第零話 プロローグ
私の名前は佐藤 通、昭和生まれの五十九歳。東北の片田舎の電子部品メーカーの総務課に勤務している。昭和生まれの二十四時間戦ってきた企業戦士だ。入社以来ずっと前線で戦ってきたが、来年には六十歳定年だ。
令和三年春に父を亡くし、母は認知症を患い、老健介護施設にお世話になっている。コロナ禍の影響で家族ですら面会に行けず、遠目から元気な姿を眺めるに留まっている。ヘルパーさんのお陰でなんとか生活できている。
来年に定年を迎えるにあたって、やはり心配は老後の資金だ。つい先日には老後資金は二千万円足りないなどというニュースが世間を騒がせたが、やはり持っていれば安心。とはいえ、貯金がそれほどあるわけではない。
幸い、自宅は親が建ててくれた小さな一軒家があり、なんとか固定資産税は支払える範囲なものの、病気や介護なんて状況になったら崩れてしまう生活が予想される。
そこで、今後の収入の柱として執筆業を考えた。なろうにおいても、人気作の出版はある種のブームとなっている。大好きな異世界冒険ものをよく読んでいるが、自分もその一員を目指そうという訳だ。
まずは、プロットと人物設定を用意しよう。異世界に転移して、十一歳の少年の身体になって剣と魔法の世界を冒険しよう。さて、何のスキルを持たせようか。
気が付くと、良く晴れた陽の差す森の中にいた――
声もでなかった。
以下、佐藤 通が日本にいた頃に書いたプロットと人物設定です。
「ネタバレ」がありますので「スルー推奨」。
なお、必ずしもこの通りに話が展開するとは限りません。
『初めての異世界探索:頼りの武器はバックパック?』
第一章 迷宮に立つ
短いあらすじ
神様によって異世界に召喚された五十九歳トールが、使命は不明なれども体も少年になって高機能バックパックを授かり、孤児たちを助けクランを作る。
あらすじ
神様によって異世界に召喚された五十九歳トール。神様から使命や能力などについての説明がなかったため、十一歳になってしまった身体を持て余しながら、日々の生活を軌道に乗せるために迷宮攻略に着手し、できることをあれこれ考えていく。
少しずつ、身体や能力の使い方を身につけ、日本での知識を織り交ぜ、また仲間の力、支えを得て、迷宮攻略を進めていく。
順調に進んでいく迷宮攻略。しかし、まだ知られていない階層が出現し、対峙したことのない魔物に苦戦する。傷つき、追い詰められていくメンバー。
トールの新しい能力が覚醒し、激闘の末、階層ボスを討伐する。そして、最下層の迷宮主と対峙していく。
第二章 激闘は悲しみ深く
この世界、アレフランドを知るにつれ奴隷制度の存在を知り、戦闘奴隷たちを雇い、迷宮探索業務に精を出すトール。その冒険で新たに発見した難攻不倒迷宮を攻略し、また新たな魔道具を世にもたらし、その名を王国に知らしめる。
第三章 新型
しかし広い世界では、その迷宮は数ある迷宮のひとつに過ぎなかった。世界中に散らばる迷宮の存在が、トールの心を苦しめる。
第四章 光る要塞
彼を支えた仲間たちの励ましもあり、人知を得た少年は、自分たちの力だけで攻略していくのではなく、冒険者を支援するために、魔界の台地を切り開き、新たな魔道具を開発し、商業国を築き上げる。