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霊色の兄妹   作者: 樹木
色と霊と性欲と
7/9

変態兄妹のこれから1-⑦(終)

 家に戻り兄さんは中には入らず家族にも顔を合わせないようすぐに帰ってしまい、帰りが遅く心配の声を掛けられたが私の状態を見てそれはすぐに違う意味に変わった。顔に殴られた後があり頬を張らしていたら何があったかなんてすぐ予想がつくし、珍しく早めに帰っていた父親がすぐに病院へ連れて行き緊急外来で簡単な処置を受けた。それから女医の人からレイプされたのか精神的なダメージがあるか親身に聞いてくれたが正直に殴られただけと答えた。父親はその殴った相手を聞き出して怒鳴り込みに行きそうな険しい表情をしてたので、私は下校中知らない人から急に路地裏に連れ込まれ暴行を受けたと泣きながら言った。嘘泣きだが、そうすればムリやり聞き出そうとは出来ないし大分ナイーブな問題になってあやふやに出来る。一応病院の方からは怪我の具合もみたいにということで痛み止めと湿布を処方され、また来週通院することになった。帰りの車の中で父親から「大丈夫か?」「痛くないか?」と心配されたが私は自分でも覚えてないが多分「大丈夫。」と機械的に返していたと思う。だって、本当は傷より兄さんが先輩に犯したあの実験の方が怖く痛かったから…。

 

 病院から家に戻ってからも私の体の震えはまだ止まらなかった。男の人に無抵抗で馬乗りに殴られた事よりも兄さんが躊躇も無く人を殺してしまった事の方が頭に染みついて恐怖心を染め上げてくる。先輩は私に酷い暴力を振るったが、それは一種ストレス発散の一部で人として持っている当たり前のものだ。暴力でストレス発散するのは良いこととは思えないがそれ以外の方法を知らないのなら仕方ないと思う。だから私はレイプされないなら殴られる位いいかと諦めていた。そのおかげで恐怖心は無かったけど痛みは酷く耐えるだけで精一杯で、泣きそうでどうしようも無かった。今も湿布を貼ってるが痛みは一向に引く気配が無い。もしかするとここ1週間はこの痛みと付き合っていかないといけない。そう考えると億劫ではあったが、私が一番に億劫に考えてしまっているのは兄さんの事だ。兄さんがあんなに抵抗もなしに先輩を、人を殺すとは思わなかったし今も信じられていない。確かに兄さんは『色の目』のせいで人と違う価値観や感覚があるけど根底にある人間性は私達と変わらないと思っていた。超えてはいけないラインをしっかり持ってて殺しまでするなんて…思えない…。でも今日目の前で先輩が自殺していく様を本当に動物実験をしているように見て息絶えたら興味を失せ罪悪感を感じてなかった。それが怖かった。兄さんが、人じゃないように感じてしまった…。思い出すだけで体が震えてしまうので私はすぐ布団にくるまり必死に思い出さないように、眠って今日の出来事を記憶から薄めようと逃げるようにその日は就寝に入った。

 現実逃避のためかすぐに眠れたが、今日は色んな事があったせいで頭の整理がつかず見覚えがない光景の夢を見た。それは幼い自分と兄さんがどこか懐かしいようなそれでいて恐ろしい部屋のようで檻のようなよくわからない場所にいた。周りにも霧がかったモヤのせいで自分の姿を確認するのも難しい。そこで一体何が行われていたのか何をしていたかわからない。でも何があったかわからないのに、不思議と作り物では無く実際にあったように感じた。この光景に見覚えがない筈なのに見覚えがある、何か忘れてる?思い出そうとすると、周りのモヤが濃くなり自分の姿すら見るのが困難になってきた。まるで思い出すのを拒んでるように、その記憶を隠すようにモヤは止まらない。そしてついに視覚を全てモヤで覆い尽くされてしまい、夢の世界は雲の中のように周りが濁った白一色に変わった。それでも声だけは聞こえたため耳を澄まして幼い私達の会話を聞いた。

『おにぃちゃん?なにしてるの?』

『みゆ、この人はねワルい人なんだ。みゆにヒドいことをして、いじめるワルい人。だからボクがいまころしたの。』

『ころ…した?え?でもその人…。』

『うん………だよ。』

『え…?なんで…?どうしてそんなこと…?』

『それはね………から……。』

 どんどん声も遠ざかっていき所々聞き取れない、重要な所なんて何も聞こえない。でもわかった、いや思い出した。担任に言われた通り昔私達は目的のために人を殺した。だが兄さんは…それよりも前に誰かを殺していたんだ。それが誰かは思い出せない、一体誰がどうして殺されたのかわからないことだらけのせいで私の頭は情報量に耐えきれず夢から切り離されるように意識も切り離された。ただ、一つわかった、私は大事な事を忘れてる…、あとそれは絶対に思い出さないといけない気がする。それからは夢も見る事無く沈むように眠っていった。その夢のせいで次の日寝汗がヒドく最悪な気分だった。



