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霊色の兄妹   作者: 樹木
色と霊と性欲と
6/9

兄の狂気1-⑥

 放課後私ははぁ…はぁ…と息を切らしながら更衣室に残っていたメモに書かれてある廃屋に向かって走っていた。手紙の内容は放課後一人で指定された廃屋に来るように指示があった。だから私は近藤さんと井上さんには何もないからついてこないようにお願いした。2人は私の言葉がウソだとすぐにわかるほど私は冷静じゃ無かった。こんなことを言ってる時点で何かあったと予想がついた井上さんが連いて行こうとしたが、近藤さんから「もしここで私たちまで行ってしまい桜庭さんのヘアピンを取り返せなくなるのは一番避けるべきだろう。」と説得し井上さんの事を止めてくれた。不満と怒りが満ち溢れている顔だったが近藤さんの言うこともごもっともなためなんとも歯がゆい状況になっていた。だがそれを引き起こしたのは他でもない私だ。だったらこれは私一人でケリをつけてくるべきだ。これ以上面倒ごとにならないようにホームルームが終わって直ぐに私は教室を走り去って行くと他の生徒には目もくれず一直線に指定された廃屋を目指した。

 

 ここの廃屋は昔火事がありちょうどその時アパート木造建築だったため火のまわりも早く亡くなった方も多かった。そんな人の目を気にしなくていい場所を指定してきたというと、何をされるかなんて想像はつくしおそらくそういうことだろう…。廃屋家の前に立ち入り禁止のテープが貼られていたが切られた跡があり、既に誰かが中に入っているのを確信し私もそのまま中へ入っていった。これが罠だとわかっていても兄さんからもらった大事なヘアピンを取り返すためならどうということはない。それにここだと…最悪の場合使える切り札もある。家の中を進んでいくと見る限りいろんなところが焼け焦げており、火事現場から片付けがされていないようだ。辺りが焦げているのに対し奥の1室だけドアの焦げ後が拭き取られ半開きの状態だった。そこの部屋だけ手入れされているのか、手招くように異質を放っている部屋におそらくこのいじめの真相を知っている、いやこの件の真犯人がいるだろう。あんなことをしてくる奴にお目にかかりたくはなかったが、大切なヘアピンを返してもらうためにも部屋の前まで移動し私は目の前の扉を開けざるを得なかった。扉を開けると玄関だったものがあり、その奥には廊下が続いてリビングへと向かっていた。当たり前だが部屋の中は手入れが全くされて無く玄関と言っていいかわからないほど黒ずみで、どこまでが玄関でどこからが廊下だったのかわからないほど境界線は黒く染められていた。その玄関だった所で靴も脱がず廊下を進み、案の定リビングへと続いてる廊下も壁や天井に焼け焦げた後があった。そしてようやくリビングへ来るとリビングの中央に置いてあるソファに座って私のヘアピンを眺めて、私が入ってきたのを確認したら汚い笑顔で迎えてれた。

「桜庭さん来てくれたんだねありがとう。」

「来ましたよ。兄さんからプレゼントしてもらったそのヘアピンを返していただくために。」 

「へ~やっぱり俺には興味ないって。あのお兄さんの方が一緒にいて楽しいってか…。ふざけるなよ!」

「初めから言ってたはずです。あなたに興味は無いと、速くヘアピンを返しなさい。」

 相手に全く興味を見せない私の対応に相手は怒りをあらわにし私のことを睨みつけてきた。

だがそんなのはどうでもいい、今は兄さんからプレゼントされたヘアピンを取り戻すのが最優先だ。ヘアピンを取り戻すためならコイツが死んでも構わないし殺す事も考えている。それほどどうでもいい相手で、最初にキッパリと拒絶したのにしつこく付きまとってきたコイツが悪い。声をかけるだけならまだ我慢できたが、こんな強硬手段に出てくるなんてよっぽど私を怒らせたいようだ。私は殺意と怒りを持ちながらソファに座ってふんぞり返っている奴に再度警告の意味を込めて先程と同じ事を告げた。

