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第91話 星座占いは、見たときに限って最下位

「ふう~間に合った~」


 朝のホームルームを告げるチャイムと同時、私は教室にすべりこむことに成功した。


「いやー、語りすぎちゃった」


 昨夜、ベルにプリピュアのすばらしさを伝授しはじめたら止められなくて、気がついたら日付が変わっていた。


『いい? プリピュアのことをただの子ども向けアニメだと思ってるかもしれないけど、それの認識が大きな間違いなの』

『……はい』

『そりゃあターゲットの大部分が子どもなのはわかるよ? だからって固定観念にとらわれることなく、大人でも楽しめるようになってるの』

『……はい』

『その証拠に、主題歌の歌詞にもちゃーんとキャラクターの気持ちとかストーリーが反映されてるんだから! ほらこれとか、聞いてみて!』

『あっ、いやー。それはまた今度にしとこうかなあ』

『なにいってるの、猫の耳でもイヤホンくらい入るでしょ? じゃあ無印のオープニングからね』

『ぎっ、ぎにゃあ!』


 おかげで今朝は寝坊。あやうく遅刻するところだった。陰キャが遅刻で目立つなんてのはけたいところだ。今後は気をつけないと。


 反省はしている。でも後悔はしていない。


 プリピュアという最高の作品を広められるチャンスがあるなら、ファンとしてのがすわけにはいかない。あれだけ熱心に伝えたんだから、ベルも魔法少女のすばらしさを理解したに違いない。これで少しは魔法少女の宿敵たる悪の組織としての自覚も芽生えてくれるはず。

 途中から頭がぐわんぐわん揺れてるように見えたけど、たぶん気のせい。きっと感動をかみしめてしたんだろう。


「ふわ……」


 ホームルームが終わってさわがしさを取り戻した教室で、あくびをかみ殺す。後悔はしていないけど、眠いものは眠い。

 寝坊したせいで朝ごはんもちゃんと食べれてないし。それにいつも見てる朝の占いを確認してる余裕もなかったし。


 そうだ、まだ授業まで時間あるし、スマホで見てみようっと。

 今日の運勢は、っと……


【最下位は「しし座」のあなた! ラッキーカラーは黒! 身につけていないと大変なことになるよ!】


「げっ」


 よりにもよって最下位かー。あーあ、わざわざ見なきゃよかったなあ。


「あ、ちーちゃん。おはよー」


 と、ほがらかな笑みを浮かべた乃亜のあさんが声をかけてきた。うーん、相変わらず天使。朝いちばんなのに眠さのカケラも感じさせない。きっと寝坊とか無縁なんだろうなあ。


「今日は遅かったね。もしかして寝坊?」

「うん、まあちょっとね」

「まだ眠そうにしてるー。夜ふかししたんでしょー。ダメだよ、女の子なんだから」

「あははは」


 思わず寝ぐせが残ってないか頭を触る。あるのは三つ編みでおさえこまれたくせ毛の感触だけ。


「ねえちーちゃん、放課後時間ある?」

「え、うん。あるけど」


 ベルに偵察ていさつは頼まれてるけど、別に今日とは言われてない。


「じゃあ、教室に残ってもらってもいい?」

「うん、べつに大丈夫だけど、どうかしたの?」

「それはその、あれだよ」

「あれ?」

「ほら、約束の……ね?」

「約束?」


 なんのことだっけ。

 今日は日直とかじゃないはずだし……。


「もー。ちーちゃんってばとぼけちゃってー」


 口もとに手を当てて、どこか照れくさそうに笑う乃亜さん。ん? 照れくさそう?


 私が頭に「?」マークを浮かべていると、乃亜さんは耳打ちするように私に顔を近づけてくる。

 そして、


「……私、ちゃんと着けてきてる(・・・・・・)よ?」

「あ…………」

「もうチャイムなっちゃった。それじゃあちーちゃん。放課後、絶対だからね」


 そう言って自分の席へ戻っていく。それを、私は呆然と見ていることしかできない。

 私の頭をかけめぐっているのは、昨日の出来事と、彼女に言われた言葉。


『じゃあ明日、学校に着けてきてよ。私も着けてくるから』


 わっ……、

 忘れてたあああああああああああああっっ!!

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