見せ合い(すりあわせ)
百貨店からマンションに戻った亮一たちは、そのまま手早く購入したものを片付けて、リビングに移動した。
現在は15時頃。開店に合わせて入店したため、おおよそ移動時間込みで3時間くらいは出かけていたことになる。
端末の身を出現させると、さっそく情報のすり合わせを始めた。
「…………で、実際に行ってみたわけだけれど、リョウはどう思った?」
「怪しい感じがした。なんかこう……うまく言えないけど、俺達のとは違う、けど異質なナニカを感じた気がしたよな」
「えぇ……。今まではそんなの感じる力なんてなかったはずなのにね。カードの力を得たことで、もしかしたらそういった第六感にも目覚めたのかもしれないわね」
「かもしれないな」
だとすれば、いよいよもってこの事件は玲子たちにしか解決できないだろう。
慎重派の亮一が何かと歯止めにかかってきそうだ、と行動派の玲子としてはそのあたりが少しだけ心配であった。
話は次いで、二人がそれぞれどのように違和感を覚えたかに移っていく。
まずは亮一から。
彼は、昨晩最も被害に遭ったブランドショップの周囲で感じたことを玲子に話した。
「あのブランドショップで感じたんだが――おそらく、この事件の犯人はそれなりに多い。属性的には、そうだな……少なくとも炎や電気、冷気、水、そして空気……いや、風か? あとは重力。それらを操っていたらしいのは確かだな」
「そうなの? ていうか、そんなことわかるの?」
「あぁ……なんとなくだが、脳裏にカードみたいなものが浮かび上がったんだ」
「あらら……奇遇ね。私も、似たような感じだったわ。なんか、これと同じデザインのカードが思い浮かんだのよね……内容はスキルとか武器や防具とか、そういったのとは程遠い感じだったんだけど」
「奇遇、なのかな。どちらかといえば、必然、というべきかもしれないが……」
亮一は、玲子の奇遇、という言葉に対して、とっさに自分の中で出た否定的な考えを玲子に話した。
「おそらく、俺達のカードと同じデザインだったのは、俺達がそういう力を持っているから、最もわかりやすいイメージとして選択されたに過ぎないんだろうな。だから、気にすべきはそのカードのデザイン以外の部分だと思う」
「ふむふむ……一理あるわね……。んで、それを前提に話を進めるとして、リョウのはどんな感じだったの?」
「そうだな……」
話の流れで、カードの力によって得た情報は亮一から話すことになった。
亮一は、百貨店の中を歩き回って得られた『カード』の内容を、思い出せる限り思い出しそうとしているようだ。
ただ――玲子にとっても、何分量が量だった。それは亮一にも同じことが言えるだろうし、だとすれば思い出しきれない部分も出てくるだろうと思い、何かいい手はないかと端末を出現させた。
そして――一足早く。亮一が『活動記録』という項目を選択して玲子に掲示してきた。
「『活動記録』に都合よく記録されてたんだけど、おおよそこんな感じだったな」
「あ、それがあったわね。『活動記録』」
端末には、直近の行動でなにか気になることがあった場合に、それが自動的に記録されていく機能が搭載されている。それが、この『活動記録』という機能だ。
おそらくは、その気になったことを、後に思い起こしやすくするためのものなのだろうが――実際に使ってみるのはこれが初めてであり、玲子としてはどのようにそれが表示されるのかは実際に見たことがなかった。
どんな感じで記録が残されているのだろうか、と玲子は興味津々で亮一の端末を覗いてみる。
『活動記録』の画面が表示されているらしい、亮一の端末。
そこには――見事に、その時頭の中に思い浮かんだらしいカードの情報そのものが、記録されていた。
「おお! これは便利だね。私のも後で見てみよっと。とりあえず、まずは見せてみて」
「ああ。ほら」
少し食い気味に要求する玲子に若干引きながら、亮一は玲子に端末を渡す。
「~♪」
端末を受け取った玲子は、そのまま画面をスクロールさせて、亮一が気にしていたことを流し見ていく。
どうやら、亮一が集めた情報は魔法が使用された後に残る魔力の残滓、『魔法痕』というものが中心のようだ。
(なるほど……これは確かに。……ふむ、異能力のエネルギーって怖いのね。これだけで性別までわかっちゃうなんて)
謎の多さでは恐ろしいことこの上ない力だなぁ、と思いながらも、どうしてそこまで詳しくわかってしまうのかは放置して、玲子はカードの情報にある程度の共通点が見受けられることを確認すると、そのまま亮一に端末を返した。




