第76話 dieジェスト
「バーッガッガッガ! 俺様はチーズバーガー怪人! ぶっ飛ばしてやる!」
「シャイニングシャワーー!」
「ばがあああああっ!」
ちゅどーん!!
…………。
「牛丼怪人たちの仇、このおろしポン酢★豚丼がとるブー! ホワイトリリー、覚悟するブー!」
「ホワイトスター!」
「ぶひいいいいっ!」
ちゅどーん!!
…………。
……。
「……なんでや! なんで勝たれへんねん!」
とある週末。アジトに集められた私たちを前にして、ベルはそう叫んだ。
「おかしいで……今までええ感じに戦えた怪人をベースにしてるから、負けるのはしゃーないにしても、もっとええ戦いができるはずやろ……」
「あのねえ……」
そりゃホワイトリリーだってバカじゃないんだから、前と同じ戦い方が通用するわけないじゃん。だいたい大根怪人とポン酢怪人、それに豚丼怪人が合体とか、完全に前の温玉☆チーズ牛丼の丸パクリだし。
ほら、隣で橋本さんたちも苦笑してる。
「どう考えても作戦不足でしょ」
ほんと、いつもひとりで暴走するんだから。
「そない言うけど、あんさん」
「なによ」
「オレはあんさんにも責任の一端はあると思てるで」
「私?」
ベルは前脚をビシ、とこっちに向けると、
「せっかくマントの力を解放できたのに、なんで使わへんのや!」
「いや、無理だって」
「なにを言うてんねん。無理って言うから無理やねんで」
「だからできないってば。だって――
飛んでる相手の背後にどうやって近づけっていうのよ!」
ここ最近の戦いでは、ホワイトリリーは戦闘中のほとんどで空を飛んでいた。たしかにマントの新しい力はすごいけど、私が空を飛んで彼女に近づけない以上、いくら透明になっても認識されなくても意味がない。
……まあ、空を飛んでくれてるおかげで、何回かパンツを拝むことができた。
眼福眼福、ふふふ。
「てゆーかさ、ベル」
「なんや」
「なにか焦ってない?」
ふと、私は気になったことを訊いた。
「たしかに西村さんの言うとおりですね。週に何度も戦うのなんて今までなかったですし……どうかしたんですか?」
橋本さんも同じことを疑問に思っていたみたいで、追いかけるように質問する。
「そりゃあ魔法少女に勝ちたいって思ってるのはわかるんだけど……」
だからって手当たり次第にやりすぎじゃないだろうか。
「なにかあるの?」
まあベルのことだから本当に手当たり次第の可能性もあるしなあ、なんて思いながら訊くと、
「べ」
「べ?」
「べ、べべべ別にそんなことはあらへんで!」
……絶対、なにかあるやつじゃん。
「ベル、なにか隠してるでしょ」
「隠してる? ひ、人聞き悪いなあ。隠してることなんか、なーんもあらへん!」
「ほんと……?」
じっ、と見るが目の前の黒猫は目線としっぽをあっちへこっちへ。
「ほ、ほんまにホンマや! あんさん、オレがウソついてると思てるんか!?」
「うん」
そりゃ、今まで何度もはめられてきたんだし。
「ねえ、なにかあるのなら相談してよ? 一応私たち仲間なんだし」
助けになれるかどうかはおいといて。
「そうですよ!」「俺たち、一緒にやってきたじゃないですか!」
田辺さん、二階堂さんも続く。
「ワシも、できることはやりますぞ」
ミカさん――もといハカセもうなずいた。
「ほら、みんなもこう言ってるんだし」
「ぬぬぬ」
うなっている。その時点で隠しごとがあるのは明白なんだけど。
「てか、言うなら今のうちだからね。あとになって助けてとか言って、私なにもしないから」
前みたいに怪人が暴走してから泣きつかれる、なんてのはゴメンだ。
「ぬぬぬぬ」
「ほら、どうするの?」
「ぬう……」
そして数秒後。ベルは観念したのかうなるのをやめると、口を開いた。
「実はな――」




