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初めての異世界探索:頼りの武器はバックパック?  作者: サトウ トール
第一章 迷宮に立つ 第二節 基盤
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第九話 情報収集

 HP回復薬は、クロネコ商会の主力商品になり得るアイテムだ。それを他人の手に売り渡すなんてとんでもない。しっかりと、うちの販売網を作って市場をリードしていこう。


 HP回復薬は、一般市場ではあまり出回らない。というのも、回復薬を作成できる人が限られているから。薬師や錬金術師の人口は、この町には少ないようだ。市場価格を慎重に調査して、それを崩さないように流通量を考えなくてはならない。現在それで生計を立てている薬師さんたちのこともあり、市場独占をするつもりはないのだ。




 クロネコ商会の売り子はケイトとマーカスだ。仕事の日は毎日、朝の鐘がなる早朝六時に起床し、水汲み、清掃、朝食をとり、八時過ぎには、俺はケイトとマーカスを連れ立って迷宮街道の出店場所を確保し、テントを張り、売り場台とイスを設置し、商品を並べていく。


 迷宮に入る三人クロエ、マイクとレイは、入り口で商業ギルドの係員に、クロネコ商会の露店のことを声掛けしてから、迷宮の浅い層に入っていく。俺が同行しない日は三階層まで。売り場でトラブルは避けたい。ギルドとの友好な関係は声掛けが大事だ。


 朝一の主力商品は、HP回復薬と携帯ご飯だ。市場価格はそれぞれ銀貨二枚と銅貨五枚前後。クロネコ商会の販売価格は、HP回復薬が銀貨四枚、携帯ご飯は銀貨一枚。高めの価格設定。それでも売り切る自信はある。今の迷宮の中心は九階層と十階層。日帰りができる範囲だ。携帯ご飯は必須だし、十階層で傷つくことがあっても銀貨五枚程度の出費で済めば、どうということはない。迷宮探索は、それぐらいは楽に回収できるほどの稼ぎなのだ。


 当面、HP回復薬は一人一本限りでお願いしている。クロネコ商会の刻印の入った空き瓶持参には、銀貨一枚の割引。やはり最初は、他の露店の回復薬から売れていく。売り切れて仕方なく、出遅れた冒険者はクロネコ商会の高価な回復薬を買い求めに来る。が、それでよい。徐々にクロネコ商会の回復薬が認知されていければ良いのだし、順調に数が捌けていく。在庫過多にならないように気配りをしていく。危険と隣り合わせの冒険者家業では、効果が高く効き目の早い回復薬は、まったくもって重宝される。


 携帯ご飯は、黒パンに焼肉と香草を挟んだハンバーガーのようなもの。それを笹の葉を十字に組んで包み持ちやすいようにしたものだ。黒パンは自前では焼けないので他の露店から調達し、その分だけ作る。ケイトが話をつけてきた。旨いタスクボアの焼肉に黒こしょう、スパイスの効いたソース、食欲をそそる香草の香り、それを殺菌効果の見込まれる笹の葉でくるんでいる。朝食がわりにその場で食べだす冒険者も出てくる始末。さっさと迷宮にいけよ。


 売り場を二人に任せ、その後ろで俺は魔導コンロを準備する。串焼きの準備だ。竹串にウサギの肉を刺し、金網を使い遠火でじっくりと火を通し、黒こしょう、スパイスの効いたソースにつけ再度焼き上げる。おいおい、店前で串焼きを待っている冒険者がいる。さっさと迷宮にいけよ。


 HP回復薬と携帯ご飯が捌けたら、時間はそろそろ十時過ぎだ。ウォーグとウサギ、リトルボアの毛皮、ウサギの肉、そして串焼きを売り出す。これから冬に向かう季節、質の良い毛皮は、多少高い価格でも直ぐに売れていく。お昼前には売り切れてしまう。


 その頃には、迷宮に入った三人がお昼休憩に帰ってくる。テントを撤収して一緒に帰ろう。クロエは魔力をギリギリまで使っているためだろう、疲れている。MP回復薬は使わない。成長期のクロエは自然回復力を鍛えるのも仕事。


 商業ギルドへの売上の報告と手数料の納税はケイトに任せる。ケイトは商才があり、読み書きが上手で計算も正確で速い。計算が生えたかな。




 ひいきにしてくれる冒険者から、様々情報を得た。迷宮の中には、ところどころに泉があり、魔力が籠った魔力水が湧いているとのこと。泉の周囲は休憩ポイントだ。その泉の水を原料に回復薬を作るとより効果の高い回復薬が作れるというのだ。また、キノコには体力回復、魔力回復、怪我の治癒、病気の治療などの効能があるものがあり、それぞれ魔法薬の材料となるとのこと。様々な種類の魔法薬が作れるかもしれない。