「今回は上手くいきましたよ。」

『うん、それならよかった。どうだ桜庭、体に変化はあるか?痛みとか苦しみとか。』

「強いて言えば真夜中の3時に電話掛けてこられて辛いですね。」

『すまないな、どうも出てこれたのがこの時間でな。悪い悪い。』

「男なら殴ってますからね。」

『女で良かったと思うよ。まあ何はともあれ桜庭の仮説は当たってしまったと。』

「そうですね。喜ばしいです。」

『…人を自殺に追い込んで罪悪感どころか反省もなしか。やっぱり桜庭はイカレ童貞インポ野郎だな。』

「自分の仮説が外れたからって八つ当たりしないで下さい。あとインポじゃないです。妹以外に勃たないだけです。」

『……いい精神科を紹介するよ。まあ桜庭インポは置いといてだな、詳細は明日の部活で聞こう。そろそろ私も限界だからな。』

「はぁ~…、わかりました。では明日お休みなさい先輩。」

『おい何だ今の溜息は…』

 現在夜中の3時、こんな時間に電話してきた非常識な先輩の電話を用件だけ伝え最後は一方的に電話を切った。睡眠薬を飲まないで寝たせいで電話の音に起きてしまい居留守が使えなかった。まさか眠剤を飲まないだけでこんな面倒な事になるとは、次からは気を付けないといけない。今更眠剤を飲んでも明日の大学の授業中意識が朦朧として支障をきたすため服薬も出来ない。それにこんな中途半端な時間に起こされたせいで二度寝しようにも眠気がこないためすぐには眠れなかった。僕は仕方なく今日、正確には昨日に行った、『色の目』の使い方と出来事の整理をすることにした。どうせ部活で詳細を報告するなら整理する必要もあるしちょうどいいと自分に言い聞かせた。そうしないとあの先輩に嫌がらせをする事しか考えられなかった。僕はそんな幼稚な仕返しなんか考えるよりも有意義と思い誰かに言うわけでもないが声に出して整理した。もともと声に出して頭を整理するのが僕のやり方でそれが一番しっくりくる。

「まずわかったのは、これは人殺しの道具に使える。しかも心臓部の色を塗り替えるために、色をのせた手で触れるだけでいい。触るだけなら楽だけど、塗り替える色の準備に時間がかかるのが面倒臭い。今回はそのせいで遅れて未夕に怪我をさせてしまったからな…。後で僕もそれ相応の怪我を負おう。そうしないと気が収まらない、いつもより深く上腕でも切っておこう。後は…まあ細かい所になるしそこは今考えてもしょうが無い。大まかなところはこれぐらいだしあとはいいか。疲れたし。」

 やったことだけをまとめたら至極簡単だ。色を集める、相手の心臓部の色に触れる、その結果を見学する。だけど難点は色を集める所だ。色を集める方法で今わかってるところは、僕自身の黒色を指先に集中させる。だけどこれだと指先だけにしか色がのらず塗り替えるほどの量が無い、できて気分を落ち込ませる程度で使えない。しかもどうがんばっても1日指先1本が限界でこれだけの方法なら最低準備期間で1週間以上かかる。今回は2週間の猶予があったが右の指先の第2関節までしか集められなかった。その量だと塗り替えられても半分の程しか出来ない。

 もう一つは欲しい色が心臓部の色として持っている人から借りる。心臓部の色に掌を当て、色を掌に移すようなイメージで触ると触れたところに色を保持できる。今回はこれで何とか急を急いだが、そうそう都合良く欲しい色を持っている人なんて見つかる訳もないし、心臓部の色だと左胸を触らないといけないためセクハラ扱いされる。ただ今回は運よくそれが出来ただけだ。

 ここまで色を集めてそれを手に保存する事を僕は『パレット』と呼んでる。この『パレット』は『色の目』と異なり自分でオンオフをつけられる。どこまで色の量と種類を保存できるかまだ試したことが無いが、最低でも量は片手いっぱいは保存できてる。種類の方はまだわからない、今回は『黒色』と『グレー』で似た色だったから2色保存出来たのか、他の組み合わせだとどうなるかは今後の課題の一つになる。更にこの『パレット』は今回のように一度色を使うと色が無くなりまた一から色を集めないといけない。相手を殺せる程の力だが準備に時間がかかる上に一度きりとなんとも燃費が悪い。まあ、これで燃費が良かったら人を殺し放題に、相手を都合のいい性格に変えれる破格の能力になるためこれぐらいが良いのかもしれない。そうでなければ僕は未夕の安全を脅かす奴ら全員を今回のように殺し回る。

