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TCG風の力で俺は魔法少女達と肩を並べる  作者: 庚 権左右衛門
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完成したチカラ


 気づいた事実がいくら衝撃的なものだったとしても、現実は現実。どんなことであれ、受け止めなければならないのは必然なものである。

 それが、理解不能な経緯で手の中に滑り込んできたものだったのだから、理不尽以外のなにものでもないが。

 とかく、TCGと気づいた以上は、下手にあれこれデッキの編成をしてもいい結果を生み出すとは限らないだろう。

 TCGというのは、カード一種類ごとの性能に始まり、他のカードとの相性、そこから始まるデッキ全体のシナジー効果。そして、相手のデッキとの相性。

 カードの性能は、時がたつにつれてどんどんインフレしていく傾向にある。そのため、他カードとの相性や、相手のデッキとの相性もその時代ごとに移り変わっていく。


 何を述べたいのかといえば、ただやみくもに強いカードだけを組み込めばいいというわけではないということだ。


(まぁ、とにかくTCG初心者にとっては、これはかなりハードルが高いしな……むやみに交換しなくてよかった……)


 これで何もわからずに交換していたら、最悪貴重かもしれないポイントを無駄にしていたかもしれない。

 それを考えると、スターターパックの存在は非常にありがたいものだった。

 しかも、満足いかなかった時のためか、はたまたカスタム用のためか、もう一パック分購入できる余地がある。

 これが普通のTCGなら、購入したパックは魔法使い系スターターパック、とでも呼ばれたことだろう。

 とはいえ、魔法使いパックには物理攻撃系のスキルなどはほとんど入っていなかった。

 スキルリストを見ていた限りだと、物理攻撃系のスキルも山ほどあるし、武器防具や消耗品もあるようだったから、少なくともある程度はそういったスキルに入れ替えておいた方がバランス的にはいいのかもしれない。

 もっとも、このカード、ひいてはこの異能の力はおそらくは自分しか持ちえないだろうから、あれこれ考えてももしかしたら無駄になるかもしれないが……。


 どちらにせよ、亮一はスキルポイントなどを自由に割り振れる類のゲームでは、最初に与えられたポイントはすべて使い切るスタンスを取っていたため、残りの30ポイントを消費して、もう一つ別のパックを購入した。




 そして。

 とりあえずできる限りのことをやり遂げた亮一は、これまでの作業の成果を机の上に並べて、ふぅ、と溜息をついた。


「それで……スキルポイントを使って、ドツボにはまる前に交換したのがこの二束、と……でもデッキホルダーだったっけか、玲子が使ってたのは。ああいうのでもあればよかったんだけどな……」


 デッキホルダーとは、TCGのカードデッキをしまっておくためのケースのことである。輪ゴム止めなどにしておくよりも安全でカードの痛み防止にもつながるので、TCGゲーマーの間では常用品の一つである。

 亮一はTCGをやったことはないが、なんと、玲子というとても身近な立ち位置にいる人物がTCGゲーマーなので、亮一は彼女がやっているのを横でよく見ているのだ。ゆえに、TCG用品のことであれば、ある程度のにわか知識位ならある。


 とりあえず、輪ゴムはどこにやったっけかな、などと考えながら机の引き出しを探していると、表示しっぱなしにしておいたステータスパネルに新たな反応が。


 なんと、ステータスパネルは強い光を放ったかと思えば、購入した覚えのない、スマートフォンのような端末になってしまったのだ。

 試しに触れてみれば、金属特有の硬質で冷たい感触。

 手に持てば、それは金属とは思えないほど軽く、まるでプラスチックでできたカードでも持っているかのようだった。


 裏返してみれば、そこには先ほどまで見ていたステータスパネルが表示されており、それに重なる形でダイアログが一つ、さらに表示されていた。

 ダイアログには、『初期設定がすべて完了しましたため、エルカディア・コア・システムにより与えられたオラクルパネルは待機状態に移行しました。以降、戦闘状態に入ると、自動でデッキ展開とシステムによる保護が展開されます』と表記されており、先ほど交換したデッキはいつの間にか革でできていると思われるホルダーにいつの間にか収まっていた。


