第八十七話 コザニ大聖堂の聖女
翌日、黒い森での今後の産業振興に目途が立った俺は、拠点で朝食を取りながら、戦闘奴隷のロイ班長と今後の予定について話しを進める。まあ、当分は新入り達の育成のために、この拠点周辺の伐採が中心となるのだが。
これまで各拠点を一巡したので、俺はコザニの迷宮へと向かう。ここの最下層となる百一階層にあるマスタールームが俺の部屋だ。今後は一巡したら、ここでコアを撫でながら一日過ごす安息日を設けることにしよう。もっとも、コザニの拠点で錬金と魔道具制作に打ち込むことになると思われるのだが。そして、安息日とはいえ、気にかかっている事柄は頭からは離れない。各拠点での積み残しを整理しておこう。
コザニの拠点での課題――順不同
・コザニ大聖堂の運営を軌道に乗せる
・コザニ大聖堂における光属性使いの聖女さま
・迷宮の北方、魔の大森林の探索
・綿花工場での紡績機械の導入
・辺境伯の領都フィリーまでの石畳街道の敷設
・イルメハの拠点への大陸横断鉄道の敷設
イルメハの拠点での課題――順不同
・奴隷夫婦たちの出産ラッシュ
・ストリートチルドレンの拡充
・航空魔導部隊の拡充
・クロエの新居の立ち上げ
・イルメハ大聖堂の運営を軌道に乗せる
・海岸線への進出
黒い森の拠点での課題――順不同
・ゴーレム機関車の運用
・殖産興業
・東山鉱山の整備、運営
・製鉄工場の立ち上げ
・キャメリア王国の王都パリスへの大陸横断鉄道の敷設
・大聖堂の建設
・光属性使いの聖女さま
・ストリートチルドレンの拡充
まあ、こんなところだろうか。全体的に各施設での人員不足があるが、新たな課題はその都度付け足せばよいし、トラブルもどんどん起こるだろう。焦らず一つずつ進めていこう。
商会のロベルトが、マスタールームに届けてくれた紅茶とビスケットを頂きながら、思索に耽る。ビスケットは、ケイトたちが焼いた試作品。甘いものは正義。ビスケットならば、持ち運びにも便利だし、冒険者の携帯食料品としても有用だろう。上等な小麦粉、バター、砂糖がベース。他の材料やトッピングはそれこそ無数の組み合わせがある。ベリージャムやナッツを装った、色とりどりで香り高いビスケットは、クロネコ商会のメイン商品の一つとなることだろう。早々に、二階のカフェで提供していくとのこと。
もはや、試作品のレベルを超えた出来栄えのビスケットを味わっているところ、ララアさんの呼び出しが来る。この距離なら、ララアさんの念話が届く。
――今日は、安息日にしようと思っていたのに、早速これですか。そうですか。
そう思いながらも、早速、コザニの拠点に向かう。
大食堂のダイニングテーブルで、ララアさんと一緒に俺を待っていたのは、フィオナとカトリナという名前の二人。九歳の双子姉妹だ。ララアさんが俺に会わせたかった理由は、直ぐにわかった。二人の魔力の色が白だからだ。この冬の期間、ララアさんのもと、生活習慣の改善と魔力量増加、そしてモクバ搭乗の準備を進めてきたとのこと。双子姉妹も、濃い金髪にブルーの瞳を持つ、将来が楽しみな子たち。アナベルとは一歳違いだ。
早速、以前アナベルが使用していたパイロットスーツに着替えさせて、二人をコザニの迷宮に連れ出す。アナベルのおさがりではあるが、白を基調としゴールドの縁取りの入った航空魔導部隊戦闘服は、フィオナとカトリナのために設えたかのようだ。
五十一階層に潜り、汎用型モクバに乗せてみる。待ってましたとばかりに、次々とモクバに跨り発進していく二人。心地良い加速を楽しむ様子は、以前見たアンジーさんの飛行の姿を思い出す。
――まったく、ララアさんには脱帽だ。こちらの一手も二手も先を読まれる。
この地で、マイクに預けて、魔力量を積み増してもらおう。ライトバレットを複数展開できるよう鍛えてもらおう。二人はコザニ大聖堂所属としよう。この日、俺は課題のひとつ「コザニ大聖堂における光属性使いの聖女さま」クリアにむけて大きく前進したのだった。
テスト飛行を終えた二人に感想を聞く。気持ちよかっただろう。そうだろう、そうだろう。そのあと地上に戻り、ララアさんから預かった虎の子の二人を、マイクとレイに紹介し、明日から部隊への編成組み込みを依頼する。次に、コザニの拠点に戻り、ララアさんにこの拠点での共同生活を行わせるよう話しをする。ララアさんもそのつもりで、二人の寝室の準備を終えていた。
俺は、昨晩入手した希少金属を合金し、カッタービットの部品を作るために錬金部屋へと籠る。シールドマシンは直径五メートル超になる大きさだ。取り付けるカッタービットの数も数百に登る。HP回復薬を作り終えたサキにも手伝ってもらおう。黒い森の拠点での課題「東山鉱山の整備、運営」にもめどを付けたいところだ。いつも通り、まずはプロトタイプを作って、掘削してみよう。上手くいきますように。




