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霊色の兄妹   作者: 樹木
色と霊と性欲と
2/9

兄妹仲良くデパートデート1-②

「ふあぁ…ぁぁ…朝か…。昨日薬飲むの遅かったからまだボーッとするな…。だけどそんな頭でも未夕が僕の布団に入り込んで入るのは認識できるぞ…。何でいるのかな…?」

「ああん…ダメ…にいさん…こんな所でオーバーヘッドセックスだなんて…!んんっ!」

 隣で寝ている未夕の夢で僕が一体どんな事をシているか知らないが僕は起きて朝食の準備をするため布団を剥ぐと、水色の下着のまま寝ていた未夕が現れた。僕は昨日ちゃんとテーブルを壁際に移し布団を二組敷いて物干しで仕切りを作りしっかりパーソナルスペースを用意したはずだ。しかも未夕が寝ているのを確認してから眠剤を飲み万全を期したと思ったが、おそらく夜中寝惚けて潜り込んだか寝たふりをして僕が服用するのを待っていたのかもしれない。何はどうあれ未夕に一本やられてしまった。

 妹に一本取られたのがちょっと悔しく隣で無防備の未夕に近づき、仰向けで寝ているおかげでお胸様が天を仰いで窓から注がれる朝日に照らし出されていた。そして僕はお胸様を拝み未夕の左胸を手のひら全体で味わうように触った。

「ん…んん…。」

 未夕から甘い声が漏れるのをBGMに手のひら全体にスポンジケーキのような柔らかい感触が広がり、軽く握るように揉むとちょうど手のひらに収まる大きさでずっと握り心地が良く永遠に堪能していたい。胸を触って興奮しているせいか未夕から発する甘い匂いが濃くなった気がした。それにしても胸がBカップに成長し膨らみ加減が僕好みでどんどん妹が理想の女性に育ってきている。これは良いことなのだが未夕も僕もまだ未成年のせいで将来を見据えての行為が出来ない生殺し状態が悪化している。

「はぁ…早く二人とも成人したいな…。」

 目の前の理想の女性に手を出せないのをぼやくように呟いてから名残惜しかったが僕は未夕の胸から手を離し朝食の準備を始めた。準備といっても未夕が作り置きしてくれる料理を温めるだけだけど…。冷蔵庫から野菜炒めを取り出しそのままレンジに入れスイッチを押し、暖め終わるまでお湯をたいていインスタント味噌汁の準備をした。お米は昨日未夕がタイマーをセットしてくれたため後は炊き上がるのを待つだけだった。レンジが暖める終わったのを知らせると僕は野菜炒めを取り出し先にテーブルの上へ置きにリビングへ行くと、レンジの音で起きたのか未夕がモゾモゾと布団の中で蠢いていた。数秒間布団の中を動くとゆっくりと上半身を起こし目が半開きのまま眼をこすり透のそばにやってきた。

「おはよう未夕、あの仕切りの意味がわかんなかった?」

「おはよ-お兄ちゃん…あれ位で防ごうなんてあまいよ。」

「やっぱりか…まあムリかと思ってたけどな…。ああそうだ昨日言ってたBカップ堪能させて貰ったからね。」

「どうでした私のお胸は、兄さんの男性部は反応できました?欲情しました!?既成事実作りますか!?」

 起きてきた未夕に朝のあいさつと布団に潜り込んできた事を追求すると案の定あんな仕切りじゃ意味がなかったみたいだ。それとついでにさっき味わった胸の感想を伝えると半覚醒だった未夕は一気に目が覚めたようで朝にも関わらず危ない単語を話しだした。

