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初めての異世界探索:頼りの武器はバックパック?  作者: サトウ トール
第一章 迷宮に立つ 第二節 基盤
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第十五話 ゴブリンそしてゴブリン

 冬の大将軍がじっと構える一月。微動だにしない。雪が降らないのが幸いか。そんな中彼らは次の段階へと進んでいく。




 クロエ達三人は、六階層へと攻略を進める。六階層からは石畳の迷路ではなく、それぞれ階層ごとに特徴が出て来る。ここは森林地帯で、太陽と空がある。どこまで高いのだろうか。迷宮の中の空とか違和感が半端ない。


 魔物はゴブリンのスリーマンセルが相手だ。隊長格にゴブリンキャプテンがいて、ショートソードを装備している。おぉ、ゴブリンの分隊だ。新鮮味がある。


 レイが探索でゴブリンを探していく。向こうも警戒しているが、レイの方が優秀だ。複数のゴブリン分隊に挟み撃ちにされないようポジションをとりつつ、気付かれないよう接近、クロエのファイアーブレットで、一体頭部を吹き飛ばす。すかさず、マチェット双剣持ちのレイが、もう一体ゴブリンの首を切り落とす。レイの速さにはついてこられない。他方、マイクが盾でゴブリンの攻撃をパリィ、すぐさまショートソードで切りつけ体勢を崩す。


 マイクと出会って一年近くなるが、一番成長したと思うのが彼だ。しっかりとタンク役をこなしてくれることにより、冒険者パーティとしての形がとれるようになった。クロエの火属性魔法やアンジーの箒飛行など華やかで目立つものは沢山あるが、仕事が出来るようになったのはマイクの成長のお陰だ。体つきはもちろん剣の技量、盾の使い方などもう一人前のタンクとみてよい。


 装備、食べ物や寝床など心配事がなくなったのも良い方向に影響しているだろう。初見の相手は、まだ荷が重いが対策が手の内に入っている魔物に対しては自信をもって行動できている。




 ――さて、ゴブリンだが、所詮はゴブリンなのだ。


 地図は広く、丹念に検索すれば結構な回数で戦闘となる。ゴブリンキャプテンの魔石は少し大きく使い勝手がよい。また森の素材の収集もできる。そこが救いか。


 七階層は、丘陵、草原エリアでコボルトのスリーマンセルが中心。コボルトキャプテンが隊長だが、これも問題にはならない。見通しが良い分、コボルトもこちらを見つけて突撃してくる。が、クロエのファイアーブレットがさく裂、上手くいくと三発入る。入らなくても、レイの投げナイフで先制し、マイクの盾が安定して弾いていく。コボルトもゴブリンも五十歩百歩か。一角ラビットもちらほら出現するので食糧の確保も出来ている。


 ――コボルトは何故二足歩行なのだろうか。俊敏性を犠牲にして、何を得たのか。前足に武器を装備できたことが利点なのだろうか。


 丘陵、草原エリアだけあって、上空から狙い撃ち放題だな。ここは射撃訓練にうってつけだ。素早く動けないコボルトなど的でしかない。


 八階層は、グリーンウルフが率いるウォーグ集団が中心。ここも丘陵、草原エリア。コボルトとはスピードは違うが、いくらウォーグ集団でも油断はしない。四階層の隊長がグリーンウルフになった程度……。コボルトよりは素早く動けるウルフ集団、的当てには努力が必要となりそうだ。射撃訓練会場その二。


 九階層は、岩場エリアでオーク数体の集団が中心。この迷宮の稼ぎ場所となっていて、他の冒険者たちをちらほら見かけるようになる。鉱石採掘やオーク肉も需要が高い。


 オークは元々知能の低い魔物だ。複数いるとはいえ、隊の体を成していないので、行動を分断し一体ずつ各個撃破が基本。三対一を維持して戦えば、体格差はそれほど感じない。スリーマンセルの連携確認にもってこいだ。


 そして十階層は、単騎のアウルベアが中心。ここは峡谷、高原、丘陵地帯の採掘エリアだ。この迷宮の一番の稼ぎ場所となっていて、冒険者たちも多い。主に鉱石採掘や石炭採掘で、ここに来る冒険者はマジックバッグ持ちなのだろう。戦う場所を選ぶという違った悩みが出てきた。


 アウルベアは獰猛、貪欲、短気で攻撃的。が、一体では相手ではない。それほど三人のコンビネーションは場数を踏んできて、こなれてきている。




 オリバー、トミー、パウルとアンジーの四人は、三階層から五階層へと巡回していく。三階層のスライムはアンジーの風属性魔法で粉砕。四階層、五階層ではオリバーとパウルのタンクががっちりと出足を防げるようになっていた。まだまだパウルサイドが心配だが、アンジーのカバーリングが良い仕事をしている。判断が速くて、的確だ。