 また、この国の様子も聞くことができた。ここサンズ王国は、豊穣な農業国で、セーナフ河沿いにある王都フェニックスは国土のほぼ中央に位置する。サンズ王国の東北部地域を治めるのは、アントニオ辺境伯。北に魔の大森林を望むこの地域では、魔物を狩る武力が重視される。ここコザニの町はカーター男爵の領内の中心的な町で、周囲には少し大きい農村が点在する。カーター男爵は辺境伯の寄り子だ。辺境伯の領土の更に北東に位置し、バスケスナ大山脈と魔の大森林に面した防衛最前線のような位置にある。とはいえ、魔物はそれほど脅威にはならず、主に材木を王都へ送り出す、農産物を送り出す農林業地帯として位置づけられていた。


 アントニオ辺境伯の寄り子は男爵が四人。辺境伯の南東地域、カーター男爵領の南側に位置するのが、サルート男爵。山林や農村地帯が広がる。中級迷宮があり魔石の輸送中心地だ。辺境伯の南西地域に位置するのが、ローズ男爵。小麦畑が広がる穀倉地帯。辺境伯の北西地域、カーター男爵領の西側に位置するのが、ネイト男爵。山林や農村地帯。ネイト男爵領も北側で魔の大森林に接しており、冒険者が多い。


 辺境伯の領地も、小麦の産地、大型穀倉地帯だ。中央にはフィリーの町、人口三万人程度の規模で更に拡大している。フィリーは商業、流通の中心地だ。ここならこの世界のいろんな情報が集まっていることだろう。いつか調べに行かなくては。


 ここから南に位置するサルート男爵領では、中難度の迷宮があり、使い勝手が良く、手ごろな魔石が産業を支えている。エネルギー大消費地であるフィリーの町や王都フェニックスへ輸送されていく。実入りの良い仕事でもあり、そのため中級冒険者は、サルート領の中級迷宮へと移動していく。


 そして、ここコザニの初級迷宮は、一階層から十階層まで解放されており、一階層から五階層までは初心者冒険者向けの石畳の迷路で構成されており、魔物もゴブリン、一角ラビット、スライム、ウォーグ、リトルベアと比較的与しやすい魔物が中心だ。


 六階層以降は、階層ごとに様子が異なる。六階層は、ゴブリンキャプテンが率いるゴブリン分隊が魔物の中心で、森林地帯だそうだ。薬草や木の実、キノコなども採集できるとのこと。七階層は、コボルトキャプテンが率いるコボルト分隊が中心。ここは丘陵、草原エリアとのこと。八階層は、グリーンウルフが率いるウォーグ集団が中心。ここも丘陵、草原エリアとのこと。九階層は、オーク数体の集団が中心。ここは岩場、採掘エリアでこの迷宮の稼ぎ場所となっている。鉱石が採れるのだ。オーク肉も需要が高い。そして十階層は、アウルベアが中心。ここは峡谷、高原、丘陵地帯の採掘エリアだ。六階層以降の魔石は小型の魔石となり、エネルギー効率が少し良くなる。現状、十階層以降はない。




 拠点に戻ってお昼ご飯を取っていると、最近付き合いのあるストリートチルドレンが顔を出す。まあ、最近顔見知りになったのは俺だけで、ケイトの顔なじみなのだが。どちらも同じような境遇のストリートチルドレンなのだ。彼らは空き瓶の回収を手伝ってくれている。


 手間賃と串焼きを手渡し、ポーターとして迷宮一階層に入れるかどうかを尋ねる。泉の水を確保しに同行を依頼したい。少しずつこちらのパーティに馴染ませ、吸収合併していこう。


 午後から、俺はマイクとレイを連れて、ストリートチルドレンからゴブリンを怖がらない男の子二人を同行させて迷宮一階層へ入っていく。ひいきにしてくれる冒険者から泉の場所を確認している。地図を見ながら、泉に直行。マイクとレイには道のりを説明しておく。泉から保存瓶二本に泉の水をくみ上げ、同行の二人に持たせて帰ってみる。約一リットル程度の荷物運搬は大丈夫なようだ。マイクとレイの護衛も、ゴブリンを危なげなく捌けている。これなら、運用できるかな。




 早速泉の水を使って、錬金、生成。HP回復薬プラスが出来上がっていた。中級の回復薬に迫る品質だ。これなら金貨一枚もいけるのではないだろうか。ま、捕らぬ狸の皮算用だな。後は無事に繰り返し運用していかなくては。


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