「さあ速くヘアピンを返して下さい。返してくれたら今回の件は見逃します。」

「はあ?何が見逃しますだよ。どこまで俺を侮辱したら気が済むんだよ!」

「もう侮辱なんてしてません。あるのはこんな事をしたあなたに対する軽蔑だけです。」

「はっ!侮辱を通り越して軽蔑かよ。」

「返して頂けたら侮辱に戻りますよ。『先輩』。」

「そんな偉そうに気取っているのも今のうちだぞ。」

「いいからさっさと返せ。何時までもそんな汚い手で兄さんからの物を触ってんじゃねえよ。」

「っ?!へぇ…そっちが素の性格なんだな。とんだ猫被りだったわけだ。」

「何回も言うのは嫌いなのでこれで最後です。ヘアピンを返して下さい。わざわざあの女達に盗らせたのでしょう?使い勝手のいい手駒ですね。」

「ああそうだよ。あいつらは俺がやれっていったら簡単にやってくれるいい足だったよ。」

「今は元気が無いようですけどね。」

 今目の前に対峙している男は私に告白して振られた先輩だ。コイツが今回の件の犯人に間違いない。動機なんておそらく自分が相手にすらされていないこと、デパートで見たあんな病弱な兄さんに自分が劣っていると思ったこと、そこら辺が妥当なところだろう。何にせよこんな馬鹿げたことをあの女達を使って回りくどくするなんて器も肝っ玉も小さい醜い男だ。このまま話し合いで解決出来ればいいが、自分のプライドを傷つけられ自尊心をメチャクチャにされている状態の先輩には無理だろう。何を言っても意味も無いだろうし、まともに会話も期待できない。そういう私も先程からコイツを殺したいと殺人衝動に駆られ押さえているからは少し紛らすため一応先輩の目的を聞いた。

「さて先輩、ヘアピンを返して貰えない理由を聞いてもいいですか?ヘアピンを盗んだのはあくまでここに誘導するための餌でもう役割は果たしたはずですよ。」

「さっきから上から目線でうるせえなぁ!そんなのお前にも俺と同じ思いをかかせるために決まってんだろう!」

「すいません、私バカの思いは全くわからないので。」

「ってめぇいい加減にしろよ!お前のせいでなあ!俺は恥をかかされたんだよ!俺はその事が許せなかったんだよ!しかもお兄さんが好きだから付き合いません?そんなふざけた理由でフラれて俺が何て言われてたかわかるか!【ロリコン攻略失敗】や【シスコンに負けたイケメン】なんて屈辱な汚名をわたされた!お前にも屈辱を与えないと気が済まないんだよ!」

「はっ、器が小さいどころか脳味噌まで小さいのね。やられたからやり返す、屈辱を受けたから与える。幼稚園児と同じ頭ね。」

「もういい、覚悟しろよ。」

 幼稚園児先輩はソファから立ち上がり、物理的に見下し睨みつけながら私の方へと近寄ってきた。最後の私の言葉でキレたのか先輩は距離を詰めるように大きく一歩ずつ近付いてきたが私は逃げる事はしなかった。ここで逃げてしまえば先輩の手に持っているヘアピンも取り返すことが出来なくなる。それに下手したら壊される可能性もあるため私には最初から逃げる選択肢は無く交渉しか無かった。そうだとわかっていたのに頭に血が上り過ぎたせいで相手の残っていた自尊心を見事壊してしまい、先輩はもう実力行使しか頭になくもう交渉は無理だろう。これは、やらかしてしまった。現在非常にマズい状態になってしまった。実力行使されたらまず勝ち目が無いのは目に見えてわかる。きっと上手く躱さないと酷い目に合うだろうし、誰にもこの場所を言っていなかったから助けもこないだろう。だとしたら一人でこの幼稚園児の相手をしないといけない。そう考えてる間にも先輩は歩を止めず確実に一歩ずつ距離を詰めてきている。距離を保とうと一瞬後ろを確認してしまい先輩から目を離した隙に、先輩は足を踏ん張って一気に加速して私を捕らえるように飛びかかってきた。一瞬目を離したせいで反応が僅かに遅れてしまい横に回避しようとしたが間に合わず、私は逃げ切れないまま先輩から両肩を押さえつけられそのまま床に押し倒されてしまいあっさりと捕まってしまった。