 試しにホルダーからカードを取り出して人差し指と中指で挟み、虚空をにらみながらそれを押し出すようにして構えると――


 ――模擬戦闘状態に移行しました。オラクルパネルは、バトルモードに形態移行します。


 と、清らかな女性の声が聞こえるとともに亮一は光の粒子に包まれた。

 まず、利き腕の反対側にブレスレットのようなものが燐光とともに出現。利き手に持っていた端末が、光の粒子となって姿を変えた物であった。

 ブレスレットには、机の上に置きっぱなしにしておいたはずの、交換したばかりの新米魔法使いパックがホルダーごと装着されていた。おそらく、ドローしやすいようにとの配慮だろう。

 さらには、亮一の格好も変わっていた。

 黒かったはずの髪の毛と瞳は紅色に。もう寝るばかりにしていたはずの衣類、すなわち寝間着はどこかへ消え去り、かわりにワイシャツに黒いジャケット、黒いローブにズボンという出で立ち変貌していた。ご丁寧に、青を基調としたネクタイと革靴までついている。

 そして、手に持っていたはずのカードはいつの間にか眼前に浮遊しており、さらに別のカードが4枚出現している。

 それぞれのカードは、いずれも光を放っており、いつでも魔法を発動できる状態であることもうかがえた。


(カードが、5枚も……1枚は、手に持っていたカードだからいいとして、残りの4枚は……あぁ、そういうことか)


 手に持っていなかった4枚が、なぜ勝手に出てきたのか。

 その原因に、少し考えた亮一は、それでステータスパネルにあった項目のうち、最後まで理解しきれていなかった項目をようやく理解した。

 その項目とは、Skills slotsである。

 スキルスロットとは、まさしくこれから使おうとして発動待機状態にしておくための枠。早い話が、このスキルスロットが、手札か、もしくは場札のことだったのだ。

 試しにステータスパネルを見てみれば、Skills slotsは0/5となっていた。


 試しに、この状態でデッキからドローされた5枚のうち1枚、ヒーリングを使用してみる。

 すると、『ヒーリング』のカードが少し離れた場所に移動し、直後に体がぼんやりと光に包まれた。

 光が消えるころにはそこはかとなく疲れが取れたように感じる。と、同時にヒーリングのカードはそこで光を放つのをやめて、カードのイラスト部分に重なるようにして『3』の数字が浮かび上がった。

 おそらくは、これがリキャスト状態に入った証拠なんだろう。


 そして再びステータスパネルの確認。

 Skills slotsは1/5となっていた。

 『ヒーリング』のスキルカードを使用するために、手札から該当するカードを1枚セットした、ということなんだろう。


 続いて、亮一は『イマジンウイング』を発動する。

 効果は、『5ターンの間、Special effectsに飛行が追加される。フィールドが展開されていない場合、このカードのリキャスト及び効果時間の換算倍率は1ターンあたり5分となる』とある。おそらく、空を飛べるようになる魔法で、リキャストは6ターンあるいは1時間とそれなりに重いが、効果時間のことを考えると実質10分おきにおおよそ50分、空を飛べるのはとても便利な魔法だな、と亮一は思った。

 発動すると思った通り、背中に淡く光る白い翼が現れ、亮一が浮かべと念じれば、翼は羽ばたいて亮一を宙に浮かせた。

 一度宙に浮けば、高度は自動で維持されるのか、翼はそれ以降羽ばたくことなく、亮一が一度下降を命じ、それから再び浮上を命じるまでは静止を保ちつづけた。

 このことから、おそらくは高度を上げるか、もしかしたら水平方向に移動するときだけ翼は動くのではないか、と亮一は予想する。


 だが、彼にとってはそんなことはもはや些事であった。

 彼は今、魔法を本当に使えるようになったことで、声にならないほどの喜びを感じているのだから。



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