第42話 空席がひとつ
ホワイトリリーとの対決に勝利、そして祝勝会という怒涛の土曜日から2日経って。まるで何事もなかったかのように月曜の朝はやってきた。
「ふあ……」
あくびを噛み殺しながら、教室の席につく。日曜日にたっぷり休んだとはいえ、眠いものは眠い。
ちなみに昨日は久しぶりにじっくりとプリピュアを見れた。さすがに戦って勝利した翌日に招集をかけるほどベルもバカじゃないだろうし、誰にも邪魔されない優雅な休日だった。
映画もほんと最高だったしなあ……。
ホワイトリリーとの戦いでずいぶん前のことに思えるけど、土曜日の映画は鮮明に記憶に残っている。
映画といえば。
「そうだ、乃亜さん」
同じプリピュアのファンということで、私たちは一緒に映画に行った。そのあとは服を見たり、その……下着を見たり(恥ずかしくて記憶から消したい)、いろいろあった最後、
『ごめんっ。急用が入っちゃって』
そんなわけで、お出かけはお開きとなった。あのときは乃亜さんばかり謝っていたけど、実際のところ私だってベルに呼び出されて行かなきゃいけなかった。
だから、乃亜さんが謝ることはないと、そして私も急用があったのだと、謝ろうと思っていいたのに、
あれ……?
いつもどおり、席のすぐ近くではギャルっぽいクラスメイトがテンション高めにしゃべっている。けれど、その中に乃亜さんの姿はなかった。
まさか遅刻?
いやいや、いくらギャルと仲良くしてるっていっても、不良なわけじゃないし。そもそも乃亜さんは私みたいな陰キャとも話してくれて、あまつさえ一緒に出かけてくれるくらいのいい人だし。
「席つけー」
と、担任の先生が教室に入ってきて、朝のホームルームが始まる。それぞれのグループで集まっていた人たちは、雲の子を散らすように自分の席へと動く。
その中で、ぽっかりと空いた席がひとつ。乃亜さんのだ。
「ホームルーム始めるぞー。えーとだなー」
私が空席に目線だけを送っている間に、先生はとりとめのない連絡事項を事務的に言っていく。
そして最後、付け加えるように、
「あー、夢崎は今日、休みだそうだ」
「え……?」




