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TCG風の力で俺は魔法少女達と肩を並べる  作者: 庚 権左右衛門
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戦う天使たち


 メッセージを見終わった夕夏は早速、手に持っていたチョーカーを首に巻く。

 そして、一言。


「エンゼルナイツ、ドレスアップ!」


 自らの力を介抱するための呪文を、詠唱する。

 瞬間、彼女は青い光に包まれる。

 当初はとても恥ずかしかったものだが、すっかり慣れてしまった今ではもはや少しも恥じらいはない。


 光が収まると、そこに立っていたのは『蒼い』少女だった。

 蒼い髪に宝石をあしらった蒼いチョーカー。耳にも蒼い宝石が付いたイヤリングがついており、そしてその体を包むのは背中が大きく露出した、豪奢な蒼いドレス。

 そして、その露出した背中からは一対の白翼が出現している。

 白翼は蛍光灯の白光を受けて、絹のような艶を放っていた。


 顔つきには変化はないものの、体つきはおおよそ変身前とは比べ物にならないほど肉感的になっており、異性の目を引くことは間違いないだろう。

 少なくとも、クールビューティーな印象を受ける彼女の美麗さをさらに引き上げているのは確かだ。


「……ふぅ。…………行くしかない、か……」


 夕夏は、そのまま窓を開けると桟を足蹴にして、器用に外へ跳び出した。

 その瞬間――翼が大きく羽ばたき、彼女を宵闇に包まれた大空へといざなう。

 まるで我がもののように空を舞う夕夏の動きはとても慣れたもので、とても人とは思えない挙動だ。半年という経験は伊達ではない。


 そのまま、空気抵抗など関係なしに飛翔を続けること十数分。

 学校に近づくにつれて敵が放つ魔力をより強く感じるようになり――そして、あと少しで学校が見えてくる、といったところで、強化された視界の一部に鳥のような生物を捉える。


「――鳥……っ!? ちがう、鳥型の魔物かっ……!」


 相対的に高速な接近を許され、中距離から放たれようとしていた焔の弾丸を、若干上向けに放たれたのをいいことに避ける夕夏。

 ただ――『エンゼルナイト』に変身した夕夏の背中から生えている翼は、どういうわけか擬似的なものではなく、きちんと神経が走っている。

 だから、翼に攻撃を受ければ当然痛みは感じるし、火傷などしようものなら大惨事は免れない。

 夕夏は焔の弾丸を器用に避けて、掌に魔力で形成された、光の剣を形成。すれ違いざまに鳥型の魔物――ファイアバードに攻撃を仕掛けた。


 攻撃は見事にファイアバードに命中。

 一刀両断した夕夏は、その勢いを殺さないまま、さらに飛翔を続けた。


 ファイアバードはまだ残っているだろうが、先に本体をつぶさなければ埒が明かないだろう。


 その後も、進路の邪魔になりうるファイアバードだけを両断し、襲撃現場へと急行した。


 やがて自身の通う学校の上空まで到着した夕夏は、すでに始まっている戦闘の風景を見て、顔をしかめた。

 ――すでに校舎に被害が出ている。

 損壊させたのはもちろん、彼女たちにとっての敵――異世界からの侵略者である。


 異世界からやってきた異形――夕夏たち、『エンゼルナイツ』が魔物と呼称している存在。

 見た感じでは、今回の敵勢は、犬型の魔物が多いようだ。

 夕夏はそれを見て、さらに顔をしかめる。なにせ、夕夏に与えられた力は、どちらかといえば俊敏さと引き換えに高火力な攻撃を放てる固定砲台的な役割なのだから。

 すばしっこくて連携を図り、手数で攻めてくる犬型の魔物は、夕夏にとっては苦手な敵だった。

 そして、それらを操っているのは、ヒトのカタチをしているがヒトにしては少し大きく、そしてなによりも頭の頂点から一本の角が生えた怪人だ。


「ぐははははっ! どうした、日和見主義の天使どもの遺志を継ぐ愚か者ども。貴様らの力はそんなものか」

「く……敵が多すぎる」

「セレスぅ、早く来てよぉ~」

「このままじゃ負けちゃう……!」

「ごめん、私が下手を打ったばっかりに」


 冷静に戦況を確認すれば、どうやら背後を取られたらしい、緑色のエンゼルナイトが魔法の鎖で翼と四肢を封じられ、身動きを制限されていた。

 どうやら、彼女を人質に取ることで、他の三人の攻撃を封じているようだ。

 バリアーを張って魔物たちからの猛攻を防いで入るようだが、苦悶の表情からしてもう余裕がないのが見て取れる。

 捕虜にされている緑色のエンゼルナイトなど、セレス――夕夏のエンゼルナイトとしての名前を呼んでいる。


「あいつら……っ! リーフを、放せぇっ!」


 放たれる蒼い光。

 光は瞬時に味方を守りつつ敵を押し流す水の奔流となり、囚われの身となっていた緑色のエンゼルナイト――リーフを解放した。


『遅いよ、セレス……』

『ごめん、お待たせっ!』


「なんだとっ! くそ、新手の敵か! だが所詮貴様らの攻撃は豆鉄砲。この強靭なる肉体を持つ俺様には傷一つ付けることはできないだろう! 貴様も他の四人と同じく、じわじわとなぶり殺しにしてくれる!」