「そんな貧相な身体じゃあ逃げられないよな!」

「っいつぅ…!兄さん好みの身体なんで文句はないですよ…。」

「また兄さん兄さんって本当気持ち悪いなお前ら兄妹。」

「女の子を押し倒すしか出来ないお猿さんよりはマシですけど。」

「っこの!減らず口が!」

「うっ…!」

 マウントをとっているのに怯えず澄まし顔で余裕そうに見えるのが気に入らないとばかりに右の拳で私の左頬を叩きつけた。人に殴られるなんて経験が薄いせいで左頬に広がる熱く痺れる痛覚の耐性が無く目頭に薄らと涙溜まった。反射的に痛みで声が挙がろうとしたが先輩の拳は左頬の1発だけでは終わらず今度は反対の右頬にまで拳を叩きつけてきた。

「ぅ…いっつ…!」

「お前が!お前のせいでなぁ!こっちは最低な思いをしたんだよ!」

「ゲホッゲホッ…!そんなの…あなたが…未熟者だから…でしょう…。ふふ…哀れね。」

「まだそんな事いうのかよ!謝っても泣き叫んでも止めねえからな!」

「いっ…!」

 二発も殴られ咳き込みながらも、相手にペースまで持っていかれないよう精一杯の虚勢で哀れんでやった。先輩はそれがまた気に入らないようで本格的に相手の怒りを買ってしまったようだ。でも、そうでもしないとあまりの痛みに泣きそうになる。相手は男でしかも確か運動部だったはず、そうでなかったらこんな力強く無いし腕にもこんな筋肉付かない。男女の純粋な力の差はこんなにハッキリしてしまうのか私は足で何とか退かそうとするも全く意味が無く動く気配すら無い。私のそんな些細な抵抗などお構いなしというより気にする素振りも無く再び左頬を殴っては右頬も同じように殴るを繰り返した。殴られる度に痛みがくるがそんなに痛みを感じることが出来ないまま、また新しい痛みがやってくる。押さえられていた肩も今はもう手をどけられ腕の自由が利くようになってるが次々にくる痛みに耐えるのが精一杯で動かそうと思えなかった。抵抗もないままサンドバッグのように殴られていたが殴ってる方も体力は消耗するみたいで息を切らしながら私を見下し笑っていた。

「おい何で悲鳴も何もあげないんだよ。少しは騒いで怯えてその澄まし顔を歪ませろよ!このっ!」

「…っつ!ゴホッ!ゴホッ…!殴られるのは馴れてるの…。だから今更悲鳴をあげるのも面倒なのよ…。」

「ああそうかい、じゃあ今度は鳩尾を狙わせて貰うから意識失うなよ!」

 おかしいな…人から殴られるのなんて馴れてないはずなのに…どうして平気なのかな…?今更考えても仕方ないか、どうせ次に鳩尾を殴られたら意識も持たないだろうしもういいかな…。先輩は宣言通り鳩尾を狙い右手を振り上げ手加減なんて無しの全力で叩いてくる準備をしてる。一瞬の出来事のはずなのに私には随分長く感じた。よくある危機が迫ると周りがゆっくりに見えるやつだろう。殴られ続け疲れた私は抵抗も無く、当たったら今以上に痛いんだろうなと他人事のように考えてただ振り落とされる拳を待っていた。先輩も凛々しく笑って甚振るのが好きでしょうが無いって顔もしてるしこれは無理だ。もう…間に合わない。


『ピンポーン』


 急に電子音が鳴り響くと私と先輩の間の空気が固まり先輩は振り上げていた手をそのままに音の発信源を探すように周りを落ち着き無く見渡した。だがここは廃屋で電気ももう通っていないはず、それに火事が起こったここで電子機器が無事だとは思えないし空耳だったのかもしれない。先輩も見渡し終えると何も無い事を確認し気味悪さが残っているが、さっきの続きと言わんばかりにまた拳を振り上げ直した。