「んー、能力の把握も大切だけど未夕の安全が一番大切だな…。またあんな事が無いようにしないと。」

 僕は昔の事を思い出したがいいものではないためすぐ消した。そして今回の事も整理できたため考えるのを止め眠くなかったが瞼を閉じて休む事にした。そのまま明日の部活での報告を億劫に感じながら眠気がくるのを待った。



 次の日学校では3年の男子生徒が自殺したことで学校中先輩の自殺の件で持ちきりだったが、私のクラスでは自殺の件を触れられないかわりに私の怪我について触れられた。

「未夕どうしたのその顔!丸くなって童顔が更に幼くなってるよ!」

「少し親子げんかをしまして。」

「なかなか激しい親子げんかだな…。相手は誰だ?父親か?母親か?」

「父親です。父が兄さんとの愛を認めてくれず…うぅ…。」

「ほ、ホント!?何か私に出来ることない?!」

「では兄さんに私を抱いてくれるようにその無駄に育った胸で脅してきて下さい。」

「できるかぁ!」

「いつも通りの桜庭さんでよかったよ。」

「見た目がアレですが…、痛みも無いですし腫れもすぐ引くと言われたので大丈夫ですよ。」

「もうホントに心配したんだからね!」

 やはりこの顔の怪我では目立つみたいだったがそれ以上に同じ学校の生徒が自殺した事の方が話題は大きくて私の怪我などこの二人以外誰も気にしなかった。学校の方は自殺者が出てマスコミや警察の対応に忙しいようで登校中も何度かインタビューを受けてる生徒を見かけた。だけど自殺の真相について知ってる者はおそらく私と兄さんだけだろう。ニュースでも高校生の男子生徒が自殺したとしか書かれて無く、現在調査中と詳細は全くのってなかった。だが、この二人は私昨日の私の様子がおかしいのに気付いていたし、もしかしたら何か知られてないか確認するため私は知らないふりをして自殺の件を聞いてみた。もし何か知られていたら…。

「それにしても今日慌ただしいけど何かあったんですか?」

「え、未夕今日のニュース見てないの?」

「親子げんかをしててそんな暇ありませんでしたから。」

「えっとね…この学校の男子生徒が自殺したみたいなの…。」

「詳しい事は報道されてないし誰なのかもわからん。」

「まあ、それでこんなに騒がしいんですね。」

「…桜庭さんは何か知らないか?」

「何がですか?私が知ってるのは兄さんの性癖ぐらいですよ。」

「ああ…そうだったな…。それならいいが…。」

「よくないでしょ、実の兄の性癖をしりつつ抱くように命じてたんでしょ!」

「兄さんに抱いてもらうのはおかしい事じゃありません。何で妹という言葉が生まれ、妹ができたのかわかりますか?」

「ごめんわかんない…。」

「兄さんに抱いて貰うためですよ。」

「んなわけあるか!もう怪我人だから心配してたのに!」

「怪我は本当に大丈夫ですよ。あ、兄さんが一晩中抱いて汗だくになるまでシテくれたら治ります。だから早く兄さんを脅して私を抱かせるように仕向けて下さい。」

「だーかーらー!そんな事できないってば!」

 近藤さんの言葉が少し引っかかったが強引に話題を逸らしたおかげで言及するタイミングを潰すことが出来た。兄さんとドスケベイチャラブ〇ックスしたいのは本音だが。その後も井上田さんが騒いでくれたおかげで近藤さんの言及も無く、向こうも諦めていつもの調子で話してくれいつも通りの朝を迎える事ができた。そしてその日は何も無く昨日のことが無かったかのように平和に過ごせた。



 やっとこれから穏やかで兄さんとの愛を育む事が出来ると思っていた。それなのに一難去ってまた一難、まさか兄さんがあんな行動をしていたなんて…。この件が終わったらいつもの兄さん大好き性活に戻れると思っていたのにその想いは数日後儚く消えてしまう…。私と兄さんの肉欲まみれの兄妹性行為の邪魔はまだまだ続いていくようだった。

1章終わりです。チンパンジーは少し森隠れします。エロゲもしないといけないので1週間~2週間は更新できないかも知れないです。

9-nine-ここのつ・そらいろ・はるいろ 3作してきます。

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