 四階層ではウォーグの毛皮納品を受注して、パウルのギルドランクをDランクに上げておく。また、四階層、五階層では不特定多数のポーターたちが相変わらずぞろぞろと後ろをついてくる。


 この二部隊には、帰り道に一階層の泉の水採取をお願いしている。うちの商会のドル箱の命の水だ。決しておろそかにしてはならない。




 クロネコ商会の携帯ご飯の具材の準備、串打ち、拠点の食事周り一切はララアが取り仕切る。ちょっとした怪我の治療などもできる。生活魔法が生えているようだ。残念ながら光属性魔法ではない。家事全般もララアさんが先導する。ポーラ、メリッサ、アナベルが手伝う。


 この部隊のお母さんは、ララアさんだったようだ。小さい子たちの面倒をよく見ている。調理、裁断、裁縫、生活魔法、治療なんかも使える。ダークブロンドは、金髪と茶髪の中間。明るい茶髪とも見えるし、暗い金髪とも見える。ロングストレートを後ろで束ねた細い毛質、ブルーとグレーのオッドアイ。日本にいたころの常識では、先天的遺伝子疾患。こちらの世界ではどうなのだろう。小柄で眉尻の少し下がった細面の顔、その身のこなしはしなやかで、猫のような雰囲気を感じさせる女の子。


 商会の店舗販売は、ケイトが仕切っている。売買、資金管理、仕入れ、調達、商会との調整、人員の手配、支払い、商業ギルドの窓口などなど一切をお任せだ。商才スキルがぎらぎら活躍中だ。ピンクブラウンは、丸みのあるショートカットに、サイドを少し長めに残し、ボーイッシュになりすぎないスタイル。淡いブルーの瞳に長い目尻。小柄で少し丸めの顔。眼鏡が似合いそうな女の子。ちびっこ用心棒のマーカスがお手伝い。


 で、俺は毎日、朝仕事のあと、朝食前に魔の大森林に出かけ、夕食前に帰ってくる。そのあとはみんなの話を聞きながらHP回復薬などを生成して在庫補充に励む。

「トール?」

 今日も一日が終わり、何事もなかったように回復薬を生成していた俺は、ララアさんの声に顔を上げる。

「どうした?」

 と心配事かとハッとして答える。

「牛出して」

 とララアさんがしれっと答える。

「明日は牛鍋にしたいの」


 早速、牛の枝肉をスライスにしてどんどん出していく。バックパックの仕分け機能はとても便利だ。拠点には魔道具である小さめの冷蔵庫が稼働している。大きめの魔石が必要だが、魔石は自給自足できているし、誰かが寝る前に魔力を充填してくれている。


 普段はここに鶏肉、豚肉、牛肉など携帯ご飯用に保続しているのだ。俺の日常はこうして、ララアさんの食糧備蓄庫として活用されているのだった。




 一月の末には、拠点の隣の宿舎が空いた。住人の中級冒険者たちがサルート男爵領の中級迷宮へと移動したのだ。仮テント住まいだったオリバー達は、ようやく拠点に引っ越せた。ここでも中級冒険者たちはかさ張る大型ベッドを残していってくれたので、全部くっつけ、小麦の藁束を重ね敷きして寝床を整えていく。パウロ達二人も合流させる。


 ここの宿舎は二列に四軒ずつの八棟の宿舎があり、右三と右四を確保。右一と右二、左列は全棟にも声をかけてある。主にララアさんの仕事の成果だ。皆さん、順調に中級冒険者に向かっているようだ。ララアさんがよその冒険者たちにも発破を掛けていく。


 ――ララアさん? オリバー達が仮住まいしていたテントを撤収しないのは何故?




 当初予定していたカーター男爵へのお目通りは、結局羽毛掛布団を子供たちに使わせてしまった――これはこれで、物凄いぜいたく品だなあ――ため、申し出をしなかった。これもララアさんの指示。


 領主も町の急拡大により多忙で、さまざまなことをこなしていかなければならないらしい。機会を改めて出直そう。そう言えば、壁外の人口も倍程度には増えているらしい。屋台の串焼きやさんが嬉しい悲鳴を上げていた。




 こうして一月、二月と寒い季節は過ぎて行った。寒い季節、俺たちは怪我だけをしないように、慎重の行動しながら、戦闘のスキルを、そして生き残るための術を身につけていく――。


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