『ピーン…ポーン…。ピンポンピンポンピンポンピンポンピ-ン…ポーン…。ピンポーン。』


 だが、またそのタイミングで再びさっきと同じ音が鳴った。しかも今回は連打で急かすような押し方だ。もうこれはどう考えても空耳なんかでは無い、明らかに誰かが押している。私はまだ幽霊を呼んでないし、そもそもインターホンのような電子音が電気が通っていないはずの廃屋で鳴るはずが無い。何が起きてる?先輩の様子を伺うがあいつにも何が起きてるか理解できてないようだ。だとするとこれは先輩にとってもイレギュラーな出来事になる。心霊関係なら問題ないがこれは心霊関係のものではない、幽霊も感じないし霊感が強い私なら心霊関係ならすぐにわかる。だからこれは明らかに生きた人間がイタズラでやる類いのものだ。正体がわからない不安で顔色が悪くなってきている先輩を横に、絶賛サンドバッグ中の私にはどうすることも出来ないので向こうが何かを仕掛けてくるのを待つしか無かった。そう決めたときにドアが開く音と共に誰かがこの部屋に入ってきた。

「お邪魔しまーす。インターホン鳴らしたけど返答が無かったので勝手に入ってきました。」

「あ、あんたなんでここを?!どうしてここがわかった?!」

「ああ、僕はいつも未夕の居場所をスマホのGPSで確認してるからわかったんだよ。えっと確か修二君だったよね。何やら未夕を殴ってるように見えるけど、何をしてたの?」

「お兄ちゃん!?お兄ちゃん!お兄ちゃん!タイミング遅いですよ!何してたんですか!私今サンドバッグにされてるんですよ!」

「怒んないでよ。準備にちょっと時間がかかってこれでも急いで来たんだよ。」

「今晩抱いてくれたら許します!」

「元気そうなら良かった。」

「勝手に話を進めるな!何しに来たんだよおまえは!」

「妹を迎えに来た。ついでに君を殺しにも。」

「は?」

 先輩は何を言っているのか訳がわからないようでアホ面が酷くなっていた。私もお兄ちゃんが来るとは思っていなかった。今回の件はもう終わったと思ってお兄ちゃんにはあれ以降何も言ってなかったし、今日だってここに来ることを誰にも言ってなかった。なのにお兄ちゃんは来てくれた。やっぱりお兄ちゃんはいつも未夕の事を守ってくれる。あの時だって未夕をあいつから守ってくれたのはお兄ちゃんだ。…ん?あいつ?あいつって誰だっけ?まあ今はそんなのどうでも良いか、お兄ちゃんがいてくれるだけで私は嬉しいんだから。



 案の定こうなってしまったか…。こうならないように未夕にはちゃんと警告したつもりだったんだけど、これはちゃんと伝えきれなかった僕も悪い。まあ未夕は僕みたいに『色の目』があるわけでも無いし、人を完全に疑うなんて出来ないから仕方ないか。どんな人でも受け入れてしまうのが未夕のいいところだから怒れないのがちょっと難しい。でも最悪な状態は免れたからいいとして、とりあえず未夕に触っているモノを退かそう。

「なんだよ!こっちにくんな!」

「大丈夫、未夕と帰るだけだから。そっちが何もしなければ平穏に終わるから少し静かにしててね。」

「ふざけんなっ!まだコイツを殴り足りてないんだぞ!邪魔すんならお前も一緒に殴ってやるよ!」

「未夕、少し待っててね今から向かうから。」

「待ってます!そのまま動けない私をレイプしてもいいですよ!いやしましょう!ヤりましょう!」

「帰ろっかな…。」

「待って下さい!冗談です!冗談ですから帰らないで下さい!本当はスッゴく痛くて泣きそうなんです!」

「なんなんだこいつら…本当キメェな…。」

 いつも通りの会話が出来るなら大丈夫かと思ったがあれは未夕の空元気でやってることだ。男の人に殴られて怖くないわけがない。修二君とやらも大人しく引いてくれる様子もないし、ここに来た目的通り彼を殺そう。警告して聞かなかったのは向こうだし未夕も殴ったから殺すにしては十分な理由がある。最初に修二君を殺してから未夕とゆっくり帰ろう。今日はマンションに寄らずに家まで送っていった方がいいかもしれない。

