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TCG風の力で俺は魔法少女達と肩を並べる  作者: 庚 権左右衛門
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必殺技カード発動! ……からのリザイン


 5ターン目に入り、亮一にとっては不利な状況だが、彼は意外にもまだ余裕があった。

 それは、勝機があるとか、そういうものではなく、あくまでも精神的な余裕だが。

 理由として、TCG経験がなければ、それに酷似したシステムのバトルの初戦もこんなものだろう、という諦念がどこかにあったからに他ならない。

 どのような結果で終わるのであれ、TCGの大先輩である玲子の胸を借りるつもりでいるからこその、精神的な余裕だった。


「私のターンね。カードをドロー……あまり引きはよくないわね……まぁ、いいけど」

「うん? なんでだ? 引きが悪いっていってるのに」

「別に、慌てる必要がないからよ。見事に重なってない(ばらけている)から」

「ばらけて、いる……?」

「そうよ。……どのみち、次のターンで勝負が決まる。そう思ってもらって結構よ?」

「何を突然……」

「私の持っているカードの、名前……」


 玲子が突然、妙なことを言い出すものだから、何かあると勘ぐってとっさに場札に出ているカードを見てみるが――特に、変わったところは見受けられなかった。

 いったいどういうことだろうか、と首を傾げていると、彼女は『まぁ、わからないならいいけど』と呟いて、カードを二枚枚使用した。


「まぁ、何を予感したのかはわからないけど、これがあるから、別にそのカードの効果なんて怖くないのよね……」


 そう言って、前のターンでリキャストの消化が終わった『H10破滅への誘惑』及び『D2マジックシールド』を再度使用、さらに『D8弱腰サレンダー』(ATK1200、ドレイン効果あり)で亮一にアタックを行い、ターンエンドを宣言。

 『破滅への誘惑』は、『ホーリーフィールド』を指定され、これにより『サターンシーラー』によるLifeコストはほぼ無意味と化した。


 さらにこのターンで『机上の逃げ水』による最後のダメージが発生し、亮一は600のダメージを受けると同時に、玲子のDEF上昇効果も切れることとなる。

 バトルヒールをはじめとする『武器』や『防具』、そしてその他の『道具』などは、使用限度に到達したり、捨て札として場札から外したりすると『破損』扱いとなり、同名の2枚目のカードでもない限り、同じカードは同じバトル中に二度と使用できなくなるシステムなので、バトルヒールはそのまま除外扱いとなった。


 早くもターンの優先権を渡された亮一は、ドローしたカードを含めた3枚のカードを眺めて、果たしてどうするか、と思い悩む。

 引いたカードは、またしてもパッシブ効果で、しかも何の因果かその傾向も『妨害』と重なっている。これはこれでいいのだが、攻撃力を上昇させる効果のあるものでなければ、決め手に欠けてしまうだろう。

 場札に出したカードも、どちらもリキャストなしのパッシブ効果オンリー。このままでは攻めあぐねてしまう。

 かといって、玲子の特性のことを考えると、生半可な攻撃ではダメージを与えるどころか、逆にLifeをどんどん増やさせてしまうばかりだろう。

 それに、玲子は言っていた。次のターンで終わる、と。つまり、それ相応の条件を整える何かを、玲子は持っているということになる。


 とはいえ――現状の手札では自分にできることなどあるはずもなかった――が、亮一は場札の二枚と、今引いた一枚を見て、脳裏に何か閃くものがあり、自身がSkill pointsで交換した魔法使いパックに含まれていた、必殺技カードをステータスパネルで確認した。

 そして、2枚ある必殺技カードの内の片方が、現状と見事に発動条件が合致することに気づき、にやりとした。

 これで勝負はまだわからなくなった。

 ここへ来て、亮一は初めて、自身の特性に頼ることにした。


 カードを、表記された数値分のリキャストが発生した状態でセットする。これは、リキャストコストと念じただけで、コストとすることができた。

 その代価を得るために、亮一は自身のデッキを一回叩いた。


「うん……? あぁ、さっき言ってた、リキャストコストってやつね……」

「あぁ。わかったのか」

「さすがにね。試合中に、カードをセットしてもいないのにデッキを見るなんて、普通なら反則行為だもの。これ(・・)だって、確認はしてないけど、バトル中はなんらかの形でロックされてるんじゃないかしら」

「かもしれないな」


 玲子の考えに同意しがら、亮一はデッキの中から条件に合うカードのうち、現状を打破できるかもしれないカードを一枚だけ取り出し、残りは再びホルダーへ戻した。


「ドローしたのはこいつだ。これと、残しておいた残りの一枚をさっそくセットして、俺は必殺技カードを場札に出す!」

「おぉ、必殺技カード! リョウが先に出すとは思わなかったよ!」

「ふふん、どうやらやろうとしていたことはビンゴみたいだなっ!」

「大正解! お見事だよ、リョウ。でも、リョウの必殺技が、私が次のターンで出せるようになる必殺技の効果を、覆せるような効果じゃないと意味ないけどね。どれどれ……うげっ、やられたわね……」

「必殺技の妨害と、特性の封印。そしてATKとDEFの大幅な加算。攻撃手段になり得なかったパッシブ効果オンリーのカードも、なかなか捨てたもんじゃなかったな!」

「だねぇ……」


 亮一が見事に場札として引き出すことに成功した必殺技カード。正式な分類は【魔法/必殺技】カードであり、名前を『大魔導結界F(フォートレス)F(フィールド)』。

 3枚以上のパッシブ効果のみの魔法/妨害系カードを展開することで発動が可能な、発動条件が緩いわりに強大なステータスと、強力なパッシブ効果が常時展開できる、規格外の攻撃スキルだ。それだけに、このスキルを使用しての攻撃は、リキャストが10ターンととても強い反動を伴う。