「朝から変なことを言うな。それよりご飯の準備手伝って欲しいな。」

「わかりましたよ。兄さんの頼みを断ったりしません。」

「うん、やっぱりご飯は未夕と一緒に食べると美味しいからね。」

「結婚したらずっと食べれますよ?」

「………まだダメだ。」

「むぅ…兄さんのいけず。」

 未夕と結婚した時の事を想像してしまい答えるのに時間がかかってしまったけど未夕とならいずれしてもいいな。未夕は布団を2組畳んで押し入れへ仕舞うと、野菜炒めが乗っているテーブルを器用に茣蓙の真ん中へと運んでくれて僕の言ったとおり朝食の準備を手伝ってくれた。未夕がリビングを整えてくれている間に僕の方もインスタントの味噌汁を二人分作り終えテーブルへ運びテーブルの正面と右側へ置いた。ご飯の方も炊き上がり未夕が茶碗を準備し盛り付けてくれた。簡素かもしれないがこれで朝食の準備が終わりテーブルの正面に僕が座り右側に未夕が座った。

「それじゃあ食べようか、いただきます。」

「いただきます。」

 朝の7時速くもなく遅くもない時間帯での朝食が始まった。僕はインスタント味噌汁を飲みながら未夕の作ってくれた野菜炒めを食べると味の感想を聞きたいのか未夕が自分の箸を止めて期待の眼差しで僕を見ていた。ここで何も言わないのは可哀想なので僕は素直に野菜炒めの感想を言うことにした。

「うん、この野菜炒め美味しいよ。味も濃くないし脂っこくない僕好みの味付けだね。」

「兄さんの胃が貧弱で脂っこいの食べられなくて小さいのは知ってるもの。」

「流石未夕だね僕のこと何でも知ってる。」

「当たり前ですよ兄さんの事なら隅から隅まで知ってますから。」

 僕の感想に未夕は得意げに答え可愛い笑顔を見せてくれた。それに自慢げに僕の事を知っていると言ったがあながちウソではないだろう。仮に未夕が僕の知らない所があるとすれば大学生活と『色の目』の『塗り替え』ぐらいだと思う。もしそれまで知っていたら僕のプライバシーはもう無くなってしまう。未夕が嬉しそうにしている中でどうしても気になってしまっている事があって我慢できず未夕に聞いてみた。

「ただ一つ言わせて貰えるんだったら何でこの野菜炒めキャベツとピーマンだけなの?イヤじゃないんだけど見た目が緑色だし健康的に思えて良いと思うよ?でもなぜ2種類の野菜だけ?」

「安かったからです。スーパーで安売りされてたので買いました。」

「それだけ?」

「それだけですよ?」

「そ、そうか…。」

 そう、この野菜炒めに入っている野菜はキャベツとピーマンだけなのだ。野菜だから野菜炒めと言えなくは無いが正直せめてタマネギか人参は欲しかった。緑色だけで健康的に感じるけどご飯としてはもう少し色が欲しかったのが本音だ。だけど未夕が僕のために折角作ってくれたのだから贅沢は言っていられない。さっきも言ったが味付けも旨いため文句がつけれないし作って貰ってる側からしたらありがたい限りだ。

「そういえば今日は兄さん何か予定はあるの?」

「ん?特にないよ。ずっと部屋に引きこもっているつもりだったから。」

「それだったら後で一緒にデパートに行かない?新しくでたアクセサリーが見たいの!」

「いいけど僕とでいいの?そういうのって女の子同士で見たり買ったりするものじゃ無いの?」

「私は兄さんと一緒がいいの、そりゃ確かに女の子同士で行くこともあるけど私は兄さんと行きたいの。…ダメ?」

「いいよ。だけど僕はこの目のせいであんまり人混みが多い場所に長いできないよ。」

 この『色の目』にオンオフなどの便利な機能がついてるはずがなく、正面の人とすれ違うだけでもその人の色を見てしまう。何色でどんな精神状態でここのきているか、後ろ姿なら心臓部の色は見えないが周りから出る色は見えるため人混みが多いと下手をすると何十色の色を一度に見せつけられてしまう。目がチカチカするとか色が混ざって気持ち悪いとかでは無く、人の心に埋もれてしまう引きずり込まれる感覚が嫌いなのだ。誰でも数十種類の色をいきなり見せられたら気分が悪くなるかいい気はしないだろう。それと一緒で僕は人混みというのが一番嫌いなんだ。

