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初めての異世界探索:頼りの武器はバックパック?  作者: サトウ トール
第一章 迷宮に立つ 第二節 基盤
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第十二話 スリーマンセル

 朝の水仕事が辛くなってきた十二月。三人を連れて俺は迷宮に潜っていく。今日は四階層だ。併せて、冒険者ギルドのEランククエストを受注しておく。ウォーグ五匹の毛皮納品だ。




 こちらのスリーマンセルで、四階層のスリーマンセルを圧倒できないだろうか。そんなことをつらつらと考えながら、身体強化を掛けた身体で迷宮一階層から三階層まで、出会う魔物はスルーして駆け足で進んでいく。


 もはや一階層から三階層までの単独行動の魔物は、うちのスリーマンセルの敵ではない。三人ともそれぞれ単独撃破できるだろう。なら四階層でも、一対一で対峙できるのではないだろうか。


 昨晩そのようにクロエ達三人に説明し、ウォーグのスリーマンセルの対処について考え、話をしてきた。今日は一部実戦だ。ウォーグのスリーマンセルは初見ではない。俺が前衛でタンクをしていた頃、後ろでしっかりと経験を積んでいる。今日は、前衛にマイク、中衛にクロエとレイ、俺は後衛で遊撃隊だ。


 迷宮四階層も、取れる魔石は小さく冒険者の数は少ない。ただ、六階層以降の対パーティ集団の練習を積む意味では、いい狩場かもしれない。ウォーグは弱いし危険度は低いと判断する。自走式荷台車カートを持っていこう。


 四階層に入ると早速のお出迎えだ。我さきに突っ込んでくる隊長格を

「ファイアーブレット」

 すかさずクロエが足止めする。

「てぃっ」

 呼吸を合わせレイが速攻で止めを刺す。隊長格を早々に失い狼狽する隊員二匹は、マイクの斬撃で一体ずつ止めを刺していく。


 クロエのファイアーブレットは、ウォーグの毛皮を切り裂くのに十分な火力を有し、あるいは一撃で魔物を葬り去ることもできるまで強化された。マイクとレイのショートソードの振り下ろしも大分攻撃力を上げた。これなら四階層も十分に巡回できるだろう。その後、何度か三対三を繰り返し、いろんな攻撃パターンを試してみては、安定して撃破していく姿を確認し、俺は自信を深めていった。冒険者ギルドのEランククエストも無事完了できた。


 明日から部隊は、お昼のお弁当持参で迷宮四階層の巡回ピクニックだ。出発は朝一、帰還は日没前後。それに耐えられる体力も戦闘能力も備えている。安全面でHPとMP回復薬を持たせるのは当然だな。彼女たちはまだ十二歳と十歳なのに、俺はまるで鬼のようだな。




 うちのスリーマンセル隊には討伐に集中してもらいたいので、自走式カートを持っていくとは言え、朝一でポーターを雇入れ、魔石、毛皮、牙の回収を依頼したい。討伐数はかなりの数になるだろう。単独ポーターではなく、四階層の往復ができるポーターを集めて回収袋が満タンになる度に入れ替えていく。一階層から四階層まで走破出来るポーターが必須か。彼らの取り分は毛皮と牙。魔石はうちが引き取る、でどうだろうか。

 さて、誰か手を挙げてくれないだろうか……。




 ……誰も手を挙げてくれないよなぁ……

 仕方ない。毛皮は諦めよう。




 その後、冒険者ギルド内で迷宮四階層はウォーグの毛皮が落ちているといううわさが立ち、鼻の効く連中が四階層に潜りだした。見知らぬ、逞しいストリートチルドレンが、初級冒険者を雇い、護衛を頼み、落ちている四階層に往復をかけたのだ。あるいは単独で潜っているのもいるのだろう。部隊の後ろを、ポーターの集団が護衛されながら、ぞろぞろとついてくる姿は、どこか滑稽だった。勿論部隊は、魔石と牙のかさばらないものだけ自走式カートで回収してきたのでした。


 四階層が順調に巡回できれば、五階層は問題ではない。リトルボアの突進など、一角ラビットに毛が生えた程度。クロエのファイアーブレットで足止めし、二本のショートソードで止めを刺していく。というかクロエさん、リトルボアの前足粉砕していない? 


「あっ!やり過ぎでしたか?」

 とニコニコ顔のクロエさん、ずいぶんと余裕になったな。


 もはやリトルボアの単独行動なんて何の脅威でもない。が、油断はしない。レイの探索で相手を慎重に探し、見つけ次第釣り、引き込み、クロエが前足を粉砕していく……。


 のつもりが、クロエが見つけ次第、脳天を吹っ飛ばしだしだ。ここも作業化してしまったのか!




