幼馴染も一緒に
どうやって話を振ろうかと思っていた亮一だったが、思わぬ光景に一瞬頭が真っ白になる。
しかし、次の瞬間、これは天啓だ、と言わんばかりに亮一は若干食い気味に、玲子が持つそのカードについて、話を迫った。
「なぁ、玲子」
「なあにリョウ、そんな食い気味な顔で」
「これ、どこで手に入れたんだ?」
「え? えぇっと、どこだった、かなぁ……」
どことなく白々しい表情でその場をしのごうという魂胆が丸見えの玲子。
もっとも、彼女はポーカーフェイスがうまく、親の付き合いでパーティーに出た時や、TCGをプレイするときなど、心理戦を必要とする状況においては表情を笑顔で隠してしまうので、そういう場面においてはなかなかの強敵なのだが。
今はそうする必要もないらしく、素の顔がそのまま出てしまっているのだろう。
その原因は何なのか。
察しの言い亮一は、少し考えてすぐにわかった。
――そういえば、昨日のあのおもちゃみたいなやつ、なぜか石がのっかってたよな。すごい偶然だな、と思って見逃してたけど、あの直前、確か玲子が石を蹴飛ばしてたような……。
そう。
昨日、脳震盪で意識を失う直前。
亮一は、玲子がたまたま転がっていた石に足が当たってしまい、蹴り飛ばしていたのを思い出した。
そして、ステータスパネルには、肩書きの横にある数字に添付される形で『Next 9』と表示されていたことも覚えている。
なぜ、9という半端な数字なのか。
そしてそもそもの話。なぜ、そんなRPGじみた力が自身に宿ったのか。
それを突き詰めて考えれば、あの時、転んだ瞬間に踏み抜いてしまった、おもちゃらしきもの。
あれが原因で、経験値らしきものを入手してしまい。
それと同時に、何たらシステムというシステムへのアクセス権も入手してしまったと考えるのが自然であろう。
つまり、あれはRPGでいうところの、モンスターが乗っていた乗り物、ということになる。
であれば、あの状況をもう一度考察してみれば、亮一以外にももう一人から二人、もしかしたら経験値らしきものを入手していた人物がいた可能性がある。
そう、あのとき亮一を介抱した、玲子と先輩女子生徒である。
であれば、玲子も、そしてもしかしたら先輩女子生徒も、亮一が同じ力を宿した可能性に気づいていてもおかしくはない。
特に亮一の場合、おもちゃ(のような何か)を踏み壊すという、わかりやすい成果を上げていたのだ。
その可能性に気づくのに、それほど時間はかかるまい。
玲子が自分のと同じ種類のカードを持っているのを目ざとく見つめた亮一は、少し考えてその事実に到達した。
答え合わせをするように、亮一は玲子に自身の真新しいカードを見せてみる。
「玲子。これ、なんだが……」
「――っ!? これ……リョウも、なんだ……あはは。それじゃあ、誤魔化しようがない、かな……」
「…………?」
玲子はしどろもどろになりながらも、亮一の考えが正しかったことを認めた。
ただ、亮一は玲子がそこでちょっと顔を赤らめさせたことに新たな疑問を感じたが。
「ま、まぁ、詳しいことはまた後で話すとして、……こほん。とりあえず、リョウもこれを持ってたんなら話早いか。今日の放課後、これ使って遊ばない? 私もルールは一応読んだんだけど、実際にやってみないとイマイチ、ね……」
「やっぱり玲子も初めて触るやつだとそうなるか……」
「そりゃね。一を知って十を知るなんて、本当にできたらその人は天才だわ」
何かを振り払うように咳払いをしてから誘いを持ちかけてきた玲子に、亮一はそれはそうだよな、とうなずく。
「ま、そうだよな……。でも、手ほどきしてくれるならありがたい。一応、俺も、何たらシステム? ていうやつのリファレンス? を開いて読んでみたんだけど、いまいちわかんなくて、そのまま疲れて寝落ちしちまったんだ」
「リョウはTCGやったことないからね~。それならこの際だし、そのあたりの駆け引きのやり方も、一緒に叩き込んでやりますかね……」
「う……オテヤワラカに、ね……」
「ん、りょーかい」
とりあえず、偶然が重なったとはいえ、同じ力を持つものに邂逅できた(それもすごく簡単に)二人は、良き味方に恵まれたと握手を交わして頷き合った。
――と、そこで完全登校時刻を告げるチャイムが鳴り、騒がしかった教室内は一気に静かになっていった。
無論、二人もデッキをしまい、すでに入ってきていた担任の先生の連絡事項を待った。
そして放課後。
二人は横に並んで、まるで恋人のように寄り添って下校を始めた。
仲睦まじい姿を見せつけられた周囲は、男子生徒は亮一に、女子生徒は玲子に対しそれぞれ羨望の視線を浴びせる。
というのも、実は亮一にしろ玲子にしろ、なかなかの美男美女なのだからしかたがない。
特に、玲子は、今年の入学生の中でトップクラスの外見だ、と密かにささやかれている。
猫目のように若干釣り気味の目に、日本人としては平均的な大きさの鼻、そしてぷっくらとした桜色の唇。そして、腰ほどまであるロングヘア―はポニーテールにしてまとめられており、活発そうな印象を醸し出している。
入学して、まだそれほど立っていないこの時期。
二人は周囲から送られてくる視線に落ち着かない様子ながらも、例のカード魔法のこともあり、やや足早に下校の路についた。
もちろん、住んでいる家が一緒ならば、向かう先も一緒。
長年連れ添った二人の歩調は、意識しなくとも、自然と揃う。
再び世間話に花を咲かせる二人は、はた目から見ればお似合いのカップルのようだった。