「だから兄さんは私だけ見てて。そうすれば他の人を見なくてすむわ。」

「未夕だけを見る…出来るかな…あんなに人が集まる場所で未夕だけを見るなんて。」

「できるよ、ずっと手を繋いで離れないようにするし私にメロメロにさせるから!」

「…未夕そこまでしてくれてありがとうね。そこまで言われたら僕もがんばんないとな。」

「ああ、片付けは私やっておくから兄さんは休んでいて。」

「助かるよ未夕、あとでお礼をしないとね。」

「お礼なら兄さんの精子がいいわ。」

「残念だけど品切れ中だから他の物を考えていて。」

「兄さんのケチ、早漏、少数精子。」

「僕のは少数精鋭なんだよ。」

 そう言うと食べ終わった食器を流し台の方へ持って行き僕は言葉に甘えてお腹を少し休めていた。僕の胃腸は食べ物を多くは食べられないから食べ終わった後は少々休まなければいけない。無理に動こうとすれば吐き気が襲ってきて下手したら出てしまうため大抵食べ終わった後は今のように座ってお腹を休めている。未夕が気を遣ってくれて洗い物をしてくれてるおかげで動かなくて済んでいる。しばらくしてからお腹も落ち着き動けるようになったので顔と歯磨きをしに洗面所へ向かった。

「ふぅ…、うわぁまた痩せたかな?最近飲料ゼリーしか食べて無かったし仕方ないか…。」

 水で顔を洗い今日は未夕と一緒に出かけるため普段はしない自分の顔の確認をしていると、鏡に映っていたのは目の下に隈があり頬も削れ生気が感じないいかにも不健康そのものな死人のような顔だった。確かにこの顔なら未夕が心配するのも大学の人に気味悪がられるのも納得出来る。今更何とか出来るものでも無いから諦めてるが気持ち悪いものは気持ち悪い。

「はぁ…、せめて生気がある顔が良かった。これじゃあ写ってる色が黒色なのも納得だよ。」

 僕の『色の目』は鏡越しでも色を認識する事ができるため鏡に映っている僕の色もわかってしまう。顔だけしか写ってないからその周りだけ見えるが、黒色のモヤが顔の輪郭を被さっている。黒色の意味は主に「憂鬱」「自殺願望」「生への諦め」など暗いイメージでいい意味は無い。僕は生きるというのに諦めている、死ねるなら死んでもいいし殺してくれるならそれに越したことは無い。生きる意味を見いだせないし未夕の事は大好きだがどうしても自分のために生きていこうと思えない。そのせいで僕の周りは黒色しかも触ったらベトつきそうなヘドロみたいな黒色が出ている。

「いつもの事だしいいか、それよりも未夕と一緒にいよう。」

 自分の色など見慣れて仕舞っているから変えようとも思わないしそんなことよりも未夕がいるんだから一緒にいないと時間の無駄だ。立て掛けてあるタオルで顔を拭いて未夕がいるリビングへ戻ると未夕はテーブルの上に小さい折りたたみ式の鏡を立て化粧ポーチを出しておめかしをしている最中だった。