「おいさっきから黙って人の顔見て気持ち悪いな、こないならこっちからいくぞ。」

「ケンカは良くない。話し合おう。」

「殺すとか言ってたのはオメエだろ!ふざけんな!」

「……ヤッベ言ったなぁ。」

「馬鹿にしてんのか!」

「お兄ちゃん前!アホ面幼稚園児先輩殴りかかってるよ!」

「お前も後でぶん殴ってやるからな!」

「それは困るな。女の子を殴っていいのは正当防衛の時だけだよ。」

「うるせぇ!」

 最近の若者はキレやすいみたいで話を聞かず僕に向かって殴りかかってきた。病弱栄養不足の体がそれを避けれる訳もなく鳩尾に一発を喰らった。鳩尾を殴られたせいで胃が押し上げられ胃の物が逆流して吐きそうでしょうが無いが、ここで吐いたら折角近くにきてくれたのが無駄になってしまう。僕は何とか吐き出すのを留め近くに来てくれた修二君の左胸に右手を添えた。それで終わり、僕がしないといけないのはもう終わった。

「なんだ人の胸に触りやがって汚ねぇ。」

「お兄ちゃん!大丈夫!?」

「ムリ……吐きそう……。ゲロ吐いてもいい?」

「知るか。」

「お兄ちゃんが私の前で吐いていいのは精子だけです!ゲロはなんとか堪えて下さい!」

「うちの妹は悪魔だ……オロロロロロロ。」

「吐きやがった!?マジかよ汚えな。」

「うわホントに吐いた。ここ廃屋だけど人様のお家だよ。そこにゲロ吐くとか…ないわ…。」

「ねえ…何でそんなにゲロに当たり強いの?泣くよ?本気で泣くよ?」

 ゲロに何でこんなにも酷い仕打ちが出来る?ムリな時はムリなんだからしょうが無いのに、生理現象の一つなのに…。まあゲロについては一旦置いといて僕がしないといけないのは終わったし後は彼がどうなるか見学するだけの簡単なお仕事だ。そろそろ効果が出てくる時間だ。さて、どんな風になっていくか見せて頂こう。

「ゲロ野郎なんかどうでもいい。次はお前だか……ら…な……。」

「お、始まった。ああ未夕見たくないとき目瞑っておきなよ。」

「え?それってどういう…」

「ああああああああぁぁぁぁぁああああ!!」

「いい声だ。しっかり出来て良かったよ。」

「っうるさ!何?!何したんですか兄さん!?」

「あああああ!!なんだ!?あうぅ…ぅわああああああ!!」

「ん?彼の心臓部にある色、未夕でいう青空色の所に僕から出てる『黒色』と借りてきた『グレー』を塗っただけ。」

「心臓部にある色に…それってつまり…。」

「うん。今彼は死のうとする意識と今までの自分の意識がぶつかって悶えてる。無理矢理自殺願望を植え付けられたって言った方が早いね。」

「っそんな事…出来たんですね…。」

「実験段階だったから言えなかっただけだよ。まあ今その結果が目の前にあるし最後まで見届けよう。」

「……はい。」

 未夕は浮かない顔をしているのが申し訳ないと感じるがてしまうが、それよりも今はあのモルモットの観察に集中していこう。ただそうするためにも、いつアクシデントも発生するかわからないので安全を期し未夕に肩を貸して廊下の方の移動さてた。リビングで我を失いかけて虚空を殴り頭を抱える半狂乱に騒ぎ立たている修二君が、暴れ付かれたのがついに糸が切れたように立っていられず床にひれふしてしまったまま動かなくなった。倒れこんだ男に近寄り様子を見に行くと、男の顔は引きずり何か見えないものと言い争いをずっとして疲れているように見えた。一応心臓の部分の色を見るために倒れている彼に近づくと彼の目から何も感じない。確認すると心臓の部分の色は「黒」と「グレー」に染まっていた。これならばさっきのような好戦的な先輩はいなくなり、鬱や自傷行為、自殺未遂他にもそれと酷似した行動を取るようになるだろう。もう完全に心の色は染め上げられたのだから。そんな事を間近で見ていた未夕は何か覚えながら僕の腕にしがみつと不安そうに怯えていた。

