頭がいいとは
会話をしていると感じる。大学が大学なのでみんな頭がいいわけだが、ここで自分のコンプレックスが再び炸裂してしまう。おれは確実に「お勉強」はできたが決して聡明なわけではない。
個人的に頭の良さが最も顕著に出るのはトランプゲーム「大富豪」だと思っている。あれには定石というものがあるそうなんだが、それを覚えただけでは勝てないだろう。
開始時の運の良さと高度な臨機応変さ、先を見通す力が要されるあのゲームはまさにこの世界と同じで、いくらペアやジョーカーが手元にあり優位に立つことができたとしても、その後の戦略によっては余裕で敗北を期し得る。
もう出オチだが、おれはジョーカー持ちで登場して颯爽と貧民でフィニッシュする男である。「貧」というのは社会の負け組などではなく、人間としての負け組という意味である。社会の勝ち組には人間としての負け組がたくさんいるということを知ってもらいたい。
引っかかる人もいただろうが、大貧民にはならない。嘘つきがそこに行き着く。全てを失う人間は嘘つきである。
三限が始まる。これも例外なくつまらない。つまらないけど板書が必須なので必死にペンを動かす。パソコンに板書してるから紙による抵抗感がなく、手は疲れない。かなり助かる一面もある一方、書き込むPDFが重すぎて書いても反応しない時がある。本末転倒だからなんとかして欲しい。
三限が終わる。四限も同じ講義室だからこのまま待機。しかし、席は自由とは言えやはりみんないつも同じ席に座るもんだから顔は覚えてくる。当然名前は知らない。いつもおれの前の方の席にはかわいい子が座っている。誰に似てるかと言われたら、水曜日のカンパネラのコムアイ。どう?これはかわいいでしょ。
かわいいとは思うけど友達になろうなんて毛頭思わない。おこがましいじゃないか。大体みんな彼女が欲しいなんて言うけれども、いや、おれももちろん欲しいとは思うけど、彼女を満足させられる男であるという自信がおれにはない。
デート?そんなもの家で終わらしちゃダメなのか?デパート行かなくちゃいけないのか?高級フレンチ?サイゼリアじゃダメか?プレゼント…はどうやって欲しいもの聞き出すんだ?やっぱりサプライズじゃないとダメなのか?
こんなことを思うおれに、彼女ができると思うか?
万が一彼女ができてしまったとしても、こんなのゲンメツされておしまい。どこかに、文句言わないでお家とサイゼとすき家の往復デートコースに付き合ってくれる人はいないかな。
いやいや、そういう人もいるにはいるだろう。だが心の奥深くのどこかで、「こんなデートしてるなんてバレたらバカにされるに決まっちょる……」となんと内部分裂を起こしてしまっているのだ。これはもう手がつけようがない。手遅れである。おれには彼女など出来ない。諦めよう。
でも欲しい。
なんとかなると思い続けてはや8年。現状なっていない。