「化粧なんて必要なの?少し買い物に行くだけだよ。」

「女の子は出かけるときに身嗜みには気を付けるんです。それが好きな人ならなおさら。」

「スッピンでも可愛いと思うけどね。」

「私もあんまり濃いメイクは好きじゃないからナチュラルメイクで抑えているの。兄さんも化粧濃い人嫌いでしょう?」

「あんまり好みじゃないかな。なんか顔の色が不自然に感じるし、只でさえこの目のせいで要らない色が見えてるからせめて人の顔だけは本当の色を見たいね。」

「だから私は化粧してるってわからない程度に抑えているの!兄さんの好みは把握済みだからね!」

「うん、僕も未夕は童顔で幼さが残っているんだからそのままの方が自然で好きだよ。」

「子供っぽいって言われてるようで素直に喜べない…、けど兄さんがかわいいって言ってくれるのはうれしいわ。」

 化粧の事なんて男僕がわかる事は無いため未夕のおめかしが終わるまで化粧がどういうのものなのか観察する事にした。見慣れない道具が出てきては眉毛や睫毛を弄りそれが終わるとポーチに仕舞い、それからまた何か透明の液体が入ったボトルを出しては手に数滴付けて掌で伸ばしてから顔に付けたりと忙しそうに見えた。男の場合大なり小なり差はあると思うがやることといったら髭剃りや寝癖の処理で終わるものを女性はその倍以上の手間暇をかけて準備しているようだ。こんな面倒なこと僕にはできないため正直男で良かったと思う瞬間だった。その後も見慣れないボトルや道具が出てきては消えを繰り返し最後に未夕は唇に薄い桜色のリップを塗って化粧は終了した。

「女の子って大変なんだね。」

「そうよ出かけるにもデートとなると余計手間暇をかけるんだから。」

「兄妹で出かけるだけでデートって言えるのかな?」

「男女二人で出かけるのは兄妹問わずデートです。」

「へー、それはそうとそのリップ?キレイな色だね。」

「そう?実は私のお気に入りなの。この色を見てると安心するっていうのかな?なんだか気が落ち着くの。」

 最後に未夕が塗っていた薄い桜色のリップが僕は不思議とキレイに見えた。きっと色に関して敏感に反応してしまうせいかもしれない、それに未夕の言っている安心するっていうのもわかる気がする。僕はいつも部屋では暗い黒色しか見えてないし、外にいる人でもそのリップみたいなキレイ色をしている人は見た事が無い。だから僕はその色をもっと近くで見てみたいと体が勝手に薄い桜色に呼ばれるように動いていた。

「に、兄さん流石にそんなに見られると恥ずかしい…。」

「ごめん、でももう少しだけ見せてくれないかな?」

「う、うん…。恥ずかしいけど…その、がんばる…。」

 いつの間にか未夕の唇に塗られた薄い桜色を見つめ過ぎてお互いの鼻先がぶつかりそうな程近付いていた。未夕は恥ずかしがっているけど僕は特に羞恥心は無くただ唇の色を見つめ、そしてそのまま未夕にキスをした。

「んんっ!?」

「んっ…あ、ごめん。あまりに近かったからつい。それに色もキレイだったし体が勝手にしちゃった。」

「ななああ?!ににに兄さんと…き、キスを…お兄ちゃんにキスされた…?!お、おにお兄ちゃんに?!ぴゃああああああ!!」

「おーい走ると危ないよ…って聞こえてないか。」

 ついキスをしてしまった僕は猛ダッシュで洗面所に駆け込んだ未夕を見てることしか出来なかった。しかしあんなに取り乱した未夕を見たのは久しぶりな気がする。確か最後に見たのは僕が一人暮らしをすると始めて告げたときだったと思う。その時は一時期引き込もったり泣きついたり殺されかけたりと大変だったけど今ではいい思い出になっている。なんて昔のことに浸っている場合では無く顔を真っ赤にして今頃悶えている未夕を落ち着かせないといけない。下手すると今日のお出かけ、デートにはいけないかもしれないと考えつつ未夕が引きこもっている洗面所に向かった。

「未夕大丈夫?落ち着いたら一緒に出掛けようね。」

「何でお兄ちゃんは平気なの!?キスしたんだよ!もっとこうあるでしょう!」

「そんなこと言われても…、もしかしてキスされるのイヤだった?」

「うれしかったです!もっとしたいぐらいですよ!できたら大人のキスでそのままベッドインまでしたいですよ!でも!でも不意打ちはズルいよ!お兄ちゃんのバカ!エッチ!大好き!」