「ねえ兄さんこの人の色って戻るんだよね?だから兄さんはこんな手段をとってくれたんだよね!?」

「どうだろう、ここまでしたのは初めてだし戻らないかも知れない。それに僕は未夕を助けるのと実験出来る人も探してたらちょうど良くあの時デパートアレに出合うことができた。」

「まさか先輩一生このままかも知れないんですか!?何か戻すことは出来ないんですか!」

「未夕、少し勘違いしているところが有るみたいだから言っておくよ。僕はあの先輩がどうなっても興味がない。あるのはこの『色の目』でどこまで相手を変えられるか、効力が及ぶか、色の意味もよりわかる可能性があったから彼に能力を使った。あいつの生き死になんて興味がない。それに未夕をこんなに殴って殺してないだけ御の字だと思うよ。」

「じゃあ兄さんは自分の能力の研究のためにあの先輩を利用したんですか!死ぬかもしれない危険な実験に!」

「そうだよ。僕はまだこれの力を全て把握できていない。だから使えるモノを使って能力を勉強していくつもりだよ。そうそたら未夕守れるようになるから。」

「っでも…だからって…!確かに最低なひとでしたけどあくまでただの人でした!私達みたいに変な能力も無く、人間味が溢れていて…そんな人でしたのに…。」

「人間味があるから能力を使った時の差が大きくわかりやすからいい実験対象だよね。人が僕らを研究したみたいに僕らも人を研究する。そうしないといざ使えず宝の持ち腐れだ。」  

「兄さんは人が死ぬのが平気なの?」

「実験中に死んでも何も感じないよ。まあ何で死に至ったのかは考えるけどね。それにしかも未夕をいじめた奴を殺すのに罪悪感はないから。」

「…兄さ…ん。」

 僕にとって未夕が最優先事項だ。未夕の危険を脅かしたコイツをこのままにしておくつもりは無い、まだ色は残っているし彼の心臓部に最後の一塗りすれば自殺希望者の精神崩壊者の出来上がりでこっちの足が着くことはないだろう。でも、未夕は僕の研究にあまり前向きな態度をとってくれない。やっぱり未夕はどんなに汚い生き物でも自分を痛みつけた人でも殺すのではなく幽霊を使って諭し共存しようとしている。相手を更生させるんためその人の人生に重点を置き、僕は能力の実験のために利用しそれで死んでも構わないし人が死んで痛むモノなど昔に捨てたおかげで僕のブレーキはもう無い。未夕と互いの意見の相違があるが、今は目の前にあるこいつの心臓部に僕は右手に出して『黒色』と『グレー』を塗り重ねた。これで見える範囲では黒とグレーが侵略し更なる悲鳴が聞こえた。

「ああああああ!いやだ死のたきない!…で

も生きてても仕方ないし死んだ方が楽だよ。違う違う!これは俺じゃない!死ぬのはいいけど苦しいの嫌だよね。止めろ!出てくるな!何なんだよこの頭の声は!…もうさ…死んで楽になろ

う。そうしたらこの苦しみ痛みから解放されて君はこれ以上苦しまないで済むんだよ。…これ以上苦しまない…。」

「あと一歩かな。いや放って置いても良さそうだ。下手に刺激しないで自分の人格同士話し合って決めてくれ。」

「……兄…さん。」

「そうだよな、こんなぁ!こんな痛みから解放されるんだからいいよな!?あははは!さようなら。」

「きゃっ…!?」

 次の瞬間彼はリビングの横に落ちていた鉄パイプで自分の腹に深々と突き刺し何かから解放されていくようのスッキリとした顔のなっていた。鉄パイプの空洞から血液が流れるようの出てきてるのを見るともう助けるのは遅いとわかる。未夕はそんな光景を見たくないようで顔を背き僕の胸元に顔を渦組めて震えていた。人が自殺するところなんか見たくないだろうし聞きたくないと思っtので僕は未夕の耳にそっと手を添え音も遮断した。これなら未夕に聞かれないため色々と質問できる。

