第八十九話 モクバ・プロトタイプの改修
コザニの拠点で、フィオナとカトリナという光属性使いの見習いを預けられた俺は、昨日のテストフライトに続き、今日は二人をマイクの部隊へと合流させる。マイクとレイには昨日顔合わせを済ませている。まずは、基礎体力と魔力量を強化したい。しかし、二人の見た目の区別が全くつかない。マイクよ悩めよ。
二人をマイクに預けたあと、俺は以前クロエの使っていたモクバ・プロトタイプの修理上がり具合を確かめるため、魔の大森林北方面へと飛ばす。修理と称して、様々な武装を積み込む。また、ジュラルミン合金をふんだんに使い、機体の軽量化を図る。推進バーニアも増設し稼働出力もアップ。次いでに、青塗装を施す。コバルトブルーとディープブルーの混色。そして艶消し塗装。バーニア内部金属は黄金塗装であり、コントラストが格好良い。この機体を修理する際に、「ケンプファー」と名付ける。意味は「闘士」。強大な推進力と多彩な火器、強力な火力を駆使し、敵陣深く単独侵攻する強襲任務に特化した機体だ。
――さあ、どこまでも行こうか。
迷宮の領域外へ一歩出ると、直ぐにリトルエイプのペアに遭遇、すれ違う。枝の上に置き去りにされたリトルエイプが牙をむいて悔しがる。スピードが違う。もう一体見つけたリトルエイプには、すれ違いざまにビームサーベルを当てる。枝の上で真二つに引き裂かれる。Uターンし、先ほどすれ違ったリトルエイプも始末しておく。ビームサーベルは左右のサイドカバーに一基ずつ、計二基装備する。ジェネレーターの出力不足を補うため片方ずつの使用推奨だ。
以前、コザニの迷宮で百体の魔物襲撃を受け、その原因、要因を探るべく北方面を探索。その際に、迷宮の領域内の手入れが必要と考え、魔の大森林の手入れを行った経緯がある。マイクの部隊は、その後も継続して大森林の手入れを行ってきた。倒木を回収し、下草刈り、枝打ちや間伐などを行ってきた。森に光や風を取り入れ、それによってよい土壌や森がつくられる。見通しもよくなった。以前のような不気味な森の様相はもうない。
迷宮の領域の境界線近隣まで手入れが進み、これ以上は迷宮の領域を逸脱してしまう。俺は、単騎その領域外へ出向き、探索を続ける。探索レーダーにオークの集団を検知する。村でも作っているのだろうか。問答無用で殲滅だ。バレットを八機一斉展開、平行して上空五千からのシュツルム・ファウストによる急降下爆撃。反転後、左右のクランクケースカバーに取り付けたジャイアント・バズーカによる砲撃。
――オーク村は壊滅した。
爆音に引き付けられて、アウルベアやフォレストベアが近寄ってくる。俺は、ケンプファーを駆って、ビームサーベルで熊たちを捌いていく。
更に奥には、オーガ、トレント、ミノタウロス、トロールなど更に強力な魔物たちが出現する。すれ違いざまにビームサーベルで一刀両断。二本のビームサーベルを交互に使いながら、その数を減らしていく。十二番ゲージ・ショットガンとスラグショットやバックショットを使い、魔物たちを殲滅していく。
俺は、あのピューマタイプを求めてケンプファーを駆る。防御力を極力捨て軽量化を図った機体は、武装残弾数が減るにつれて稼働スピードも上がっていく。いつの間にか大分遠くに来たようだ。以前見た、コロシアムタイプの旧遺跡が遠くに見える。上空には三機のガーゴイルが出迎えてくれる。
俺は、八機のブレットを展開、迎撃を試みる。更に、加速。その距離を一気に詰める。
その先には、ひと際目立つ身体のサイクロプス。すぐさまチェインマインを装備、サイクロプスめがけて射出。取り巻くように貼り付け、機雷爆発を起動する。入場門を警備しているのであろうゴーレム二体にも、チェインマインを使い、破壊。
着陸し、コロシアムを見上げる。俺は、時たまここまで魔物を追って、やって来ていた。その都度、守護者を削り弱体化を試みている。が、ここの攻略はまだだ。情報が足りない。魔石を回収し、帰ろう。今日の目的はここではない。ピューマタイプの捜索、殲滅が目的だ。まだ見つけてはいない。
――もう少し、待っててな。
殲滅した魔物をバックパックに回収し、再度飛び立つ。ガーゴイルも回収。帰り道には、沢や渓谷、丘陵地帯や岩場、岩床などに寄り道しながら、殲滅した魔物たちを順次回収していく。更に遠くには、卓状台地のようなものが見えた。鉱山があるかもしれない。今度寄ってみよう。寄り道の目的はもちろんピューマタイプの捜索もあるが、鉱石、鉱脈を探していることもある。
クロネコ商会本店に戻ると、ケイトが待っていた。結局、ピューマタイプは見つけられなかった。まあ、次の機会に譲ろう。さて、このケンプファーは、誰に預けようか?
ケイトの話しは、コザニ大聖堂建立に伴って、宿泊予約の殺到の件だった。それでなくても、温泉・グルメツアーが成功し予約が三カ月先まで埋まっている状況。三階層の個室レストランで紅茶を頂きながら問題点を洗いだす。問題点は、箱だけだった。
「スタッフはどうするの? 」
俺は、ホテルの新築あるいは上階への増設は問題ないが、人員不足は否めないだろうと心配顔で尋ねる。
「そこは、ララアと打ち合わせ済み。既に新人たちのトレーニングに入っているわ。」
ケイトは、問題はそこじゃないと、屈託のない笑顔を返してくる。
「物流量はどうなの? 」
「お客様むけの食材、備品等は、スコットブラザーズ商会とも打ち合わせ済。問題ないわ。」
「新築と上階を積み増すのと、どっち? 」
俺の問いに対して、
「縦に伸ばしたい。観光目的のお客様向けに拡充したい。本館、新館とも倍の高さを希望。」
と即答するケイト。大分計画を練ったようだ。
「わかりました。」
俺はそう回答して、早速建築現場とへと向かう。
ホテルは以前五階建てだったのを増設し十階建てになっている。今回はこれを更に増設しニ十階建てとした。増設階は全て客室、最上階インペリアル・スイートはそのまま持ち上げ、その直ぐ下階層に、ファミリー・スイートを二部屋設ける。教会参拝者なら家族連れも多いことだろう。更にあと九階層をその下に増設していく。冒険者向け別館は、増設して六階建て。こちらは単純に階層を増設。
――スプリングマットレス、ベッドパット、羽毛布団を、いくつ作っただろうか。ケイトさん、もう勘弁してください。
俺は、この後皆と晩御飯を取ってツインズの様子を確認し、温泉に入ったあと朝までぐっすりと眠りにつくのだった。タンクのパウルが、妹エマの様子を聞きたがったが、明日にしてもらった。明日朝食を一緒に取ろう。パウル、ごめんよ。今日はもう疲れたのだよ。
スプリングマットレスとベッドパットの製造:いつの間にやら、クロネコ商会ホテルのベッドは、小麦藁ベッドから最高級スプリングマットレスとベッドパットに代わっていた。予約が殺到するはずだ。




