通達が届いていたわ。商取引の額が近年大きくなり、それに対応するためとのこと。庶民がよく使う十ルード銀貨は変更なし。主に大型商取引向けね。
・新金貨の発行
千ルード大金貨
五百ルード二分金貨
二百五十ルード一分金貨
百万ルード大白金貨
五十万ルード二分白金貨
二十五万ルード一分白金貨
・旧金貨の即時流通停止
百ルード金貨
一万ルード白金貨




