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初めての異世界探索:頼りの武器はバックパック?  作者: サトウ トール
第四章 光る要塞 第二節 様々な思惑
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第九十一話 降り懸かる火の粉は払わねばならぬ

 作戦指令室では、航空魔導部隊の実践訓練の様子を眺めている。この部隊の訓練は安心して見ていられる。今度四人の新人の訓練に付き合おうか。そう言えば、火属性使いのアイラの訓練も見てあげたい。




 交代でお昼休憩に入るメンバーに声をかけて、再度ジーンと迷宮塔の運用について話しをする。相談もなしに迷宮の塔を改造し、観光客を呼び込む段取りをしたのは良いが、運営メンバーはどうするかな? こちらでは、ララアさんもケイトもいないのだよ。ジーンさんよろしく。




 申し訳ないとは思いつつも、ジーンに丸投げ。それと、イルメハの迷宮領域内で発見したビターホップの栽培拡大が課題。間違って、焼き払ってしまわないように念を押す。




 イルメハの迷宮の産業を支えるのは、奴隷たちとストリートチルドレン。十一歳の五人は計算スキル持ちと判明し、迷宮南門での業務に配属となった。慣れてきたら、交代で迷宮塔のフロントマンも手伝ってもらおう。十歳以下も十数人が活動している。この子達に頼るしかなさそうだ。他には、再度奴隷達の調達かな。出産ラッシュにも備える必要があるし。ならば、先日お見送りしたばかりだが、スコットブラザーズ商会に顔を出して、新担当者セドリックと商談を進めよう。




 ――ジーンに丸投げだけではなく、少しは人員募集もしなくては。







 アーレフ侯爵の領都セオギン。そこにスコットブラザーズ商会の出店がある。イルメハの迷宮の塔とは、約千二百五十キロ離れているが、俺のバックパックでは、ひとっ飛びの距離。セドリックの荷馬車を追い越さないように気を配りながら飛ばなくてはならない。スコットブラザーズ商会の荷馬車なら、五日間の行程のはず。となるとまだ領都には到着していない。まずは、キュウの駅を目指して飛ぼう。







「はい。セドリックさまは今朝宿を出立されました。」

 キュウの駅長が、そう答える。彼の名前はハリントン。


「クロエ様もお元気にイーサン様と仲良く出立なさいました。」

 クロエの方も順調な旅路のようだ。今は四の鐘が鳴ったばかり。午後三時。もう領都に入った頃か。


「ところで話しは変わるが、嫁さんの出産準備は、順調か? 」


「はい、お陰様で」


「何か困ったことはないか? 」


「山賊家業から足を洗うことが出来て、感謝しかございません。引き続き、精一杯務めさせていただきます。」

 捕らえた山賊の中ではハリントンが使える奴で良かった。




 キュウの駅は、領都セオギンに近い宿場駅舎。ここには大型の貸し倉庫もあり、商売繁盛している。それを取り仕切っているのが、ハリントンだ。元山賊だがサブリーダ的な役割をこなしていたので、ここでもキュウの駅舎業務だけでなく、駅馬車業務全般の取りまとめを任せている。例えて言えば、イルメハ駅馬車交通会社のサラリーマン社長だな。キュウの駅舎には、他に奴隷の駅務員兼御者が四人。ストリートチルドレンのヘルプが十人程度働いている。


「ひとつ困りごとがございます。」

 領都セオギンに一番近いこともあり、侯爵領の役人が良くやって来ては、税金の話しをしていくようだ。


 が、その都度、強面のハリントンが、

「商会長と一割と取り決めたのなら、それに従うだけ。」

 と取り付く島もない。


 業を煮やした担当役人が先日帰る際に、「次は衛兵を伴って来るからな。覚悟しておけ。」と捨て台詞を吐いていったようだ。




 ――そうか。なら、覚悟しておこうか。




 まずは、先方の衛兵さんの実力を調べておこう。そう言えば、途中にマインアート男爵の領都イルメハの町があったが、あそこに衛兵部隊は居たかなぁ。記憶にない。そもそも、マインアート男爵にご挨拶していないかも知れない。きっと一家全員で王都住まいなのだろう。




 ハリントンを労い、困りごとは預かったと話す。キュウの駅舎業務は滞りなく執り行われていること、ハリントンの家族も順調なことを確認し、領都セオギンに向かう。念のため、駅舎防御力を上げておきたい。イルメハで使える部隊は? 黒騎士隊を召喚できるか。十体班を一部隊召喚しておこうか。いや、召喚魔道具をハリントンに預けておこう。







 領都セオギン。人口三十万人を抱え、惑星町も多く備えるアーレフ侯爵領の領都。南側の領地は小麦の豊穣な農地が広がり、西には海岸線を持ち、海産物や塩の商業取引も盛んだ。門番のチェックを無事に終え、商業ギルドに向かう。そこでは、挨拶だけで早々に切り上げ、スコットブラザーズ商会の店舗に顔を出し、新担当者のセドリックを探す。




「スコットブラザーズ商会のセドリックと申します。トール様とは先日イルメハの南門でご挨拶をさせていただいて以来でございます。こちらでもお会い出来て、びっくりしております。」

 セドリックの驚きももっともだが、そこは内密にな。




「クロネコ商会のトールと申します。先任のイーサンさまとは良い取引をさせてもらっていました。セドリックさまともよい取引を希望したい。」

 セドリックと握手を交わし、早速の要件をつたえる。




 日にちがかからず手に入る奴隷を希望。スキルは問わない。セドリックからは、欠損、怪我持ちも含めてなら、ある程度の人数――数十人単位――が手配できるとのこと。そこは、お任せした。前金として、金のインゴットを三本、置いてくる。




「では、明日の四の鐘の時刻、イルメハに帰る際に、また寄ります。手配をよろしくお願いいたします。」

 併せて、高級酒、一般酒、胡椒、食肉類、綿反物、高級小麦粉、馬鈴薯などを倉庫に卸していく。セドリックが今日持ち込んだ荷馬車には積みきれなかった商品を次々と、倉庫に積み増していく。




 それと、挨拶がわりに、ビールサーバー、魔導給湯器、魔導冷蔵庫を数点ずつ、それと魔道具に使う魔石を大量に卸す。


「販売先はお任せします。数はそれほど準備できないので、ここぞというときにお使い頂けますよう。」

 俺は、セドリックが唖然としている中、彼の業績評価を上げるかも知れない商品ウェポンをみせていく。


「ボーっとしている時間はありませんよ、セドリックさん!」

 俺は、セドリックに発破をかける。




 ――さて、良質な奴隷をどれだけ確保できることやら。


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