「ベッドインまでは難しいけどキスぐらいならいつでもいいよ。取りあえず落ち着いたら出ておいでね。ああ、あと僕も未夕は大好きだよ。」

「ありがとうございますぅ!はぁ…もうお兄ちゃんの貞操概念がわからない…。」

 最後小さく嘆いていたがしばらくそっとしておこう。あれはただ照れて顔が赤くなっているのを押し殺そうとしてるだけだろうし時間が解決してくれるだろう。僕は未夕が出てくるまでリビングで出かけるための体力を蓄えるため目をつむり横になって待った。

 結局未夕が出てきたのはかれこれ1時間ほどしてからだった。まだ少し赤い顔が残っているがなんとか立ち上がり僕を見ても平常心でいなれるように慣れるまでかなり時間を食ったがまださっきのことを引きずっているようだ。いつまでも引きずっててもしょうがないと思った僕はなるべく気にしないふりをして一緒にデパートへ出かけた。



 デパートはアパートから歩いて15分ほどでつける近場にあって主に食材の買い出しや本屋で本を読むぐらいだけどよく利用する。デパート内には今日は日曜日と休日のため家族連れや学生などが目立って見えていた。当たり前の光景かもしれないが僕にとっては様々な色を持った人たちが集まり、グチャグチャと色が混ざり合って僕はこれが一番と恐ろしい。人を見ると勝手に色が見えてしまうため、本当に楽しんでるのかそれとも嫌々来ているのかはっきりと分かってしまう。中にはキレイな高級品を身につけている女がツレの男に高級品を買って貰おうと利用されているにも気付いていない可哀想な男がいた。そんな人の醜いところばかりを見てしまっている自分はその色に当てられて深黒にまみれてしまうそんな恐怖心と戦いながら買い物が始まると思っていた。しかし今回は隣に未夕がいてくれている。ずっと僕の手を掴んでくれて離そうとせず僕の顔を見ては汚れのない笑顔をとキレイな青空色を魅せて、この広いデパートの中で自分たちだけがいるそんな世界を作り出してくれていた。この色の目は確かに相手の思いや人間性を把握すると言った強みはあるが、オンオフがつけられないせいでずっと色が見えてしまう状態である。慣れるまでは何度もトイレで吐いては戻ってまたトイレで吐くと繰り返していた時期もあった。でも今は未夕がそばにいてくれるようになってからそういった症状は出てこなくなった。だけどそんな僕を安心させないように色がハッキリと見えてきて目の力も少しずつだが強くなっている気がする。まだこの目についてはわからない事が多いからだから自分の力を理解していく必要がある。そのために誰が人体実験の被検体になるか遅かれ早かれ出てくるのは想像がついていた。

「兄さん大丈夫?気分悪くない?」

「今の所は大丈夫だよ。それより未夕は何処に行きたいの?」

「あそこの雑貨屋さんで新しいヘアピンが欲しいの。」

「じゃあそこに行こうか。さっきのお礼でヘアピン僕からプレゼントするから好きなの選んでいいよ。」

「本当にいいの?兄さんからのプレゼントなんて一生の宝物にしていきます!」

「そんな大げさな…。」

 僕からプレゼントを貰えるとわかった未夕は嬉しそうで小走りになりながら1階にある雑貨屋に向かっていった。僕も少し遅れて一緒に行くとそこの雑貨屋にはヘアピンやネックレス、指輪など色々な小物が揃って置いてあった。色や形も様々で生き物柄や植物柄、見たことない変な形の物も置いてありファッションに興味の無い僕でも気になる小物があって見ていた飽きなかった。ここに来たいと言っていた未夕は真剣な表情でヘアピンのコーナーを品定めしていた。

「この星型のもいいけどこっちの雫もかわいい…。あ、このイルカも良いかも。」

 高校生だとファッションに興味が大いにあって色んなヘアピンに目移りしている。一つ千円もしないのだから2つ3つ買ってもいいと思うが未夕はバイトをしていないためお小遣いでやりくりしないといけない。そのため買うとしても1つが限度になるようだ。

