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第38話 祝・勝・会!!

「「「かんぱ~い!!」」」


 陽気な声のユニゾンが響き渡る。かちん、という小気味のいいグラスがぶつかる音が続いた。


「っっっぷっはあ~~~~!」


 ストローで器用にグラスのビールを飲んだベルが、ひと際大きな声を上げる。


「いやー、こんなうまい酒を飲める日が来るとは思わんかったで!」

「ベルさんの言うとおりです!」

「いつもと同じビールなのに、100倍おいしく感じますよ!」


 橋本(はしもと)さんたちも、グラスを片手に喜びを口にする。


 いつもの居酒屋の、いつもの座敷。そしていつものビール。だけど今日は違う。

 記念すべき祝勝会だ。


「くうー、ここまで長かったで……」

「ベルさん、なに泣いてんすか」

「しゃーないやろ。念願の初勝利なんやから」


 目頭をおさえるベル。本当に今までずっと負けっぱなしだったんだ。


「ほんと、千秋(ちあき)ちゃんのおかげだよー」


 隣でハイボールを飲んでいたミカさん(今日は変身していない)が、ぐるりと腕を回して肩を抱いてくる。むにゅうう、と暴力的なまでのおっぱいが私の頬に押し当てられた。


「そ、そんな。私はなにも」

謙遜(けんそん)せんでええ。あんさんの作戦あっての勝利や」

「そうですよ! 千秋さんがいなかったら今ごろ反省会になってましたから」


 口々に送られる称賛(しょうさん)。うう、なんだか恥ずかしい。学校でも、お母さんにも、こんなに()めてもらったことなんてない。


「にしても千秋ちゃん、よくあんな作戦思いついたね」

「しかも3段構えやなんてな」


 うんうんと頷くベル。

 彼の言うとおり、私は3つの作戦を提案していた。


 作戦その1。地の利のある場所で戦う。

 作戦その2。私が注意を引きつけて怪人の攻撃を当てる。

 そして作戦その3が、回避能力に特化した怪人による持久戦だ。


 ひとつ目はほとんど効果はなかったけど、その後ふたつがバッチリとはまってくれた。


「あはは、たまたまですよ」


 とは言いつつも、内心うまくいってホッとしていた。この作戦は正直、私の予想に頼るところが大きかった。

 ベルに()いたところ、今までの戦いは全部、ホワイトリリーに怪人があっという間にやられてしまうという構図になっていた。もしそれに、短期戦になっていることに理由があるとすれば――そう考えたが故の作戦。


 結果、私の読みは当たり。どうやら魔法少女ホワイトリリーは、スタミナ面が弱点らしい。あるいはもしかしたら、変身時間に制限があるのかも。


「お待たせしました~」


 と、店員さんがやってきて料理をどんどんテーブルに置いていく。


「今日は好きなだけ食べてください!」

「そうだよ千秋ちゃーん、なんならだし巻き卵10人前、いっちゃう?」

「そ、そんなに食べられないですって」


 勝利の美酒がよっぽどおいしいのか、みんなテンションがいつもより高い。


「あっ、ねーちゃん! ビール追加頼むで!」

「は~い」


 ベルの注文に店員さんが軽快に答える。店員さんも、まさか黒猫が言っているなんて思ってもいないみたい。


 ていうかベル、もうグラスが空になってる。その小さな身体のどこに吸収されたの? ペース早くない?

 若干心配になる私をよそに、ベルは枝豆をぽりぽりとかじる。


「ほんまよかったで。ボスへの報告も無事済んだし」


 祝勝会の前に一度アジトに集合した私たちは、以前のように黒い穴から見えた黒いシルエットのボスに勝利報告をした。ちなみにボスからは「よくやった、この調子で(はげ)むように」とお褒めの言葉をもらった。


「ベルさん、報告のときめっちゃ緊張してましたよね。しっぽ震えてましたよ」

「や、やかましい! しゃーないやろ!」


 ベルのツッコミに、みんなが笑顔になる。今までの飲み会とはぜんぜん違う。歓迎会のときに垣間見えた辛そうな雰囲気はまったくない。


「まーしかしボスの言うとおりや! この勢いでいくで!」

「よーっし! 私もどんどん新しい怪人、作っちゃうぞー!」

「それなら俺、リクエストしてもいいですか?」

「どしどしこーい! 今ならいくらでもやれちゃう気がするよ!」

「じゃあさっそく新しい怪人のアイデア出し、やりましょう!」

「と、その前に店員さーん! 日本酒追加でー!」

「おっ? 橋本~、日本酒なんて飲んでええんか~? 酔っぱらって家に帰ったら、嫁さんに怒られるんちゃうか~?」

「いいでしょー、今日くらい」


 誰も彼もが、笑っている。

 そんな様子に、気がつけば私も思わず笑みがこぼれていた。


 よかった。これで悪の組織は、正義の魔法少女の宿敵として、ひとつ成長できた。輝かしい魔法少女のライバルとして、ふさわしい存在に。

 そんな達成感をかみしめながら、私はオレンジ―ジュースを飲み干した。

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