 四階層のウォーグの毛皮騒動が落ち着いたと思ったら、五階層でリトルボアの毛皮と肉騒動が勃発。見知らぬストリートチルドレンが、もうこぞって護衛を雇い入れ五階層に潜り始めたのは言うまでもない。今回は旨い肉もあり真剣だ。ここでも金魚の糞のごとくポーター集団が部隊の後をついてくる。勿論部隊は、魔石と少しだけ肉と毛皮を回収していましたとさ。


 さあ町の皆さんがたは、今年の冬はみんな暖かい毛皮シーツでぬくぬくと過ごせるね。




 クロエ達は、ショートソードを店売りの良いものに少しランクアップ、ゴブリンの落とし物から、鍛造品へと替わっていく。


 マイクの盾はカイトシールドになった。また、彼らの足元を飾るのは、頑丈なコンバットブーツ。ふくらはぎ付近まであるハイカットと靴紐が特徴。足首の保護と虫や異物など混入を防ぐために足首周りは固定されしっかりと縛られている。これを履いて右足に身体強化を掛け、回し蹴りをかませば、リトルボアも一撃で沈む。ようやく冒険者らしい装備を揃えられた。


 クロエも冒険者ギルドの昇格検査を無事にパスして、Dランク昇格となり、ようやく冒険者のスタート位置に立てた。春の頃には、ゴブリンに怯えていた姿を思い返すと、随分遠くまで来たもんだ、と感じる。




 クロエ達の拠点は、サルート男爵領の中級迷宮へと移動していった中級冒険者が、所有していたものだが、空き家になっていたところを彼女たちが、幸運にも占拠している状況だ。中級冒険者は、コザニの町にはもう戻ってこない。


 迷宮入り口や露店街からは少し離れていて多少不便か。公共井戸も公衆便所も離れている。また、急普請だったのか、いろんなところに不具合がある。まあ、彼女たちは気にしないだろうが。例えば、床に玉を置くと一方向に転がっていったりする。


 こんなバラックがあちこちにあり、また別のストリートチルドレンや初心者冒険者たちが住み着いている。冒険者の稼ぎは、コザニの九階層、十階層でもそれなりの稼ぎになり、入り口付近にこだわらなければ、住居を建てることもできるのだ。


 石造りの基礎の上に、柱を立てる穴を空け、木材で柱を立て、棟上げ、壁は板張り、屋根も板葺きだ。ここコザニの町は、材木の町でもあり、木材加工師や大工も多く生計を立てている。土属性魔法使いも多いのかな? 炭焼き屋さんなんかもいる。北門の外苑は迷宮の影響で急速に発展しており、土地取引とか追いついていないのか。


 建てたもの勝ち?


 領主は儲かっているから良いのか?




 いや、領主が戸建て平屋の集合住宅をあちらこちらに建てたらしい。どうやら急速にあふれだした冒険者たちの住宅不足救済として公共事業のひとつだったようだ。二列に五軒ずつの宿舎のような、片流れ屋根の平屋。迷宮入り口には、兵士団の宿舎として建てたのだろう。


 現在も兵士団の詰め所やギルドの事務所として使われている。少し離れたところは、冒険者向けに開放された。それでも住宅は不足し、ある程度稼ぎのある冒険者たちは、集合住宅を真似て、さらにあちらこちらに建てていき、そういった建物群が急速に拡大していった。


 冒険者たちは実力と財産を蓄え、更に良い稼ぎを求め、中級冒険者となった順にサルート男爵領に移動していく。空き家になったところには、目ざとい初心者冒険者やストリートチルドレンが入居して、そこを拠点にして迷宮に潜っていく……。


 クロエ達の拠点は、平屋建てで、大部屋が一つだけ。一方にかまどと水回りがあり、水汲みの瓶などもここだ。調理場と暖炉が一緒。冒険者たちが使っていたのだろう、大型のベッドが四つ。家具はそれだけだ。かまどの上部分には、換気用なのか、跳ね上げ式の窓。片流れ屋根。戸建て平屋の集合住宅群のはずれにある。


 その住宅群を取り囲むように大小様々なテント群が張られている。オリバーとトミーたち六人は、更にその外側に粗末なテントを張って、陣取っている。


 クロエ達の拠点の隣の宿舎には、もうすぐ中級冒険者になろうとする冒険者のパーティが居住しており、俺はいろいろと便宜を図ってやっている。勿論、彼らがサルート男爵領に移動した後、空き家の後釜に入るつもり。携帯ご飯やHP回復薬は効果覿面だ。彼らからはいろんな情報をもらっているからおあいこか。




 人々の楽しげな声があちらこちらから聞こえてくる。なんとなく町が浮かれている。みんなが忙しなく動いている。この世界でも年の瀬はあるようだ。





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― 新着の感想 ―
[良い点] 暖かくできる冬はリアルでもファンタジーでも幸せなもの良い年越しをw [気になる点] そろそろ胴装備を良い感じのを着けておかないと不意の致命傷が恐い心配 [一言] 寒くなってきたのでお身体に…
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