「未夕さっきも言ったけどヘアピンぐらいなら1つ2つプレゼントするよ?」

「嬉しいんだけど2つもは悪いし1つの方が唯一無二感があって宝物度が上がるの。だから兄さんからのプレゼントは1個で十分すぎるんだよ。」

「そこまで大事にしてくれるなら嬉しいよ。だったら悔いが無いようにしっかり選ばないとね。」

「そうなんだけど中々決まらなくて…、どれもかわいく見えちゃうの…。そうだ兄さんはこの3つならどれが一番可愛いと思う?」

 未夕は星型と雫型とイルカモチーフのヘアピンを手にのせて僕に聞いてきた。どれも未夕に似合いそうだったが、ここで全部似合うよ何て言うと怒られそうなので僕は直感的に選ぶことにした。まあ、どれも選んでも変わらないからそれ以外の方法がないだけなんだけど…、そして僕は3つのヘアピンを見て一つを指さし決めた。

「僕はこの星型がいいと思うよ。」

「理由聞いてもいい?兄さんの事だから全部似合うし直感で決めてるかも知れないから。」

「そ、そんな事は無いよ。理由は…未夕は僕にとっては星みたいな存在だから。こんなドス黒い僕に明かりをくれる希望だからこの星がいいと思ったんだ。」

「へ、へー兄さんにとって私は星で希望なんだね…。」

「自分から聞いておいて照れないでよ。こっちまで恥ずかしくなる。それじゃあこのヘアピンでいいの?いいなら買ってくるよ。」

「う、うん兄さんが選んでくれて私に似合っててかわいくてお嫁にしたいって言ってくれたんだものこれがいいわ。」

「そこまで言ってないけどね。」

 もの凄く美化されて都合のいいように解釈されていたが訂正するのも面倒なのでさっさと買いに行った。店員さんから目と周りからでている赤色でイチャコラしてるなと怒りと憎しみが感じられたが無視して会計を済ませてきた。この時僕は未夕との買い物が楽しくて普段なら警戒している凡ミスを犯してしまう事になってしまった。ここは雑貨屋で未夕のような学生達が来るような場所なのはわかっていた、だけどこういったお店には一人で来る人の方が少なく普通は4~5人など「団体」で訪れる事の方が多い。僕はそれを一番避けなければいけなかったのに店の外で待っている未夕と合流する寸前入れ違いで5人の女子グループを真っ正面から見てしまった。中央の子がリーダー格なのだろう周りから楽しんでいる黄色が溢れ出て、両隣の子からはその子のノリについていけないのかウザかったせいか若干青掛かった黄色で、端っこにいる子に至ってはただの付き添いできたと言わんばかりにつまらなそうに青黒い色を醸し出していた。僕はそんな色を真っ正面から見て仕舞い目がチカチカしその色が混ざり合って何と表現したらいいかわからない程メチャクチャな色を見てしまった。完全に油断して急に見てしまったせいで吐き気が襲いかかりフラついてしまったが何とか震える足で転ぶのだけは回避できた。店の外で待っていた未夕は僕の異変に気付いてすぐに駆け寄って来てくれた。