 だが、ヒト型の怪人は余裕のある表情で嘲笑し、逆に夕夏――セレスを挑発する始末。

 それに激高した夕夏は、周囲に被害を出しにくく、さらに相手に確実にダメージを与えられそうな魔法を放った。


「まっぴらごめんよ! インサイドフリーザー!」


 それは、近接用の魔法。

 一見、氷でできた剣で相手を切りつけるだけ――のように見えるが、実は純粋な魔法攻撃だ。

 浸透性の攻撃――すなわち、うわべだけで防いでも、きっちり中まで魔力が入り込み、体内から相手を攻撃するというえげつない攻撃でもある。

 セレスは素早さを犠牲にしたダメージディーラーだが、その分攻撃手段においてはバリエーションに富んでいる。

 現エンゼルナイツ内でも切り札中の切り札ともいえる存在だった。


 ちなみに他のメンバーは、牽制や足止め、取り巻き達の駆除のトルネ。

 先ほど捕虜になっていた、回復担当だがチーム内では最弱のリーフ。

 同じくダメージディーラーだが、防御と引き換えに威力と手数を両立させているレヴァン。

 そして、リーフほどではないが戦闘には向かず、他のメンバーのサポートと戦闘後の原状復帰を担当するヴィオレットとなっている。


 ただ、全員、最低限身を護るための魔法を使えるため、先ほどは捕まっていたリーフと到着していなかったセレスを除いた、残りのメンバー全員で協力してバリアーを持たせていたようだ。


 さて。

 セレスによる上空からの一撃を、怪人は小癪な、と言わんばかりに腕で受け止めようとした。

 そう、受け止めようとしてしまった。

 セレスが放ったのは浸透性の攻撃である。つまり、物理的な守りなど無意味で――見た目に騙され、魔法による防御を行っていなかった怪人は、その攻撃をもろに受けてしまう。

 攻撃が当たった箇所を中心に、怪人を凍てつく冷気が襲い掛かる――!


「な、なんだこれは……貴様ぁ、一体俺に何をしたァ!」

「見た目通りの、脳筋なのね。なんとなくほっとした、わっ……と」


 その結果、怪人は防御のために構えた左腕を氷漬けにされてしまう。

 もちろん、魔法の効果により中までカチンコチンに凍ってしまっている。凍傷どころの騒ぎではないかもしれない。

 クリティカルヒットしていたら、きっと凍死させられていただろう。それほどまでに――セレスが放った攻撃は残虐で、容赦のないセレクトであった。


 一方のセレスは、上空からの突撃には成功したものの、地上に降りればやはり犬型の魔物たちの猛攻を受けるのは違いない。

 しかし、彼らを操るリーダー格の怪人には確実にダメージが入っており、精神的動揺から魔物たちの攻勢にも衰えが見えていた。


 ――今ならいける……!


 堅い外皮による圧倒的な物理的防御力を誇る怪人と、彼が操っていた魔物。そして怪人による、見た目通りの強烈な攻撃の嵐。

 それらにより、防戦一方を強いられていたエンゼルナイツは、セレスが投じた一石により生まれた波紋を増幅させるかの如く、周囲を取り囲んでいた魔物たちを一掃した。

 セレスが到着するまでは、誰か一人が動けば他のメンバーが攻撃を受け、それにより生じた隙をついて、さらに別の個体が別の誰かを――という、負のスパイラルに陥っていたのだが、セレスの放った攻撃により司令塔が動揺し、今度は魔物たちに大きな隙が生じた。

 それを見事に突いて、状況を打開したのである。


 特に、セレスという増援が現れたことにより、メンバー内では補助要員的な役割のリーフとヴィオレットを囲うように、円陣を組めるようになったのが大きかった。


 横合いという死角が小さくなったことによってできた精神的余裕は、彼女たちの士気にも良い影響を与え、絶妙なコンビネーションで見事に取り巻きとして召喚されていた魔物たちを全滅させたのである。


 ――残るは、怪人だけ……!


 あとは、付近を見張るかのように存在していた鳥型の魔物も存在していたが、いまはやはりこいつが優先である。

 こいつがいる限り、無限に魔物たちは沸き続けるのだから。


 セレス不在のまま始まっていたらしい、今回の襲撃は、そのままセレスがキーとなって、早くも終息を迎えようとしていた。



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