「今はどんな感じ?」

「うう゛…ごふっ!嫌だ死にたく無い!助けて!…少しずつ血が出て気持ちがいいですね。」

「そうか一応主人各の法は?」

「死ぬのをこわがって、嫌がっ手ますね。あういまs…、いたいたいたい!本当に死ぬ!た、助けて!助けて下さい!」

「結構血は出てな後はそろそろ意識がなくなって終わりだね。さようなら。いいデータを貰えたよ。ありがとう。」

「お…まえ…ふざけ…えうな……よ…。」

「観察終了。あとはこの事をあの人達にも伝えてッと。」

 最後の言葉を聞いたがつまらないしすぐに忘れるだろう。そんなことはどうでもいいが

未夕にこれ以上怖い想いよさそうと抱き締めもう安心なのは伝えたものの、目の前で人が死んだのが心に響く傷みはそう消えないだろう。苦しいかも知れないが未夕にはその痛みと苦しみを忘れないで欲しい。勝手な意見だが未夕だけは僕のように人を殺したり利用して捨てたりと、そんな人で無くなってしまわないで欲しかった。


 それから僕たちは先輩を廃屋に放っておきどうせあそこなら見つける事も見に行くことも少ないバレる時間を稼げる。それに自分で鉄パイプを腹に刺しているので自殺として処理されるだろう。すっかり遅くなってしまった帰り道を無言で歩き今日は僕のアパートではなく未夕を家の方へ送っていた。あんな事があった後に一人で返す訳にもいかず家の前まで着いてきた。

「にいさん…今日はありがとう…。ヘアピンも戻ったし良かったよ。」

「ムリはしないでね。もし怪我が痛んだら学校休んでも病院へ行くんだよ。」

「うん…あのねにいさん…今度兄さんが考えていること教えて…、兄さんの能力に賛同してる人もいるでしょう…。だからこんどね…。」

「…わかった。なるべく早いうちに紹介できるようにする。今は休むことを前提にするんだよ。一段落付いたら説明するよ。」

「お兄ちゃん約束ね。」

「うん、約束。今日はこれで帰るよ。見つかった大変だからね。」

「あ…じゃあお兄ちゃん最後に一ついい?」

「何だい未夕?!」

「んっ…プハァこの前のお返し!じゃあね兄さん!」

「あ、うん。」

 完璧に不意打ちだった。まさか未夕からキスされるなんて嬉しい。変な声が出そうだったがなんとか堪えて早足にマンションへ戻って行った。マンションへ戻ると大きな溜息がでて、そのまま眠ってしまおうと思ったが、今回の件の報告が残っていた。僕は簡単に今回の出来事を纏めグループに貼って返信や意見等は明日受け付けるとだけ残し携帯を投げ去り面倒事は明日へ回した。この連中のことも未夕には教えないといけない。そう思うとまた新しい頭痛の種が出てきて倒れ込むようにリビングまで戻り敷きっぱなしにしていた布団にそのまま吸い込まれ、今日は薬を飲まず眠りについた。




 ちょっと予想外な、まさか殺しまでいくとは思っていなかった。妹はまだ人間性が残っているようだが一番狂ってるのは兄の方だったか。普段の発言から妹の方がアレかと思ったが要注意すべきは兄の『桜庭 透』なんとか仲間にして私の願いを叶えて貰う。もし願いが叶えられず出来なければ…。

次で第1章は終わります。次は後日談なので短めです。

謎や不磨な点がわかりづらい事がある場合

教えて下さい。

謎などは次章から少しずつ解消していきます。

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