 それでも、攻撃に使用してもパッシブ効果とカードステータスの減衰はないため、いかに強いかがうかがい知れる。


 具体的な効果は、このカードが場に存在する限り、自分の場札は相手のカードまたは特性の効果から守られ、さらに毎ターンの終了時にLifeが500ポイント回復するというパッシブ効果。さらに、このカード以外のカードで攻撃する場合、カードステータスのATKの半分だけだが、自身のATKが底上げされる効果もある。

 カードステータスは前提となるカード1枚につきATK1500/DEF2000とこれも異様に高い。また、これも『魔法』スキルに含まれるため、魔法使いの特性によるブースト効果の恩恵を受けるのも追い風だ。


 ――ちなみに、前提となったカードのうち、最後にセットされたパッシブスキルのカードは『エレキバリアー』といい、相手が物理系のスキルで攻撃をしてきた際、ダメージの50%を無効にし、相手に跳ね返すというものであった。

 魔法系のスキルが中心の玲子に対しては、ほとんど意味をなさないスキルだろう。


 さらに、場札にセットしたもう一枚のカードが特殊な効果こそないものの、ATK1000、リキャスト4のカードだったため、このターンで強力な攻撃が2回放てることになる。

 ただし――それで、Lifeを削り切ることができれば、の話だったが。


「この状態で玲子に攻撃。んでこっちの必殺技カード自体でもう一度攻撃」

「うわぁ……めっちゃくちゃ痛手だわ……」

「う~ん、強力だなぁ……」


 いかにも他人事のように同意する亮一。

 だが、Lifeを削り切れなかった亮一はそのままターンエンドを宣言。

 6ターン目になり、玲子のターンとなる。


「カードドロー。……フフッ、かろうじてLifeが残ったことで残った勝機を掴めたわね……」


 先ほどの亮一と同じく、何かキーとなるカードを引いたらしい笑い方。

 玲子は、カードを一枚――なんと、強力なカード『机上の逃げ水』を含む、4枚ものカードを破棄。

 その中には、彼女の身を守っていた『H10破滅への誘惑』も含まれている。

 いったい何をするつもりなのか――固唾をのんで見守っていると、玲子は次々とカードをセットした。そして――


「『S10ミラーシールド』『SJオリハルコンの宝剣』『SQエリクシルの拠出』『SKダブルダウンの大罪』、さらに『SA古のドレスアーマー』をセット。これによりポーカーハンド、ロイヤルフラッシュが成立。特殊条件成立により、武技/必殺『ロイヤルフラッシュの威光』を場に特殊配置!」


 彼女がセットしたカードを宣言したとたん、その狙いが一気に判明してしまった。

 そう――宣言通り、玲子は条件を整え、必殺技のカードをセットすることに成功してしまったのだ。

 それも――名前からして、途方もなさそうな必殺技を。

 亮一は、そのカードのステータスを見て、これは本当に負けたな、と


 ロイヤルフラッシュの威光。このカードは、場札が5枚の状態で、同じスートの10~Aをモチーフとしたカードが存在する場合にのみセットでき、条件を満たす限りセットし続けることができる。

 発動後のリキャストはなく、発動条件がそろっている限り発動可能。

 効果は、指定した道具カード・スキルカードの、リキャストを除くステータスと効果をインポートして発動するというもの。1枚当たり1ターンにつき1回使用可能で、このカードで指定しても元のカードはリキャストにはならない。逆に元のカードがリキャスト中だと発動はできない。

 つまり、前提条件のカードあえて使用しない限り、毎ターン同じカード5種類を発動し続けることができるということである。


 さらに、前提条件となったカードも驚異的だ。


 魔法/防御『S10ミラーシールド』リキャスト5、ATK0/DEF1500。発動すると4ターンの間DEFアップ+魔法スキル反射の効果。

 武器/両手剣『SJオリハルコンの宝剣』リキャスト4、ATK3000/DEF1100。追加効果はなし。

 道具/回復『SQエリクシルの拠出』リキャスト1、ターン開始時のLifeが500以下の時に使用可能。Lifeを5000回復し、相手の場札の効果のうち、自分に対するパッシブスキル以外のスキル効果を解除。場に出ているすべてのスキルカードのリキャストを0にする。

 武技/攻撃『SKダブルダウンの大罪』リキャスト5、ATK4000/DEF0。追加効果はなし。

 そして、防具/特殊『SA古のドレスアーマー』リキャスト6、ATK2000、DEF4200。ターン開始時のLifeが500以下の時に使用可能。リキャストが0になると手札に戻る。


(負けだな、これは……)


 場札に再展開されたカード群を見て、亮一は己の負けを悟った。

 なにせ、全てギャンブル系のカードに属する関係上、武器カードと防具カードだけで、一気に7500も基礎ATKが上昇するのだ。

 そのうえで、特性の恩恵を受けた『ダブルダウンの大罪』による攻撃。

 13700ものダメージともなれば、亮一が前のターンに置いた必殺技カードなど、あってないようなものだろう。

 さらに、『エレキバリアー』による反射ダメージは有効ではあるものの、これにもDEFは有効。

 『SQエリクシルの拠出』も、特性による増幅効果の範囲に収まっており、それも追い風になるだろう。


「詰んだな、これは。――ありません」

「そうだね――お疲れさまでした」


 惜しいところまで行って、この逆転負け。

 しかしTCGというものに触れたことのない亮一にとっては得るものも多く、決して悪くない勝負であったと評した彼の表情は、きわめて朗らかなものであった。



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