「兄さん大丈夫!?」

「う、うん…ちょっと油断してた…。ぅぷ…少し…休んでもいいかな…。」

「そこにベンチがあるから落ち着くまで休みましょう。すぐそこまでだけど歩ける?」

「うん…。それぐらいならなんとか…。」

 僕は未夕に支えられる形で店の前にあったベンチまで足を引きずるように歩いて行きすぐにでも座りたかった。ベンチに着くとドカッと倒れ込むように座り目を伏せ下を向いてなるべく要らない物を見ないようにしたが、さっきの色が瞼に塗り着いて目を伏せてもあまり意味がなかった。深く深呼吸をし吐き気だ収まるまでゆっくりと呼吸を繰り返し、瞼に塗り着いた色はどうしようもないため諦めた。とりあえず今は吐き気を抑えること、瞼に塗り着いた色が落ちるのを待つこと以外できない。こんな情けない姿を未夕に見せてしまったのが一番気に触ってしまった。買い物をする時に気を付けないといけないことはそれは年頃の子の色だ。多感な時期で色んな色が周りを纏っているため濁っていたり色を混ぜすぎて汚い色をしている。それがグループで来るとなればそれは更に酷くなる。だから僕はなるべくそういった学生と会わないように時間をズラしたり下を向いて見ないようにして対策していたが今回ばかりは僕が未夕に速く会いたいと焦って犯した馬鹿なミスだ。そのせいで未夕にこうして迷惑をかけてしまっている。1軒回っただけでこのザマになってしまうなんて情けないし楽しみにしてくれた未夕に顔向けができない。

「お兄ちゃん…ごめんなさい私のせいで…。」

「そんなことないよ。これは僕が馬鹿だったせいだよ。」

「でも…お兄ちゃんがこんなに苦しそう…」

「未夕のせいじゃない。これ以上自分を責めるなら僕は怒るよ。」

 僕の言葉を聞いて未夕は何も言えなかった。未夕は優しすぎるし僕が絡むとすぐに自分のせいにしてしまう悪いクセがある。呼び方も普段なら「兄さん」だが今は「お兄ちゃん」に変わっている。未夕が僕を「お兄ちゃん」と呼ぶときは自分に余裕がないときか、落ち込んでいるときに言う。今も自分のせいでと落ち込んでいるから「お兄ちゃん」に変わっている。未夕は悪くないのに自分を追い込んでしまうため僕は無理矢理にでも未夕の言葉を止めた。恐らく未夕もそれがわかっているのかこれ以上自分を責めるような言葉は言ってこなかった。変わりに近くにあった自販機からスポーツドリンクを買ってきてくれて僕はそれを少しずつ飲んで体調の回復を待った。しばらくお互いに少し気まずい雰囲気が流れ会話も無く静かな時間が流れていた。僕は喋る元気がまだ出ないで俯いたままが続き、未夕も何て言えばいいのか言葉が見つからないようでソワソワしているのが雰囲気で感じ取れる。そんな雰囲気を壊すかのように僕の聞き慣れない男性の声が聞こえた。

「あれ?桜庭さんどうしたのこんなところで?」

「こんにちは先輩、先輩こそどうしたんですか?」

「俺は親に頼まれて夕飯の食材を買いに来させられたの。ところで桜庭さんの隣にいる人ってもしかして…。」

「はい恋人です!」

「未夕嘘をつくな、こんな格好で申し訳ないですけど…初めまして僕は未夕の兄の桜庭 透です。」

 男はやけに未夕に馴れ馴れしく話しているのが癪に障るが未夕の誤報を直すのが最優先事項だったので僕はうなずきまだ全開で無い喉で狩ろう時で未夕との関係性を伝えた。あらぬ誤解から変な人に関わられるのはイヤなのでハッキリ言った。未夕は不服そうだったが構わず僕は色を見ないように俯いたまま体調の回復を務めた。

「桜庭さんのお義兄さんでしたかすいません!年下なのにため口で…。」

「ううん大丈夫だよ。それより今日は二人会う約束してたの?もしかして僕お邪魔虫かな?」

「あ…ええっと…その約束とかはしてないです。たまたま桜庭さんの姿が見えたので来たんです。」

 男の話しを聞くと近くに未夕がいたから寄ってきたハイエナだということだな。だが未夕の高校生活の事を聞けるチャンス無下になどしないため洗いざらい吐いて貰おう。後で未夕にはお叱りがとんでくるだろうが…。

