序曲 出会い
「またあの男が優勝か・・・毎度毎度つまらんことだ」
「勝ったってのに無表情でいやがる・・・こうなって当然ってか?癪に障る野郎だぜ。」
いつものように練習をこなし、いつものように大会に出場する。ほかの選手と何ら変わらぬと思っていた俺であるが、一つだけ違っていた。俺はほかの誰よりも強いのだ・・・。
先ほどの決勝も本気を出すまでもなくTKO勝ちを喫してしまった。これは今日にかぎったことではなく毎度のことなのである。
幼少期にいろいろあって、空手を始めた・・・いや、始めさせられたわけだが、最初こそ技の習得や強くなる体に喜びを覚えていたが今はどうだろうか・・・あの頃の情熱は冷めてしまっている。常勝無敗を誇る戦績をもってしてもファンだとする人間には会ったことがない。
先ほども聞こえてきたがもはやアンチの声にも聞き飽きたころだ。この有り余る力を生かせるのはここではない、きっとそうなのだと感じ俺は会場を後にした。
ファイトマネーはほかの選手の比ではないが、生憎無欲なものでただ溜まる一方。家はというとさびれたアパートの2階である。誰が想像できただろうか。そんな愛しくもない我が家に帰ろうとしたとき、後ろから声が聞こえてきた。
「失礼、あなたがクルックスさんですよね?試合を拝見しておりました。」
振り返るとそこには、燕尾服を着た執事のような老人が立っていた。場違いな恰好にびっくりしながらも
「ええ、そうです嫌われ者のチャンピオン、クルックスです。」
と冗談交じりで答えたそれを老人は楽しそうに聞いていた。ロマンスグレーの髪はどうやら後ろで束ねているようだ、恰好通りしぐさや口調にも気品を感じる。
「ふふふ、話してみると面白いお方ですな、試合前後があまりに寡黙なものでもっと怖い方だと思ってましたのに。」
普通、俺がこんなしゃべり方をしたら他の人間は眉をしかめて怒るだろう。だというのはこの老人はなおも面白そうにしている。
「あぁ、申し遅れました、私の名はアルデバラン。見ての通りただの老骨です。どうぞお見知りおきを。試合はいかがでしたか?手ごわい相手でしたか?」
とうてい、ただの老骨には見えないこのアルデバランと名乗る老人は続けざまに聞いてきた。正直に話すのも気が引けると言いたいところだが、この人にならいいかと思い俺は本音をぶちまけてみた。
「ぬるいです。今日に限らず毎度毎度です。こちらは勝つための努力をして勝利を重ねているというのに、客は俺の負けるところしか見たくないみたいですよ、最近はあの場に立つのも億劫で・・・なんのために闘ってるんだかわかりませんね。」
ありのままを伝えた、アルデバランは「ふむ」と相槌をうち、あごに手を当て少し考えた後
「それならば、負けることを許されない戦いに興じるのはどうですか?あなたはおそらく、そこにいるべきではない。」
急に訳のわからないことを言い始めた。だが勝っても文句を言われないのであればこちらとしても願ったりかなったりである。アルデバランの申し出に興味がわいて
「それは面白そうですね、詳しく聞かせてもらえませんか?」
そう答え帰路へ向かう道に背を向けた、アルデバランは何やら嬉しそうにしている。俺なんかを呼び止めて何の得があるのだろうと思いながらもその老人のあとをついていく。
「さぁ、こちらです。私の主の住まう屋敷へご案内します。」
屋敷・・・恰好は単なるコスプレではなく本職だったようだ、この人の仕える主というのはどういう人なのか気になってきた。歩を進めていくうちにそれらしき建物が見えてきた。というか見覚えがある場所だった。街でも有名な美しい少女が住むという場所だった。ただ、ここから人が出てきたり入っていくところを見たものはいないという。
柄にもなく緊張しながら門をくぐり扉の前へ。
「さぁどうぞ、わが主がお待ちです。」
「おかえりアル爺・・・もう一人だれかいるようね・・・。」
「ただいま戻りました。聞いて驚かないでくださいね?私の隣にいるのは格闘技界のチャンピオン、クルックスさんです!」
入ってすぐに見えてきたのはフワフワとしたきれいな緑髪をした少女だった。さながらオーロラのように光を放っていた。ある意味では名前通りの見た目であった。だがそれよりも気になったのは・・・。
「・・・で・・・そのクックドゥーってだれ?どんな人なの。」
名前を間違えられてしまった。俺は中華料理の素ではないと突っ込みたくなったがそんなどうでもいいことよりももっと気になることがただ一つ。
この娘、髪色のように瞳も緑色なのだが、形容するなれば輝きを失ったエメラルドのようだった。つまり何が言いたいのかというと・・・。
「はじめましてクルックスです。ところであなた・・・」
「目は見えていますか?」
とあるサイトで描いてる私のオリジナルキャラをもとに執筆しています。
ろくに小説も読まない上、こういったことは未経験故、つたない文章であるのはご了承願います。




