宿ったチカラは……
更新されたステータスは、更新前と激変していた。
Name 小笠亮一 (M)
Job 学生(高等学校)
Title 魔法使い -1(next 9/10)
Status▼
Life 6400
Defense 300
Power 400
Skills/Max skills 0/60
Skills slots 10
Skill points 60
まず、Lifeの多さ。初期値が1000だったのと比較しても、あり得ないくらいに上昇している。
しかも、魔法使いということで、身の守りについてはあまり打たれ強そうなイメージがわかなかったのだが、それでもDefenseが激増している。これらの現象について亮一は、おそらくそれはバリアー的なもので身を守れるようになったからなんだろう、と勝手に解釈した。
Powerも上昇しているが、これも魔法使いになったんだから、徒手空拳に頼るよりは魔法で戦った方が強いに決まっている、という独自解釈で納得していた。
あと、一番びっくりしたのはSkill関連についてだ。
「最大スキル数が60とか……これって、多い方なのか……?」
よくわからない数字だ。
しかし、この様々な魔法を習得していくことを考えるなら、少々不安を覚える数字ではある。
あるいは、火の魔法なら火魔法など、ひとくくりにされるものなのだろうか……。それに、Skills slotsのこともまだ詳しくはわからないままである。
さらには、新しく増えた『Skill point』というのも気になった。
新たに増えた謎も合わせて、どうしたものか……と、考えていると、ステータスパネルに重なる形で、新たに一つパネルが表示された。
パネルには一つ、亮一に充てられたと思われる問いかけが書かれており、『Skill pointsを30消費し、新米魔法使いパック(スキルカード60枚入り)を獲得することができます。新米パックを獲得しますか? Y/N』と亮一に一つの提案を投げかけていた。
なお、注釈としてこのパックは後になってもSkill pointsをタッチしても購入は可能だと表記されていたので、亮一は一瞬悩んだもののNoを押し、ダイアログを閉じた。
(新米魔法使いパックに、スキルカードね……)
スキルカード、という新しい用語が出てきた。
60枚でスキルカード30というと、1枚ずつ個別に交換するより断然お得という計算になる。
が、今回のパネルからのアプローチで得た情報は、それ以外にもあった。
それは、Skill pointsの取り扱いについてだった。
(なるほど。スキルポイントを使ってスキルカードを交換して、それを使ってスキルを習得するんだな)
そう結論に至った亮一は、試しにスキルとやらを見てみよう、とSkill pointにタッチした。
開いたスキルリストには、剣士系のスキルから格闘系のスキル、魔法スキルに調査探索系のスキルなど、種類別に数えたらきりがなさそうなほどのスキルが記載されており、それぞれで消費するポイント数が異なるようだ。
例えば、剣士系のスキルで斬撃や二連撃、リモートスライスやスナイプスラストなどの剣技らしいスキルがあるが、それらは1ポイントで入手できるものもあれば、10ポイントも消費するモノも存在している。
それは自らの肩書とマッチしている魔法系のスキルでも同じようで、ファイアーボールなどの名前からして初級らしい名称の魔法であれば1~2ポイントで入手できるが、例えばファイアーストームなどのものは上位魔法っぽいものは3~6ポイント、いかにも必殺技っぽいヘルズフレイムという魔法は10ポイントも必要だ。
また、スキルをタップして詳細を表示することもできるが、スキルには『リキャスト』というクールタイムも存在するらしく、上位の魔法ほどそれは長く設定されている。
リキャストは長いものでは10以上もあるものも存在していたが、そもそも10という数字がどれほどの時間を示しているものなのかがわからない以上、むやみにリキャストが重い魔法は、最初の内は選ばないほうが得策だろうと、亮一は比較的クールタイムの短い魔法を探し始めた。
そして五分後。
「だ~っ! やってらんね~。つか、マジスキルが多すぎるし! 似たようなスキルもいろいろありすぎるし! これじゃ時間がいくらあっても足りねぇっつの……」
良さそうなデッキを構築するために脳内であれこれ考えてみたものの、あまりにも膨大なスキル量に早くも彼の頭は限界に到達し、そのまま床に倒れこむ。
そして、これいつまで作業やらされるんだろうかと先ほどのスキルリストを思い出してげんなりとした表情になり、ボリボリ、と頭をかく。
(はぁ……ありゃぁ、マジで時間がかかるわ。あれなら、素直に新米パックを買った方がよさそうな)
一応念のためにと思い、まだスキルカードは一枚も交換していなかった。
もう先ほどまでの、どこかワクワクとしていた心境はどこへやら。
亮一はすっかり作業じみた手さばきで、スペシャルのタブに切り替えて魔法使いパックを購入した。
購入が終わると、目の前に燐光が集まり、やがて眩いくらいになると一束にまとめられたカードがいつの間にか出現していた。
出現したカードを何枚か手に取り、まじまじと見つめてみる。
カードには、そのスキルの名前とイラスト、リキャストの数値とスキルの詳細が描かれている。
攻撃魔法には、これに加えてスキルの威力も記載されているが――それらの中に一つだけ、妙に気になる単語が表記されているのを見つけた。
それは、偶然手にしていた、アナライズの魔法と、インパクトボールの魔法である。
それぞれの魔法の効果は、次のように記載されていた。
『アナライズ 補助/妨害 リキャスト:3
敵のステータスを参照し、手札を開示させる。さらに敵がスキルカードのデッキを保有していた場合、上から十枚目までを参照することができる』
『インパクトボール 攻撃 リキャスト:0
敵1体に攻撃を行い、相手の場札の中から指定したスキル1つのリキャストを1ターン延長する。攻撃を受けた相手は今度のターン、スキルデッキからリロードできなくなる』
デッキ。そして手札に場札。それらの単語から、亮一の脳裏には一つの単語が思い浮かんでいた。
それは、TCG。トレーディングカードゲームだ。その手の遊具に手を出したことはなくても、その二つの言葉は、それを連想させるには十分すぎるものであった。
(これって……もしかして、Max skillsって……カードの最大保有数のことかよ!)
カードの最大保有数。言い換えれば、一つのデッキに編成できるカードの最大枚数といったところか。
これを超える枚数のカードを編成しても、それはデッキとして認められないという意味でもあるのだろう。つまり。
亮一に宿ったであろう力の正体は。
(Oh……これって、まさかの……TCGかよ……)
おそらくだが、そういうことなのだろう。
日本に生を受けて十五年と四か月ほど。
コンピューターゲームにはまりきりだった彼は、その手のゲームに手を出した経験が、皆無だった――。