「未夕はモテるのかな?」

「自分高校3年生ですが同じクラストでも何人かは彼女にしたいって人気ですよ。」

「なん未夕結構青春してるじゃ無いか。兄さんは嬉しいよ。」

「でも今女子の間で僕をフッタせいで桜庭さんが酷い目にあってるって噂も…。それが気になって追いかける形でしたが真相を桜庭さんから聞きたいんです。」

「わ、私はいつも通りクラスメイトと旨くやっていますよ。たしかに先輩のファンの子に嫌がらせを受けていた時期もありましたけどそこまで酷くないので気にしていません。」

「桜庭さんがそうならいいんだけど…。でもやっぱり心配で…。」

「先輩、それよりまだ部の大会が残っているのでしょう。でしたらそちらを集中し最高の記録を出したとき私の心が動くかもしれませんよ。」

「さ、桜庭さん!俺最後の大会がんばるから!その時また告白をさせて欲しい!それじゃあ!」

「はい、先輩の活躍楽しみにしています。」

 顔を渦組めて相手の顔の格認までできなかったが声色だけを聞くと未夕に好意を寄せて最後の試合で勝ち負け関係なく全力を見て付き合うかを考えて欲しいと、今の会話を簡単に纏めていたら吐き気も収まってきた。走って帰っていく先輩とやらの色を見ようと声をかけてこちらを見貸せた。

「おーい、僕君の名前聞いてなかったから教えてくれない?」

「はい!自分は秋野 修二です!よろしくお願いします!」

「ごめんね急に呼び止めちゃって、大会がんばってね。応援してるから。」

「はい!ありがとうございます!」

 丁寧に体をこちらに向けてあいさつをしてくれた修二君はいかにも運動部というあいさつで去ってしまった。高校生となるとあれぐらいの元気が当たり前なのか僕には絶対出来ない5分と持たず病院だろう。修二君を見送っていると未夕は僕の右手の裾を引っぱり何か言いたげの様子だった。

「あの先輩が私に告白してフッタひとなの。」

「そん感じはしてたよ。でも向こうは諦めてないようだったね。」

「そうなんですよ…、放課後とか一緒に帰らないかとか朝一緒に行かないかとかしつこくて…。」

「……あいつには最新の注意をしていてね。最悪悪霊も視野に入れて。」

「え?兄さんどういう……。」

「話しは以上、夕飯買って帰ろっか。」

「え!?兄さんさっきの…もう一体どういうことなの…。」

 それから僕たちはデパートの食料品売り場に行き飲食料ゼリーを大量に買い込もうとしたら未夕は手でガードし中に入れさせてくれなかった。すぐ飲めて栄養価もある素晴らしいのに未夕は食の楽しみを忘れてしまうと、僕がいつも愛用していた飲食料ゼリーが全部戻された。大人しく飲食料ゼリーを戻していると未夕はテキパキとここのデパートの商品場を理解しているようでどんどんとかごの中に野菜や肉、魚、果物と栄養が良さそうなものが並んだ。そこにチョコやポテチといったお菓子を少しいれ会計に向かった。会計が終わるとその荷物を持たされ未夕はお菓子類が入っている軽い袋だけもってくれた。家まで持って行けるか微妙だったがなんとかアパートの前までもってこれた。両腕が痺れていたいがすぐ収まると思いほっといても大丈夫。だが未夕はこの後アパートへ上がること無く荷物だけ運んで実家の方へ帰ってしまった。明日は月曜日で学校はあるけどいなくなったら寂しいものだ。今日の夕飯は最後の飲食料ゼリーを飲み物薬を服用してからシャワーを浴びて寝床へ着くことにした。眠気が少しずつ広がる頭であの先輩について考えていた。あいつは、未夕にとって「害」になる。未夕自身の問題に首を突っ込む気は無いがあの先輩は危ない気がするためこちらでも手を考えていこう。なんて考えていると薬が回ってきて頭もボーッと意識が消えそうだったのでここで考えるのを止めて僕は睡眠に身を任せた。


 

 あの先輩からでていた色は激しい赤色、怒り激昂、嫉妬などの色だが話している感じそんな素振りを一切見せなかった。恐らく今は何かの準備期間で手を出さないのか、あまりいい方へ転がるとは思えない。だったら、僕の能力の実験態になってもらおう。まだ人では試して無かったからタイミングがあえば実験開始だ。

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