第十一話 重戦士マイクと斥候レイ
泉の水汲みの護衛を終え、拠点に戻ったマイクとレイの仕事は、装備の点検、整備だ。これを怠る冒険者に明日はない。二人とも十歳、まだまだ遊びたい盛りだろうに、迷宮に潜り命のやり取りをせざるを得ない。その命を支えるのが装備だ。点検を怠れない。
マイクは、十歳の男の子。ミルクティー色のふわっとした髪質をしていて、動きの邪魔にならないようツーブロックに刈り揃えている。瞳は薄いブラウン。柔らかい印象で優しい表情だ。身長は百四十五センチくらいの骨太の体格。出会ったころは例にもれず痩せっポッチで筋肉もなかったが、食生活の改善から大分筋肉がついて下半身がしっかりしてきた。身長もまだまだこれから伸びるようだ。身長は俺もその後成長していて、百五十センチくらいになっている。高低差は逆転していないぞ。
あまり話し上手ではないが、背中で引っ張っていくタイプ。前衛は俺に任せろ。魔法はまだ使えないが、小盾を上手く使い、パリィができる。短剣術スキル持ち。そのうち身体強化も使えるようになるだろう。いつか魔法も使えるようになるといいな。
装備は、若草色の長袖Tシャツ、革のネックガード、革の胸当て、革のガントレット、革のベルト、緑色のカーゴパンツに膝下までの冒険者のブーツといった戦闘服。革のネックガードは必須装備。後ろから首に一撃を貰ったらたまらない。革のベルトはショートソードの鞘付き。本当はフルフェイスヘルメットかパイロット帽を装備して欲しいところだが……。将来が楽しみな優しい顔立ち。フルプレートアーマーが将来の装備の目安か。金属鎧を装備してもしっかりと動ける身体を作る必要がある。
武器は、ショートソードと小盾。気になるところは山積みだ。ゴブリンのドロップ品では、能力は知れたもの。盾もせめてカイトシールドを持たせたい。彼が魔物を止めることからアタックが始まるのだから。
マイクには前衛でタンク役を頼む。クロエからフレンドリーファイアされないようにね。パリィスキルも良い仕事をする。身体強化が使えるようになれば、大型魔獣もせき止めてくれるだろう。体力、スタミナも一日活動しても切れない程度になっている。
レイも、十歳の男の子。淡い金髪のさらさらのストレートヘアをショートカットに揃えている。動き回るのに邪魔にならないよう短めの髪型だ。瞳は薄いグレー。ゴージャスな印象で柔和な表情がよく似合う。身長は百三十五センチくらいの小柄な体格。出会ったころは例にもれず痩せっポッチで筋肉もなく、体幹もグラグラだったが、食生活の改善から筋肉がついてしっかり動けるようになってきた。身長もまだまだこれから伸びるだろう。
少しもじっとしていない感じでいつも動いている印象。身軽で木登りが得意、足も速いし目も良い。スタミナがないのが残念。まあ、食生活が改善してきているので持続力もついてくるだろう。いろんなことに興味をもってよく観察している。斥候タイプだ。魔法はまだ使えないが、小柄な体格ながらショートソードを上手く使いこなす。短剣術スキル持ち。そのうち身体強化も使えるようになるだろう。そうしたら双剣も使えるようになるか。
装備は、茶色の長袖Tシャツ、首にはストール、革の胸当て、革のガントレット、革のベルト、こげ茶色のカーゴパンツに膝下までの冒険者のブーツといった戦闘服。革のネックガードの代わりにストール。首回り可動域を確保したいそうだ。ストールでも防御力はある。革のベルトはショートソードの鞘付き。パイロット帽を装備して欲しいところだがなあ……。中性的な雰囲気を持つ美少年。将来は黒装束に忍びか。
武器は、ショートソード。ゴブリンのドロップ品では、能力は知れたものだ。斥候向けのもう少し取り回しのよいものを持たせたい。投擲武器も何か持たせたいものだ。あるいは弓装備か。彼がいち早く魔物を発見できるかどうかがパーティの命綱。
レイには斥候役を頼む。魔物の釣りも大分上手くなった。身体強化が使えるようになれば、体力、スタミナも一日活動しても切れない程度になってくるだろう。
今のところ、二人とも朝一の時間帯から迷宮三階層に潜り、クロエのレベル上げに同行する。お昼前には、一度拠点に戻りお昼ご飯を取る。午後からは、再度迷宮三階層に潜り、クロエの魔力が尽きる前に拠点に戻る。だいたい三時ごろか。
それからは、協力してくれているストリートチルドレンの二人、オリバーとトミーを連れて泉の水を採集に一階層に潜る。だいたい一、二往復か。この間、オリバーとトミーの護衛をしながら、二人にゴブリンの姿、動きをしっかりと教えていく。以前俺から教わったことをしっかりと二人に伝えてくれている。マイクとレイの成長が嬉しい。泉の水汲みを終え、拠点に戻ったマイクとレイは、装備の点検、整備に取り掛かる。日没後全員で晩御飯を頂戴したあとは、ストレッチ体操で身体の整備を行う。
今はクロエの成長が最優先されているが、次はマイクとレイの番だ。ある程度身体のできたクロエとは違い、二人はこれからしっかりと骨格を作り、筋肉をつけていく必要がある。食生活はずいぶんと改善されたと思うのだが、それでも子供に必要な栄養素が足りているかと言われれば、否と答えざるを得ない。日本に居た頃は牛乳やチーズ、小魚、豆腐や納豆などカルシウムを取る手段はあったが、ここでは余り選択できない。そのあたりの課題が重くのしかかる。このあたりは川魚を食べる。露店に小魚や小エビを売っているところもある。山羊の乳はどうか。あるいはリンゴやバナナなどのフルーツはどうか。明日にでも露店をじっくりと探して、食事の頻度をあげていってみよう。
そういえば、泉の水汲みを頼んでいるオリバーとトミーだが、マイクとレイと同い年の十歳なのだが、体格が段違いに細い。マイクとレイはこの春から半年以上栄養面ではずいぶんと改善された。毎日肉を食べ、身体を激しく動かしていれば、筋肉もしっかりとついてくる。もう以前の痩せっポッチの印象はない。激しく動けるスタミナもついてきている。
が、別のストリートチルドレンはまだまだ食生活が改善されていないようだ。彼らは六人の家族。血縁はつながっていない。みんな孤児だ。オリバーとトミーは十歳の男の子。ポーラとメリッサは九歳の女の子。エドワード(エド)八歳の男の子、アナベル八歳の女の子。みんな痩せっポッチだ。
年上に今年十二歳になった男の子がいたが、春先に迷宮に潜ってその後帰ってこない。迷宮の恐ろしい一面だ。子供たちもその恐ろしさを肌で感じていることだろう。それを乗り越えていかなければ、明日の糧を得ることができないということが。そして、迷宮だけが生きていく唯一の手段だということが。
クロエ達もそうだが、年齢的にはまだまだ親に甘えて遊びたい盛りだろうに、この世界の生きざまは、ストリートチルドレンには厳しい。魔物とはいえ、対峙して殺し合って、魔石を、エネルギーを、生活の糧を得ていく。
そうした暮らしが、成長途中の精神に大きな影響を与えるのは間違いない。子供たちは健やかに成長してくれるのだろうか。家族との温かいふれ合いや教育でバランスが取れることを願いたい。
戦いの中で、スキルを得たり、能力や身体が大きく成長していくだろう。しかし、その成長に、精神が追い付かなくて、持て余してしまったり、精神のバランスを崩してしまい、身体の成長に影響してしまったりしないだろうか?
この世界に精神科医やセラピストはいないだろうか。
一刻も早く、農業や産業で生計を立てていけるよう、生活の基盤を整える必要があるだろう。そのためにも、六人の食生活の面倒も見ていこうか。
――将来、俺の後方生活に貢献するように。
今日は、ガチョウのダウン製羽毛掛布団のデビューだ。八人の子どもに、『ウォッシュ』をかけ、寝る準備に入る。読み書き計算の勉強をしていたジェミニは、既に気持ちよく舟を漕いでいる。ここは日没後も俺の生活魔法『松明』があるので、ある程度明かりを確保できている。が、日没後は気温の変化が激しい。みんなで温まって寝るに限る。
簡素なベッド三台をくっつけて並べ、小麦の藁束を敷き詰め三組の敷毛皮を更に敷く。待望の三枚の掛布団を掛けて、みんなで潜り込む。ひと呼吸おいて『松明』を取り消す。あっという間に暗闇に取り囲まれるが、子供の体温は高めで羽毛布団が直ぐにその威力を発揮する。ぬくぬくとした幸せな空間は、子供たちを夢の世界へと導いていく。
透明度の増したきらめく夜空の星が、子供たちの寝顔を静かに見守っていた。
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